No.475501

IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第26話

Lさん

第26話です。

プロローグ
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2012-08-26 02:57:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8611   閲覧ユーザー数:8359

昨日は生徒達で溢れていた海水浴場、今はキラ達しか居ない。

 

「時間だ、シン、ルナマリア、準備は良いかい?」

「はい」

「いつでも行けます」

 

シンは手首の、ルナマリアは耳の待機状態にしているISに手を添えた。

 

「行くぞ、デスティニー」

「行くわよ、インパルス」

 

シンとルナマリアはISを展開した。

 

「行くぞ、ルナ」

「ええ」

 

そう言うと2人は何時もの通りに膝を折り曲げて上昇した。

 

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!!」

 

そう言うとシンはスラスターを全開にして海の方に飛んだ。。

続いてルナマリアも発進する。

 

「ルナマリア・ホーク、インパルス、行くわよ!」

 

そう言うとルナマリアもシンと同じ方向に飛び立ち海岸から姿を消した。

今回の作戦はキラ達全員で行う事になった。

まず、シンとルナマリアが偵察に出て、移動しながら戦闘と偵察を行い"福音"のデータを全機に送信し、全機が来るまでの間、二人で"福音"を足止めし、全機到着後、全機による集中砲火で"福音"のシールドエネルギーを減らし、トドメに白式の零落白夜でを強制解除追い込むものであった。

これなら白式の零落白夜に回すエネルギーを抑える事が出来る。

 

 

シンとルナマリアは加速を続けレーダーに福音が引っ掛かる距離まで飛び続けた。

 

「こちらシン、目標をレーダーで確認、これよりアプローチを仕掛けます」

『了解した、詳細なデータを全機に転送してくれ』

「了解!」

 

千冬の指示を聞き、シンとルナマリアは一気に福音との距離を詰める為、更に加速を上げ"福音"との距離を詰めた。

 

「はぁっ!」

 

シンはアロンダイトで切りかかる。

だが、"福音"は高速機動の中でそれを瞬時に避けると距離を取ろうとした。

しかし、ルナマリアが"福音"の背後に回り、ビームライフルを放った。

距離を取るのは難しいと考えたのか、福音は回し蹴りを叩き込もうとしてきたが、シンは避ける。

 

「ならこれならどうだ!!」

 

ヴォワチュール・リュミエールシステムを展開すると一瞬で"福音"と近づきアロンダイトを振り下ろす。

だが、"福音"は瞬時加速(イグニッションブースト)で飛び上がりアロンダイトを避けると、全身に装備された全砲身36門からのエネルギー弾、銀の鐘(シルバー・ベル)を放ってきた。

飛来するエネルギー弾の雨を掻い潜る様に飛びながら"福音"に近づいたシンは両肩のフラッシュエッジ2を投擲、"福音"に命中した。

 

「ルナ!」

「データ送信したわ、キラさん!」

『了解!!』

 

キラ達が到着するまで少し時間が掛かる。それまでシンとルナマリアが"福音"の足止めをする。

シンとルナマリアが得た情報がキラ達に送られて来たのを確認したキラ達は上空に上がり出撃準備を行う。

一夏、箒も飛び上がり、海上で一度停止した2人は紅椿に一夏を乗せる為の準備を始める。

 

「箒、宜しく頼む」

「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回は特別だぞ」

 

一夏を紅椿に乗せようとした所で、一夏はふと思った事を口にした。

 

「いいか箒、これは訓練じゃない、充分に注意して取り組め……」

「無論解っているさ。フフ、心配するな、お前はちゃんと私が運んでやる。大船に乗ったつもりでいれば良いさ」

「……何だか楽しそうだな? やっと専用機を持てたからか?」

「え? 私はいつも通りだ、一夏こそ、作戦には冷静に当たる事だ、シンとルナマリアが足止めをしてるからって、油断などするなよ?」

「わかってるよ」

 

腑に落ちない一夏だった。

箒自身は否定しているが、一夏の目から見ても、今日の箒は何処か浮かれている様な、そう自信過剰に見えるのだった。

 

『全員、聞こえるか?』

「はい」

「よく、聞こえます」

 

千冬からの通信が入ると一夏は通信に集中する事にした。

 

『今回の作戦の要は、短期決戦だ、アスカ先生とホーク先生が足止めをしている、福音に対し全機による集中砲火でダメージを与えた後、零落白夜で一気に決着をつけろ』

『了解』

 

通信終了かと思いきや、箒がまだ何かを話そうとしている。

 

「織斑先生、私は状況に応じて一夏のサポートをすれば宜しいですか?」

『そうだな……だが、無理はするな、お前は紅椿での実戦経験は皆無だ、突然、何かしらの問題が起きるとも限らない、ヤマト先生もフォローはするだろうがそれも完璧に出来る状況になるとは限らんのだからな』

「わかりました、ですが、出来る範囲で支援をします」

 

キラも箒が浮かれている事には気づいていた。

今回は短期決戦が望まれる、少しでも多く出せる機体があれば越したことはない。

だが、今の箒は非常に危うい何処かでミスする可能性もある。

キラが箒を作戦から降ろそうと考えていた、その時だった。

千冬からの個人間秘匿回線(プライベートチャネル)が一夏、キラに繋がった。

 

『一夏、キラ』

「はい!」

「何でしょうか?」

『これは個人間秘匿回線(プライベートチャネル)だ、箒には聞かれない』

 

千冬も同じ事を考えていたのか、個人間秘匿回線(プライベートチャネル)で通信してきた。

 

『どうも箒は浮かれてるな、あんな状態では何かを仕損じるやもしれん、いざという時は、サポートしてやれ』

「織斑先生、箒は今回の作戦から降ろした方が良いんじゃないでしょか? このままだとシンやルナマリア、キラに余計な負担を掛けちまいかねないと思います」

『本当は私もそう思うのだがな、状況が状況だ、シンとルナマリアに偵察から足止め戦闘、キラは部隊を指揮しなければいかん、そしてパイロットの救出までやらせるのは負担が大き過ぎる』

「……わかりました、箒は俺の方で意識しておきます」

『頼んだぞ、それとキラ』

「はい」

『もしもの場合は箒を下がらせろ』

「分かりました」

 

個人間秘匿回線(プライベートチャネル)が終了して、再び開放回線(オープンチャネル)に切り替わった。

 

『よし、では……始め!!』

 

千冬の合図と共に一夏を紅椿の上に乗せて、肩を掴んで固定させる。

それを確認した箒は少し微笑んで、真っ直ぐ前を見た。

 

「行くぞ」

「おう」

 

紅椿のスラスターが一気に全開まで開き、加速しながら上空まで一直線に進んだ。

それに続くようにキラ達も続けて紅椿を追った。

一夏達は移動しながらシンとルナマリアから送られて来た情報の確認を始めた。

 

「福音の近接戦闘用武装は無し。36門の砲身から放たれるエネルギー弾による特殊射撃がメインの戦闘法か」

「なら、その特殊武装を使われる前に……」

「ああ、零落白夜で落とす!」

 

一夏とキラはこの時にも、心の隅で箒に対する不安を抱えているのであった。

だが、今はシンとルナマリアが戦っている戦闘エリアに早く着かないといけない。

そんな時だった、一夏にシャルロットの個人間秘匿回線(プライベートチャネル)が繋がった。

 

『一夏』

「どうしたんだ、シャル?」

『箒の事なんだけど……』

「気付いていたんか」

 

シャルロットも箒が浮かれている事には気付いていた。

箒を心配してなのか個人間秘匿回線(プライベートチャネル)で一夏に相談しようとしていた。

 

「箒は俺の方で意識しておく、シャルは皆と一緒に福音を頼む」

『でも……』

「今は福音のパイロットを早く助けないといけないんだ、だから頼む」

『分かった、箒の事を頼むね、一夏』

「任せておけ!」

 

個人間秘匿回線(プライベートチャネル)が閉じると、ハイパーセンサーに戦闘中の"福音"とシンとルナマリアの姿を捉えた。

激しい戦闘になってはいたが、デスティニーとインパルスには目立った被弾は無かった。

 

「見えたぞ一夏」

「あれが、福音……」

 

キラ達が箒達の前に出た。

 

「まずは動きを止める、セシリア!」

「了解ですわ!」

 

キラはドラグーンをセシリアはビットを射出した。

二機によるオールレンジ攻撃にビームとレーザーを避ける福音だが、次第に被弾を重ねていた。

続けて鈴の衝撃砲とシャルロットのアサルトライフルで追い討ちをかける。

だが、福音はそれを避けると上昇して銀の鐘(シルバー・ベル)を放った。

簪は銀の鐘(シルバー・ベル)の前に出ると山嵐を起動させミサイルで銀の鐘(シルバー・ベル)を迎撃した。

エネルギー弾は山嵐のミサイルによってを全て防がれてしまい、それに驚いたのか一瞬だけ福音の動きを止めた。

その隙をラウラははレールカノン、シンは高エネルギー長射程ビーム砲を叩き込む。

着弾と同時に爆発を起こすと福音の姿は煙の中に消えた。

キラとセシリアはドラグーンとビットを再び射出して逃げ場を塞ぐ様にビームとレーザーを放ちながら、白式と紅椿が福音の左右から同時に接近した。

 

「キラ、セシリア! そのまま奴の退路を抑えててくれ! 私が動きを止める!!」

 

箒は背部にある展開装甲のビット二つを射出させ、ビットを突撃させながら箒も切りかかって鍔迫り合いになりながら福音の動きを止めた。

 

「一夏! 今だ!!」

「おう!!」

 

一夏が零落白夜を発動させようとしたその時だった。

一夏の目に信じられない物が映った。

 

(船!? 不味い!!)

 

海の上には一隻の船が居た、一夏は福音を通り過ぎて、一気に船と福音の間まで加速し、福音から放たれた銀の鐘(シルバー・ベル)を雪片弐型で弾き返した。

 

「一夏!?」

「皆! あそこに船が!! このままだと戦闘に巻き込まれる!!」

「!?」

 

キラ達は船の方を視線を向けた。

予想外の事に驚きながらも全員に指示を出す。

 

「皆、船を護るんだ!」

「こんな時に!?」

「教師の方達は何をやっていましたの!?」

「そんな!? ここまできて!?」

「クッ!! 了解!!」

 

セシリア達は命令に従い、船を守る為、船と福音の間に移動したが、箒は命令を無視して福音に突撃を開始した。

 

「箒!! 攻撃中止だ!!」

「馬鹿な事を言うな! 折角のチャンスを投げ捨てる気か!?」

「下を見ろ! このままだと一般人を巻き込むぞ!」

「シン! お前ともあろう者が犯罪者の味方をすると言うのか!?」

 

海域を封鎖されたこの場所に船がいるという事は、密漁船という事になる。

箒は密漁船だというのなら構う必要など無いと判断して、密漁船に攻撃が当たるのも構わず攻撃を続行するべきだと主張してきた。

 

「キラさん! 如何するのです!!?」

「セシリア達はそのまま福音からの攻撃を防ぐんだ!」

「福音は俺達が……」

「いい加減にしろ! 奴らは犯罪者だぞ!? 庇う必要が何処にある!!」

「いい加減にするのは箒の方だ!!」

 

キラは珍しく大声で怒鳴り声をあげた。

それに怯んだのか箒は動きを止めてしまった。

福音が一気に飛び上がり、回転しながら大量の銀の鐘(シルバー・ベル)を撒き散らした。

その大半は、箒を射程に捕らえていた。

今の無防備な箒では、避けるのは無理だった。

そこにシャルロットが箒と福音の間に割り込み、二枚の物理シールド"ガーデン・カーテン"で銀の鐘(シルバー・ベル)を防いでいた。

 

「シャルロット!?」

「いけないよ、箒、君はそんな人じゃないはずだ」

 

だが、福音は狙いをシャルロットに変え連続して銀の鐘(シルバー・ベル)を放った。

銀の鐘(シルバー・ベル)の攻撃にシャルロットは吹き飛ばされてしまった。

福音はシャルロットに止めを刺そうと再び銀の鐘(シルバー・ベル)を放った。

今、シャルロットは吹き飛ばされた衝撃で体制を崩しており銀の鐘(シルバー・ベル)を避けることが出来なかった。

 

「しゃ……」

「シャルーーーーっ!!!!」

 

キラが動くのより先に、一夏が動いた。

エネルギー全てを瞬時加速(イグニッションブースト)に回し、シャルロットの前に出た。

向かってくる銀の鐘(シルバー・ベル)に一夏は、シャルロットの盾となり銀の鐘(シルバー・ベル)を全てに受けてしまった。

一夏は気を失い、白式の装甲は破壊され撒き散らしながら、海に向かって墜ちていく。

 

「一夏! いちかぁ!!!!」

 

堕ちていく一夏をシャルロットは受け止めるが落下のスピードを殺しきれずシャルロットも一緒に海に堕ちてしまった。

 

「一夏、シャルロット! シン、ルナマリア!! 一夏とシャルロットを回収!! セシリア、箒を連れて行くんだ!! 織斑先生! 作戦は一時中断! これより戦線から離脱します!!!」

 

通信を終了させたキラは、ドラグーンを操り、福音のスラスターを狙いながらビームを撃ち続け、そのままセシリア達の離脱の時間を稼ぐ。

シンとルナマリアは一夏とシャルロットを海から拾い上げる。

ルナマリアに腕を掴まれているシャルロットが無事であるのに対し、シンの腕で意識を失った一夏は頭から血を流しており、白式の装甲もボロボロであった。

セシリア達も大小取り乱しながら離脱を始めた。

 

「いちか……一夏ーーーーっ!!!!!!」

 

その戦場にシャルロットの悲痛な叫びが響き渡るのだった。


 
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