No.482146

魔法少女とま☆ラビ(第九話)

月野美夕さん

オリジナルの魔法少女として描いてきたものの文章化・第九話です。第八話を投稿してから、めっちゃ久しぶりに続きを投稿しました(^^;)
書き溜めていた内容がここまでしかないので、この続きを書くのはいつのことやら・・・っていうか、書くのかどうか???な感じの現状です~~。

2012-09-10 04:28:13 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:511   閲覧ユーザー数:470

<魔法少女とま☆ラビ>

 

第九話

 

大・中・小、三体のキャぐるみットによる肩車の連携体である【大キャぐるみット】。そのうちの一体、一番下で肩車を支えている

ロボキャぐるみットの死角を利用し、’とま’と虎次郎は持ち前のスピードを最大限に生かして、それぞれロボキャぐるみットの右足、左足へと

お互いが逆方向へ同時に回り込み、標的を絞らせないようにしながら動く。

時折、二段目のキャぐるみットの持つ槍が’とま’を狙うが、虎次郎がそうはさせまいと横からロボキャぐるみットに体当たりし、バランスを

崩させようと試みながら気を引き付ける。

 

最上部の小キャぐるみットは、’とま’と虎次郎の狙いどおり、標的を絞れずに左右に首をキョロキョロと動かし、振り回された様子でいた。

 

一方、引き戻されていた夕子は、はぁはぁと息を切らしながらも頭の中で虎次郎の言葉を自分に言い聞かせるように復唱し、思いを巡らせていた。

 

『夕子がそんなんでどうするんだ!・・・全滅しちまうぞ!』

『龍魔を・・・・夕霧を・・・・。』

 

(そうだ・・・あたしは・・・夕霧のために・・・・。)

(あいつを・・・・龍魔をこの手で倒して・・・・。)

 

先ほどの虎次郎に言われた、自らの目的ともいえる言葉を何度もかみしめるように復唱しながら、息をゆっくりと整えていく夕子。

そんな中、叫ぶような声が夕子に届いた。

 

「夕子ちゃん!よく見て!」

夕子がその声に呼ばれるように顔を向けると、そこにはその目を杖に向け集中しながらも、なんとか声を出し叫んでいるラビがいた。

 

「’とま’ちゃんが・・・虎次郎が危ないんだよ!? 夕子ちゃんとわたしが早くなんとかしないと!」

「だって・・・わたしも夕子ちゃんも・・・・魔法っていう力を使える、同じ存在なんでしょう!?」

 

先ほどの虎次郎の言葉が頭の中を駆けめぐり、それまでの怒りに身を任せていた自分と冷静な自分とが混在する心境の中、

呆然としていた夕子に、ラビのその声がさらに響き渡ることで、徐々に我に返るように、夕子はキッと真剣な顔つきになった。

 

(魔法少女・・・・そうですわ・・・。)

(あたしはこの魔法の力で不思議ニンジンを集め、あいつを探し出し・・・倒す。)

 

「・・・倒し・・・夕霧を・・・・救うために!」

 

肩を上下に動かし、何度か深呼吸をした夕子が、今一度すっと目を閉じ本来の目的を思い出すように集中し、

頭で考えていた言葉の最後の部分を無意識に声に出しながら、勢いよく立ちあがった。

 

その頃、杖の言葉を聞いていたラビは、やがて杖に向けていた集中を解き、何かを成し遂げた時のような顔をしていた。

 

「聞こえた・・・!ライトニング・バードの時とは違う言葉! あれはきっと新しい魔法だよ!

散りばめられた光・・・きっとこの場を何とかしてくれる!!」

 

それとほぼ同時に、ラビは体をまっすぐにし、杖を中段に構えながら目を見開いて魔法の言葉を唱え始めた。

 

「・・・広大なる大地よ、流れくる星々の輝きを受け入れいくつもの矢を創り解き放て。」

「ガイアの流星群、降り注ぐ太陽の恵みまでも吸い込み目の前の闇を照らせ。」

 

そんな中、夕子は結論づけるようにラビに言った。

 

「あいつにはあたしの氷結斬・ソードリッパーは使えませんわね。周囲に大きな影響を出す魔法じゃ、

そんなことをすれば、不思議ニンジンごとダメにしちゃいますわ・・・。」

 

一瞬考えた後、迷いをなくした顔で夕子は、

「もっと小さな・・・力を集約させた技の方が適役ですわね。」

「ラビ!あなたが援護しなさいな!!とどめはあたしがやるから!」

 

と言いながら、剣を腰の鞘におさめ、だがその手は柄をしっかりと持ったまま、今にも抜刀しそうな構えを取りながら

魔法発動の詠唱を始めた。

 

「・・・凍てつく氷次元の覇者より受け継がれし、結晶氷の輝きよ。

すべてを切り裂く力となりて我が剣先に集え。」

 

二人の魔法の詠唱が終わり、先にラビが言い放った。

「大いなる光の矢・・・ライトレイン・アロー!」

 

ラビの打ち放った魔法・ライトレイン・アローは文字通り光の矢となり、そのいくつもの光の矢は多重方向から大キャぐるみットめがけて

向かっていった。

そして、大キャぐるみットがそれを打ち払おうと盾を構えたその時、ラビが人差し指を伸ばし指示するような仕草をとると、

光の矢はまるでその指示に忠実に従うかのような動きで二手に分かれ、一方の光の矢は盾に対して避けて回り込むように

大キャぐるみットの盾の側面をめざし、そしてもう一方は最上段にいたキャぐるみットを狙って飛んでいくのだった。

 

一つでは、初めて使った魔法『ライトニング・バード』には威力は及ばないが、複数でしかも放たれた後でもかなり正確にコントロール可能な

自由自在な動きをする光の矢は、たて続けに同じ場所に連弾命中することで、その威力を重ねたように増やしていく。

 

それらは、やがて最上段のキャぐるみットにも大きなダメージを与え、重ねた威力の成果により中段のキャぐるみットの持つ

魔法軽減の盾をも弾き飛ばしたのだった。

 

そして、ラビの魔法攻撃により、大キャぐるみットの無防備になったその瞬間を夕子は見逃さなかった。

 

「一点集中・・・・・氷輝結貫・ダイヤモンドブレード!」

 

 

剣はブーーンという鈍い音を出し、刀身が小さくキラキラと輝いた状態となり、夕子は瞬時に間合いを詰めながら大キャぐるみットの下段にいる

ロボキャぐるみットへ刃先を向けると、先ほどまでのキン、キンと剣が弾かれるような音で戦っていた時とは違い、何の抵抗音もなく、

まさに音もなく、すうっと剣が入り込むように斬れていったのである。

 

剣の切れ味は小さいながらも恐ろしいほど鋭く、夕子が剣を振りかざし流れるような動きで敵のみを斬り、その横を素早く通り過ぎていった後、

斬った音が後からついてくるようにスパッ!といいはじめたかのようだった。

 

その一連の流れは、それは攻撃というよりも美しい舞いのような動きと鋭い切り裂く剣の氷のような美しさを感じるものだった。

 

 

ラビと夕子の連携で、上段・中段のキャぐるみットはラビの魔法でダメージを負い、そして夕子の魔法剣によって

下段のロボキャぐるみットがやられ、肩車状態を維持出来なくなった大キャぐるみットは、その場でズズーーンと倒れた。

 

「あっ!」

 

そう叫んだのは、それに真っ先に気付いた’とま’である。

続けて同じく叫んだ虎次郎もいた。この二人の叫んだ理由は、大キャぐるみットが持っていた「不思議ニンジン」である。

’とま’と虎次郎は、大キャぐるみットが手放したのを確認して、我先にと慌ててジャンプしていたのだが、

先に気付いた’とま’に分があった。

 

宙に舞う不思議ニンジンを手に入れようと、ジャンプした’とま’と虎次郎。

しかし、’とま’が真っ先に気付いてワンテンポ早く行動を取ることが出来たことが、二人のジャンプの勝敗を分けた。

 

「やったわ!不思議ニンジン!ラビちゃん、取ったわよーっ!」

 

うれしそうに大声で叫びながら、’とま’はラビの元へ向かい、その一方で不思議ニンジンを取りそこなった虎次郎は

ガックリと肩を落としていた。

 

「ああ・・・・不思議ニンジンがああああああ・・・・。」

 

それを見た夕子は、虎次郎に叱りつけながら、’とま’とラビに怒鳴った。

 

「虎次郎!何してるんですの! まったく、役に立たないんだから!」

「こらーーっ!とまラビ!!その不思議ニンジンをよこしなさいっ!!」

 

 

そう言いながら、夕子は出会った際にラビに放った「かまいたち」を再び放ったが、ラビは一度見た経験から冷や汗をかきながらも

一度目の時よりも比較的狙って避けることが出来ていた。

 

「やーーだよーー!」

と、’とま’が言うと、それに続いてラビも、夕子のかまいたちを避けながら言い放った。

 

「いいじゃん、一本くらい! 夕子ちゃんはもう既に一本持ってるんだし、今度はわたしの番だっていいでしょーっ!?」

 

悔しそうな顔をしながら、何度もかまいたちを放つ夕子に、虎次郎は諭すように言った。

 

「・・・ダメだ。あきらめよう、夕子。あの様子じゃあいつら、絶対に不思議ニンジンを渡さないぞ。」

「でも・・・!!」

「仕方ないだろ? 来たるべき時まで預けておく気持ちでいればいいさ。それにラビだって、不思議ニンジンを使って新たな力を

発揮してくれれば、互いのサポートにも幅が広がるし、悪いことばっかりじゃないぞ。」

 

「そんなこといって、あの二人が返してくれなかったらどうするつもりですの・・・?」

「その時はその時だ。例えば事情を話しても応じない場合は、力づくでも取る。」

 

虎次郎の説得に仕方ないという気持ちに共感してきた夕子は、ため息をつきながら

「・・・・・本当、仕方ないとしか言いようがありませんわね。」

 

と、肩を落とし、ラビにかまいたちを放つのをやめた。

 

その時、夕子の背後から小さな女の子の声が聞こえてきた。

「あの・・・・。」

 

夕子と虎次郎が振り向くと、そこには先ほど倒した大キャぐるみットの一つ、ロボキャぐるみットの中に入って操縦していた女の子がいた。

 

「あの・・・助けてくれてありがとう・・・。」

 

夕子と虎次郎が互いに顔を合わせながら、状況がわからない表情をしていると、女の子は震えるような声で言った。

 

「えっと・・・あたしは、キャぐるみットたちにさらわれてたんです。で、催眠術か何かをかけられたみたいで・・・。」

 

「で、あのロボキャぐるみットに乗せられて、動かすように命令されてた、と。」

虎次郎が言葉をつなぐように言うと、それに頷きながら女の子は続けた。

 

「はい・・・。頭の中では状況がわかってたんですが、体が・・どうしても言うことを聞かなくって・・・・。

でも、あのロボが壊れたおかげかな・・・体の自由がきくようになって・・・あの、本当にありがとうございました。」

 

「いいって。たまたまだったし、何はともあれ助かってよかったな。」

「自分の家の方向はわかるか?」

 

「はい・・・! 急いで帰ってお母さんに会いにいきます!本当に本当にありがとうございます!」

「それじゃ・・・・!」

 

言い終わると、何度も何度も頭を下げながら、女の子は走り去るように急いで道を進んでいった。

 

「気を付けて帰れよーー!」

 

虎次郎が声をかけると、女の子は遠くで一度振り向き、こちらに手を振ったあと、再び走って行った。

 

「ま、たまたまですけど、人助け出来ましたわね。」

夕子は少し安心したような顔で女の子を見送っていた。

 

「もうキャぐるみットにさらわれないように、気を付けてねーー!」

いつの間に、というタイミングで、’とま’とラビも夕子と虎次郎のすぐ近くにきて、女の子に手を振りながら声をかけていた。

 

「まあ!いつの間に!」

「ちゃっかりしてるな、こいつら。」

 

夕子が文句を言いながらもクスッと笑うと、虎次郎も一緒になってハハハと笑い、それにつられて

’とま’とラビもエヘヘと頭を手でかくような仕草で笑っていた。

 

 

 

 

 

 


 
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