「付近にて魔力反応!! しかしこれは転移魔法!?」
「あかん! 今すぐ追跡を行うんや!!」
なのは達を出てくるのを待っていたはやては、突然の魔力反応に驚き、しかもそれが転移魔法っていう事にまずいと思った。
同じ場所から出てくると思っていたが、期待には外れてもう一ヶ所出口があった方から出て行ったと分かったのである。
もちろん別の出口があるのではないかとは思っていたが、扉なのか分かりにくい扉を探すのはかなりの時間が掛かると思って諦めていたのである。
だがそれがなのは達を逃がすこととなってしまい、この後さらに追い打ちを掛ける事となる。
「ダメです。追跡を行おうとしましたが、場所の特定はできません!!」
「ちっ、逃がしてもうた……」
またなのはを捕まえるチャンスを逃してしまったことに、はやてはつい舌打ちをしてしまう。
そしてこの場所にもうなのは達が来ることはないだろうと思うと艦船ない全員に伝えるのだった。
「……総員、撤退や」
はやての言葉に全員従い、シグナムとスバルもヴォルフラムへと帰還するのだった――
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「ただいま戻りました」
なのは達がディメルニアへと帰還すると、デュナが代表して言う。
「戻ってきたか。それで、目的のものは手に入れてたのか?」
「うん、私の中に入ってるよ」
「そうか。なら明日まで休んでおいてくれ。明日はまた第97管理外世界に行くからな」
「うん、その事なんだけどちょっといい?」
明日の事について確認していると、なのははフィルノに話したいことがあると言う。
「ん、一体なんだ?」
「たしか昼ごろに動くのでしょ。その前の時間に先に第97管理外世界に一人で行ってていいかな?」
「……どういうつもりだ?」
フィルノはなのはの言葉を聞いて表情を一変させた。
なのはが言っている事はもしかしたら管理局に見つかる危険が伴うし、今なのはが管理局に捕まってしまうのはこの先かなりの支障を起こしてしまう。
だからなのはの言った言葉には少々驚いたのである。管理局に見つかってしまう可能性はなのはも重々と分かっているはずだし、フィルノが表情を一変させることも分かっているはずなのである。
それなのにそのようなことをなのははフィルノに言ったのである。危険が伴うとしても、先に寄って何かやっておきたい事があるのだろうとフィルノは思うが、それを承認するのは難しいことだった。
「ちょっと、やっておきたいことがあって」
案の定、なのはが言った答えはフィルノが想定していた事であり、なのはの言い草からしてあまり言いたくないのだろうとフィルノは思う。
それにこの前第97管理外世界に来たときはかなり急いでいたので、自分の生まれ故郷であるなのはにとって来たのに、何もせずに帰ってしまったので今度こそは仕事の前にやっておきたいのだろうとフィルノは思った。
まぁ、なのはをこのようにさせてしまったのは自分自身だし、巻き込んでしまったことにはフィルノも思う所はあった。
だからたまにはなのはの意見も受け入れても良いのではないかとは思うのだが、一人で行かせてもし管理局に遭遇したとしたら大変である。
結局のところ、なのはを行かせていいのかという事に悩んでいたのであった。
別に最初から反対しているわけではない。だが時期というのもあり、今行かせても大丈夫なのかと思うのである。確かになのはの魔力では大体の管理局員に勝てるが、今フィルノ達を追っているのはなのはの友達であり、なのはと同じくらい魔力がある。だから一対二以上で戦う事になったら負ける可能性だってあると思ったのである。
「……分かった。でもなのはの様子を監視するのはしてもいいか? もし管理局が来てもいいように」
「まぁ、それくらいは構わないよ。確かに一人の時にフェイトちゃんやはやてちゃんが来たら私でも勝ち目がなくなりそうだし……」
「それなら良い。とりあえず今日は休んで全員明日に備えろ。明日は俺もアリシアも行く予定だからな」
「私も行くの?」
明日もここで待機だと思っていたアリシアはフィルノに咄嗟に聞き返していた。
「あぁ、今日の様子をみて思ったが、俺とアリシアは居た方が良いと思ってな。あの時もう一つの出口がなければ戦う羽目になっていたし」
「言われてみればそうだね。今回は完全に三人に任せてみたらよりによって管理局側に気づかれちゃったし」
「そういう事だ。だから明日は俺とアリシアも出動する。エメリアはいつも通り待機をしてくれ。とりあえず今はそれぞれのんびりとしていて構わないぞ」
「じゃあ、私はそうさせてもらうね」
なのはは言葉に甘えさせて自分の部屋へと移動するのだった。
そのなのはに続いてか、アリシア、シルフィア姉妹、エメリアもそれぞれ部屋に戻ったり休息したりとするのだった。
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「さっきはごめん、気が動転してた」
「まぁ、フェイトちゃんが焦っていたことも分からなくないのやけどな。それに、私も指令という立場だから厳しく言ってしまったからごめんな」
はやてはなのは達を見失ってから少しして、管制室から離れてフェイトがいる部屋に居た。
さすがにはやてもフェイトに言いすぎたと思って様子を見に来て、ついでにさっきの事で謝りに来たのである。
「それにしても、まんまとなのはに逃げられたね」
「やはり見ておったんやな……」
「一応ここからでも見えるからね」
「でも、前にも言ったけどなのはをここまで変えた理由はなんだろうね?」
「それなりの理由があるのは分かっているんや。でも私たちはそれを管理局として止めなければならない」
「ほんと、複雑な気持ちだよね」
自ら管理局を入ったフェイトとはやて、そしてなのはであるが、なのはを含めてこうなることは誰も予想することはできなかっただろう。
なのはみたいに誰かが管理局から離反し、敵対するとなれば捕まえなければならない。組織に所属するという事はそういう事であるが、友達が敵となるという事をフェイトとはやては一回も考えていなかったのであった。
正義という言葉は人によってそれぞれ違う。なのはみたいに管理局の本性を知ってしまえば管理局が正義だとは思わなくなるし、逆に管理局の本性を知らないフェイトやはやてからは管理局が正義だと思うのである。人が知っている数によってその正義も変わってくるのだ。
「とりあえず、色々と考えたところで答えが出るわけでもないし、今日はのんびりとしてようか。なのはちゃんの方も動かないとは思うからな」
「分かった。はやてもたまには休んだ方が良いからね」
「そういう事や。それじゃあ私は一休みしてくるな」
そう言ってはやては部屋を出て、部屋の中にはフェイト一人だけとなるのだった。
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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