第九十技 変わってしまう者
シリカSide
彼女はロザリアさん。あたしが『迷いの森』で単独行動をとる前に、一緒にパーティにいた人だ。
あたしはこの人の傲慢な考えが嫌になってパーティを離れて、そしてピナを失ってしまった。
「どうかしたの?」
「ううん…、なんでもない…」
ヴァル君が小さな声で気遣ってくれた。一応大丈夫だと伝えた。
「あら、あのトカゲどうしちゃったの? もしかして…」
ロザリアさんは笑みを浮かべながら何かを言おうとする。あたしはそれに腹立たしくなる。
勿論…バカな行動を取った自分にだ。
「ピナは死にました……。でも…絶対に生き返らせてみせます!」
でも、だからこそピナを生き返らせて、謝って、そしてもう一度一緒にいると決めたんだ。
「へぇ~。てことは『思い出の丘』に行く気なんだ。でもあんたのレベルじゃあ無理でしょ」
「そ、それは…」
「大丈夫ですよ。そんなに難易度は高くありませんから」
ヴァル君があたしとロザリアさんの間に入ってきた。その表情はかなり余裕そうだ。
「あんたもその子に誑し込まれたくち? そんなに強そうに見えないけど」
「自分は正式に彼女から依頼を受けて、護衛の任を受けていますから」
さっきまでとは全然違った様子で淡々と喋るヴァル君にあたしは少し驚いた。
「いこう、シリカ」
ヴァル君はあたしを連れだって宿屋の中に入りました。
「なんであんな意地悪言うのかな…」
「シリカは、MMOは『SAO』が初めてなの?」
あたしはそれに頷いて答えた。
「……どんなオンラインゲームでも性格が変わる人は多いよ。
自分で悪人になる人もいる。僕達のカーソルは緑色でしょ?」
彼に言われて見てみると、確かにヴァル君や他の人の頭上には緑色のカーソルがでている。
「これが犯罪を行うとオレンジになるんだ。中には殺人をする奴らもいる」
「っ!? 人殺しなんて……」
あたしはその言葉にショックを受けた。
実際にそう人達がいることは聞いた事があるけど、ちゃんと聞くと心が痛む。
「今までのゲームなら悪人を気取って楽しめたんだろうけど……このゲームは違う…。
これはデスゲーム……、遊びじゃない……」
「ヴァル君…」
そう言った彼の顔は深刻な表情をしていた。彼のそんな表情にあたしは心配になった。
「あ…ごめんね。こんな話しをして……」
あたしの顔を見て、ヴァル君は悲しそうな表情になってしまった。だからあたしは…、
「ヴァル君はいい人だよ! あたしを助けてくれて、今も助けてくれてるもん!」
あたしはテーブルを挟みながらヴァル君の手を握って言ってあげた。すると彼は、
「励ましてくれたんだね……。ありがとう、シリカ…」
あの時と同じ綺麗な笑顔でそう言った。あたしは途端に顔が熱くなっていくのがわかった。
同時にドキドキで胸が一杯になるのも感じる。あたしは手を離して誤魔化そうとした。
「えっと、あははは、チーズケーキ遅いね~。どうしちゃったのかな~?」
かなり厳しい。ヴァル君を見てみるとクスクスと笑っていた。うぅ、恥ずかしいよ~//////
「ふぅ~」
部屋に戻ったあたしは下着姿でベッドに倒れこんだ。
あの後チーズケーキを食べたけど、味は覚えていない。
それどころか何かを話したのにそれも覚えていない。なんとか思い出そうとすると…、
―――ありがとう、シリカ…。
「っ~~~~~/////////」
ヴァル君の綺麗な笑顔を思い出してしまって、それ以上思い出せないでいる。
だけどもう少しだけ、お話ししていたかったなぁとも思った。そうしていると、
―――コンコンッ
扉がノックされた。誰かな?と考えていたら…、
「シリカ。まだ起きてるかな? 47層の説明を忘れてたんだけど…」
「ヴァル君!?」
まさに今考えていた人が来たものだから少し慌ててしまう。
「明日にした方がいいかな~?」
「だ、大丈夫だよ! あたしも聞きたいとおもって…っ!?」
扉に手をかけようとしたところであたしは気付いた。自分の姿が下着姿だった事に。
シリカSide Out
To be continued……
後書きです。
最後の部分はアニメの場面を使いました。
いっそのこと、そのまま見られた方が面白いかと思ったんですけどねw
それでは、また・・・。
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第九十話です。
とうとう九十話に到達・・・長かったようで早かった気がします。
どうぞ・・・。