No.464553

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 230

soranoさん

第230話

2012-08-03 23:47:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:996   閲覧ユーザー数:931

~メンフィル大使館内・リウイ大使の部屋~

 

「……誰かしら?」

エステル達が部屋に入るとそこにはリウイ、ペテレーネ、そしてセオビットが紅茶を飲んでいて、エステル達に気付いたセオビットは首を傾げた。

「あら、お久しぶりですね。シェラザードさん、エステルさん。」

エステル達に気付いたペテレーネは優しく微笑んだ。

「……お久しぶりです、師匠。」

「聖女様!こ、こんにちは!」

ペテレーネに微笑みかけられたシェラザードは軽く会釈をし、エステルは緊張した様子で答えた。

「………ほう。まさかリベールの姫も共にいたのは少々、驚いたな。」

「……陛下とは学園祭の時以来ですね。何の前触れもなく訪ねて来てしまい、申し訳ありません。」

「別に気にしなくていい。それより……話には聞いていたが、まさかお前が彼女達と共にいたとはな。」

クロ―ゼと軽い会話をしたリウイは目を細めてオリビエを見た。

「フッ。漂泊の詩人にして、愛の伝道者、オリビエ・レンハイム。ボクのような一介の詩人が”英雄王”と名高き貴方に会えて、光栄です。」

「………それが今のお前の名か?」

自己紹介をするオリビエにリウイは静かに問いかけた。

「……何を言っているのかわからないが、先ほども紹介したように漂泊の詩人にして、愛の伝道者、オリビエ・レンハイム。それがボクの真の正体さっ!」

「やめんかい!すみません、聖女様。”こんなん”を一緒に連れて来てしまって……」

「……ギルドに待たせるべきだったかしら?」

「あはは………」

リウイ達を前にしていつもの調子で話すオリビエをエステルは睨んだ後ペテレーネに謝罪し、呆れた表情でシェラザードが呟き、シェラザードの呟きを聞いたクロ―ゼは苦笑していた。

「え~?オリビエさんだけ、仲間外れにするなんて、可哀想だと、ミントは思うよ?」

「さすがはミント君!ボクの味方は君だけだよ……という事で君の柔らかい頬に感謝の気持ちを込めて、ボクのキスを……」

「こ~の~スチャラカ演奏家が~!!いい加減黙りなさい!!」

「ハイ…………」

エステルの怒気に恐れたオリビエは肩を落として、答えた。

「クスクスクス。パパ達の前でいつもの調子でいるなんて、エステル達ぐらいよ?」

「………変な人間達ね。」

「フフ………プリネ達もこの中にいて、楽しんでいたんでしょうね。」

「……………………」

エステル達の様子を見てレンは上品に笑い、セオビットは興味なさげな表情でエステル達を見て、ペテレーネはエステル達の様子を微笑み、リウイは1人何も語らず、エステル達に注意されているオリビエを見ていた。そしてエステル達はペテレーネが出した紅茶やお菓子をご馳走になりながら、リウイ達を訪ねて来た事情を話した。

 

「…………なるほど。リフィア達が去った後、どうやら色々あったようだな………」

「エステルさん………」

エステルからリフィア達にヨシュアの事情を話すつもりだった事を聞いたリウイは考え込み、ペテレーネは心配そうな表情でエステルを見つめた。

「…………………………」

エステルの話を聞き、かつての自分と重ね合わせたセオビットはエステルを見続けていた。

「セオビットお姉様?どうしたの?」

セオビットの様子に首を傾げたレンは尋ねた。

「………別に。見つかるといいわね、そのヨシュアって奴。」

「えへへ、ありがとう!えっと……」

「我が名はセオビット。父様――リウイ様の使い魔の1人よ。」

「あたしはエステル・ブライト!よろしくね!」

「(希望に溢れた今まで見た事がないタイプの人間ね。)ええ。」

明るく自己紹介をするエステルにセオビットは頷いた。

「ねえねえ、エステル。そういえば聞きそびれたけど、『結社』って何なの?」

「えっと………それは………」

レンに尋ねられたエステルはクロ―ゼを見た。

「…………話しましょう、エステルさん。いつまでも隠し通せるとは思えませんし。」

「そうね………実は………」

そしてエステル達は『結社』の事や『実験』、『執行者』の説明をリウイ達に話した。

 

「ふ~ん。………廃坑の特務兵達をレンに無断で勝手に操ったのはその『執行者』?だったかしら。その人だったんだ。」

「……………『結社』に『執行者』、そして『実験』か。という事は今、ロレントに発生している濃霧は『結社』の『実験』が高い事が考えられ、また『執行者』がいる可能性も非常に高く、それをお前達が調べている訳だな。」

「そ、そこまで見抜くとは………」

「そんなに詳しい説明はしていなかったのに………さすがですね………」

リウイの推測にエステルとシェラザードは驚いた。

「……………『結社』が何を考えているか知らんが……俺達にも刃を向けるというのなら振りかかる火の粉は、はらうのみ。どうやら、新たな戦いの時が近いようだな………」

「あはは………メンフィルからしてみれば、『結社』も大した事ないかもしれないわね。」

リウイの言葉を聞いたエステルは苦笑しながら言った。

「何か勘違いしているようだが、俺は敵対する者には例えどんな者であろうと油断や慢心はせん。……こちらも『結社』とやらに備えておく必要があるな。」

「ふふっ………ねえ、父様。『執行者』や『結社』に属する者をたくさん殺せば、褒めてくれるかしら?」

「あ~。それ、レンが言おうとしていたのに、セオビットお姉様ったらずるい~。」

「ハア………お前達、客人達の前でそういう会話はやめておけ。」

(な、なんか物騒な会話になって来たわね……)

(”覇王”達が敵になれば、『執行者』達も哀れよね………)

(あ、あはは………けど、リウイ陛下達と協力する時が来るのも近いかもしれませんね。)

(フム。という事は麗しきメンフィルの姫君達や目の前にいる聖女殿達と戦う時が来るという訳だね……フフ、その時が楽しみだよ♪)

(えへへ……その時はツーヤちゃんとまた一緒に戦えるからミント、楽しみだな!)

セオビットやレンの物騒な会話にエステルは冷や汗をかき、シェラザードは今まで出会った執行者が哀れに思えて来て、クロ―ゼやオリビエ、ミントはそれぞれさまざまな気持ちを持っていた。

「ふふっ。何はともあれ戦いの時が近いようね。……父様。戦の勘を取り戻すためにミルス周辺の魔物共を狩って来るわね♪この辺の雑魚だと、あまりにも弱すぎて話にならないもの。」

「あ、レンも!」

「………好きにしろ。」

「はーい♪早く行こう、セオビットお姉様♪」

「ふふっ………どちらが狩った数が多いか、また勝負しましょうか。」

そしてセオビットとレンは楽しそうに会話をしながら部屋から出て行った。

「なんか2人共、凄く仲がいいわね……まるで姉妹みたい。」

レン達が去った後、エステルは唐突に呟いた。

「どこか共感する部分があるのだろう。それで?今日の用はもう、終わりか?」

エステルに答えたリウイは尋ねた。

「あ、うん。………あ。それとは別に一つ聞きたい事があるんだけど。」

「エステル?」

「ママ?

「一体何だ?」

エステルの言葉に心当たりがないシェラザードやミントは首を傾げ、リウイは尋ねた。

「その前に………みんな、ちょっと部屋を出て待っていてくれないかな?これはあたしだけの問題だし。」

「………わかりました。」

「………ママ………」

「そんな心配な顔をしなくても大丈夫よ!ちょっと気になっている事を聞くだけだから。」

そしてクロ―ゼ達は出て行き、部屋の中にはリウイとペテレーネ、そしてエステルの3人だけになり、エステルは口を開いた。

 

「あのね………リウイや聖女様の知り合いで黒髪で水の魔術を使って、槍で戦う女の人と金髪で剣にえ~と”聖炎”だったかな?その炎を剣に宿らせて戦う女の人っていない?」

「……………黒髪に水の魔術に槍技。そして金髪に聖炎剣………だと……………!」

「そ、そのお2人って………まさか……!リ、リウイ様……………!」

エステルの話を聞いたリウイは目を見開いて驚き、ペテレーネは信じられない表情をしてリウイを見た。

「あ、やっぱり2人共知っているんだ。」

リウイ達の様子を見て、エステルは1人納得していた。

「………………………どこでその2人の事を知った。」

「えっと……武術大会の決勝戦であたし達とカーリアンが戦った事は知っている?」

「ん?ああ。カーリアンがお前達に敗北した話を聞いて、聞かされた時は正直、耳を疑ったぞ。」

エステルに尋ねられたリウイは一瞬何の事か理解できなかったが、すぐに思いだして答えた。

「それで、武術大会でカーリアンと戦った時、カーリアンに気絶させられちゃってね………それで気付いたら初めて聞く声なのに聞き覚えのある声が二つ聞こえて来て、それでその2人は自分達の力を貸せばカーリアンに勝てるかもしれないけど、

リフィアやリウイ達があたしをあたしとして見なくなるかもしれないぞって、訳のわからない事を忠告したのよね~。」

「「…………………………………………」」

エステルの話を2人は信じられない思いで聞いていた。

「それで一瞬2人の顔が見えて……ね。それ以前にも何度か2人の後ろ姿がいきなり頭に思い浮かんで、その人達が自分のように思えて、変な気分になるのよね~。それであたしが見た2人の女の人達はリウイ達を知っている様子だったし、後リウイと肩を並べて戦っている状況とか見えた事があるから、尋ねたの。」

「…………………………」

(まさか、あのお2人まで転生していたなんて……………それもよりによってエステルさんに……………)

「あたしはその2人の事を知っておくべきだと、自分で思っているの。だからもし、知っていたら教えて下さい!」

そしてエステルはリウイ達に頭を深く下げて、頼んだ。

 

「……………まさかあの2人の話がお前の口から出て来るとは思わなかったな………」

「え?」

リウイが呟いた言葉にエステルが首を傾げていているのを見たリウイは机の引き出しから2つの小さな肖像画を出して、エステルに渡した。

「お前が見たという2人の人物………恐らくその2人だろう。」

「あ…………!そう!この人達よ!この人達って一体誰!?」

エステルはそれぞれの肖像画にうつっている人物――ラピスとリンを見た後、血相を変えてリウイに尋ねた。

「黒髪の女性はセルノ王女、ラピス・サウリン。金髪の女性はバルジア王女、リン・ファラ・バルジアーナ。………2人とも俺達の戦友であり、そして俺の側室だった者達だ。」

「ラピス………リン…………」

リウイから出た人物の名前をエステルは繰り返して呟いていた。

「遠い昔に逝った2人が何故お前の前に姿を現したかまではわからんが………もしかしたら、お前の中に2人の魂が宿っているかもしれないな。………その影響で2人の姿が何度も見えたかもしれん。」

「魂が宿るってどういう事??」

「言いかえれば、”転生”をする事です。リウイ様が推測しているのはエステルさん。貴女がお二人の生まれ変わりの可能性である事を指摘しているんです。」

「………………………」

ペテレーネの説明にエステルは黙り、何も返さなかった。

「俺達がお前を”お前”として見なくなるかもしれないという言葉は2人は俺達がお前をお前の中にいる”自分達”としてしか見なくなる事を言っていたのだろう。」

「………………………………」

「エステルさん、あの…………」

何も答えないエステルを心配してかペテレーネが話しかけたが

「………そっか。あの言葉はそういう意味だったんだ。」

「何?」

「え?」

1人納得しているエステルに2人は首を傾げた。

「……ありがとう!お陰でずっと知りたかった事を知れたわ!」

「………お前は自分の中にお前とは別の魂が宿っているかもしれない事になんとも思わないのか?」

「誰があたしの中にいようとあたしは”あたし”よ!例えあたし以外の人達があたしの中にいても……それも含めてエステル・ブライト……この”あたし”なんだから!」

リウイの疑問にエステルは太陽のような笑顔で答えた。

「「…………………………」」

迷いのないエステルの笑顔を見た2人は驚いた表情でエステルを見つめていたが

「フッ………まさかそんな答えを聞く事になるとは思わなかったな………」

「ええ。………あのお2人も貴女に転生した事をきっと誇りに思っているでしょう………」

リウイは口元に笑みを浮かべ、ペテレーネは優しい微笑みをエステルに見せた。

 

「えへへ……あ、それとさっきから気になったんだけど、あたしにはエステルっていう名前があるんだから!”お前”なんて何度も言わないでよ!」

2人の言葉を聞き、照れたエステルはリウイに指摘した。

「………そうだったな。悪かったな、”エステル”。」

エステルの指摘に一瞬呆けたリウイだったが、やがてどこか優しい雰囲気を纏わせ、口元に笑みを浮かべて言った。

「うん!それでよし!」

「フフ…………」

リウイとエステルの会話をペテレーネは微笑ましそうに見ていた。

「じゃ、話も終わった事だし、今日は失礼するわ!プリネ達が帰ってきたらできれば、ギルドに連絡をくれないかな?ミント、ツーヤに会いたがっていたし。後、プリネとも今までの事を話したいし。」

「ん?ああ、帰ってきたらギルドに行くよう伝えておこう。」

「ありがとう!本当ならリフィアやエヴリーヌにも会いたいんだけど、リフィア達はなんか重要な会議に出ているらしいから、無理は言わないわ。」

「……お前達が来た事は後で2人に伝えておこう。」

「うん。……じゃあ、失礼します。」

そう言って、エステルが退室しようとしたその時、リウイがある事を思い出して呼び止めた。

「……待て。」

「ん?どうしたの?」

「……お前の同行者のオリビエという者………その者に少し話しておきたい事があるから、1人で入って来るよう伝えてくれないか?」

「あのスチャラカ演奏家に~?…………あ、そっか。確か、シェラ姉の話によるとこっちでもさんざん迷惑をかけたらしいからね………注意するのも無理ないか。今、オリビエを呼んで来るわ!」

そしてエステルは部屋を出て行った。

 

「それにしても、まさかあのお2人がエステルさんに転生しているとは思いませんでしたね、リウイ様。」

「ああ。グランセルから帰って来たカーリアンが俺にエステルがとんでもないものを隠している事を言っていたが、あれはこの事だったのだな………もしイリーナが生きていたら、エステルに会わせたかったな………」

「リウイ様。………きっと、その日は近いと私は思います。」

「……………そうだな。」

ペテレーネの言葉にリウイは静かに頷いた。そしてその時、オリビエが部屋に入って来た。オリビエに気付いた2人は気を引き締め、真剣な表情でオリビエを見た。

「フッ……エステル君から聞いたけど、何やらボクにお話があるようで?”英雄王”と名高い陛下もボクの曲を聞きたくなったのかな♪もし、よければ一曲……」

オリビエはいつもの調子でリウイに話しかけたが

「………芝居はそこまでにしてもらおうか、エレボニアの皇子よ。」

「…………………………何の事ですかな?」

リウイがオリビエに向けて言った言葉を聞いたオリビエは驚きの表情を一瞬見せた後、すぐに表情を戻してリウイに尋ねた。

「ペテレーネ。結界を。」

「はい、リウイ様。」

リウイの指示に頷いたペテレーネは詠唱をした後、部屋全体に魔力を覆わせた。

「………一体何をしたのですかな?」

ペテレーネの行動に首を傾げたオリビエは尋ねた。

「………外に声がもれない特殊な結界をはらせた。………以前もペテレーネの弟子と共にここに来て、くだらん事をしていたようだが…………真の目的は俺自身が忠告しに来ると踏んで、俺と接触する為にわざとあんな真似をしたのだろう?…………オリヴァルト皇子。」

「…………………いや~、驚いたね。公式の場で、ましてや一度も会った事もないのに名前が知られているなんて、ボクも有名になったのかな♪……さて、改めて紹介をさせて頂きます。エレボニア皇帝ユーゲントが一子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールと申します。私のような庶子の者が”英雄王”と名高きリウイ陛下や”闇の聖女”と評されるペテレーネ殿に会えて、光栄です。」

オリビエ――エレボニア皇子の1人、オリヴァルト皇子はリウイの口から自分の真の名が出た事に驚いた後、皇族に対する挨拶の仕方で自己紹介をした。

「…………ゼムリア大陸のアーライナ教の神官長を務めさせて頂いているペテレーネ・セラと申します。」

「……メンフィル大使、リウイ・マーシルン。………滅多に公式の場にでない貴殿が何故ここに来たのか、話してもらおうか。」

そしてオリヴァルト皇子はリウイと少しの間、話をした後部屋から出て”オリビエ”に戻って、エステル達と合流し、エステル達にリウイと何を話したかを追及されたが誤魔化した。

 

その後エステル達はブライト家によってレナにお茶をご馳走してもらった後、霧の調査に戻り、調査を終えたエステル達はギルドに報告しに行く為にロレントに戻った……………

 

 

 

 


 
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