No.480886

夜天の主とともに  26.情報整理

森羅さん

A's編っす

2012-09-07 14:51:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1800   閲覧ユーザー数:1690

夜天の主とともに  26.情報整理

 

 

 

健一たちとの決戦から数日が経過していた。

 

現在闇の書の捜索担当となったリンディ率いるアースラ局員は本艦整備のため捜索本部を一時的に海鳴市のマンションへと変えていた。現在マンションにいるのはリンディとクロノ、エイミィの三人だった。

 

「ふぅ、まぁとりあえずはこんなところかしらねクロノ。」

 

「はい。必要な機材は全部取り付けましたし足りないものがあっても取り寄せれば問題ないです。」

 

「でもアースラが今使えないのは結構厳しいですよね。どうぞ。」

 

エイミィがいつもの抹茶に角砂糖とミルクを添えて持ってきながら愚痴をこぼした。

 

「ありがとう、エイミィ。そうなのよね、まぁない物ねだりをしてもの仕方ないわけだしそこは割り切ることにしましょう。それでクロノ、その後のなのはさんたちのの状態は?」

 

「なのはとナリンはその後の検査も問題なしで縮小したリンカーコアも徐々に回復しているとのことです。フェイトの傷は完治してます。今はなのはとその友達と一緒に外に出ていきました。」

 

「そう。あのこにはなるべく普通の女の子としての生活も楽しんでほしいわね。これ喜ぶかしら?」

 

手に持つのはなのはの通う市立聖祥台附属小学校の制服だった。フェイトがこちらで過ごすためにとリンディが用意したものだった。

 

「きっと喜ぶと思いますよフェイトちゃん。」

 

「フェイトのことだから嬉しさよりもさきにびっくりするだろうけど。」

 

「おっ、もうフェイトちゃんのことそこまで分かるようになったんだクロノ君。さすがお兄ちゃんとなった人は違うね~。」

 

エイミィの言葉に若干恥ずかしかったのか顔を横に背けるクロノ。

 

「エイミィ茶化すな。」

 

「ふふふっ。それでナリン君はどうなのかしら?」

 

「あいつですか?それが見た目ほど傷は深くないようでもうぴんぴんしてますよ。今回の事件に協力するにあたってこっちの近辺に引っ越してくるらしいですよ。まぁ今頃親にこってりとしぼられてると思いますけど。」

 

「あははは、ナリン君らしいね。」

 

「いつものんびりしてるやつにはちょうどいいだろう。」

 

思わずこぼれる笑いの声。それが終わると本題に入った。

 

「さて、なのはさんたちと話す前に情報整理しておきましょうか。」

 

「はい。エイミィ、モニターを。」

 

「はいは~い。」

 

クロノの指示でエイミィが手元を動かすと3人の目の前にモニターが現れそこに闇の書とその守護騎士たちが映し出された。

 

「……確かに闇の書に間違いはないようね。」

 

「それにこの4人も過去の闇の書事件の映像を確認したところ闇の書に内臓されているプログラムによる魔力疑似生命体で間違いないようです。」

 

「それにしてもこの魔法形式なんなんだろう?こんなの見たことない。」

 

モニターに映る三角形のような魔方陣の形状を見ながら唸るエイミィ。ミッド形式の環状型とはまるきし違うものだ。

 

「エイミィ勉強不足だぞ。これはミッドと魔法形式が二分された魔法ベルカ式。それも古代ベルカ式と呼ばれたものだ。ある程度遠距離はある程度度外視して中・近距離に重きを置いた戦闘方法らしい。まぁこれについては戦闘映像を見ても分かると思うが。」

 

「確かにハンマーで殴りかかったり剣で斬りかかったり直に殴ったり蹴ったりしてるもんねェ。」

 

「まぁ相手の戦闘の仕方とかはなのはさんたちと話し合うときにでもしましょう。問題はこの子ね。」

 

モニター画面が切り替わりそこに健一の戦闘シーンが映し出される。

 

「まだこんなに小さい子が…。」

 

「見た感じだとなのはちゃんたちと同じくらいの子かな?この子もかなり強いね。推定魔力ランクはAA+、ナリン君より一個上だね。」

 

「魔力の運用効率が上手い。それにこの少年のスピードは目を見張るものがあるな。今のフェイトを上回ってるし、守護騎士たちの中で一番はやい。」

 

「その上攻撃力も脅威ね。それよりも気になるのはこの子が今回の闇の書の主なのかどうかという事になるわけだけど…。」

 

離脱寸前健一の後ろに控えるようにして佇んでいる守護騎士たち。その姿は従者を従える主のようにも見えなくはない。

 

「周りにいるのが守護騎士たちってことから考えるとこの子が主って考えるのが一番自然だよね。ナリン君の話じゃ闇の書を呼び出して蒐集しようとしてたって話だし。」

 

「確定するには早計すぎるがその可能性が高いな。でもこの少年が海鳴市付近にいるのは間違いないな。」

 

いつもなら慎重に調べて結論を出すクロノにしてははっきりと断言したことにリンディは疑問を持った。

 

「それはどういう事かしらクロノ?」

 

「なのはから聞いたのですがどうにも同じ学校の同級生でしかも友人のようです。」

 

クロノの予想外な言葉にエイミィとリンディは驚いた。まさか、なのはの知り合いどころか友人だったからだ。しかし。そこはさすが提督というべきかすぐに平静を取り戻しクロノに続けさせた。

 

「名前は時野健一。市立聖祥台附属小学校の生徒です。なのはとはクラスが違いますが友人のようです。ですが、2カ月前ほどから学校に来ていないようです。」

 

2カ月前という数字にリンディは覚えがあった。

 

「ちょうど各地の管理外無人世界に生息する生物から魔力を蒐集されたという報告あった時期と合致するわね。」

 

「しかもわざわざ管理局本局のほうで危険生物と認定したものだけを対象としていたものだけを蒐集していたらしいです。」

 

「そのほうが効率が良かったのか‥‥もしくは意図的に人間から蒐集するのを避けていたかどちらかですかね?」

 

顎に人差し指を当てながら思案顔でエイミィはそう言った。

 

「そうね、そう決めつけるにはまだ早いけれどその可能性は十分高いでしょうね。」

 

リンディも来t場ではそうは言ってもその意見に同意しているのか頷いている。

 

「まぁ後はなのはさんたちに話すときにでもしましょうか。それと調査資料を探すために無限書庫の使用の許可も取っておく必要がありそうね。」

 

無限書庫とは魔法関連の資料が文字通り無限と思えるほどの貯蔵量を誇っており、遥か過去から現在に至るまでの資料がそこに眠っている。そこならば古代ベルカや闇の書についても何かわかるに違いないとリンディは考えた。

 

「じゃあ僕はそこでの調査をユーノにでも頼んでおきます。あいつはその手の検索魔法とかが得意みたいなので。」

 

「お願いするわ。」

 

 

 

 

 

 

一方なのはたちは……

 

市立聖祥台附属小学校のあるクラスではいつもよりも大いに騒がしくなっていた。それは転校生が2人もやってきたことでもちろんその2人とはフェイト・テスタロッサとナリン・ノーグルのことであった。

 

フェイトは男子女子に囲まれてあれやこれやと質問攻めにあいおもわずアリサが仲介に入らないといけないぐらいの人気だった。ナリンはというとこちらも同じようだったのだが、眠いのか面倒くさいのか返す言葉は全て生返事でそれをなのはやすずかは苦笑いで見ていた。

 

そして時刻はお昼の時間となりなのはたち5人はあまり人が来ない屋上でお昼ご飯を食べることにした。

 

「全く‥‥みんなったらフェイトを寄ってたかって質問攻めして。あれじゃフェイトじゃなくても困っちゃうわよ。」

 

「ふふっ、それだけフェイトちゃんのこと知りたかったってことなのかもしれないね。」

 

卵焼きをほおばりながらクラスでのことを怒るアリサと少し苦笑いをしながらそれに応じるすずか。しかし、2人とも言葉とは裏腹にうれしそうだった。フェイトがすぐにクラスに溶け込めたからだ。

 

「大丈夫だよ。クラスのみんなも優しかったし、最初はちょっと困ったけど今は大丈夫だよ。」

 

フェイトもそれを感じたのか笑顔で答えた。が、すぐにその表情は少し怒ったものになった。その矛先はナリンだった。

 

「でも、ナリンは寝すぎだよ!みんながせっかくお話してくれてるのに。ってナリン聞いてるの!」

 

「zzz…zzイテテテテッ!?フェイト痛い!痛いって!」

 

弁当を食べながら眠るというなんとも奇妙な光景を作り出していたナリンはフェイトの頬つねりで強制的に起された。起きたことを確認するとフェイトは手を離したがどうやらなかなか痛かったようで頬をさすっていた。

 

「お~痛い。いっつも起こすんやったらもうちょい優しいして言うとるやん。」

 

「だってナリン本当に寝たら声かけても体ゆすっても起きないんだよ。だからこれは仕方ないと思うよ。」

 

「せやかて眠いもんは眠いんやから仕方ないやん。」

 

「もう…、こうなったらリンディ提tじゃなかった。リンディさんのあの抹茶飲むことになるよ。」

 

「あれは嫌や!!」

 

2人でぎゃーぎゃー話してるのをアリサとすずかは目を丸くして見ていた。ナリンはともかくとしてフェイトがこんなに騒いだりするとは思わなかったからだ。なのははもうアースラ内で何度か見たことがあるので特に驚きもせず、むしろああまたかといった感じだった。

 

「…ねぇなのは。フェイトっていつもあんな感じなの?なんかビデオメールとかで見た時とは全然違うんだけど。」

 

「確かにそうだね。物静かなイメージだったけど。」

 

なのはと一緒にビデオメールなどでフェイトを見てその話している様子をみたことがある2人は自分たちよりもよく知っているなのはに聞かずにはいられなかった。

 

「う~んとね。フェイトちゃんいつもはアリサちゃんとすずかちゃんが思ってる通りな感じなんだけどナリン君と話してるときはああなっちゃうことが多いよ。」

 

「「へぇ~。」」

 

そうこうしているうちにフェイトとナリンも気が済んだようでそこからは普通に話しながらみんなと楽しくお昼ご飯を食べた。

 

そして放課後。

アリサとすずかと校門で別れたなのは、フェイト、ナリンは帰宅するため家へと向かった。

 

「フェイトちゃんとナリン君、学校どうだった?」

 

「うん。アリサもすずかもクラスのみんなもいい人ばっかり。まだまだわからないことだらけだけど大丈夫…だと思う。」

 

「ワイは学校が変わったことぐらいしか変化はあんまないけどええクラスやとは思った。」

 

「そっか、よかった。」

 

3人とも満足していたようで笑顔だ。そしてしばらく無言のまま歩道を歩いた。

 

「……やっぱり健一君今日も学校来てなかった。」

 

最初にその沈黙を破ったのはなのはだった。考えていたことは数日前の襲撃事件。そこに自分の友達。

 

「時野…健一君だったよね。同じ学校で同級生。」

 

確認するようにしゃべるフェイトの言葉に引き継ぐようにナリンも口を開いた。

 

「しかもなのはの知り合いどころか友達…か。ややこしいことなっとるなぁ。」

 

「うん……。」

 

気持ちが沈み顔を俯かせるなのは。いきなり友達に襲われたことで少なからずショックを受けているようだった。

 

フェイトとナリンにはその光景に覚えがあった。かつて自分たちはジュエルシードを探すしていた。なのはに初めて会ったときは話も聞かず襲った。まさに一緒だった。

 

2人は顔を見合わせると一つ頷いた。

 

「だったら今度会うときは話さないとね。」

 

「えっ?」

 

フェイトの言葉になのはは聞き返していた。ナリンもそのままつなげた。

 

「最初はロクに話すことできへんかったんやろ?そやったら次会うときこそやな。話し合わなきゃなにもわからへん、やろ?それでもだめやったらまた次や。」

 

2人の言葉になのは交互に顔を見ることしかできなかった。話まだ続く。

 

「私たちと会ったときだってなのはは諦めずに何度も話しかけてくれた。」

 

「あん時は何も答えれへんかったけど、その言葉は何回も聞いてるうち気持ちが伝わって来とった。」

 

「だから私はあの日なのは救われたし、だからこそ今の私があるんだよ。」

 

「そやから何度でも話し続けりゃええんや。な?」

 

「フェイトちゃん、ナリン君…。」

 

思わず目に涙が出た。その涙をぬぐいながらなのはも決心を固めた。

 

「そうだね。話さなきゃ分かんないもんね。言葉だけじゃ伝わらないことだってあるかもしれないけど私頑張ってみるの。」

 

「そやでその意気や。」

 

「私たちも手伝うよ。」

 

「じゃあみんなで頑張ろー!」

 

「「「おー!!」」」

 

なのはの顔に先ほどまでの悲しそうな表情はなく笑顔を作ることができていた。家へと帰るその足取りは軽くなっていたのであった。

 

 

 


 
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