――ここは、一体どこだろう?
辺りは草原、そして周りには何もなく四方八方地平線が見えているだけであった。
その草原の中に一人、高町なのはが一人で立ち尽くしていた。どうしてこんなところにいるのか全く分からず、いつの間にか私服姿になっており、先ほどまで第97管理外世界にいた筈なのである。覚えていることはフィルノに渡された一片のテュディアを、持っていたもう半分とくっつけたときに突如テュディアが輝きだしたことまである。
このことからこれはテュディアの影響でこのような場所へ連れてこられたのだろうとなんとなく察した。だがそれ以上のことはわからなかったのである。そもそもテュディアについてなのはは詳しく知っていなかったし、どうしてフィルノがなのはに持たせたのかという事も分からないでいた。またこのロストロギアには一体何の効果があるという事は前から気になっていたことなのであり、それを知りたいとも思っていた。
フィルノは今のところこれしか集めておらず、さらにはこのテュディアに少し執着しているような感じが取れたのである。だからこそこのテュディアには何の力があるのかと知りたかったのである。
なのはがそう思っていると、突然この草原に強風が吹き荒れ、なのはは髪が乱れないように抑えていた。強風を抑えながら前方を見ると、一人の女性がいつの間にか立っていた。金髪でショートヘアーの髪に青いリボンが後ろに付いており、目は右目が翡翠で左目が紅玉のオッドアイをして王女らしい服装を着ていた。
なのはは突然目の前に彼女に現れたのに驚いたが、それよりも目の前の人物を見て驚いているようだった。管理局に所属していれば、誰もがしているである過去の人物であったからだ。
「……この場所に来るというのは初めてだな。これから先、誰もこの場所に来る者は居ないと思っていたが」
「どうして、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトが私の目の前に!?」
目の前にいた人物は、聖王と呼ばれておりヴィヴィオの母体となった本人、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトであったのである。
どうして彼女がこんな場所におり、そもそもここは一体何処なのか。その他にもどうしてこんなところに自分はいるのかと、なのはは様々な疑問が浮かんでくるのであった。
そうなのはが疑問に思っているだろうと、突然オリヴィエがなのはが思っているだろう疑問に答えていくのだった。
「まずこの世界、いやこの空間は君が持っているエクスティアとカリベリティアの二つを、私の子孫がまた手にしたときに発動するようにした時に現れる空間だ」
「エクスティアとカリべリティア?」
「君が持っている紅色と翠色の丸い宝石形になっているもだ。今の名前だと
「なっ!?」
その言葉に、なのはは驚きを隠せないでいた。一つはテュディアだと想像ついていたが、もう一つがまさかの今まで愛用していたなのはのデバイス、レイジングハートだと思いもしなかった。
そういえば、ユーノからレイジングハートをどうやって手に入れたのかという事は今まで一度も聞いたことがなく、レイジングハートを遺跡発掘をしているときに偶然デバイスを拾ったという事も考えられたのであった。そうであったのならば、デバイスだろうとロストロギアであったという可能性はあり、そもそもなのはぐらいではないと使いこなせなかったという事も考えれば、確実な可能性ではないがあり得ることであった。
そんな驚いているなのはをみて、オリヴィエはまた言い始める。
「そんなに驚いているのならばエクスティア、レイジングハート本人に聞いてみるといい。もともと意志なんて持たせたつもりはなく、時が経つにつれてデバイスへと変えられたのだろうと思うが、どうやって作られたかは分かるだろう?」
「そうなのレイジングハート?」
〈……本来なら、このことはマスターが亡くなるまで伝えたくなかったのですが、こうなってしまった以上仕方ありませんね〉
なのはの言葉に、レイジングハートは渋々であったが、オリヴィエが本当のことを言われてしまったので仕方なく言い始めるのだった。
〈私が作られたのは古代ベルカ時代、まだマスターオリヴィエがゆりかごによって大規模次元震を起こす数年前、まだ私が意志を持たなかった時期でありますが私はオリヴィエと当時その配下にいたシルヴェルンの一族によって作られました。隣にいるテュディアと一緒に〉
「そう、私がこの先の子孫たちが私の国が危ういとなった時の為にな。結局、その役目は国は滅んだからなくなり、子孫がこれを使う事はないだろうと思ったのだがな。世界改変を望んだ時ぐらいしかな」
〈そして私とテュディアはマスターオリヴィエの子孫にしか使えないようにプロテクトされ、私の場合は他者が使えば使いこなせず、テュディアの場合は使えば暴走するようにされたのです。だから最初マスターに出会った時には驚かされました〉
この時、ようやくなのははフィルノがテュディアに少し拘っていた理由がわかったのであった。フィルノは私がオリヴィエの子孫だと知っており、世界を変えるために元々私を必要としていた。
だから最初私に昔の夢を見させていき、会おうとさせたのである。無理やり連れてくるわけではなく、管理局の実態を知らせていき、なのはがどうするか見ていたのだろう。もし自分がフィルノの思いに背いたらどうしたのだろうとは思ったが、たぶん何としてでも私を仲間にしたかったのかもしれない可能性は捨てられなかった。
なのははフィルノに利用されたという事に癪には思えたが、それでも管理局の正体を知らされて自ら望んでフィルノと一緒にいる。その意志はたとえ利用されていたとしても変わらないでいたのだった。
元の世界に戻ったらフィルノを一発ぶん殴ろう。なのははそう思うのだった。利用されたと思うとやはり我慢が出来なかったのである。
「さて、次の話に入らせてもらう。本来この空間はエクスティアとカリベリティアを二つ持った時に発動する空間であり、力が覚醒するわけではない」
「え、それはどういう――」
「話は最後まで聞け。この空間は君に力を手に入れる意志があるかを問うためにある空間である。意志がなれければ力を覚醒することはできないようになっている。もちろん邪な考えでもな」
「…………」
「だから問おう。君はどうして力を望む。力を手に入れて、何をするつもりなのだ?」
その疑問に、なのははすぐに答えられなかった。そもそも、この空間に連れてこられた事態が予想もしていなかったし、フィルノにテュディアを持たされた理由を知ったのもこの空間に来てからであったので、すぐに答えられなかったのである。
だが、力を手にするとしたら理由は一つだけだった。
「……私はこの腐った今の管理局を変える。人体実験などの内容な平和な世界に造り変える。たとえ親友と敵対しても私の意志は変えるつもりはない」
「…………」
なのはの言葉にオリヴィエは一度黙る。なのはの意志を見る限り、かなり本気であるのだろうと思った。それほどまでの意志が感じだれたのである。
そしてなのはの目を見ると、さらにその意志が感じられるのだった。自分を犠牲にしてでも成し遂げて見せおうという目であった。
「……そこまで意志が固いんだな。そこまでいうのならば、力を与えてもよいかもしれんな」
「それじゃあ!」
「だがまて、さっきも言ったがここで力を与えるわけではない。ある場所に行かないと力は手に入らないし、それについて私は知らないのでな。知っているのはシルヴェルンの一族のみだからな」
「じゃあ、そのシルヴェルンの人間に会えばいいの?」
「そういう事だ。さて、そろそろこの空間も消えるだろうから元の世界に戻るといい」
オリヴィエがそういった刹那、突然草原から一変して周りが真っ暗となり、オリヴィエの姿も消えていた。
そしてなのはは何が起こったのかとわからないまま、意識を失うのだった。
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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