No.490200

真・恋姫†無双~赤龍伝~第108話「赤い龍」

さん

※内容を少し変更しました。
主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。

2012-09-30 01:27:18 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2828   閲覧ユーザー数:2474

真・恋姫†無双~赤龍伝~第108話「赤い龍」

 

 

蓮華「赤斗っ!」

 

船室で赤斗を見つけた蓮華は、すぐに赤斗の小さな体を抱きしめた。

 

赤斗「お姉ちゃん?」

 

蓮華の事を忘れてしまっている赤斗は、自分を抱きしめてくる蓮華をただ不思議そうに見つめていた。

 

蓮華「行くわよ赤斗」

 

暫くすると蓮華は赤斗の手を引いて船室を出た。

 

赤斗「え、どこ行くの?」

 

蓮華「船が沈むより先に逃げるのよ」

 

赤斗の夢の中に入ってから、すでに三回もフェリー沈没を経験した蓮華は、再び沈没するまでの時間を予想する事ができた。

 

長くても沈没するまで、あと10分もないだろう。それまでに赤斗を連れて蓮華はフェリーから脱出しなければならなかった。

 

蓮華(この船と一緒に沈没さえしなければ…)

 

赤斗「……」

 

 

亞莎「はぁ、はぁ…」

 

澱んだ気の中を亞莎は走る。

 

亞莎が発動させた奥義“浮葉”は相手の腕や足、身体の動き、呼吸や視線あらゆる“流れ”を見て、相手の攻撃を水面に浮く木の葉のように避ける奥義。

 

極めれば相手の気の流れを見ることもできる。

 

亞莎は僅か三ヶ月の間の修行だったが浮葉をほぼ極めていた。

 

その為、亞莎には赤斗の夢を包む澱んだ気を見る事ができた。

 

気の流れに沿って進むうちに、気がつけば亞莎のいる場所はフェリーの上ではなくなっていた。

 

亞莎「ここは?」

 

ただ白い道が亞莎の前に続いていた。

 

そして、亞莎が白い道を進んでいくと、その先にポツンと岩らしき物が見えてきた。

 

亞莎「あれは……」

 

亞莎は近づくにつれ、先にある物体が石像であることに気が付いた

 

亞莎「……赤斗…さま?」

 

亞莎が見たのは、赤斗に瓜二つの石像だった。

 

亞莎(もしかして、これが赤斗様を夢に捕らえている原因……?)

 

そう思いながら亞莎が石像に近づこうとした時だった。

 

上空から亞莎に向かって襲い掛かる影が現れた。

 

亞莎「!!」

 

亞莎は間一髪のところで襲撃者の攻撃を躱す。

 

そして、すぐ様に襲撃者を確認しようと亞莎は空を見上げた。

 

見上げた空には一匹の赤い龍が飛んでいた。

 

亞莎「赤い…龍………赤…斗さま」

 

すぐに赤い龍と赤斗の気が、まったく同じである事に亞莎は気がついた。

 

?「驚きましたね。まさか、夢の中にまで助けにくるとは、思ってもみませんでしたよ」

 

亞莎「誰ですか!?」

 

突然の背後からの声に反応して、亞莎は後に振り返る。

 

そこにいたのは、黒い色の大蛇だった。

 

 

亞莎「黒い…へび…?」

 

大蛇「どうやって夢の中に入ったかは知りませんが、それ以上は進まない方が良いですよ」

 

亞莎「この声…!!」

 

亞莎は驚く。蛇が喋る事は勿論。その声が、この現状を作り上げた犯人のものだったからだ。

 

亞莎「何故、あなたが此処に?」

 

警戒心を極限まで高めながら、亞莎は黒い大蛇に向かって構えた。

 

大蛇「私は単なる分身体です。本体の手によって、此処に送り込まれてきただけですよ」

 

亞莎「分身? …あなたが赤斗様をあんな目に逢わせた犯人ですね!」

 

亞莎は先ほど見た澱んだ気の正体が、この黒い大蛇である事に気がつく。

 

大蛇「まあ、そうですね。確かに風見赤斗の記憶を封じたのは私です」

 

亞莎「…記憶を封じた?」

 

大蛇「ええ、そこにある石像こそが風見赤斗の封印された記憶なのです。そして、あの空で飛び回っているのは、記憶を守る為に凶暴な龍に姿を変えた防衛本能。近づく者は何だって容赦はせずに攻撃してくるでしょう。例え貴女であってもね」

 

亞莎「じゃあ、あの子供の赤斗様は?」

 

大蛇「あの子供は風見赤斗の本能。恐怖や苦痛を味あわせるには、本能まで封じる訳にはいきませんからね」

 

大蛇はそう言いながら笑った。その笑みは邪悪そのものだった。

 

亞莎「………許さない」

 

亞莎は小さな声でつぶやいた。

 

大蛇「今、何か言いましたか?」

 

亞莎「絶対に許さない!」

 

そう叫ぶと亞莎は、大蛇に向かっていった。

 

 

―――だが、大蛇に対して亞莎の攻撃は全く効果がなかった。

 

何度も攻撃するも、逆にその大きな尾によって弾き反されてしまうのであった。

 

亞莎「はぁ、はぁ…強い」

 

大蛇「そろそろ諦めがつきましたか?」

 

亞莎「はぁ、はぁ…ま、まだです」

 

大蛇「そうですか。なら、風見赤斗と同じように、あなたも悪夢に落ちなさい」

 

亞莎「そうは行きません!」

 

大蛇「何っ!?」

 

亞莎は大蛇に向かっていくと見せかけて、石像へと向かって走り出した。

 

しかし、石像に近づこうとした瞬間、赤い龍が亞莎に襲い掛かった。

 

亞莎「きゃあああーーーっ!」

 

大蛇「愚かな。私ですら手を出せないその龍に挑むなど自殺行為ですね」

 

龍の爪と牙が亞莎の身体を傷つける。

 

だが、亞莎は全身を血まみれになっても進むのを止めない。

 

亞莎「ぐ、もう…少、し…」

 

激痛を耐えながらも、少しずつ石像へと近づく亞莎。

 

大蛇「何故です? 何故そんなに傷付いてまで、風見赤斗を救おうとするのです?」

 

亞莎「はぁ、はぁ…、がっ!……そ、そんなの愚、問です、ね。……赤斗様は、私にとって、いいえ。蓮華様や呉のみんなにとって掛け替えのない存在。とても大事な人だから」

 

亞莎は龍の攻撃を受けながら、大蛇の質問に答えた。

 

亞莎「だ、だから、絶対に赤斗様は助けます! はあぁぁっ!!」

 

亞莎は渾身の力を振り絞り石像を攻撃した。

 

大蛇「しまった!」

 

亞莎「やった――きゃあっ!」

 

攻撃を受けた石像は、無数のひび割れを起こし、ひびからは眩い光が溢れだす。

 

“パリーーーン”

 

大きな音とともに石像は砕かれた。

 

そして石像から解放された光は龍と同化した。

 

大蛇「おのれーー!!」

 

大蛇が亞莎を殺そうと襲い掛かる。だが、それよりも先に大蛇に龍の鋭い牙を差し込まれた。

 

大蛇「そんな、馬…鹿な……こんなはずでは…」

 

胴を噛み千切られた大蛇は、霧散するが如く、そのまま姿を消していった。

 

 

蓮華「はぁはぁ…まずいな。もう、そろそろ…」

 

フェリーのデッキに出た蓮華は焦っていた。

 

もうまもなくすれば、フェリーは沈没する。

 

だが、未だにフェリーから脱出する方法が見つからない。

 

隣りでは赤斗が不安そうに蓮華を見上げていた。

 

赤斗「お姉ちゃん…」

 

蓮華「大丈夫だ。必ず助けてみせるわ」

 

赤斗の不安を少しでも和らぐよう笑顔で蓮華は応える。

 

しかし、次の瞬間、大きな衝撃音とともに船体が大きく揺れた。

 

蓮華「きたか!」

 

また、この瞬間がやってきた。

 

船体は二つに割れて、海へと沈み始める。

 

蓮華「こっちよ!」

 

震える赤斗を抱きかかえて、蓮華は船首の方へと逃げる。

 

だが、いかに船首へと逃げようとも、沈没から逃れられるわけではない。

 

蓮華「ここまでか。……すまない赤斗」

 

赤斗「?」

 

蓮華「また、お前を助ける事ができなかった…本当にすまない」

 

赤斗を抱きしめながら謝る蓮華の言葉からは、悔しさがにじみ出ていた。

 

赤斗「お姉…ちゃ……」

 

蓮華「赤斗?」

 

いつのまにか赤斗の震えは止まっていた。

 

蓮華は赤斗の顔を見るが、赤斗の目に蓮華は映らず、ただ空を見上げていた。

 

蓮華「いったいどうしたの?」

 

赤斗に釣られて蓮華も空を見上げる。

 

蓮華「な、何だあれは!?」

 

蓮華が見たのは、空を駆け巡る赤い龍だった。

 

赤い龍は何かを捜すかのようにフェリーの上を飛び回っている。

 

そして蓮華が赤い龍と目が合ったと思った瞬間、赤い龍は蓮華と赤斗に目がけて飛んできた。

 

蓮華「なっ!?」

 

蓮華は逃げる事ができなかった。

 

そして、フェリーが沈むと同時に、赤い龍は蓮華と赤斗を飲み込んだ。

 

 

つづく


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
8
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択