No.484500

IS~音撃の織斑 三十九の巻:魔の予兆

i-pod男さん

さあ、ここから劇場版の敵が登場します。

2012-09-16 02:34:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3983   閲覧ユーザー数:3857

市以外は全員学園に戻り、保健室に入った。そこでは既にまだ動ける教師、代表候補生達が出撃準備をしていた。

 

「良かった、連絡は行き着いたみたいだな。みんな無事か?」

 

「無傷、とまではいきませんが、大事には至りませんわ。」

 

「僕も、大丈夫。」

 

「当たり前でしょ。」

 

「よし・・・じゃあ、今から一般生徒をここから逃がす。ここは最早戦場だ。重体の奴もいるだろうし、こんな所には残して置けない。ISの武装が充実していて、まだ絶対に動ける奴は挙手。無理にでも残ろうとすれば死ぬから、正直に言え。」

 

何人かが手を挙げた。

 

「じゃあ、お前らは生徒の避難。教師達の指示に従え。敵に出くわしたら何も考えずに逃げろ。戦おうとするな。これ以上犠牲者は出したくない。まだ動ける奴は他にファントム・タスクがいるか探索。見つけ次第楯無か俺に連絡を入れろ。無茶して一人で相手取ろうとするな。あいつらはプロだ。それと、奴らのIS乗りを一人は撃破したが、そいつもここから避難させる。もしオールクリアなら速やかにこの島から去れ。」

 

「待て!ま、またあの化け物が出たら、どうするつもりだ?!」

 

「お前には関係無い。」

 

箒の質問を一蹴する。

 

「うし、解散。」

 

箒以外の全員はそれぞれ準備を始める為、部屋を出た。

 

「さて。何か言いたい事はあるか?」

 

「・・・・今までの無礼を謝りたい。本当にすまなかった!!」

 

箒は深々と頭を下げる。顔からは涙がポタポタと床に落ちて行く。

 

「あの化け物についてだが、問題は無い。俺の仲間がそいつらを駆除に来る。この手の奴らを相手取るエキスパートだ。はっきり言ってISが敵う様な相手じゃない。お前がいても邪魔なだけだ。避難の方に手を貸せ。戦う奴は必要最低限で良い。」

 

「私では、力不足なのか・・・・?」

 

「そうだ。そのISの性能に胡座をかいて、ろくに訓練なんかしていないだろう?ましてや、実戦の場で多対一に不向きなISだったら、却って邪魔になる。機動力を使って誘導でもすれば良い。話は、この戦いを終わらせてからだ。いいな?」

 

 

 

 

 

 

 

「どうした、スコール?そんな物か?」

 

市は音叉剣を握り締めたまま、スコールを冷めた表情で見ていた。ISは大破し、武装もほぼ破壊された。正に成す術無しの状態である。

 

「く・・・」

 

市は自分の周りの炎を納め、音叉剣の一つを投げて寄越した。

 

「来いよ。あの時と同じだ。俺が死ねばお前の勝ち。お前が死ねば俺の勝ち。この世は一天地六、どう転ぶかは誰も分からない。来い、スコール。俺を打ち倒したいんだろ?」

 

「ああああああああああああああ!!!!!」

 

スコールは音叉剣を引き抜いて切り掛かる。だが、市はそれを左足を軸に殆どその場から一歩も動かずに回避していた。

 

「戦鬼流:柳流動(りゅうりゅうどう)。どうした、そんなに刃先が震えていては当たる物も当たらないぞ。」

 

「ダーーマーーーレェーーーーー!!」

 

喉が潰れる様な絶叫を上げながら攻撃を続けるスコールは恐ろしい顔付きをしていた。開かれた瞳孔、血走った目、激しい息遣い、口角の泡。まさしく夜叉と呼ぶに相応しい。

 

「俺はまだ得物(ぶき)を使っていないぞ?戦鬼流:指突閃穿(しとつせんせん)。」

 

後ろに回り込み、背中を何度も指で突き刺した。それは技の名前通り、彼女の背中を穿ち、赤い染みが背中に現れる。

 

「あ・・・・!」

 

「終わりだ。鬼突無間(きとつむけん)。」

 

絶え間なく降り注ぐ刺突の嵐にスコールは虫の息となった。

 

「う・・・・ぁく・・・・ふ・・・・」

 

「俺のけじめだ。すまない、梅雨鬼(つゆき)。せめて向こうで、楽になってくれ。」

 

音叉剣をしまい、歩き去ろうとした。が、ゾクリと悪寒が体中を駆け巡り、振り向いた。そこには、倒れていた筈のスコールの亡骸がそっくりそのまま消えていたのだ。

 

「まさか・・・」

 

「ソノ通リダ、鬼ヨ。」

 

振り向いた先には、等身大の魔化魍が立っていた。右手には大きな槍を携えている。それも、スコールの声と、もう一人の男の声を重ね合わせた不気味な声だった。

 

「ヒトツミ・・・・!!」

 

「オロチ様ガ目覚メル時ハ近イ。ソノ為ニ、オ前ノ骸ヲ持チ帰ラセテモラウ。」

 

「生憎だが、お前に利用されたくはないんでね。戦鬼流:不通狼煙(とおらずののろし)。」

 

両手を合わせると、そこから紫色の煙が市を包み、姿を完全に覆い隠した。煙が消えると彼の姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 

その頃、イブキ、弾、そして蘭の三人は一夏達と合流していた。どちらも疲弊しており、傷だらけである。

 

「一夏、とりあえずこの島に結界を張っておいた。魔化魍は出られない。」

 

「そうか・・・・・こっちも避難誘導を始めた所だ。俺達だけになるのは時間の問題だ。」

 

「イスルギさんは?!」

 

「師匠は、ファントム・タスクと・・・・まだ連絡はついていない。けど、あの人ならそう簡単には死なない。俺には分かる。蘭、お前達以外に誰か来ているか?」

 

「はい。例の七人が・・・・」

 

「て事は・・・・」

 

「ああ。オロチは、復活しつつある。」

 

「「「「師匠(イスルギさん)?!」」」」

 

「悪いな、遅くなって。ちょっと嫌な奴に出くわしてな。ヒトツミだ。」

 

「ヒトツミって・・・えええええええ?!」

 

一番驚いていたのは蘭だった。

 

「ああ。今の俺のコンディションじゃ、絶対倒せない。例の七人が来るなら、倒せる。お前にも、アームドセイバーを渡しておいたからな。」

 

「でも、何で?!何で俺に?!」

 

「その内分かるさ。ファントム・タスクのあの女は、食われちまった。俺は一旦猛士に戻る。状況報告の為にな。流石に、久し振りに焰の衣使ったから疲れちまった。エネルギー充填しなきゃならない。じゃあな。」

 

市はディスクアニマルを巨大化させて飛び去った。

 

「簪、どうだ?」

 

『大丈夫。取り残された人もいないし、ファントム・タスクもIS乗りが倒されたって分かって逃げた。』

 

「そうか。なら良いんだが・・・お前達も早いとこ島から逃げろ。ここにいる間は、命の保証は出来ない。」

 

『兄様!私も・・・・私も残りま』

 

「駄目だ。お前は、楯無達と一緒に更識家に迎え。今のお前にここは危険過ぎる。言って悪いが、幾ら現役の軍人とは言え、オロチではスケールが違う。ISバトルとは勝手が違うんだぞ?」

 

一夏はにべもなくラウラの願いを斬り捨てる。

 

「頼む、分かってくれ。今こんなつまらない事でお前と言い争っている暇は無いんだ。」

 

『・・・・でしたら・・・約束して下さい!絶対に生きて戻ると!!生きて戻って来たら、ドイツに旅行に行きましょう!』

 

「・・・・・(ったく、こいつは・・・)ああ。良いぜ。ドイツだろうがアフリカだろうが好きにしろ。どこへだろうと付き合ってやる。簪、楯無にも言っておいてくれ。俺は島に残って、絶対に生きて戻るってな。」

 

『分かった・・・・一夏・・・・死なないでよ・・・?』

 

「そう簡単にくたばる訳にも行かないだろう?彼女が二人、妹分が一人。責任重大だ。簡単に死んでたまるかよ。」

 

通信を切り、空から次々と鬼達が降り立った。威武鬼、轟鬼、羽撃鬼、西鬼、煌鬼、凍鬼、そして響鬼を筆頭に、関東支部の鬼達が全員集結した。

 

「よっしゃ、行くぞ。一夏と弾は他の魔化魍を殲滅、蘭はサポート。こっちはヒトツミに集中する。」

 

「「「了解!」」」

 

「さっさと倒してやるでぇ〜!」

 

「西鬼、その余裕が隙を生むぞ。幾ら我らの先祖が倒したからとは言え、油断は出来ん。」

 

「鬼共ガ・・・・ココデ貴様ラヲ地獄ニ送ッテヤル!!」

 

憎々しげに叫ぶと、ヒトツミが襲いかかって来た。

 

「全員散開!」

 

響鬼の号令で全員が方々に分かれ、攻撃を始めた。だが、攻撃の殆どは防御、回避されてしまう。槍の一薙ぎで吹き飛ばされた。

 

「強い・・・・戦ったのは初めてだけど・・・・コイツ、強い・・・・」

 

「イブキさん、大丈夫っすか・・・?!」

 

トドロキは烈雷を杖の様にして体を支え、立ち上がった。

 

「菅の鬼は遠距離から、弦の鬼は近距離、太鼓使いは状況に合わせて遊撃。兎に角鬼石を奴の体内に叩き込む!」

 

轟鬼、響鬼、西鬼の四人はインファイト、羽撃鬼、伊吹、はそれぞれ音撃武器を使ってヒトツミの動きを牽制する為の遠距離攻撃、そして歌舞鬼と凍鬼はそれぞれ烈火弾と烈氷砲で隙を作ろうとする。

 

 

 

 

 

「ッたく、何なんだ、コイツら?!後から後からウジャウジャと!!」

 

「コイツらは血狂魔党の尖兵だ!当然ウジャウジャしてる!!」

 

一夏は片や断空、片や烈火剣を使って紅狐と白狐薙ぎ払っていた。弾も撥を使って蘭を守りつつ戦っていた。だが次々と現れる魔化魍の大群に三人は疲弊し始めた。特に一夏は、スコールの攻撃をまともに食らったので尚更である。

 

「仕方無い。一か八かだ!」

 

一夏は腰のアームドセイバーを引き抜き、手前のスピーカーのカバーを外して柄にあるスイッチを軽く叩いた。

 

「(頼む・・・失敗しないでくれよ・・・・)荊鬼、装甲!」


 
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