「亮太、お疲れ~」
訓練室の前に亮太を迎えに行くとちょうど亮太が訓練室から出てきたところだった。
「あれ勇紀?他の皆はどうしたんだい?」
今亮太を迎えに来てるのは俺、シグナムさん、クロノの三人。他の皆は未だに泣いている。
アイツ等大丈夫かな?トラウマにならなきゃいいんだが。
そして吉満、お前ある意味スゲエよ。まさかシュテルやディアーチェも泣かせるなんて。あの二人の泣き顔なんて初めてみたぞ。
「観戦室に残ってる。で、俺達は銀髪コンビを回収しにきた」
「ご苦労様。彼等ならまだ中で気絶してるよ」
俺達は訓練室の中に入る。
二人共訓練室の中で伸びていたのでとりあえず俺は西条、クロノは吉満を担ぎ医務室に運んだ。
「二人はベッドに寝かせておいてくれ。医療スタッフには僕から連絡しておこう」
「頼むわクロノ」
俺は一足先に医務室を出る。
そして外で待っているシグナムさんに声を掛ける。
「じゃあシグナムさん、次は俺達の番ですけど」
「ああ、待ちわびていたぞ」
これから模擬戦出来る事が嬉しいのであろう。
俺とシグナムさんは来た道を引き返し再び訓練室へと戻ってくる。
亮太は観戦室に行かず訓練室の端っこで俺とシグナムさんの模擬戦を見るらしい。
まあ流れ弾が飛んでいったとしても光人間である亮太には効かないだろうし。
「(そういえば原作キャラとの手合わせってこれが初めてだな)」
転生してから初めて戦ったのはすずかと出会った時。
次が西条との河原での一戦。
「(相手は歴戦の戦士だし…これは強敵だな)」
西条なんかと違って油断も慢心も無いだろうから気を引き締めてかからないと。
俺は自分自身にそう言い聞かせバリアジャケットを展開する。
シグナムさんは既に騎士甲冑を身に纏いレヴァンテインを手にこちらを向いている。
俺もクリュサオルを握る。
「準備はいいか?」
「こちらはいつでも」
お互いに頷き合うと構える。
そして互いに微動だにせぬまま数秒、数十秒と時間が過ぎ…
合図もしていないのに俺とシグナムさんは同時に駆け出し、互いに距離を詰め剣を交わし始めた………。
ガキインッ!…キインッ!キインッ!
訓練室に甲高い金属音が鳴り響く。
既に剣をぶつけ合ってから十数分。
お互いに身体を休める事無くひたすらに剣を振るう。
時に鍔迫り合いになるがそれも数秒程の事。俺がシグナムさんを、又はシグナムさんが俺を力で押し返す。
その際一旦距離が空くがすぐに追撃に移るためこの模擬戦が始まってからまだ中・遠距離戦は行っていない。
そして何度目かの鍔迫り合いの後、追撃をせず一旦距離を取ってお互いに一息入れて態勢を立て直す。
「ふっ、やはり私の思った通り…いや、それ以上の実力だな長谷川」
不意にシグナムさんが口を開く。
「力は私とほぼ互角。テスタロッサやアリシアには劣るものの速さも十分にある。それにここまで私と剣を打ち合っていながら息を乱してもいない。後は
何かスゲー絶賛されてるな俺。悪い気はしないけど。
「私は嬉しいぞ。これから何度もお前と手合わせ出来る機会があると思うとな」
「ちょ!?模擬戦するのって今日だけじゃないんスか!!?」
「誰も今日だけとは言ってないぞ」
…確かにアースラで会った時の会話を思い出すと今日だけとは言ってないな。
でも俺としては今日だけであってほしかった。
「それにしてもシグナムさん、アリシアの事は名前で呼んでるんですね?」
「ん?ああ、テスタロッサと呼ぶとどちらを呼んでいるか分からず紛らわしいからな」
ならアリシアだけでなくフェイトの事も名前で呼んであげればいいと思う俺は間違っていない筈。
「ていうか模擬戦の相手に亮太や銀髪コンビは含まれないんですか?」
「大槻…だったな?私としては手合わせを願いたいが攻撃がすり抜ける不可解な現象の謎を解かないと防戦一方になりそうなんでな。まずは攻略法を模索するさ。そして
…亮太が羨ましい。俺も
亮太にダメージを与えるなんて武装色の覇気使うぐらいしかないだろうし。
…いや、俺の
そして銀髪コンビに関しては予想通りの返答が返ってきた。
「しかし先程からお前は魔法を使わんな?使えない理由でもあるのか?」
「いえ、ただ純粋に接近戦だけで勝てるかどうか試してみたかっただけなので」
「ほう、それで?魔法を使わずに私に勝てるのか?」
「ぶっちゃけると無理です。だから…」
俺は周囲に14発のアルテミスを発現させ、
「ここからは遠慮無く魔法も使わせて貰います!!」
シグナムさん目掛けて魔力弾を放つ。
「それで良い。私も全力のお前と闘いたいからな!」
いつの間にかシグナムさんのレヴァンテインの形状が変化している。
あれはシュランゲフォルムか!そしてあの構え…
「飛竜…一閃!!」
魔力を乗せ不規則な軌道を描く連結刃が俺のアルテミスを全て撃墜しこちらに迫ってくる。
「イージス!」
俺を包む様に障壁が展開され
バチインッ!!
連結刃の先端がイージスに衝突する。
しばらくはイージスとレヴァンテインがぶつかり合っていたがシグナムさんが連結刃を引き戻す。
「(ここだ!)」
俺はイージスを解除し
「
シグナムさんの方へ短距離転移を行う。
俺とシグナムさんの距離間は約50メートル。今の俺が
「っ!?」
驚いた表情をするシグナムさん。
俺はシグナムさんの懐に潜り込み
「はあああああっっっっっ!!!!」
クリュサオルを水平に振りぬくが…
ガキイイイインッ!
その一撃はシグナムさんに
空いている片方の手に握られているのはレヴァンテインの鞘。
高らかに響いた音はクリュサオルとレヴァンテインの鞘がぶつかった音だった。
「…マジッスか」
完璧に不意を衝いた一撃だと思ったのだが見事に防がれた。
一瞬硬直していた俺をシグナムさんは見逃さず、レヴァンテインをシュベルトフォルムに戻すとカートリッジを1つロードし刀身を纏う魔力を炎熱に変換する。
「紫電…一閃!!」
放たれる斬撃。俺は回避も防御も出来ず…
バギイッ!!
「ぐふっ…」
直撃を受け後方へ吹き飛ばされてしまう。
10数メートルは吹き飛ばされた。強烈な一撃だ。完全に無防備な状態で攻撃を受けたので一瞬意識が持っていかれそうになった。
これが本物の騎士が放つ一撃か。
俺はそう思いながらもクリュサオルを杖代わりにし、身体を起こす。
「まさかあの一撃を受けて立ち上がるとはな。完全に決まったと思ったのだが…」
「ええ、モロにくらいましたよ。結構身体にダメージがきてますし」
直撃を受けた自分の腹部に触れ軽く撫でる。バリアジャケットは破けてお腹が少し見えていた。
「でも意識を失ってはいないし身体も動く。まだ戦える以上負けを認めるつもりは無いですから」
すぐさま弓を取り出し魔力を収束し始める。
こちらが遠距離攻撃の態勢に入ったのを確認したシグナムさんもレヴァンテインをボーゲンフォルムに変える。
そしてわずかな時間の後、俺とシグナムさんは同時に矢を放つ。
「貫け、アポロン!!」
「駆けよ、隼!!」
二つの矢が俺とシグナムさんの間でぶつかる。
バチバチバチッ!
互いが放った矢の威力は拮抗している…様に見えるが
「(徐々に押されてるな)」
少しずつだがこちらに近付いてきている。
このままだとファルケンがアポロンを突き破るのも時間の問題だ。
俺は弓を手放しファルケンを迎え撃つ準備をする。
そして俺の放ったアポロンを貫きこちらに迫りくる矢を
「ヘパイストス!」
砲撃魔法で迎撃する。
『ヘパイストス(Hephaistos)』
原作『そらのおとしもの』でイカロスが所持する武装の一つ。超々高熱体圧縮対艦砲とも言う。この世界では砲撃魔法に分類され、純粋な魔力砲撃ではなくシュテルのブラストファイヤー同様に炎熱属性の砲撃魔法になっている。
アポロンがある程度威力を相殺していたのでヘパイストスがファルケンを飲み込み、逆にシグナムさんに向かって一直線に伸びていく。
「何!?」
シグナムさんもこれは予想外だったらしく反応が遅れる。
そのままヘパイストスが
ドガアアアアンンンンッッッッ!!!
シグナムさんに直撃し爆煙を上げる。
俺はすかさずクリュサオルを右手に持ちシグナムさんの元へ向かう。
爆煙に包まれて視認は出来ないのでシグナムさんの魔力を探索して位置を特定する。
どうやらヘパイストスを受けた位置から動いていない様だ。
そのまま爆煙の中に突撃しシグナムさんがいるであろう場所に静かに剣を振り下ろす。
だが最後まで振り下ろさず寸止めで俺は止めたのだが…。
俺の首筋に何かがあるような感じがする。
爆煙が徐々に晴れて行くと俺がシグナムさんの眼前で剣を止めた姿とシュベルトフォルムに戻っていたシグナムさんのレヴァンテインが俺の首筋に添えられている姿があった。
どうやらこの勝負は引き分けみたいだな………。
「二人共お疲れ様」
亮太が近付いてくる。
「勇紀もシグナムさんも惜しかったね」
「勝ちにいったつもりなんだけどな」
結局勝てはしなかった。まあ負けた訳でもないが。
「私としては良い経験になった。今回は決着がつかなかったからまた次の機会に着けるとしよう」
やっぱりそうなるんですね。
「そ、その時はお手柔らかにお願いします」
上機嫌なシグナムさんに俺はそう返事する事しか出来なかった。
「あのシグナムと引き分けか…。やっぱり君程の人材は是非管理局に入って貰いたいのだが」
不意に訓練室の出入口の方から第三者の声が聞こえた。
クロノだった。
ここに居るって事はもう銀髪コンビの事は放っておいても大丈夫って事か。
「勇紀、毎回聞いて申し訳無いと思うが管理局に入る気はないか?」
「今は無いな」
「やはりそうか……って、え!?」
「どうした?」
「い、いや…いつもの君なら『絶対入らない』って即答で否定するのに今日の返答はいつもと違ったからね」
ああ、そう言えばそうだった。クロノに会うと必ず勧誘されてたんだよな。その度に俺は即効で断ってたけど。
「…まあ、こっちにも色々あってな」
この俺を転生させてくれた御方がとんでもないプレゼントをくれたからだ。
『原作に関わる』なんて言う俺にとって有り難くも何とも無いプレゼントをな。
俺の事情を知っている亮太には同情の視線を向けられている。
「とりあえず今すぐにって訳じゃないし入るとも限らない。あくまで『将来的に入る可能性がある』って認識だけしといてくれ」
「ああ、今はその返事だけで充分だよ。君を『管理局に入れろ』って言う人達が上層部にいるんだ」
「上層部の人が?」
「君はなのは達に並ぶほどの魔力を秘め、先程の模擬戦の結果の様にシグナムと引き分ける程の実力を持っている。が、それ以上に君のレアスキルを評価しているんだ」
「レアスキルねえ…」
「ああ、完全に攻撃を無効化するレアスキル、魔力を無効化するレアスキル、あらゆる情報を得る事が出来るレアスキル、時間を跳躍出来るレアスキル、そして先程の模擬戦で転移したアレも魔力反応が無かった事を考えるとレアスキルなんだろう?」
「まあな」
クロノが言ってるのは順に
「正直、管理局の中でもここまで強力なレアスキル、しかも複数持っている魔導師は誰もいない。しかも君のレアスキルはまだ他に存在していると言う。それらのレアスキルを駆使して闇の書…いや、夜天の書を創ったという実績も大きい。だから『これだけの存在を放っておくのはいかない』と言ってるんだ」
あー、やっぱり夜天の書を復活させたのは管理局の目に留まったか。
「そこで上層部の人達は君をどうにか管理局に入れられないかと色々思案しているらしい」
「思案って…。本人の意思を無視して無理矢理入れさせようとするなら俺は嫌だぞ。もし管理局に入ったら今の生活がガラリと変わるだろうし。そもそもこの世界の常識で考えると俺やなのは達みたいな子供を働かせるという時点でどうかと思うぞ」
いくら人手不足だからって子供を働かせるのは正直どうかと思う。なのは達は自分の意志で入局したんだろうけど普通に考えたら子供が働ける事自体が有り得ないわ。
「そこは大丈夫だ。『本人の意思を無視して無理矢理入局させ、管理局の印象を悪くさせるといけない』って母さ…リンディ艦長も上層部の人達を説得しているからね」
「ならいいけど…」
しかし俺が管理局に入ったらシュテル達はどうするんだろうか?何か自分達も入るとか言い出しそうだな。俺としてはアイツ等には普通に過ごしてもらいたいんだが。
「それと大槻君だったな?」
「あ、はい。大槻亮太です。亮太って呼んで下さい」
「そうか?なら僕の事もクロノと呼んでくれ。敬語もいらない」
「そうですか?じゃあ遠慮無く。これからよろしくクロノ」
亮太が右手を差し出しクロノもそれに応える。
あ、今は普通に触れるんだ。自分で能力のON・OFFの切り替えが出来るのか?
「君の力も圧倒的だったな。どうだろうか?君も管理局に入らないか?」
やっぱ亮太も勧誘の対象になったか。
まあ、あんな戦闘見ちゃったらなあ…。
「うーん…僕も勇紀と同じで今すぐ入る気は無いんだよね」
管理局への誘いを断る亮太。
「そうか。だが『今すぐ入る気は無い』という事は君も入ってくれる可能性があると思っていいのかい?」
「そうだね。そう思ってくれて構わないよ」
亮太が介入したいのはForceだしな。原作始まるまでまだまだ先の話だし。
「まあ、君も入ってくれる可能性があると分かっただけでも良しとするか」
俺と亮太の返答に満足してくれるクロノ。
それから俺、亮太、シグナムさん、クロノは訓練室を後にした………。
あれから既に泣き止んでいたシュテル達と合流し転送ポートから月村家の庭に戻ってきた俺達。
何というか非常に疲れた。
亮太の歓迎会をするつもりだったのに銀髪コンビに絡まれ、シグナムさんと模擬戦。しかも引き分けで終わったために決着は次回に持ち越し。
そして管理局の上層部が俺を引き入れようとしている事実。
まあ夜天の書の件に関しては誰にも口止めする様に頼んで無かったし自業自得みたいなモンだしな。
「ユウキ、これからどうします?」
俺が考えに耽っているとシュテルが俺に尋ねてきた。
「んー、とりあえず翠屋戻る?」
「僕は何かすごく疲れたから早く帰りたいよユウ」
「我もレヴィの意見に賛成だな」
「「私もです」」
長谷川家は帰宅を希望。
「じゃあ俺は翠屋でシュークリーム買ってから帰るわ。シュテル達も食べるだろ?」
俺が聞くとコクコクと凄い勢いで首を縦に振る四人。
「じゃあ僕も今日は帰ろうかな」
亮太も帰宅か。まあ今日は銀髪コンビを相手にしたからな。精神的に疲れが溜まってるのかも。
「他の皆は?」
「私は迎えが来るまですずかの家にいるわ」
「わたしはこのままシグナムと一緒に買い物行くわ」
「私と姉さんも翠屋に行くよ」
「アルフとリニスにはケーキ買って帰る約束だったからねー」
「私はお父さんとお母さんが経営してるお店だから。勇紀君、フェイトちゃん、アリシアちゃんに着いて行くの」
翠屋に向かうのは俺、なのは、フェイト、アリシアの四人。それ以外のメンバーとはここで別れる事になった………。
現在翠屋に向かっている俺達。
「大槻君、今日の模擬戦で大槻君が使っていた魔法は何なの?」
なのはが亮太の能力について質問する。
亮太は途中まで帰り道が一緒らしいので俺達と行動を共にしている。
「あれは魔法じゃなくて僕の能力。レアスキルと言った方がいいかな?」
「「「レアスキル?」」」
なのは、フェイト、アリシアの声が重なる。
「うん、僕の身体は原型を留めない自然物に変える事が出来てね。それに自然現象の様な攻撃も出来るんだよ。ちなみに僕の自然物は『光』なんだ」
「「「???」」」
まだ理解出来てないみたいだな。
「フェイト、例えばお前は自分の斬撃で光を斬ったり出来るか?」
「え?そんなの無理だよ。光なんて斬ろうと思っても斬れるものじゃないし」
「つまりはそういう事だ。亮太に攻撃を当てようとしても亮太が光そのものだから斬ろうにも斬れない。ぶっちゃけて言えば亮太には物理、魔法を問わず一切の攻撃が効かないって事だ」
「「「そうなの!?」」」
驚いた表情で三人は亮太に確認を取るが亮太は頷くだけ。
「じゃあ大槻君に攻撃を当てるのはどうすればいいのかな?」
「って聞いてるけど、どうなんだ亮太?」
「僕が知ってる事と言えば『覇気』を使うしかないんじゃないかな?」
「「「覇気?」」」
「うん。覇気っていうのは全世界の全ての人間に潜在する力の事で『気配』『気合』『威圧』などの感覚と同じなんだけど引き出すのは容易じゃないんだよ。大半の人間は気づかないまま、あるいは引き出そうにも引き出せず一生を終えるのが普通だからね」
「ふええ~。そんな力があるんだ」
「私も使えるのかな?」
「魔法とはまた違った感覚だろうからそう簡単にはいかんだろ」
「???勇紀は覇気の事知ってたの?」
アリシアが俺に質問してくる。
「俺には
これは嘘だけどな。ワンピースの原作知識があるから
「あ、そうだ亮太。ちょっといいか?」
「何かな?」
「少し試したい事があるから協力してもらっていいか?」
「別に構わないけど何をするつもりなんだい?」
「お前に攻撃が通じるかどうか」
俺の発言に亮太、なのは、フェイト、アリシアの四人が「えっ!?」と小さく声を上げる。
「…どういう事か説明してくれるかい?」
「俺のレアスキルに
と言っても相手はシュテルとディアーチェなんだが。
「で、僕の
「ああ、もし効果があるならお前に攻撃を当てる事が出来る筈だからな」
「分かった。じゃあ、やってみてくれるかい?」
「おう」
俺は
パチンッ
「あ痛っ!」
「「「当たった!?」」」
デコピンを受け手で額を抑える亮太と
やっぱり
「ううう…おでこがヒリヒリする」
「そんなに力強くしたつもりは無いんだがその、ゴメンな」
「いや、いいよ。それにしても本当に攻撃が当たるなんて…。覇気を使ってはいなかったのに」
「信じられないかもしらんが俺は実際に当てたぞ」
もっとも今の俺が展開できる範囲は半径10メートル程なので距離を取られてしまうと意味が無いのだが。
「あ、僕の家こっちの方だからここでお別れだね」
会話しながら歩いているといつの間にか亮太と別れる分岐点に着いていた。
「今日は面倒な事に巻き込んで悪かったな」
「気にしなくていいよ。僕としても自分の実力を知る良い機会だったから」
「そういってもらえると助かる。また明日な」
「うん、また明日学校で。高町さん達もまたね」
亮太の言葉になのは達も『またね』と応え、背を向けて翠屋と別の方向へ歩いていくその姿を俺達は見送った………。
「それじゃあ勇紀君、フェイトちゃん、アリシアちゃん、また来てね、なの」
翠屋でシュークリームを買い(フェイト達はケーキ)、なのはと別れて家路に着く。
そんな俺と肩を並べてフェイト、アリシアが歩いている。
「しかし勇紀はやっぱり強いね」
「そうだね。シグナムと引き分けるなんて凄いと思うよ」
ただ黙っているのもアレなんでフェイト、アリシアと会話してたらいつの間にか話題はシグナムさんと行った模擬戦の内容についてだった。
「でも勇紀、何で
「そうだよ。
「あのときは使わなかったんじゃなくて
「「何で?」」
二人が声を揃えて聞いてくる。
「俺の
俺が
「あ、ここでお別れだな。俺ん家こっちの方だから。またな、フェイト、アリシア」
「うん、じゃあね勇紀。フェイト行こ」
「ちょっと待って姉さん。…あのね勇紀、一つお願いがあるんだけど…」
「お願い?何だ?」
「えっと、今度私の模擬戦の相手になってくれないかな?」
…………What?
今この子は何と言いました?
MO☆GI☆SE☆Nって聞こえた様な気がしたが気のせいだよね?
俺はもう一度フェイトに復唱してもらおうと思い聞き返してみる。
「……すまんフェイト、少しボーっとして聞き逃した。悪いがもう一回言ってくれるか?」
「あっ、うん。えっとね、今度私と模擬戦してほしいって言ったんだ」
…………聞き間違えてはいなかった。
「…一応聞くが何で俺と?」
「模擬戦をしてた時のシグナム、すごく楽しそうだったし。何だかそれを見てたら私も、その…」
そういえばフェイトも
「駄目…かな?」
不安そうな表情で俺の返事を待つフェイト。
というかその上目使いと泣きそうな表情は止めてマジで。断る俺が悪いって感じになっちゃうから。
そんな俺の思いなど通じる訳も無くフェイトの表情が段々と曇っていく。
「……分かったよ、やります」
「ホント!?」
了承の意思を伝えると一転して表情が明るくなった。
「絶対だよ!!約束だからね!?」
「ああ…」
シグナムさんとの再戦に続いてフェイトとも模擬戦…。
二人の
「フェイトだけズルい!!勇紀、私も!!私とも模擬戦してね!!」
……訂正。
まさかアリシアもなんて…。
「模擬戦♪模擬戦♪勇紀と模擬戦~♪」
しかも俺はまだ頷いてもいないのに、勝手に喜んで歌い出すアリシア。
アイツの頭の中ではもう決定事項なのか。
「なあアリシア俺h「あ、早く帰ってリニスとアルフにケーキ渡さないと!!じゃあね勇紀、約束だからね~~!!!」………行っちまった」
言うだけ言って走っていくアリシア。
「……………………」
「ゴ、ゴメンね勇紀」
フェイトが代わりに謝ってくれる。
「…いや、良い。アイツの中ではもう俺と模擬戦する事が決まってるみたいだし」
軽く溜め息を吐く。
「ただ、俺にも都合とか予定があるから模擬戦の日程は俺が決める。アリシアにもそう伝えといてくれ」
「本当に姉さんもいいの?」
「ここでお前とだけ模擬戦したら絶対に文句垂れそうだから」
「あ、あはは…。否定出来ないかも」
フェイトは苦笑い。
「まあ、そういう事だから日程を決めたらメールで連絡するわ」
「うん。じゃあそろそろ行くね」
「気を付けて帰れよ」
フェイトは軽く手を振って応え、走って行ったアリシアを追いかけだした。
「…………さて、帰るか」
俺はシュテル達が先に帰っている自宅に向けて歩き始めた………。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。