No.485981

IS~音撃の織斑 四十の巻:鬼神、覚醒

i-pod男さん

ヒトツミは映画同様の結末を迎えます。アームド荊鬼、デビューです。
お待たせしました。

2012-09-19 06:06:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3889   閲覧ユーザー数:3752

十数秒間何も起こらなかった。

 

(頼む・・・あの感覚を・・・・朱天になった感覚を思い出せ・・・・!それを更に・・・昇華・・・・昇華させる!!!)

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!!」

 

そして、白い炎が荊鬼の体を包み、それを覆い隠す様に大量のディスクアニマル達が体中に纏わり付いた。最後に、アカネタカが胸に張り付き、額に甲の文字が焼き付く。

 

「はああああああ・・・・・はあ!!」

 

背中に音撃棒を背負い、装飾が朱天よりも派手になった三本角の鬼が炎の中から現れた。黒い体色に赤い隈取り、そして所々にあしらわれた金。これが装甲荊鬼だ。腰からディスクアニマルを取り出し、アカネタカとリョクオオザルをアームドセイバーに読み込ませた。

 

『ピィイイイイーーー!』

 

『ウホッ、ウホッ、ウホッ!』

 

アカネタカはハガネタカ、リョクオオザルはカブトオオザルに変わり、それぞれが魔化魍を一体ずついとも容易く撃破した。

 

「弾!今からデカいの一発やるから下がってろ。」

 

アームドセイバーから伸びる釵の様な部分を下ろし、スピーカーが露わになった。

 

「鬼神覚声!はあああああ・・・・・・・はあ!!」

 

『鬼』の文字が赤く輝きながら現れ、逆袈裟に切り上げた。波の様に押し寄せる大量の紅狐と白狐はバラバラに吹き飛びながら消え去った。

 

「す、すげえ・・・・・一発で使いこなすなんて・・・・」

 

「あれが・・・・アームドセイバーの、力・・・・!」

 

「お前とは・・・・・鍛え、方が・・・・違う、んだよ・・・・!」

 

一夏は崩れ落ち、変身が解けた。大の字に寝そべり、爆睡しているのだ。余程体力を消耗したのだろう。

 

「全く、コイツは・・・・」

 

 

 

 

 

 

「オノレ・・・・鬼共ガアアアアアーーーーー!!!!」

 

「音撃射、疾風一閃!」

 

「音撃射、旋風一閃!」

 

烈風と烈空から放たれる音撃は体内に撃ち込まれた鬼石に共鳴し、清めの音を流し込み始めた。そこから凍鬼が音撃金棒、烈凍を振り回して真っ向から打ち据え、杭の様に地面に減り込んだ。攻撃は更に続く。

 

「音撃拍、軽佻訃爆!」

 

「音撃殴、一撃怒濤!」

 

「音撃打、業火絢爛!」

 

歌舞鬼、煌鬼、そして凍鬼の音撃もヒトツミにクリーンヒット。だがやはりヒトツミはまだ倒れない。

 

「まだだ!西鬼、轟鬼、畳み掛けろ!」

 

「はい!」

 

「よっしゃ!行くで!」

 

轟鬼は音撃弦を深々とヒトツミの背中に突き刺し、西鬼は一頻り三節棍型の音撃武器、音撃三角、烈節を使って打撃を放っていたが、それをトライアングルに組み替え、音叉で叩き始めた。

 

「音撃斬、雷電激震!」

 

「音撃響、偉羅射威!」

 

「行け、響鬼!」

 

「終わらせますか!はああああ・・・・・」

 

響鬼の体が赤い炎を発し、二段変身の響鬼・紅に変わった。

 

「音撃打、爆裂強打の型!!」

 

空中に飛び上がって垂直落下しながら音撃棒、烈火を構え、両方の撥でヒトツミを強打する。

 

「ヌウウウウ・・・・・何故・・・・何故ダアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?オロチ様ーーー!!!」

 

ヒトツミは両手を上げながら絶叫し、爆散した。

 

「終わった、のか・・・・・?」

 

「オロチを倒さん限り、まだ終わらへんで。ま、何にせよ、仕事は終わりや。帰りましょか。」

 

「いや、まずは荊鬼達がどうしているか見た方が良い。」

 

「それなら大丈夫の筈です。石動鬼さんがアームドセイバーを渡していましたから。」

 

「イブキさーーーん!!」

 

蘭が手を振りながら走って来た。後ろからは一夏を担いだ弾がフラフラしながらもやって来る。

 

「紅狐と白狐は倒しました。けど、一夏がもう限界で・・・・」

 

「こっちも、ヒトツミを倒した後だ。」

 

「危機は去った、と言う所だね。でも、これではっきりした。オロチは、間違い無く復活する。」

 

 

一夏が目を覚ましたのは、更識家の客室だった。体中が鉛の様に重く、体も美味く動かせない。布団の脇には、音角、ディスクアニマル、そしてアームドセイバーが置かれている。右腕には白式も嵌っている。

 

「くそ・・・・起き上がれねえ・・・ぐ、うぎぎぎ・・・・」

 

体中に激痛が走るのも構わず、一夏はとりあえず上体を起こして胡座をかいた。持ち物も弄られた形跡は無い。服も着流しの様な物に変わっている。水差しに入った水を湯飲みに注ぎ、一気に飲み干した。ある程度体力が回復すると、立ち上がってフラフラと歩き始めた。やはり足取りが覚束ない。

 

(ここは・・・・楯無達の家だな・・・・あいつらどこに・・・・・)

 

「楯無・・・どこにいる?」

 

一夏はオープンチャネルで楯無を呼び出した。脚に限界が来たのか壁にもたれながらずるずると滑り落ちた所で楯無が走って来た。

 

「一夏・・・・!」

 

「とりあえず、どうにかなったぜ。」

 

楯無は一夏の隣に座り込み、一夏の頭を抱え込んだ。顔が思いっきり胸元に埋もれているが、一夏はそんな事ですら気が回らない程疲弊している。

 

「バカ・・・・無茶苦茶しちゃって・・・・」

 

「悪い・・・・今の所、一時的とは言え、危機は去った。それに、この事件でIS委員会も本格的に俺をマークし始めるだろう。鬼の存在がバレるのももう時間の問題だ。結局俺は、何も出来なかった・・・・猛士の皆を・・・守れなかった。」

 

「そんな事無い。私達の方で出来るだけ隠すわ。実家(ウチ)の力、甘く見ないで?」

 

「なら、良いんだが・・・・」

 

「兎に角、今は余計な事考えないで休みなさい。三日間ずっと眠ってたのよ?!」

 

「三日も・・・?やっぱりアレを使った所為か・・・・一発で成功したとは言え、反動が物凄いな・・・・・ヒビキさんはあれを使える様になるのにどれだけ鍛えたんだろう・・・?」

 

一夏は改めてアームドセイバーの秘めた力の強大さを思い知った。あの一撃で紅狐と白狐を全滅まで追い込む程のパワー・・・考えただけでも身震いする。

 

「簪や、ラウラ達は?」

 

「疲れて眠ってるわ。避難や救助が大変だったみたいよ。虚ちゃんも一夏のお陰で治ったみたいだし。本音ちゃん喜んでたわよ?」

 

「そうか・・・・なあ、いい加減離してくれないか?」

 

「ヤ〜ダ。」

 

一夏は溜め息をつくと、するりと楯無の腕から抜け、代わりに後ろから楯無しの腰回りに腕を回した。そして後ろから自分の方を向かせ、息をもつかせぬ様な濃厚なキスを交わした。仄かな苺の味が口の中に広がる。

 

「やられっぱなしは趣味じゃない。でも、無事で良かった。」

 

グギュルルウ〜

 

「あ・・・・」

 

「三日も眠ってたらお腹も空くよね。ご飯の準備はもうすぐだから、もう少し待って。」

 

「悪いな。まだ時間があるなら、あの二人の様子を見ておきたい。」

 

一夏は壁を支えに立ち上がり、楯無に二人が眠っている部屋に案内をさせた。二人は手をつないで静かに、しかし軽やかな寝息を立てている。二人の頭をゆっくりと撫でて、一夏は思わず顔が綻んだ。

 

「二人共、ただいま。」

 

そう言うやいなや、二人の腕が首の周りに巻き付いた。

 

「え・・・・・」

 

「お帰りなさい、一夏(兄様)!!」

 

「お前ら・・・・・何で!?」

 

「寝たふりする様に私が言って置いたの♪」

 

「そうか・・・・ありがとうな、二人共。」

 

一夏も二人の背中に腕を回した。二人のぬくもりと重みがしっかりと伝わって来た。

 

「ありがとう。」

 

「兄様、これを。」

 

ラウラは一夏の首に黒いペンダントを掛けた。

 

「兄様、休みには我が隊に会わせたいです。」

 

「ああ。」

 

「一夏、デート・・・・連れてって・・・・」

 

「ああ。心配かけてごめんな、お前ら。回復したらの話だが、お前らの願い、何でも聞いてやるよ。」

 

「(スンスン)一夏、お姉ちゃんとキスしたでしょ。」

 

「・・・・何でそう思う?」

 

「ミルク掛けの苺、食べてたから・・・・」

 

(お前には敵わないな・・・・)

 

「お前もして欲しいか?」

 

(コクン)

 

「じゃあ、失礼して・・・」

 

楯無の様に、息も付かせぬ物とは違い、手間暇かけて愛撫するかの様だ。離れた時には簪は酸欠したかの様に肩が上下していた。

 

「さてと、エネルギーも貰った事だし、飯食いに行こうか。」

 

「うん・・・・」

 

ラウラは顔を真っ赤にしていたが、そんな事は気にせず、四人は丁度料理が並べられた所で食堂に着いた。

 

「おお。」

 

純和風の献立が並んでいた。白米、味噌汁、ほうれん草のお浸しと言うシンプルな物から漬け物、鶏の唐揚げ、小鍋料理などなど・・・・

 

「すげー・・・・」

 

「随分と面倒な事になっているみたいね。」

 

「お、お母さん?!」

 

そう、いつの間にか四人の背後には先代楯無であり、更識姉妹の母親が立っていた。表情は少し曇っている。

 

「オロチが復活したとなると、私達も黙っているわけにはいかないわ。」

 

「オロチの事、知ってるんですか?」

 

「ええ。元々、私達の一族は代々鬼の宗家とは深い関係を持っているの。ウチから鬼の弟子に志願する人も、稀じゃなかったわ。鬼の素質は、その子達にも十二分に備わっている。」

 

「出来る事なら、彼女達は巻き込みたくない。いや、絶対に魔化魍とは戦わせない。いくら宗家との関わりがあろうが、関係ありません。大事な人を巻き込むつもりは無いです。関東支部の皆さんと師匠が・・・俺の仲間が、絶対に血狂魔党を壊滅させます。」

 

「随分な自信ね。アームドセイバーを使いこなせたのも偶然なんじゃない?」

 

「例えそうだとしても、俺には関係ありません。偶然だとしても、ヒビキさんみたいに使いこなせる様に俺が強くなれば良いだけです。」

 

「そう。なら問題無いわね。あの二人を貴方に任せても。」

 

「え?」

 

「試したのよ、貴方を。最初はやっぱり初対面だったからどうかと思ったけど、文句無しだわ。二人の事、よろしくね。」

 

「はい。」

 

「ああ、言い忘れる所だったわ。彼女達を不幸にしたら・・・・・ブチ殺すわよ?」

 

「(こ、こえ〜〜〜〜!!)肝に銘じておきます。」

 

「市さんによろしくね。」

 

そう言って彼女は去って行った。

 

「これは正式に認められた、と取って良いみたいだな・・・・・」

 


 
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