~~とある無人世界~~
「勇紀、これで全部かい?」
「うーん…多分」
俺と亮太は現在、とある無人世界にいる。
ここは俺がシュテル達と出会う前に野生の生物を相手に実戦訓練をしていた場所である。
何故俺と亮太がこんな所にいるのかというと
『勇紀、
という亮太の一言から始まった。
俺は今まで
その事を亮太に伝えたら
『じゃあ一度、中の物を全部出してみようよ』
と提案された。
そこで無人世界に転移し、こうやって中の物を出している訳だが
「何ていうか…ギルガメッシュが後先考えず撃ちまくる訳だね」
「だな。俺もこれだけあるとは思わなかったし」
明らかにその数は千を軽く超えている。
流石は全ての宝具の原典を収めている宝物庫だ。しかも一つ一つがとんでもない魔力を帯びてるときた。
「あれ、
「ん?ああ、出すの忘れてた。……ほれ」
再び宝物庫を開き
神を律する対神宝具。俺が使うバインドより拘束力は高い。ギルガメッシュが追い詰められた時の切り札として使うのも納得だ。
「バインドを使えない僕としてはこの宝具があったら嬉しいんだけどな」
「言っとくがやらんぞ」
「分かってるよ。ただ言ってみただけさ」
そう言ってる割にはジーっと
「とりあえずこれで全部っぽいな。…じゃあ片付けるぞ」
「うん、ゴメンね勇紀。わざわざ宝具を全部出させて」
「いや、俺としても中の宝具を確認するいい機会だったから」
そう言いつつ宝具を宝物庫に収納し始める。
出した時と違いあっという間に片付いていく宝具。全ての宝具を宝物庫に収納するのに時間はかからなかった。
「後片付け完了。じゃあ帰るか」
「そうだね」
俺は転移用の魔法を使用しようとしたら
「マスタァ~」
何処かで聞いた事のある第三者の声が聞こえてきた。
「どうしたんだい?ボルサリーノ」
その声に反応する亮太。どうやら今の声は亮太のデバイスの様だな。
つかデバイスの名前も黄猿さんなんですね。
「東の方からァ魔力反応があるよォ~」
「「魔力反応?」」
俺と亮太が声を揃えて聞き返す。
ここは無人世界の筈なんだが…もしかして魔法生物かな?
「ユウくん、私も感知したよ」
続いてダイダロス。
「魔力反応のある方向で戦闘反応も確認したよ」
「戦闘?野生の魔法生物同士が喧嘩でもしてるのか?」
「そこまでは分からないよ」
…どうしたもんか?
「勇紀、行ってみようよ」
亮太は何を思ったのか戦闘が行われているらしい現場に行こうと提案してきた。
「ひょっとしたら魔法生物じゃなくて魔導師同士の戦闘かもしれないし」
「…管理局員と違法魔導師が戦ってるとか?」
俺の言葉に亮太は頷く。
「行くのはいいとして俺達の素性聞かれたらどう答える?無人世界に居る時点で怪しさ満点だぞ?」
「それは……まあ、何とかなるよ!」
「……つまり何も考えてないんだな」
軽く溜め息を吐いてしまう。
とはいえ、魔力反応か…。
魔法生物にしろ管理局員にしろ違法魔導師にしろ気にはなるな。
「…しょうがない。見に行くだけ行ってみるか」
「うん、行こう!それで勇紀にお願いがあるんだけど…」
「ん?」
「
「
『
『Fate/Zero』原作でギルガメッシュが乗っていた黄金とエメラルドで形成された光輝く舟。この舟はバビロンより散逸した後に古代インドへと伝わり『ヴィマーナ』の名で記述に伝わる飛行装置に他ならない。
「勇紀、駄目かい?」
「…まあ、いいけどな」
俺は宝物庫から
亮太も俺に続いて乗り込み、俺は
少しずつ地上から離れ
「じゃあ行くぞ」
「おーーー!!」
十分な高度を取ってから魔力反応のする方に向けて
~~???視点~~
「ぐうっ……」
俺は今、とある無人世界にある違法研究所に部下と潜入捜査を行っていた。
以前から俺の隊が捜査を行っていた戦闘機人事件。
そのプラントの位置が特定出来たため隊の部下を連れてきたのだが……。
「こんな所まで入り込まれたか…。それにここまで破壊された以上この拠点も、もう離れねばならんな」
「ざ~んねん」
長身の女と眼鏡をかけた女が、俺の隊が破壊した施設の内部を見ながら口を開く。そして…
「この男を殺し、遺体を回収しよう。せめてドクターの実験素体として役立ててやらねば」
俺との戦闘で右目から血を流している小柄で銀髪の少女が手に持ったナイフで俺に止めをさそうと近寄ってくる。
致命傷を負っている俺はもう身体を動かす事も出来なかった。
「(……レジアス、これは…お前の指示なのか?)」
もう意識も朦朧とし、死を覚悟した俺が思い浮かべていたのは友の顔。
そして俺の前でナイフを振り下ろそうとする少女。
その時…
「
ドガガガガガガガガガッ!!
第三者の声が聞こえたと思った瞬間、周囲に突然凄まじい光弾が降り注ぐ。
「なっ!?……ちいっ!!」
俺の前に立っていた少女が突然距離を取ったみたいだ。
スタッ
小さな着地音と共に何者かが俺の前に立っている様な気がする。
「(…誰……だ?)」
目が霞み、もう意識が落ちそうになりながらも最後の力を振り絞って目の前の人物に顔を向ける。その姿は…
「(…少……年……?)」
子供らしき姿を見て、俺の意識は闇に沈んでいった………。
~~???視点終了~~
~~亮太視点~~
勇紀の操縦する
「施設?」
何かの施設らしき建物だった。
僕と勇紀は
勇紀は
「無人世界に何故施設があるんだ?」
尤もな疑問を口にしていた。
「元から無人世界じゃなかったとかじゃないかな?」
「いや、なら街とか村とかがあって人がいてもおかしくない筈だ」
「それもそうだね。じゃあこの施設は一体?」
「さっき亮太が言ったのが当たりじゃないのか?ここが違法魔導師のいる研究施設か何かで戦闘反応らしいのが確認出来たのは施設の中で管理局員と違法魔導師が戦っているからだろう」
確かに僕はそう言った。まさかの推察が当たりだったなんて思わなかったけど。
「マスタァ~」
僕のデバイス、ボルサリーノが僕を呼ぶ。
「この施設の中の生命反応がァ~、3つ程あるけどォ~、段々小さくなっていくよォ~」
「「!!」」
僕と勇紀はボルサリーノの報告に同時に反応した。
管理局員ならデバイスに非殺傷で設定している筈だから生命反応が小さくなるなんて事は有り得ないだろう。
という事は生命反応が小さくなっているのは管理局員。
「勇紀!!」
「分かってる!!俺達の素性がどうとか言ってる場合じゃない!!中にいる人を助けに行くんだろ!?」
「うん!!」
勇紀は既にバリアジャケッットを身に纏いいつでも施設に入れる準備をしている。
僕もすぐさまバリアジャケットを纏う。
「ユウくん。生命反応は別々の場所に一人と二人に別れているよ」
勇紀のデバイスであるダイダロスが言うには施設の奥の方に反応が一つ、別の方から反応が二つと二手に分かれているらしい。
「それとォ~生命反応の側にィ~、別の反応もあるよォ~。一人の方には3つゥ~、二人の方には多数あるねェ~」
別の反応…おそらく局員を襲っている違法魔導師達の事だろう。
「亮太、お前は奥の方に行け。光の速度で移動出来るお前が行った方が奥にいる人を早く助けられる」
勇紀の言葉に僕は黙って頷く。確かに移動速度なら勇紀より僕の方が圧倒的に早い。
「とりあえずは局員の人を助けるのを最優先にして、敵の殲滅は余裕があるならって事で。局員の身柄を確保したら念話で連絡してこの岩陰に集合って事で。その後で俺が治療する」
「分かったよ。気を付けてね勇紀」
「おうさ」
そして僕と勇紀は施設の中に侵入する。
施設に入り生命反応のする場所を目指し走る僕と勇紀。
施設の通路や扉の開いてる部屋には既に息絶えている局員達の遺体がある。
初めてみる死体に僕は思わず吐き出しそうになるがグッと堪える。
勇紀も死体を見るのは初めてなんだろう。表情には出さないが顔色は悪い。
それでも必死に我慢してただ前を向いている。
僕達は途中にある部屋は全て無視してひたすら施設の奥に行く。
そして休む事無く進んでいると通路が左と右の二手に分かれていた。
「ダイダロス。どっちが奥に進む道だ?」
「左の方は弱々しい生命反応が一つだから奥に行くのは左の通路だよ」
「分かった。…つー事だ、亮太は左に行ってくれ。俺は右の通路の先にいる二人の局員を助ける」
勇紀の意見に頷き僕と勇紀はここで一旦別れお互いに単独行動を取る。
僕は勇紀と走っていた時よりもスピードを上げ一気に通路を突き進む。
そして施設の一番奥らしい部屋の中に入ると一人の小柄な女の子が血まみれで壁際にいる大柄の男の人に止めをさそうとナイフを振り上げていた。
「(マズい!!)」
僕は即座に光弾を作り出し
「
男の人と女の子の間に
「なっ!?……ちいっ!!」
僕の狙い通り女の子は男の人から離れ距離を取る。
その隙に僕はすぐさま男の人の前に移動しチラリと男の人を見る。
…マズいね。血が出過ぎて段々と生命反応が弱くなっている。
早くこの人を連れて脱出しないと手遅れになるかもしれない。
僕は治療魔法が使えないから勇紀に何とかしてもらわないと。
「何者だ……子供だと!?」
…っと、そうだ。この人を連れ出す前にこの人に止めをさそうとしていた女の子をどうにかしないと。
「子供がどうしてこんな所に?」
「見た目に騙されるなクアットロ、チンク。こんな所にただの子供が来る筈が無い。おそらく管理局の増援で来たのだろう」
どうやら僕を管理局員と勘違いしているみたいだけど。
それにしてもクアットロ、チンクって言えば…。
改めて声のした方を確認してみるとそこにいたのは、
「(まさかナンバーズと遭遇するなんて…)」
アニメで観たナンバーズの三人、トーレ、クアットロ、チンクだった。
「(そういえばこの状況…)」
違法研究所、ナンバーズ、管理局員…。
このシーンは確か
なら僕の後ろにいる男の人はおそらく
「(ゼスト・グランカイツ…)」
間違いない。これは戦闘機人プラントの捜査を決行した時の出来事。
原作だとここで彼は一度死に、後に人造魔導師としてスカリエッティに蘇生させられるんだ。
…やれやれ、正直僕はForceの時期までは出来るだけ介入しないと決めてたのに。
だけど今関わってしまった以上は仕方ないか。
それに原作の流れを変える事になるだろうけど助けられるなら助けたいしね。
「管理局の魔導師か…。それにここにいる以上子供であろうと見過ごせんな」
「残念だけど僕は管理局の局員じゃない。フリーの魔導師さ」
「フリーの魔導師?じゃあ君はどうしてここにいるのかしらあ~?」
「この無人世界に居たのはちょっとした理由だよ。その時に魔力反応があったから様子を見に来ただけ。そしてこの施設の中にいる人の生命反応が段々と弱くなってるから助けにきただけさ」
「助けに…か。だがお前をここから出す訳にはいかないな」
「ならば…押し通る!!」
ヒュン……バキイッ!!
「があっ…」
僕は即座にチンクの正面に移動し腹部に拳を叩きこむ。
「チンクちゃん!?」
「っ!ライドインパルス!!」
僕の一撃をまともにくらったチンクは壁際に吹き飛び、その様子を見たクアットロは驚愕の表情を浮かべながらチンクの名を叫ぶ。そしてトーレは自分のIS『ライドインパルス』を使用する。
常人には見えない程の高速移動。だけど
「遅いね」
シュン
「なっ!?」
光速移動に比べると大した速さでない。
僕は移動中のトーレの真横に並び横っ腹に回し蹴りを喰らわせる。
ドガアッ!!
「ぐああっ…」
チンクとは反対の壁際に叩きつける。
「トーレ姉様!?」
「貴方で最後だな」
ハッとしてこちらを見るクアットロ。だが
ピュン
僕の指先からレーザーをクアットロに向けて放つ。
「きゃああああっっっ!!」
ズドオオオンンンッッッ!!
レーザーに飲み込まれ、爆煙が上がる。
その煙が徐々に晴れていくとクアットロはうつ伏せで倒れていた。
「よし、後は…」
急いでゼストの側に近寄る。
…まだ息はある。急いでここから出て勇紀と合流しないと
そう考えていた矢先に遠くから何か音が二、三度聞こえ
「《亮太、こっちは生命反応の弱っていた二人を助けた。これからここを脱出する》」
勇紀からの念話が飛んできた。
さっきの音は勇紀が戦っていた際に鳴り響いた轟音だと推察する。
「《こっちも無事に助け出せたけどかなりマズい状態になってるから急いでここを出るよ》」
「《了解!!じゃあ突入前に決めた例の岩陰に急いで向かってくれ》」
「《分かった!!》」
勇紀との念話を終えゼストを担ぎ、戦闘機人の意識の有無を確認する間も惜しんで僕は部屋を後にするのだった………。
~~亮太視点終了~~
さて、亮太と別れて少し進んだ先に部屋があり、その中の何かが見えてきた。
同じシルエットをした多数の何かが血まみれで倒れている二人の人を取り囲み、今まさに止めをさそうとしている。俺は即座に魔法を放とうとしたが
「っ!!魔力が上手く結合出来ないって事はAMFか!!」
周囲に張り巡らされているフィールド魔法を感知する。
「結構濃い濃度だが、俺の前では無意味だ!!」
俺は
いかに魔法を封じてしまうAMFとてレアスキルである
そして俺の進む進路上と止めをさそうとしている機械兵器、ガジェットⅣ型をアルテミス、クリュサオルで破壊しすぐさま二人の側に駆け寄ってイージスを展開し俺と二人の局員を包み込む。
沢山の反応は違法魔導師ではなくガジェットだったのか。
俺は局員の安否を確認するがその二人を見て驚いた。
「(この二人……間違い無い。アニメで観たクイントとメガーヌだ)」
まさかこの二人にここで出会うなんて。
「(…ていうかこの状況)」
ガジェットに囲まれ、血まみれで倒れている二人。これってSts24話の回想シーンの続きって事かよ。
幸いにも二人はまだ息がある。急いでここを出て治療すれば間に合う。
「(もっとも…治療魔法はあまり得意じゃないんだがな)」
治療魔法に関しては時折シャマルさんに教えてもらいながら練習していたので多少は上達している。だが、今の俺の力量ではこの二人の傷を塞ぐ程の効果は無い。
いや、治療魔法のエキスパートでもここまでの重傷から助ける事が出来るのかは疑問だが。
「(……
俺が考えるのは自分の持つレアスキル。アレを使えば死亡していない限りはどんな重傷からでも助ける事が出来る。
もっとも、このレアスキルは使用するのに『代償』が必要になるのだが。
「はあ~…シュテル達に何も言わずに使うとなるとO☆HA☆NA☆SHIを覚悟しないといけないが…」
小さく溜め息を吐きながら呟く。
俺は倒れているクイントとメガーヌの二人を見て
「O☆HA☆NA☆SHIを恐れてここで二人を見殺しになんて出来んわ」
俺は決意する。
ここで助ければ夜天の書の件に続き、また原作をブレイクする事になるが迷いは無かった。
「ならこのガジェットをどうにかするか」
先程からイージスを破ろうと攻撃してくるガジェットの群れに意識を移す。
「この世界でこれを
俺はイージスを展開しながら右手を上げる。
剣先は俺が戻る退路を塞ぐ様に群がっているガジェットの集団に向いている。
「邪魔だ!!」
右手を振り下ろすと同時に二本の剣が『ゴウッ』唸りを鳴らしガジェットの群れに向かって投擲される。
そしてガジェットの群れの中に二本の剣が突き刺さると同時に部屋の床が吹き飛び木っ端微塵になったコンクリートの床が粉塵を巻き起こす。
少しして粉塵が晴れていくと床には大きなクレーターが出来、退路を塞ぐ様にしていたガジェットの群れは無残な残骸へと姿を変えていた。
俺はすかさずクイントとメガーヌの二人に浮遊魔法を使用し、二人の身体を浮かせるとイージスを解除、同時に
部屋を出てある程度走ってから後ろを振り返るとガジェットの群れは俺を追いかけてくるが通路が狭いため一列に並んでいる。
「計画通り」
薄く笑い、俺は走りながら準備していた
炎熱の閃光は直線に並んでいるガジェット全てを飲み込み破壊する。
「もう追手は無い…か」
どうやら今破壊したガジェットの群れだけが俺を追いかけていたみたいだ。
まだガジェットが施設内にいるのかダイダロスに探知してもらうがもうガジェットの反応は無いとの事。
なら後ろを気にせず脱出に専念出来る。
俺は亮太に念話でこちらの状況を伝える。
「《亮太、こっちは生命反応の弱っていた二人を助けた。これからここを脱出する》」
すぐに亮太から返事がくる。
「《こっちも無事に助け出せたけどかなりマズい状態になってるから急いでここを出るよ》」
「《了解!!じゃあ突入前に決めた例の岩陰に急いで向かってくれ》」
「《分かった!!》」
お互いに状況と次の行動を確認した後、俺は施設を少しでも早く出るため身体強化をかけ、浮遊魔法に魔力を更に込めスピードを上げるのだった………。
俺が施設を脱出して岩陰に身を潜めてから間もなく亮太は来た。
背中には大柄の男性を背負っている。
それが誰かは確認するまでも無かった。
「《やっぱりゼスト・グランカイツだったか》」
「???《何で念話で?》」
「《この人達のデバイスに俺達の会話を聞かれて録音でもされると面倒な事になるだろ》」
「《あ、成る程》」
俺達が一方的にこの人達の素性を知っている事なんか知られたら確実に怪しまれるし、あの戦闘機人事件に関係している者と思われるかもしれない。この人達を助けるために戦っていた映像を録画されてたとしてもだ。
まあ、その事は今は置いといて
「この三人を治療しないとな。亮太、そっちの人をこっちの二人の側に寝かせてくれ」
「了解だよ」
亮太は背中に背負っていたゼストをそっと寝かせクイント、メガーヌの横に並ばせる。
それを確認した俺は軽く深呼吸して目を閉じ精神を集中させる。そして
「
俺の全身から放たれる光が三人を包み、修復していく。
『
物質の持つ記憶を読み取って物質を修復させる。治療を行うだけに留まりはしない、壊れたものが何であれ、修復する能力。無機物であっても有機物であっても作用するし、望みさえすれば破壊された建物を中に存在するものごと修復する事さえ可能。能力の使用として『代償』が必要となる。
光に包まれてからの三人はあっという間に重傷を負う前の姿に戻っていく。それは肉体だけに留まらず血の付着していたボロボロのバリアジャケットや若干損傷していたデバイスまでも。
大量に血を流し青白かった顔色も一瞬で修復され、今はちゃんと血が通っている肌色に戻っている。
「っ!!」
フラつき、膝が崩れそうになる。
「勇紀!!」
亮太がこちらに近寄るが俺は手で制し
「大丈夫だ。これは
心配無いと亮太に告げる。
だが問題は
この『代償』は俺の『視覚』『触覚』『味覚』『聴覚』『嗅覚』の五感のうち、ランダムで一つ機能が一時的にだが極端に低下する。
俺が過去に
1回目は触覚、2回目は視覚だった。
どちらも約2ヶ月程で機能は回復したのでその間若干不便になる生活を我慢すればいいだけなのだがシュテル達には物凄く心配され、怒られた。だから今後は勝手に
今の俺は目は視えているし風の音も聞こえるので『視覚』と『聴覚』は問題無い。デバイスに触れている感覚もあるから『触覚』も大丈夫として残っているのは『味覚』と『嗅覚』。
「(家に帰ってから確認するか)」
そう決め、俺は次の問題について思案する。
「治療したのはいいけど、この三人どうしようか?」
助ける事ばかり考えていてその後の事は考えていなかった。
「目が覚めたら管理局に戻るんじゃないのかな?」
「いや、ここで三人を管理局に帰すのはマズいと思う」
「何で?」
「勘だ《戦闘機人の件に関してはレジアスの裏に管理局の闇とも言える最高評議会が絡んでる。三人を帰した所でまた暗殺なんかされて葬られる可能性が高い》」
「勘なのかい!?《成る程》」
「俺の勘って良く当たるんだよ。今回は三人共帰さない方がいいと思うんだ《それに評議会の連中ならこの三人に関わりのある人物を全て消そうとするかもしれんからな。家族や友人なんかは特にだ》」
「僕としては帰してあげた方がいいと思うけどなあ《この三人の家族、友人って言えば…Sts原作キャラのスバル、ギンガにルーテシアだね》」
「まあ、そうなんだけど嫌な予感が消えないんだよ《後はゲンヤ・ナカジマにレジアス本人、そしてレジアスの娘のオーリスといった所か》」
「……分かったよ。そこまで言うなら勇紀を信じる。けど実際この人達どうするんだい?ここに置きっ放しという訳にもいかないよ《そんなに消されたらStsの原作メチャクチャになるね。スバルとティアナがコンビにならなかったり八神さんとゲンヤの繋がりが無くなったり》」
「俺の家に運ぼう。部屋に余裕はあるし《そういう事だ》」
俺が転移の魔法陣を展開すると亮太がゼスト、クイント、メガーヌの三人を魔法陣の中に運んでくれる。
全員が魔法陣の中に入ったのを確認して俺達は地球に転移した………。
転移を終えた俺達。転移先は俺の家の庭である。無人世界に転移する際もここを使ったし万が一ご近所の人に見られてはいけないため庭だけ認識阻害の結界を張っておいた。
早速浮遊魔法で三人を持ち上げ玄関を開けると見慣れた靴が四つ。シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの四人は帰っているようだ。
「おかえりなさいユウ……キ…」
玄関で俺を出迎えてくれたユーリが俺達を見て固まる。
正確には俺と亮太の後ろに未だ目を覚まさない三人を見て…だ。
「ユーリ、悪いけどこの人達を客間に運ぶから布団を用意してくれないか?」
声を掛けるがユーリは反応しない。
「ユーリ?ユーリさーん、聞こえてますかー?」
若干声を大きめにして呼び掛けるとユーリは『ハッ』として目覚めてくれる。
「ユ…ユウキ、何してるんですか!!」
「うおっ!?」
突然大声で怒鳴られるのでビックリしてしまった。
「ど、どうしたんだユーリ?」
何故か怒ってらっしゃる。俺、何もしてないよね?
「い、いくらユウキが年上好きだからって…ゆ、誘拐までするなんて」
ちょ!?誘拐って
「ちょっと待てーーー!!!」
何てこと言うのこの子!?
人を勝手に年上好きだと思い込んでなおかつ誘拐してきたとか勘違いにも程があるだろ!!
「ユーリよ、何を騒いでおるのだ?」
「誰か来客ですか?」
「何々、どったのー?」
玄関にシュテル、レヴィ、ディアーチェもやってきた。
「あ、三人共、アレを見て下さい!!ユウキが知らない大人の女の人を誘拐してきたんです!!!」
「だから違うって言ってんじゃん!!」
俺は必死にユーリの誤解を解こうとするがシュテル達は後ろに浮かせている三人をみるとその表情がどんどん険しいものに変貌していく。
「「「ユウキ(ユウ)少しO☆HA☆NA☆SHIしましょう(しよう)(するか)」」」
「俺の言い分も聞けーーーー!!!」
「亮太!お前からも俺の無実を言ってくれ!!」
後ろを振り返り親友に俺の無実を証明してくれる様に頼むが
「ゴメン勇紀。多分無理だと思う」
諦められた!?
「いやいやいや!!俺と一緒に行動してたんだから証明出来るだろ!?」
「それ以前に今のシュテルさん達には僕の言葉が届かなそうだからさ。……それと、後ろ…」
亮太が指差すので振り返ると
「「「「……………………」」」」
目を離していた僅かな時間にバリアジャケットを身に纏いデバイスを握るシュテル、レヴィ、ディアーチェと魔力を徐々に解放していくユーリ。
「ちょ!?待って!!ユーリの
君、非殺傷出来ないじゃん!!
「攻撃はしませんから安心して下さい」(ニコッ)
「攻撃するしない以前に、まず落ち着いて俺の話を聞いてくれませんかねえ!?」
「「「「聞く耳持ちません(持たないよ)(持たん)」」」」
こちらの言葉に耳を傾けてくれない四人に対し俺は逃走を図る。
だが玄関を開け庭に出た俺の目の前にはシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリが待ち構えていた。
「何で!?今、家の中にいたよね!!?」
俺の疑問には答えずユーリが無言で俺にバインドをかける。
確かに攻撃はしなかったけどバインドがグイグイ締め付けてきて痛いんですけど!?
そしてバインドに続きユーリが封鎖結界を展開させた後…
「疾れ明星!すべてを焼き消す炎と変われ!」
「行くぞォ!パワー極限~~ッ!!」
「紫天に吼えよ我が鼓動ッ、出よ巨重!」
物騒な詠唱が俺の耳に届く。
「お願いです!!俺の話を聞いて下さい!!」
しかし俺の最後のお願いも虚しく、
「真!ルシフェリオン!ブレイカーーッ!!」
俺はシュテルの収束砲撃に飲み込まれ
「雷刃封殺ッ!爆滅剣ッ!」
レヴィの雷撃をまともに喰らい
「ジャガァ~~~ノ~トォ~~ッ!」
ディアーチェの展開する魔法陣から放たれる黒い魔力砲撃の直撃を受ける。
「(頼むから…人の話を聞いてくれよ……)」
最早声に出す事も出来ず心の中で呟いて俺の意識はシャットアウトした………。
そして…
「えっと…僕とこの三人はどうすればいいのかな?」
亮太と意識を失っているゼスト、クイント、メガーヌの三人はポツンと取り残されていた………。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。