No.367160

魔法少女とま☆ラビ(第一話)

月野美夕さん

もともとはイラストで流れをもったシリーズだったんですが、試しにと思い文章化してみたものです。まともに小説らしいものを書いたことがほとんどないので、あちこちにアラがあるかもしれません(^^;)

2012-01-22 23:59:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:607   閲覧ユーザー数:535

<魔法少女とま☆ラビ>

 

第一話

 

 

「このままでは終わらせんぞ・・・・!

必ず・・・・・・。」

 

異世界で、闇の中に消えゆくそれを見届けた・・・その時から数百年。

その世界の住人たちには、暖かく平和な時代が訪れた。

・・・とだけ、こちらの人間界では言い伝えられていたが、

時の流れにより、ほとんどの人間はもはや記憶に残していなかった。

 

 

夏。 人間の住むこの町で、今日も暑い日が続いている。

夏休みのこの季節、家に向かう一人の女の子がいた。

 

「このままだと、こっちも同じことに・・・。」

小さな声が、どこかから呟いた。

 

「んっ?」

女の子はその小さな声に反応し、辺りを見回す。

一見、どこにもいないため、気のせいかと思いながらも

今一度、今度は視点を変えて見回してみた。

 

そして、一つの小さな姿に目を見張る。

「なにあれ? 小人? 人間みたいな、ウサギみたいな・・・?」

その不思議な姿をした存在は、なにか戸惑っている様子だったが、

やがて自分の姿をじっと見られていることに気が付き、女の子に話しかける。

 

「あなた、誰? あたしの姿を見ても、あんまり驚かないね?

人間って、こういうことにはもっと反応が大きいのかと思ってた。」

 

普通に、いえ、どちらかというと少し年上ぶったような口ぶりのその存在に、

女の子は言い返し始めた。

「あ、あなたこそ何なの? こんな動物見たことないし、おまけにしゃべってる!?

もしかして、う、宇宙人?誰かをさらいに来たの!?」

「わかったわよ、大きい反応すればいいんでしょ?いやーーーーーっ! だ、誰か助け・・・・ムグッ・・。」

 

小さな存在はビックリして、慌てて女の子の口をふさぎながら耳元で話した。

「しーーーーっ! 余計なことしないで!! あたしはただ、こっちの世界の状況を見に来ただけなの。

用が済んだら帰るから、それまでは騒がないでほっといて。」

 

ジタバタと、逃れようともがいていたが、少しして冷静に戻りつつあったその子は、

そっとふさがれた口もとに手をやり、落ち着いて話し始める。

「・・・わ、わかったから、もうやめて。で、結局あなたは何者なの?今何しているの?

用って何?」

 

その連続した質問に少しあきれた顔つきで、

「・・・ずいぶんいっぺんに聞いてくるのね。」

「まぁ、いいわ。 教えてあげる。」

二人はそこから少し離れた場所へ移動し、そこにある人気のない道の端に腰を下ろし、手短に会話をした。

「まず、あたしは見た通り人間じゃない。でも別にさらいに来たワケじゃないよ。」

「あなた達の言い方だと、異世界っていうのかな?それとも妖精界?ま、要するに人間界とはちょっと違う世界。

あたしはそこの住人よ。」

 

小さな存在は、そこからやや険しい顔つきになって、さらに話を続けた。

 

「もうだいぶ過去のことだから、もうきっと知っている人もいないのね・・・。無理もないわ。

あたしの世界でも古い文献があるだけで、ある程度のことまでしかわからないもの。」

 

「だから、わかっていることだけだけど、教えてあげる。 あたしの世界では今、ほとんどの住人に

感情がないの。そして、それを元に戻すためには、文献によるとその昔にあたしの世界で各地に飛び散ったっていう

七つの感情を司る『不思議ニンジン』を探す必要があるらしいってこと。でも、見ての通りあたし一人じゃ難しいから・・・。

だから、あたしは旅の同行者を求めているの。わかった?わかったら邪魔しないで。」

 

その内容に少しの間ポカーンとしていた女の子だったが、やがてハッ!と我に返り、興味心をくすぐられたのか、

瞳をうるわせて食い入るようにその話にのってきた。

 

「はいはいはい!!わたし! わたしがそれやる!! ぜったい!」

その発言に疑問に思った小さな子は、女の子の言い方に対して

 

「あなた、状況理解してる、本当に? 遊びに行くのとは違うのよ?」

「本気の本気で言ってる?」

と、当然の反応を見せた。

 

確認の言葉を出されても、まったく態度を変えずにいた女の子は、どうみても行く気満々のようだった。

そのゴリ押しにも近い態度に、小さな子は軽くため息をつきながらも首を縦に振らざるを得ない雰囲気に負けてしまった。

 

「わかった・・・。じゃあ、一緒に行きましょう。」

と、早速移動の準備をしようとしていた時、女の子は突然大きな声を出した。

 

「あっ! ちょっと待って!」

「どうしたの?それともやっぱり行くのが怖くなった?」

 

「そうじゃなくって・・・。」

と、そそくさと走り出しながら、

 

「お母さんに言ってから!じゃないと心配するもんね♪」

 

「・・・(言ったら、余計心配されるような気もするんだけど。)」

と思ったが、小さな子はもう言ったところで今さらな気持ちになったので、のど元まで出かかっていたそのセリフを止めた。

 

家に着くなり、玄関先で大きな声をかけた。

「おかあさーーん! ちょっと出かけてくるねーーっ!」

 

家の奥から母親の声も聞こえてくる。

 

「はいよー。 どこに行くの?」

 

「不思議ニンジン探しに! じゃあ、行ってきまーす!!」

 

はぁ?という感じの顔で母親が顔を出して

「えっ? なに? ニンジン??」

 

そう聞き返してはいたが、女の子は既に家を後にしていた。

 

 

女の子の家から少し離れた場所にある小さな森。

小さな子と女の子。

このヘンテコな組み合わせの二人はそこにいた。

 

誰も周りにいないことを確認しながら、小さな子は頭のフードの隙間から小さな棒のような物を取り出して、

女の子に渡すと、それは女の子のサイズに合わせるかのように大きくなり、徐々に輝き始める。

 

「それを両手に持ちながら、下に向かってこう言って。」

 

小さな子のセリフに続けて、女の子は言われるがままに口を開いた。

 

「聖なる大地よ。」

「せ、聖なる大地よ。」

 

「その清き姿に我を映し・・・・。」

「その・・・清き姿に我を映し・・・。」

 

「緑の輝きとともに、大いなる力をもって我を導け。」

「緑の・・輝きとともに・・・大いなる力をもって・・・。」

 

「・・・・・・我を導け!」

 

女の子が言い終わると同時に、足元からまばゆい光があふれ出し、女の子を明るく包み込む。

「なにこれ!? ・・・あたたかい・・・。」

 

女の子を包み込んだその光は、やがて女の子を中心に複数の輪のようになり、それぞれが女の子の各部へ引き締まるように

装着されていき、静かに光を落ち着けていった。

「あれれ・・・・なんだか・・・変わっちゃった??」

 

光がおさまると、そこには先ほどまでの女の子が姿を変えて立っていた。

「さあ、魔法少女の始まりよ!」

 

小さな子がそう言い、続けて指示を出した。

 

「その杖を下に向けて、こう言って。」

 

「ムーブ!」

 

女の子が言われたようにすると、突然地面と空が入れ替わったようになり、そのトンネルに似た空間を流れるように入っていった。

「すごいすごい! なんだかワクワクするね!」

小さな子は、その深く考えていない女の子の様子に、本当に大丈夫かなと首を傾げながらも、そのくらいの方が

旅には向いているのかもと思い、頭を切り替えることにした。

 

「そういえば、お互いの自己紹介、まだだったね。」

 

「あたしは【とま】。とまとウサギ族の【とま】よ。」

 

「わたしはラビ! 人間族のラビよ!」

 

「・・・・言い方、マネしなくてよろしい・・。」

 

「とまちゃんね! ってことで、これからよろしく!!」

 

「はいはい、こちらこそよろしくね、ラビちゃん。」

 

こうして二人は人間界を離れ、異世界へと旅立っていったのでした。

 


 
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