No.481608

真恋姫†夢想 弓史に一生 第四章 第六話 千客万来

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

前話は酷かったですね…。ご都合主義の固まりすぎて…批判コメが書き込まれる恐怖に怯えながら日々過ごしておりましたww


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2012-09-09 02:59:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2375   閲覧ユーザー数:2081

~聖side~

 

 

洛陽に着てから早一月。

 

 

「ありがとうございました~!!」

 

「お頭!! こっち本日のお勧め二つ!! 内一つ御飯大盛りで!!」

 

「あいよ!! 麗紗!!御飯盛り付けてくれ~!!」

 

「はい…用意しときますね。」

 

「はい、二名様ですね。では、こちらの席にどうぞなのです。」

 

「お待たせしました。油淋鶏定食と本日のお勧めです。」

 

 

俺達は洛陽の町で、女将さんの薦めもあり、屋台で料理屋をしている。

 

 

 

 

 

時刻は丁度お昼時。

 

お昼ごはんを求める人たちでごった返した飲食店街…から少し離れた広間にある一つの屋台。

 

その付近には布が敷かれた机と椅子、日除けの傘が並べられ、お客さんがそこで食事をしている。

 

所謂現代のオープンテラスを広場に作った形。

 

何故この形にしたかと言えば、やはり物珍しさ。

 

固定客のいない無名の屋台に人を呼び込むにはやはり物珍しさが必要だろう…。そして一度味を知ってもらって、気に入ればリピーターが出てくる。そうすればこの店の経営も流れに乗るはずだ。

 

料理も俺と麗紗が作るから味に自信はある。それに、俺の料理はこの時代の中国では馴染みの無いもの。これもきっと話題性にはなるはず…。

 

俺のこの考えは間違ってはいなかった。

 

店を開いてから数日の内は、物珍しさや給仕の女の子が可愛いと評判で、多くのお客さんが来てくれた。

 

そして今日で一月経つが、固定客が出来、一定の収入が見込めるようにはなってきた。

 

とは言え、今後の旅費を考えるとこの前のような額だとまた途中の町で稼がないといけなくなる恐れがあるため、今はひたすら稼ぐようにしている。

 

 

「「「「「「ありがとうございました~!!」」」」」」

 

 

お昼時の賑わいが去り、屋台に静けさが訪れる。

 

が、休む間もなく店の片づけをしながら、夕方のために仕込みと買出しを始める。

 

俺と麗紗と一刀は店にて仕込み。芽衣、奏、藍里は買出しに行ってもらう。

 

まぁ、この采配は自分でも見事だと思う。と言うか必然的にこうするしかない。

 

 

 

 

 

 

前に一度それぞれに仕込みを手伝ってもらおうとしたことがある。

 

芽衣は刃物を持つと人が変わるので却下。(あの時は切られてる野菜が可哀想でなかった…。)

 

奏は短剣を扱うのに慣れてない所為で指を何箇所か怪我。

 

藍里は包丁使いこそ他の二人に比べればマシだが、真面目な性格のため、細かくと言ったらひたすら細かく切るため時間がかかってしまい、仕込みの時間が終わってしまう…。

 

三人とも精一杯やってくれてはいるんだけど…いかんせんこればかりは任せれないとの俺の判断で三人にはホール兼買出しをやってもらっている。

 

一方、一刀はホールだが、日本料理には慣れていて、言えば何か分かるし、包丁の使い方も三人に比べれば使い物になるので仕込みを手伝ってもらっている。

 

 

 

 

 

仕込みを初めて数分。

 

足音が聞こえ、誰かが店の中に入ってきた。

 

 

「邪魔するで~!!」

 

 

そう言うと、お姉さんはどかっと椅子に腰掛けた。

 

ネコみたいにくりくりとした大きな目が特徴的で、青い髪を後ろで結んで、羽織に袴、胸にはさらしと活発そうな雰囲気が醸し出されていた。

 

見た感じ旅の人って感じでは無さそうだが…。 ってかさらしに袴に羽織って…ここら辺にも日本文化が取り込まれてんのかな…。

 

 

「いらっしゃいませ。申し訳ございませんが、ただいま準備中でして…。」

 

「えぇ~…。せっかく来たんやから何か食べさせて~な…。」

 

「…分かりました。せっかくお越し戴いたんですから、食べていってもらいます。メニューはいかがなさいますか?」

 

「めにゅーって何や?」

 

「あぁ、すいません。採譜のことです。何になさいますか?」

 

「う~ん…。じゃあ本日のお勧めで!!」

 

「分かりました。麗紗と一刀はこのまま仕込みを続けていてくれ。お客さん一人なら俺一人で出来るから。」

 

「「分かりました。(分かった)」」

 

 

俺は材料を切って準備を始めた。

 

因みに本日のお勧めは酢豚定食。

 

俺がこの国に来て一番最初に作った料理だけあって、一番メニューに上がることが多いやつだ。

 

 

 

「おぉ~良いにおいすんな~…。でも見たこと無い料理やな。」

 

「これは俺の国では家庭料理の一つなのですが…まぁ、しょうがないですかね。これは、酢豚と言って簡単に言うなら野菜と豚肉の甘酢和えです。」

 

「ふぅ~ん。料理は詳しくないから、あんまわからへんけど、美味そうっちゅう事だけは分かるわ。」

 

「お口に合えば良いんですが…。」

 

そう言って出来上がった酢豚と御飯、鸡蛋湯を出す。

 

「どうそ。冷めない内にお召し上がりください。」

 

「どれどれ…どんな味か楽しみや!!」

 

 

さらしのお姉さんは酢豚を口に入れる。

 

何回か咀嚼しながらゆっくりと味わってるように見える。どうでも良いが、さらしって胸の形をはっきりと示していてエロいよな~…。

 

 

「うんまい!!!兄ちゃん、これ美味いな~!! 酢豚っちゅうたか!? これは町の人も噂をするわけやわ~。」

 

「お気に召したようで幸いです…。ところで…町の噂というのは…?」

 

「なんや、知らんのかいな。広間に一件だけある店の料理が美味いって洛陽の町人の間で評判でな、しかも見たことの無い料理やって言うねん。警邏中にそんなことを聞いたさかい、一度来て食べてみたくて~…。来てよかったわ~。」

 

「そんな噂初めて聞きましたよ。麗紗や一刀は聞いたことあったか?」

 

「いやっ、俺は特には。」

 

「私は広間に変わったお店があるってことしか…。」

 

 

まさか知らずに内にそんなことになっていたとは…これは今後も客足が期待出来そうだ…。

 

 

「なあ。あんたら最近ここに来た人らやろ? 何でここで屋台なんてしようと思ったん?」

 

「えっ!?」

 

 

お姉さんの質問に驚く俺。

 

 

「何で俺達が最近ここに来たってわかるんですか?」

 

「そりゃあ、ここら辺に屋台なんて無かったし、噂が出始めたのがここ一月くらいからやからな~。」

 

「それもそうですか…。確かに俺達は旅をしてたからこの町に来たのは一月ほど前です。」

 

「後、その喋り方があんたに合ってないことも分かるで~。そんなにうちに気使わんと、喋りたいように喋ってくれたらええから。」

 

「そうか…。まぁ、ばれてるならしょうがないのかな…。多少口が悪いのは勘弁してくれ、生れつきの事なんだ。」

 

「まぁ、多少のことはこの料理の礼として目つぶったるわ。」

 

「助かるよ…。さて、何で屋台をしてるかだっけ? 理由は一つ、お金を稼ぐため。俺達は今この大陸を旅して回ってる。そのためにはやはりまとまった金が要るんだが…生憎手に入れる手段に困っていてね…。まぁ、この町の人のご好意で、屋台を出させてもらえることになったからそれで稼ごうと思ってるわけ。」

 

「なんや、じゃあお金が溜まったらこの街から出て行くんか?」

 

「あぁ。あくまで料理は金を稼ぐため。俺のやりたいことは他にあるからな。」

 

「もったいないな~…。こんな味が出せる店が無くなるんは悲しいわ。」

 

「まぁ、しばらくはここでまだ商売してるから、来れるときにまた食べていってよ。」

 

「そうさせてもらうわ。そん時は他にも人連れてくるな!!」

 

「あぁ、待ってるよお姉さん。」

 

「張遼や。」

 

「えっ!?」

 

「ウチの名前や。お姉さん呼ばれるんも悪い気はしんけど、どうせなら名前で呼んで~な。」

 

「…分かったよ、張遼さん。俺の名前は徳種。」

 

「徳種か…。よっしゃ、覚えた!! これからもちょくちょく邪魔すんで!!」

 

「あぁ、待ってるよ。」

 

「ほんじゃあな~徳種!! お代ここにおいとくで!!」

 

「毎度どうも!!」

 

 

こうして、張遼さんは去っていった。

 

最初から最後まで元気で明るい人だったな…軽く嵐が通過したようだ。

 

…ってか張遼だったのか…。神速の張遼に逢えたって言うのは運が良いのかな?

 

そんな、嵐のような訪問から数日後。

 

張遼さんがお友達(?)を連れてやって来てくれた。

 

店は丁度お客さんが捌けて閑散とした状態だったため、俺自らお客さんに対応することにした。

 

 

 

「徳種~!!ご飯食べに来たで~!!!」

 

「やぁ張遼さん。お待ちしてました。どうぞ座って。」

 

「なんやお客さんはウチ等だけか…。この店、流行ってないんとちゃう?」

 

「…今はお昼時が過ぎたからお客さんが居ないだけですよ…。」

 

「ふ~ん。まぁ貸し切り状態ならそれはそれで良いけど♪ お~い、月、賈駆っち、恋、ねね。空いてるから入ってきて良いで!!」

 

 

張遼さんがそう言うと、屋台の影で見えなかった場所から、四人の女の子が姿を現す。

 

 

 

「うわ~…。屋台で御飯なんて久しぶりだね、詠ちゃん!!」

 

「何よ、霞!! 美味しい店があるなんていうから来てみたら、ただの屋台じゃない!!」

 

「賈駆っちは分かってへんなぁ~。大事なのは見た目じゃなくて味やで!!」

 

「霞の言ってること…正しい…見た目…関係ない…大事なの…味…。」

 

「詠、恋殿の言うとおりですぞ!!」

 

 

がやがやとした雰囲気が急に屋台に広がる。なんとも華やかな面々が屋台の席に座ってる姿は見ていて心が癒される。

 

 

「ちょっと!!そこのあんた!! 何、月に色目使ってんのよ!!」

 

「えぇ!!そんなことは…。」

 

「…聖様。鼻の下が伸びてますが…。」

 

 

なん…だと…。

 

俺の運動神経が無意識の内に鼻の下の筋肉を弛緩させていたとでも言うのか…。

 

随意運動が不随意運動になることなど無いはずなのに…。これは、まさか劣化…。

 

俺は人間から一つ劣化してしまったとでも言うのか…。

 

 

「…芽衣…。俺、駄目だ…。人間じゃなくなった…。」

 

「はい??」

 

 

分かってるよ…。芽衣は優しいからな…。

 

俺が人間でなくなっても優しく声をかけてくれてるんだろ。でも、流石に人間じゃなくなったからその愛は消え去るのかな…。どんな形になっても、俺を好きでいてくれると思っていたいけど、無理かな…。

 

 

「芽衣…こんな俺だけど…好きでいてくれるか…?」

 

「????? 何のことか一向に分かりませんが…私は聖様のことが大好きですよ。」

 

 

少し頬を染めながらそれでも満面の笑みで芽衣はそう答えてくれた。

 

 

「芽衣~!!!」

 

 

俺は芽衣の優しさが嬉しかった。だから、その一時の精神の高揚から、芽衣を抱き締めた。

 

 

「えっ!? ちょ…ちょっと、聖様!! …流石に人前ですし…その…抱き締めてくれるのは嬉しいのですが…恥ずかしい…。( ///)」

 

「ちょっと!! お客待たせて何そこでイチャイチャしてんのよ!!この色欲魔!!」

 

 

 

そこでようやく冷静になる俺。自分でも馬鹿なことをしていたと思う。

 

張遼さんたちを見てみると、豪華な服装と一見不釣合いに見えるほど背の小さな、銀色の髪の少女は、顔を真っ赤に染め、両頬に手を当てながら「へぅ~。」と言っていた。

 

俺の中の萌え精神(萌えスピリット)が立ち上がった。

 

よしっ、これからこれをモスと呼ぼう。 …ん?その名前は使われている? じゃあMS(Moe Spirit)にでもするか…。

 

何!?これも使われているだと!!でも、そんなの関係ねぇ!! 

 

………しょうがない、モスピにでもしとくか…。

 

 

その隣に座っている、眼鏡をかけて、帽子を被っているこれまた背の低い少女は、頬を少し赤く染めながらも、俺に「色欲魔!!」だの「変態!!」だの「月に近付くな!!」だの言っている。

 

…ってか月って誰って話だよ!!

 

その隣の赤い髪をして、触覚が二本ピョコピョコと動いている女の子は、特に何の興味も見せず、さっきから奥で仕込みをしてる麗紗の手元を見ている。 …お腹減ってるのかな…。

 

その隣の帽子を被り、緑色の毛を後ろで縛って二つにし、合いも変わらず背の低い少女は、顔を赤くし、両手で顔を包むようにしながら「あわわわ」言っていた。何か純粋な反応に思わず笑みがこぼれそうになった。

 

因みに張遼さんはと言うと、俺のほうを見たままニヤニヤしながら不気味な笑みを浮かべていた。 …正直怖いんですが…。

 

 

「すいません。ちょっとトリップしていたようで…。」

 

「とりっぷ??」

 

「あぁ…すいません。こっちの話です。では、皆さん本日は何のメニューにしますか?」

 

「めにゅーって何よ…!?」

 

「あぁ~、賈駆っち。何でも採譜ってことらしいで!!」

 

「ふ~ん。それならそう言いなさいよね…。まぁ、でも採譜なんて決まってるわ。」

 

「では、何にいたしますか?」

 

 

俺はそう言いながら彼女達の前に水を置いていく。

 

 

「この店の料理全部よ!!」

 

「…は!?」

 

 

俺はそれは聞き間違いだと思った。

 

それから数十分後、俺は今ひたすら次の料理を作っている。

 

正直何の冗談かと思ったが、確かに彼女達は俺の出す料理を全て食べていった。いやっ、彼女達ではなく彼女だ。

 

触覚がピョコピョコと動きながら、そのリスのように頬張った口の中に次々と料理を入れていく。

 

その姿は確かに可愛らしく、周りのみんながほわぁ~ってなるのも分かるが…料理作ってる側からしたらそんなの気にしてる場合じゃない!!

 

 

「麗紗!! そっちの料理頼む!!」

 

「はい!! 分かりました、お兄ちゃん。」

 

「一刀!! 次、これ出して!!」

 

「分かった!!」

 

 

そう、これは戦争なのだ。

 

食べる側と作る側の負けられない戦いなのだ。俺はこんなところで負けてたまるか~!!!

 

 


 
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