「はぁ、はぁ……」
「いい加減、あきらめたらどうなの? 私の転移魔法の速さからして、私に攻撃が当たることはない。逆にフェイトは私の攻撃から避けられたとしても、攻撃が当たる可能性がある。そんな不利な状態でまだ戦うというの?」
フェイトとアリシアの戦いは、アリシアの一方的な戦いとなり、フェイトの体中は切られた跡がたくさんあった。
だがそれでもフェイトはそんな状態でも諦めようとしなかった。
「私は、管理局としてあなたたちを捕まえる。たとえこの身がどうなろうとも」
「そう。ならば私のデバイス、グレイブで死になさい」
アリシアはフェイトに止めを刺そうと動き出すのだった――
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「『ディバインシューター』!!」
なのはは動きながらも、シグナムに放っていく。
シグナムはなのはの攻撃を避け、一気になのはに近づこうとする。
だが、なのはもそうはさせないとさらに攻撃を繰り返す。
「『アクセルシューター』!!」
今度はなのはが止まり、ヴィータ同様100近くの弾丸を展開させ、まずその四分の一をシグナムに向けて放つ。
だがシグナムはそれを避けながらなのはに向かって突き進んでいく。
「ちっ、次!!」
思わず舌打ちをしながら、なのはは残っていた弾丸の三分の一を放つ。だがそれもシグナムにすべて避けきられ、背後から追っているのだがそれでも追い付かないでいた。
「もういい!! 全部行って!!」
一発も当らない事になのはは苛立ち、残りあったすべての弾丸を放つ。
だがそれもシグナムはすべて避け、ついにはなのはの近くまで来ていた。
「近づけばこちらのものだ。『紫電一閃』!!」
シグナムは射程範囲内に入ると、レヴァンティンでなのはに切り付けようとする。
だが、シグナムはこの時なのはの顔を見て不思議に思えた。
なぜならば、この時のなのはは先ほどのように焦ったり苛立ったりしておらず、逆に微笑んでいたからである。
「……『アクセル・コンプレッション』」
その刹那、いつの間にかシグナムの背後に回っていた桃色の弾丸が突如爆発を起こした。
「なっ!?」
シグナムは自分の背後から爆発が起こるとは全く思っておらず、しかも真後ろに近いところで爆発したのでよけようがなかった。
その爆風にはなのはにも近かったので、自分にも少し衝撃が来るが、それを利用してシグナムから距離をかなりとるのであった。
実は、あの時のなのはの焦りや苛立ちは演技で、相手に有利に思わせるためであった。そしてアクセルシュータの弾丸の中に周りの魔力を集めて圧縮したアクセル・コンプレッションを混ぜておき、シグナムが近づいてきたと瞬間に背後に操作させて爆発させたのである。
アクセル・コンプレッションはまだ二度しか使っていないし、操作と収束に苦労するのだが、それでもなのはが使った理由はそうでもしないと勝てないと思ったからである。
そしてなのはは突然の爆風ですぐに行動ができない状態のシグナムに向けて構え、攻撃をするのだった。
「『エクセリオンバスター』!!」
さらに驚いているシグナムに追撃を掛けるかのようにエクセリオンバスターを放つ。
だが、シグナムはなのはの砲撃に気づき、すぐにその攻撃を避けるのであった。
「……さすがにシグナムさんではこういうやり方は通用しないか」
「だが、アクセルシューターの中に一つ違うものを混ぜてあったことには気づかなかった。もう少し早く砲撃を打たれていれば完全に対応できなかっただろう」
「たった一回の攻撃でそこまで把握するとは思わなかった。さすがシグナムさんですね」
お互いに話し始めているが、尚も警戒を怠らない。何時相手が攻撃してきても良いように警戒心は解いていなかったのである。
「だけど、私も負けるわけにはいかない。全力でいきます!!」
「こちらもだ。行くぞアギト」
「おう」
その言葉を皮切りに、なのはとシグナムは一斉に動き出した――
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「シグナムを追加してもあまり変わらんか……」
はやては画面を見ながらそう思った。
このままではフィルノが目的のものを手に入れてしまう。それを阻止するためにシグナムを導入させたが、今度はリィナ・シルフィアという彼女に邪魔されてしまった。
しかもフェイトはアリシアによってかなりのダメージを受けている、殺傷設定だから傷だらけで、これ以上戦わせるのは危険であった。
「こうなったら、トーマ・ナカジマ空曹、そしてスバル・ナカジマ三等陸尉!! 戦場に今すぐ向かってくれや!! これ以上、戦力を温存していたら向こうの思う壺や!!」
『了解!!』
はやての命令にスバルとトーマの二人は出動し、地球へと向かった。
これ以上戦力を追加したかったが、なるべく大げさなことをしたら管理局に怒られる。これが限度だったのである。
はやて本人が出ることも考えたが、指令本人が出るのはなるべく避けたかった。
「頼むから、これだけの戦力で何とかしてくれや……」
はやてはスバルとトーマが向かったのを確認すると、そうつぶやくのだった――
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「デュナ!! まだ完全に探知はできないのか!!」
「リィナに言った通りあと少し!! 焦るのはわかるけど、冷静にやらないとなかなか見つけられないの!!」
フィルノは状況から見てかなり焦っていた。
なのはがヴィータを倒したかと思えばシグナムが現れ、フェイトとアリシアもいまだに戦っている。
これ以上戦力を追加されたら戦うことができるが、それはフィルノかデュナが戦わないといけないという事になる。二人の役目はロストロギアの位置を把握し、それをフィルノが取りに行くという事であった。
そのうち片方が戦うことになると、ロストロギアを探すのは難しいという事であるので、これ以上は敵が増えるのは大変なことだったのである。
だが、その不安もすぐに解消されるのであった。
「っ!? やっと居場所を探知できた!!」
「それはどの辺りだ!!」
デュナが位置を把握できたと言われ、フィルノはすぐにその場所をデュナから聞き出す。
デュナに言われた通りの位置に向かい、海の中へ突っ込んでいった。
このあたりの海は海鳴市から数キロ離れたところで、それと言って深い場所にあるわけではなかった。だから海の奥底まで潜ったとしてもそれほど深いわけではなかったのである。
そして海の中に潜ると、フィルノが探していたロストロギアを見るけるのだった。
翠色で半分欠けている玉。そう、なのはに渡してあるロストロギア、テュディアのもう一片であった。
フィルノはそれを取り、すぐに地上へと上がっていった。
「デュナ、目的のものは手に入れた!! すぐに離脱するぞ!!」
「分かった。全員に伝えておく!!」
フィルノが目的のものを手にし、デュナにそれを報告する。
デュナはそれを全員に伝えようとし、念話で伝えるのだった。
《目的のものは手に入った。だから全員今すぐ離脱して!!》
その言葉になのは、アリシア、リィナの三人は聞き、それぞれ戦闘をやめる。
「どうやらこれ以上戦う必要はないようだね。このまま簡単に戦闘を止められればいいのだけど……」
「そう簡単に私が逃がすと思っているのか?」
なのははシグナムとの戦闘を止め、拠点としている艦船内に戻ろうと動き出す。
だが、そう簡単にシグナムも逃がすわけがなく、逃げ出そうとしていたなのはを追いかける。
「さて、こちらもそろそろ終わらせて、離脱しようとしますか。」
「はぁ、はぁ、逃がすわけにはいかねぇんだよ!!」
一方、リィナとヴィータの方もリィナが戦闘を終わらせようと動き出していた。
二人の戦いはリィナの一方的で、ヴィータが受けたなのはからのダメージと体力の消耗から考えて当然だった。
だがヴィータは諦めておらず、必ず全員捕まえようとしているのだった。
「……止めさそうとしたけど、やっぱりやめるわ。ここでの要件が済んだようだし」
「はぁ、はぁ……」
フェイトとアリシアの方もアリシアが止めを刺そうとするのだが、デュナの念話が届いて、止めを刺すことを諦めることにした。
フェイトの傷はさらに酷くなっており、もはや腕や脇腹、脚などからたくさんの切り傷が刻まれており、出血を先ほどから繰り返している。だがそんなことを気にせずに、アリシアは攻撃を繰り返していたのである。
この状況なら止めを刺して離脱する方がいいとは誰もが思うが、アリシアはそうはしなかった。理由はわからないが一応妹だという事もあるのだろうか、それとも唯の気まぐれなのか、だがそのことはアリシアのみしか本当のことはわからない。
「そろそろそちらも増援来るだろうと思うし、フェイトは戻った方がいいと思うよ。私がやったのだけど、その出血量は本当に危ないから」
「……その前に、一つだけ聞きたい」
「内容によるけど、とりあえずいいよ」
「あなたの名前は一体何なの?」
「…………」
フェイトの質問に、アリシアは黙る。これ以上フェイトがアリシアに攻撃を仕掛けなかったのは、本当に殺されかねないと思い、アリシアに従うべきだと思ったのである。
アリシアはフェイトの質問にどうするか考えるが、悩んだ末に自分の名前をいう事にした。
「……アリシア・テスタロッサ。フェイトの姉よ」
そして、アリシアはフェイトから離れ、フィルノがいる方へと向かうのだった――
それぞれがこの場から離脱しようと、なのは、アリシア、リィナはフィルノとデュナがいる方へと向かい、その背後からはシグナムとヴィータが追っていた。
さらにそのシグナムとヴィータの背後から、スバルとトーマの二人がやってきており、転移するには厳しい状態でもあった。
「なのは!! これを受け取れ!!」
なのはたちがフィルノに近づいてくると、突然フィルノがあるものを投げてきた。そのことになのはは驚いたが、何とか投げてきたものを受け取る。
受け取ったものを確認すると少し驚いたが、すぐにどうするのか把握するのだった。
なのはが受け取ったものは先ほど手に入れたロストロギア、テュディアのもう一片でなのはが持っているテュディアとくっ付けろとという意味だと把握したのである。
すぐに持ってきていたテュディアの一片を取出し、受け取ったティディアと重ね合わせた。
刹那、突然テュディアがくっ付いたことによって翠色に輝きだし、あたりを包むのだった――
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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