No.467967

【獣機特警K-9】死闘!最上階の攻防【戦闘】

古淵工機さん

いよいよ戦闘開始。
さあ、ファンガルド警察最大の危機を脱することは出来るか!!

2012-08-10 01:19:38 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:871   閲覧ユーザー数:819

さて、その頃のファンガルド・プラネットポリス本部…

その最上階の総監室に警察官が数名入ってきた。

アイヴィーはその報告に驚きを隠せない様子であった。

 

「なんですって?反ロボット団体が本庁(ここ)を襲撃する?」

「ええ、既に暗殺部隊がここを嗅ぎつけているとか…」

「どうするんです総監!奴らはここのロボット警官を…」

 

しかしアイヴィーの思考はいたって冷静そのものであり、自分が置かれている状況を正確に把握していた。

そしてしばらく目の前の警官たちの話を聞いていたが、突然彼らに対して鋭い眼光を浴びせたのだ。

 

「…ところであなたたち、見ない顔だけど?」

「は、はぁ、先日配属されたばかりで」

「でもヘンね。それだったらデータベースに登録されていてもおかしくないわ」

「う…!?」

確かにアイヴィーの言うとおりである。

ファンガルド警察の警官は、採用が決まった時点でデータベースに登録が成される。

そしてその登録情報については、即座に全警官に通達がなされるようになっている。

ましてアイヴィーはロボットなので、登録情報は自分の電子頭脳にもインプットされていなければおかしいはずなのだ。

 

…そのことを踏まえたうえで、アイヴィーは静かに、そして重々しくも強い調子で言った。

「…あなたたちね?私の命を狙いに来た刺客って言うのは」

「…クク、ククク…まさかこうもあっさり見抜かれるとはね…流石ロボット、良くできてやがる」

そう、実は彼らこそがアイヴィーの命を狙いに来た刺客だったのである。

暗殺者は即座にレーザーナイフを取り出し、アイヴィーに向けながらこう言った。

「もうすこし油断させるつもりだったがそうも行かなくなったな…もっとも、バレた時点で貴様を破壊するつもりだったがな…」

「あら、そんな子供だましで私を倒せると…」

アイヴィーが犯人グループと対峙していたその時だった。

「あぐ…!?」

突然、光の弾丸がアイヴィーの左肩を掠めたのだ。

左肩に開いた穴から火花を噴き出し、膝をつくアイヴィー。

しかし苦痛に顔を歪めながらも、その冷静な思考はなお健在だった。

(レーザーが飛んできた角度と熱量、それに減衰率…隣のビルからの射撃か…!)

「はっはっはっは!スナイパーだっているんだぜ!これで終わりだな、総監殿?」

ナイフをちらつかせながら歩み寄る犯行グループ。

すると開け放たれた扉から、正真正銘の警察官が駆けつけたのだ。

「総監!ご無事ですか!?」

「…ちっ、ジャマしやがって!動くな!動けばお前たちの愛する総監殿はスクラップになるぜ!?」

「ぐ!?」

「さあどうする!?ま、おまえらが大人しくしててもじっくり解体ショーを見せてやるけどなヒャッヒャッヒャ!」

「き、貴様…」

と、犯行グループに食って掛かろうとした警官に、アイヴィーの怒号が響く!

「来ないで!」

「し、しかし総監…今はあなたの命が…」

「私のことは構わないで…あなたたちはこの階にいる警官を全て避難させなさい」

「ですが!」

「全員の避難が終わったらすぐにこの階を封鎖するのよ。いいわね…」

「そ、それではあなたはどうなるんです!?」

戸惑う警官に、さらに響くアイヴィーの怒号。

「いいからすぐにやりなさい!これは総監である私の命令です!!」

「…ですが、あなたは今、命を狙われて…」

「…これは私の戦いなの。あなたたちを巻き込むわけには行かないのよ」

その言葉を聞いて、警官はしばらく立ち尽くしていたが…

「…わかりました。どうかご無事で!!」

と敬礼するなり、すぐに他の警官の避難に向かったのであった。

 

しばらくすると、レーザーナイフの男がニタリと笑い、舌なめずりをしながらアイヴィーに歩み寄る。

「おやおやぁ?せっかく味方が来たのに追い出すなんてずいぶん強気だなぁ?お人形さんよ?」

「…他の警官を巻き込みたくないだけよ。そもそも命を狙われているのは私なんだからね」

「だったらお望みどおり…」

と、男がレーザーナイフを振り下ろそうとしたときだった。

「でやあぁぁぁあああ!!」

突然通気ダクトが破られ、中からイヌ形ロボットが現れた。K-9隊のグーテ、ウー、クオンだ!

「あ、あなたたち…どうして!?」

「ヤな予感がするから来てみたが…マジで命を狙われてたとはな」

「アイヴィー総監はとってもいい人ね…だからグーテたちが絶対に守るのね!!」

「くそ!ジャマしやがって…デク人形どもが…てめえらもそのピューマ人形と一緒にスクラップになりたいみたいだなぁ?」

と、逆上する犯人にクオンが食って掛かる。

「何さ!ロボットだって毎日一生懸命に未来を目指して生きてるって言うのに、その未来を奪うなんてボクはごめんだね!」

「黙れ!人に作られた道具のクセに、生きるも死ぬも関係ねえだろうが!だったら俺たちがぶっ壊そうが俺たちの勝手…」

と、犯人がナイフを手に突進しようとした瞬間、クオンのレーザーリボルバーが相手のレーザーナイフを撃ちぬいた。

「…さあ、観念するんだ。大人しくお縄に…」

と、クオンが犯人に近づいた、その時!!

突然、一条の閃光が走ったかと思うとクオンの腹部を直撃する!

「…え?」

クオンの腹には風穴が開き、破れたアンダーウェアと人工外皮の下に隠れていた内部メカが、火花とともに露出していく。

「クオン!?…てめえ、何しやがった!?」

「フフフ…」

食って掛かるウーに、犯人は狂ったような笑みを浮かべていた。

そう…先ほどのスナイパーがクオンを撃ったのだ。

「クオンちゃん!しっかりして!クオンちゃん!!」

倒れていくクオンの機体(カラダ)を、急いで抱きとめるアイヴィー。

「へへ…あんなところから撃ってくるなんてね…まったく…気が…つかなかっ…た…」

そう言うと、クオンの瞳からは少しづつ光が消えていく。安全装置が作動し、動力が停止したのだ。

 

「クオンちゃん…どうして…!」

アイヴィーの瞳からは一粒、二粒と涙がこぼれていた。

「てめえ!よくもクオンを…」

と、叫ぶウーに、さらにスナイパーからの攻撃が飛んでくる。

ビームはウーの…やはり胴体に命中した!!

「ぐわぁぁあああ!!」

「ウー!?」

「ヒャハハハ…いいねえいいねえ、目の前で味方の人形が壊れていく気分はどうだ?」

「くっ…いい加減に…!」

しかし…犯人はウーを甘く見ていた。

「あっちぃ…あーぁ、また服買わなきゃだよなこれ…」

なんと、ウーは衣服だけが吹き飛んでおり、本体はまったくの無傷だったのだ!

確かに、ビームは胴体に命中していた。だが、ウーはもともと軍用として設計されたロボットだ。

あの程度のビームを受けても装甲表面の塗料が焼け焦げる程度で、

機体表面には対ビームコートが施されていたためにダメージをあまり受けなかったのだ。

「さァーて…撃ってきたのは隣のビルの…あいつか?」

そう言いながらウーは身構える。そして…

跳躍(チャオユエ)!!」

なんと足の裏の空気圧スラスターを作動させ、隣のビルへと飛び移り…

 

割れたガラスの先には、顔面に膝蹴りを喰らい倒れ込む、トラ形ファンガーのスナイパーの姿があった。

 

「おーい!厄介なスナイパーは倒したぜ!!」

「ご苦労。…さあ、あなたもお縄についてもらうわよ」

「…クックック…」

アイヴィーが男に詰め寄る。しかし男はこの期に及んでもまだ不敵な笑みを浮かべている。

「…こうなったら最後の手段だ…こいつでてめえら全員ふっ飛ばしてやる」

男がジャケットを脱ぐと、なんとそこには爆弾が結わえ付けてあり、男の左手にはその起爆スイッチが握られていた。

「そ、それは…!?」

「アイヴィーさえ破壊できれば俺は死んでもいい…そうすりゃひとまずの目的は達成…」

男が起爆スイッチを押そうとしたその時だった。

「ぐっ!?し、しまった!!」

機能を停止していたはずのクオンが…男の持っていた起爆スイッチをリボルバーで弾き飛ばしたのだ。

「クオン!?動けたね!?」

「…ここで…死なれたら…アイツの後ろにいる組織のことが分からずじまいだもんね…」

「クソ…何故だ、何故動ける…!!」

一気に青ざめる男に、アイヴィーは詰め寄ると…

「…どうやら勝負は決したようね。さぁ、例の組織について洗いざらい話してもらおうかしら?」

と、以前アルジャンを逮捕したときと同じような冷たい眼差しを向けつつ、男に手錠をかけたのであった。

そして事件解決直後、ウーはエルザに事の顛末を報告していた。

『…こちらエルザ。ウー、状況を伝えろ』

「こちらウーだ。暗殺グループはすべて排除した。もう心配はいらねえ。犯人どもは全員生け捕りさ。ヤツらにはあの組織について話してもらわにゃなんねーしな。ただ…」

『ただ?』

「クオンがやられちまった…どてっ腹にスナイパーの攻撃を受けてな」

『な、なんだと!?』

ウーはまるで残念そうな表情を浮かべながら、さらに続ける。

「いいヤツだったのに…なんであいっ…いででででで」

と、背後からウーを羽交い絞めにするロボットが一人。まだ腹に穴が開いたままのクオンだ。

「あのさぁ…勝手に殺さないでくれるかなぁ?」

「なんだよ!俺の演技をジャマしてんじゃねえよ!」

「ボクはまだ死んでないよ!…隊長、そういうわけでボクはお腹に穴開いちゃったけど何とか生きてます。総監も左肩を撃たれたみたいだけど無事だってさ」

『…そうか、みんなよく…』

と、エルザが言いかけたその時、通信にアイヴィーが割り込んできた。

「待って!…私から一言…いいかしら?」

『はい…なんでしょうか?』

「ごめんなさい、また私のミスであなたたちを巻き込んでしまって…クオンちゃんをあんな目に…」

するとエルザは一つため息をつくと、すぐにこう返した。

『総監、そう気になさらないでください。あなたはあの状況で最善をつくそうと考えておられた。もしも最上階から他の警官を避難させる命令を出されていなかったら、今頃もっと多くの命が…』

「そうですよ、ボクはご覧の通りピンピンしてるんだから。気に病むことはないですよ」

「みんな…」

『それで、犯行グループのメンバーは…?』

「ええ、自爆を図ろうとしたみたいだけどすぐに阻止したわ。もしここで死なれたらあの組織の足取りは掴めなくなってしまうからね」

『了解です。…というわけだ、全員帰還しろ。クオンはそのままロボットメンテナンスルームへ直行だ。わかったな』

「了解!!」

 

…こうして、ファンガルド警察最大の危機はひとまず去った。

だが、決して油断してはならない。この世に闇がある限り、ファンガルド警察の戦いに終わりはないのだ。


 
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