第九十五技 巡る想い出
ヴァルSide
「おはようシリカ、ピナ」
「あ、おはようヴァル君」
「きゅっ」
いつもの黒い軽鎧と黒い陣羽織を装備してから部屋を出ると、隣の部屋からシリカとピナが出てきた。
挨拶を交わしてから、僕達は宿屋の一階に朝食を食べにいく。
「そういえばシリカは今日、行きたいところがあるんだよね?」
「う、うん。えっと、いくつか行きたいんだけど…いいかなぁ?」
「僕は大丈夫だよ」
「良かった~」
シリカはホッとしたように可愛らしい笑顔を浮かべた。僕もそれにつられて笑顔になるのが分かった。
僕達は朝食を食べた後、出かける準備を整えて宿をあとにした。
「それでどこに行きたいの?」
「まずは『迷いの森』にいきたいの」
『迷いの森』は僕とシリカが初めて会ったフィールドダンジョンだ。
でも、なんでまたそこに行きたいんだろう?
「いいかな?」
「うん、いいよ。行こっか」
まぁ気にしないでいいかな。折角のシリカの頼みだからね。
というわけで僕達は『迷いの森』に向かう事にしました。
森に入った僕はシリカについていく。
途中でエンカウントするモンスターはやはり僕のレベルには合わず、一撃で葬り去る。
シリカのレベルもかなり上がっているようで、一撃で倒していた。
奥に進んでいったところでシリカが足を止めた。
「ここって……」
森の奥についた僕とシリカ。そのついたところに僕は見覚えがあった。
「うん。あたしとヴァル君が初めて会った場所…」
そう、ここはシリカがモンスターに襲われて、一度ピナを失い、その時僕がシリカを助け出した場所だった。
「あたしあの時ね…、ピナが消えちゃって、悲しくて、モンスターの攻撃を喰らって死んじゃうんだって思ったの。
でも、ヴァル君が助けてくれて……ピナが戻ってこれるって知って…、すごく嬉しかったの」
シリカはあの時の自分の気持ちを語っていく。僕はそれを静かに聞く。
一言も聞き逃さないように。
「あの時は助けてくれて……ありがとう、ヴァル君!」
「……うん!」
「それじゃあ、次にいこ!」
「えっ、もういいの?」
「うん、つぎつぎ!」
シリカに手を引っ張られながら僕達は森をあとにした。
森から出た僕達は『ミーシェ』の街に戻って、いつもの宿屋で食事をとりました。
「相変わらずここのチーズケーキは美味しいね」
「気に入ってもらえたからよかったよ~」
食後のデザートにこの宿屋特製のチーズケーキを堪能しています。
「次はどこに行きたいの?」
「えっと、次は『フローリア』に行きたいなぁって」
第47層の『フローリア』かぁ。
いつもシリカと話をしたりするのはあそこだから、どちらかと言えばいつも通りかな。
「それでね。『思い出の丘』に行こうと思って…」
これまた意外に思った。まさか『思い出の丘』に行くと言うとは思っていなかったから。
だからこそ僕はそれに気づいたのかもしれない。
―――もしかしてシリカは……。
僕はシリカが何を思っているのか………大体分かったような気がした。
転移門を使って『フローリア』に来た僕達は、そのまま『思い出の丘』に向かった。
ここのモンスター達もやはり大した事はなく、僕達は楽々と奥に進んでいく。
そして≪プネウマの花≫が咲く台座に辿り着いた。するとシリカが語り出した。
「ここで≪プネウマの花≫が取れて。街に戻る途中でロザリアさん達に襲われた時はどうしようかと思ったんだ…。
でも、ヴァル君が守ってくれて……花を使ってピナを戻してあげれた……。
全部ヴァル君のお陰だよ///」
シリカは頬を微かに紅く染めてそう言った。
「僕は……大した事はしてないよ…」
「そんなことないよ。あたしが今ここに居られるのもヴァル君が居てくれたから…」
シリカはどんどん言葉を紡いでいく。その言葉を聞く度に僕は申し訳なくなる。
だって僕は……僕には……。
「あたし…ヴァル君に伝えたいことがあるの…///」
やめてシリカ…。
「あたしね…ヴァル君が……ヴァル君のことが…//////」
僕の思いと裏腹にシリカは言葉を口にしていく、そして……。
「………好きです/////////」
ヴァルSide Out
To be continued……
後書きです。
シリカの想いとは裏腹なヴァルの心情、その理由とは・・・。
まぁ、ヴァルが『狩人』であることが関係しているんですけどね。
では・・・。
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第九十五話になります。
シリカはヴァルに想いを伝えることができるのでしょうか・・・。
どうぞ・・・。