『陽炎』サンプル
見えているのに、そこにはいない。
触ろうとすると、消えてしまう。
その面影だけが徐々に増えていって、
この眼に焼きついたそれが、胸を締め付ける。
それはあくまで、何の変哲もない週末の夜だった。
俺が帝人と付き合うようになって一週間が経った頃の、春の終わりの金曜の夜。
付き合うことになって、まぁたまにこっそりキスしたり手繋いだりはしてたけど、あまりに帝人が恥ずかしがるせいで、基本的にはそれまでと対して変わらない関係だった。
だが、それも少し、寂しいものなのであって。
だからこそ。
この日も、いつものように放課後に帝人の家に遊びに来てたのだが、『遅くなっちゃったから泊めて!明日土曜で休みだし、いいだろ?』なんて上手いことを言って、なんとかお泊りルートを作り上げたのである。
それはいいのだけれど。
時は深夜二時過ぎ。
そのボロアパートの一室には、俺という存在を横にしておいて、すやすやと穏やかな顔で眠る帝人がいた。そして、暗闇の中でその顔を見ながら、一人悶々とする俺。
俺だって、健全な……いや、男と付き合ってて健全なのか?まぁいい、とにかく、いち男子高校生である。好きな人とは、やっぱりしたいことがある。
ちらりと隣の布団に目をやると、帝人が寝返りを打って俺に背を向けた。
そもそも、俺たち、付き合ってるのに別々の布団って何だよ。そりゃ、男二人が入るにはちと狭い布団だし、そろそろ少し暑くもなってきたんだけども……お前とくっついて寝たい、なんて思ってた俺の気持ちなんて、全く気付かないのな。鈍感野郎め。
もういい、と、俺がちょっと頬を膨らまして、目を閉じたときだった。
隣の布団から、何かが動く気配がした。帝人が起き上がったようだった。
「帝人、どうかした……」
わずかな希望を抱いて俺が目を開けると、俺の期待の数段上の状況が起きた。
帝人が俺に覆いかぶさってきたのだ。
「み、かど……?」
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9/16のコミックシティ福岡30に持っていく予定のセクソムニア新刊のサンプルです。本自体はカラナリちゃんの漫画との合同コピ本になります。R18なので年齢確認が必要です!!◆セクソムニアとは(概説):眠っている間に性的行動を取ってしまう夢遊病のようなもの。本人は自覚が無いため、目覚めても何も覚えていない。実際にある睡眠障害です◆Pixivに投稿したものと同じです。