No.466366

機動戦士ガンダムSEED白式16

トモヒロさん

16話 フレイの選択(後編)

2012-08-07 02:03:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3904   閲覧ユーザー数:3734

ハルバートンをアークエンジェルに迎えた後、一夏は誰もいない食堂に来ていた。いつもなら今頃食堂は賑わい始めるのだが、民間人の人達は地球へ降りる準備で大忙しなので、ここに来る人はほとんどいない。なので一夏は一人で宇宙食を食べていた。

 

 「ん?」

 

 ドアが開く空気の抜ける音がした。首を動かし、自分の持っていたスプーンから目を話すと、そこには小さな女の子が入ってきた。

 喉が乾いたのだろうか女の子はウォーターサーバーの横にあったコップを取り出そうとする。しかし、女の子が一夏に気づいたのか、抜きかけていたコップを離しトテトテと近寄り話しかけてくる。

 

 「おにいちゃん、“ぐんじん”さん?」

 「え?…あぁ、そうなる…のかな」

 

 一夏はそう曖昧に答える。しかし否定しなかったのは、おそらく自分は軍の戦力に加えられると思っているからだ。

 

 「もしかして、もうひとつの“しろいろぼっと”の“ぱいろっと”さん!?」

 「あぁ」

 「ほんと!えっと…んと」

 

 女の子は一夏が白いロボット、白式のパイロットだと分かると、肩からかけていたポーチの口を開き、何やら、探し始めた。

 

 「あった!はい!」

 

 取り出したのは、花の折り紙だった。それを女の子はにこやかに差し出す。

 

 「いままで、まもってくれて、ありがとう!」

 「これは…もらっていいのか?」

 「うん!」

 「はは、ありがとう」

 

 一夏がそれを受け取ると女の子は本来の目的に戻り、抜きかけていたコップを取り、水を汲んで出て行く。

 

 「がんばってね!ぱいろっとのおにいちゃん!」

 

 女の子そう言うとドアが閉まり、駆けて行く足音が遠のく。

 一夏はその手に持った花の折り紙を見る。そしてもう一度ドアが開き、そには。

 

 「あ、あなたは…!」

 「ふむ、それはあの子からのプレゼントかね?」

 

 先ほどMSデッキで見たばかりのハルバートンがいた。

 ハルバートンはそのまま食堂へ入り、一夏は慌てて席を立つ。

 

 「ははは、そんなに怯えんでもいいだろう織斑 一夏君」

 「え、どうして俺の名前を…」

 「報告書で見ているんでね。っと言っても私だけしか見ておらん極秘資料だが」

 「極秘?」

 

 ハルバートンは隣の席に腰を下ろす。一夏もオズオズと椅子に腰を戻しながら聞く。

 

 「ああ、その報告書を渡してもらったのはラミアス大尉からだ」

 「艦長から!?」

 「だからそう怯えるな、別に君をモルモットにしようというわけじゃない。君は地球に降りたら自由だ。まあ、少し監視が付くとおもうが」

 「え?!」

 

 一夏はハルバートンの言葉に驚いた。いままで悩んでいた事がバカだったんじゃないかと思う。一夏の頬は自然に緩んでいた。

 

 「あ、でも、どうして、ですか?白式は俺しか使えないし、そしたら、その…」

 「自惚れるなよ」

 「!」

 「君の言わんとする事は分かる。確かに君と君の乗るMSの力は魅力的だ。軍にはな。だが戦争は君一人がいて、左右されるものではない」

 「…それは、分かります。だけど…」

 「君は、いったい何のために戦ってきた?」

 「それはこの艦のクルーと避難してきた人達を護るため…あ」

 「そう、報告書にもあったが、君が自ら戦いに赴いた理由は、戦うことのできない彼等を護るため、だったな。ならば君の使命はもう達成された筈だ」

 「はい…」

 「ここまでアークエンジェルとストライクを護ってくれて感謝する」

 

 そう言ってハルバートンは笑って席を立ち、一夏に黒いファイルを渡す。

 

 「これは?」

 「君の戸籍だ。といってもどれもこれもが嘘まみれだがね。戸籍がなければ不便だろ」

 

 そこに入っていたのは、この世界の織斑 一夏の“設定”ついて書かれたものだった。しかし、この世界に本来ならば存在しないはずの一夏にとってありがたいものである。

 

 「良い時代がくるまで、死ぬなよ」

 

 ハルバートンはそれだけを言い残し、食堂をあとにした。

 一夏はさっそファイルを開くと一番最初に顔を見せたのは、除隊許可証だった。

 

 「そろそろ、シャトル出発か」

 

そして一夏がシャトルへ向かおうとした刹那。

 

 『総員第一種戦闘配備!繰り返す!総員第一種戦闘配備!』

 「ッ!?こんな時に!」

 

 ついそのままロッカールームへ駆け出そうとするが、もう自分はその“総員”から外れてる事を思い出す。そしてふとての中のものを見つめた。

 

 (君が自ら戦いに赴いた理由は、戦うことのできない彼等を護るため、だったな。ならば君の使命はもう達成された筈だ)

 「そうだ…俺はまだ護りきれていない」

 (いくぞ、白式!)


 
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