夜天の主とともに 25.一時の休息
健一side
「知らない天井…のわけないか。今何時だろ?」
見慣れた場所、はやての家だった。時刻を確認しようと起き上がった。すでに朝の7時になっていた。ザフィーラに運んでもらってたところまでは覚えていたがどうやらそのまま気を失い朝まで寝ていたようだ。
そこで脇腹の方にわずかな重みを感じ見ると俺は思わず固まってしまった。はやてが顔と腕をのせてすやすやと寝ていたのだ。
俺は思わず深くため息をついた。とりあえず起こすとするか。
「おい、はやて朝だぞ。起きろ。」
「………んん~、けん君?起きたんやね、おはよ。」
眼をこすりながら起き上がるはやてだったが何を思い出したのか急に心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んだ。
「そや!!けん君大丈夫なんか?シャマルから聞いた話やと来る途中でまた喘息の発作が起きてそのまま気失ったっちゅうふうに聞いたんやけどどないや?まだ苦しかったりするんか?」
手をわたわたさせながら矢継ぎ早に質問してくるはやてを見て思わず苦笑し同時にはやてにここまで心配させたことに心も痛んだ。だが知られるわけにはいかない。
「大丈夫だよ。今は息苦しくもないし変なところもない。ごめんな行くって言った日にこんなことになって。」
「ほんまやで。あんまり心配させんときや。けん君見とるとはらはらするわ。」
「ホントごめん。もしかしてここで寝てたってことはずっと看病してくれてたりしてた?」
「だってけん君ちょいちょいうなされる感じやったんやもん。まぁ結局私も寝てもぉたんやけど。」
「はやてらしいや。にしても惜しいことしたな。久しぶりにはやてがどれだけ料理上達したか知りたかったのに。」
「ふふふ、そういうかと思って…シャマル。」
「はぁ~い。」
不敵な笑みを浮かべてはやてがシャマルを呼ぶと小さい土鍋が運ばれてきた。俺の膝に置かれ蓋が開かれるとそれはおかゆだった。
「はやて、これわざわざ作ってくれたのか?」
「どうや!!っちゅうても普通のおかゆなんやけどな。昨日の今日やし栄養吸収しやすい方がええかなって思って。まぁそんなことはええから食べて。」
言われるがままに蓮華ですくいとり口へと運ぶ。おかゆの熱さを感じながらもよく噛み味わい食べた。
「……どう?」
「…うまい。」
「ならよかったわ。ってどしたんや急に!?」
なにがと聞こうとしたところで俺は自分が泣いていることに気付いた。慌ててそれを拭う。
「いやなんかホントおいしいなぁって思ってさ。」
「なんや変なけん君やな~。」
「かもな。はやて水もらってもいいか?」
「ちょい待っとき。持ってくるから。それまでシャマルお願いな。」
「お任せあれ。」
そしてはやてが部屋を出て扉が閉められた。それを見計らって俺はシャマルに話しかけた。はやてが戻ってくる恐れもあったが念話でシグナムたちに足止めを頼んだ。
「シャマル昨日からここまでの説明お願い。」
「まず予定通りかなりの魔力が蒐集できたわ。健一君が蒐集した子の魔力も合わせたらもっとよ。これで完成に大幅に接近したわ。」
「そうか。はやてにうまく言っといてくれてありがと。確かに喘息の発作のほうがあいつも納得しやすい。」
「いいのよあれは仕方なかったわ。あと健一君火傷したところが多かったから治癒しといたわ。特に両手が一番火傷してたけどそこも大丈夫。」
自分の両手を見る。ナリンとかいうやつの最後の大技を防御したとき直撃は防げたがその圧倒的な熱で皮膚が焼けるような感じがしたからそうなってると思っていたが今の俺の両手はきれいな状態だ。
「はやてちゃんに気付かれないように治療しておいたわ。」
「……なんかごめん結局肝心なとこで足引っ張ってるな俺。」
「そんなことないわ。あなたがあの狙撃手の子を押さえてくれていたおかげでシグナムもヴィータちゃんもザフィーラも邪魔されることなく戦えたし私も気づかれずに魔力が蒐集できた。それに最後の離脱するときだって健一君がいなかったら難しかったわ。」
「役に立てたならよかった。」
俺が胸をなでおろしているとそのタイミングを見計らったかのようにはやてが入ってきた。後ろにはシグナムたちも一緒にいた。
「水もってきたでけん君。」
「ありがと。」
手渡されたコップを受け取り口へ流す。冷たい水が喉を潤した。突如俺の頭にシグナムからの念話が響いた。
『健一私たちは昼を過ぎたあたりでまた集めてくる。』
『そっか。俺ももう大丈夫だから準備したr『いやお前はここに残れ。』もう大丈夫だぞ俺は?』
『そんなことは今のお前を見ればわかる。ただせっかく主はやてと久しぶりに会ったのだ。今日ぐらいは一緒にいてくれるときっと主はやてが喜ぶ。』
『あたしもはやてといたいけど今日は譲ってやるよ。』
『だからお前は残れ。何かあろうともみなのことは盾の守護獣の名に懸けて守る。』
『…わかった、じゃあ今日はお言葉に甘えるよ。でもそういうことなら交代制で行こうな。』
それに応じるようにシャマルを含めた4人が頷く。
「みんなしてなに頷いとるんや?」
「いやはやての寝癖はいつみてもすごいなと思ってたんだよな。」
「えっ嘘ぉ!?」
慌てて近くにある手鏡を手に取り覗き込むと確かに前髪の方がピョンと大きく跳ね上げていた。瞬時にはやての顔が赤くなった。
「ちょ!?気づいとったんならだれか言ってや!!」
みんなを見渡しながら抗議するが、
「いえそれも主はやてらしいかと。」
「そうだなはやてだもんな。」
「はやてちゃんですもの。」
「(こくこく。)」
「だってよ。ちなみにそれはそれは似合ってると俺は思うぞ。」
「うう~からかわんといてぇな。」
それを見て俺が笑うとつられるようにみんなも笑った。久しぶりにみんなで笑ったような気がした。
「うう~なんかストレス発散したい~。そや!!今日はけん君と久しぶりに料理対決してもらうで。拒否権はないで!!」
「仕方ないなぁ、じゃあ今日こそ勝たせてもらうとするかな。」
「私らいっつも引き分けやからな。みんなも今日の夜はしっかり審査してぇや。」
「「「はい(おう。)」」」
「あっ、それなら私からも提案があるんですけど。」
シグナム、ヴィータ、ザフィーラが頷いた。そこで何か思いついたとばかりにシャマルが手をポンと叩いた。
「どしたんや?」
「だったら私も一緒に作ろうかなと「「「「「却下!!」」」」」そんなひどい~!」
みんなで笑いながらやっぱりこういうのがいいよなと俺は思った
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