「突然集まってもらったが、ちょっと話がある」
更に数日後、フィルノの言葉で前に集まった艦船内の一室に集められる。
昨日まではそんな集まるような雰囲気では全くなかったので、突然集められたのにこの場に居るフィルノ以外の全員が思っていた。
そして突然集められたという事は何か緊急事態があるのかとそれぞれ思うのだった。
「今日から当分の間は研究所の破壊を一旦止めようと思う」
「突然どうしたのです? 何かあったのですか?」
「まさかとは思うけど、管理局に怖気づいたわけじゃないよね」
エメリアは何があったのかと問い、デュナはもしかして今の管理局に怖気づいたのかと言う。
フィルノはエメリアとデュナの言葉に少し微笑み、そして首を横に振るのであった。
「デュナ、俺は別に管理局に怖気づいてないぞ。それとエメリア、別に何かあったわけではない。唯こちらもそろそろ動き出すべきだと思っただけだ。それに今の所、何の支障もないからな」
「それで、もったいぶらないで早く言ってほしいのだけど」
微笑んでいるフィルノを余所に、なのははフィルノに対して真面目に言う。
そのなのはの表情を見て、一人を除いて全員が驚いていた。この艦船に来た時のなのはと全くもって雰囲気が変わっており、与えられた任務に何とも思わずに遂行させる。そのような雰囲気を漂わせていたのである。
この艦船に来てからほとんどなのはと一緒に行動していたアリシアは、なのはの変化を日に日に見て感じていたのでそれほど驚いていなかった。なぜなら、なのはが自分自身で感情を一人の時以外は押し殺しているをアリシアは知っているからである。喜怒哀楽の哀という感情を表に出さずに抑え込み、一人になった時に悲しんでいるという事を知っている。だからアリシアはなのはが今どんな気持ちなのかという事も大体分かっているのである。多分、アリシア以上になのはの気持ちが分かるものは一人も居ないというほどに。たとえ妹でなのはと親友であったフェイトなんかよりも。
「あ、あぁ、分かった。今から言う」
フィルノは未だに驚きながらも答える。この二週間近くの間に何があったのだと思うほどたった。それはフィルノに限らず、エメリアとシルフィア姉妹も同じ事を思っていた。
それから数秒して、フィルノも少し落ち着き、一度周りを見渡して言い始める。
「これからある管理外世界へと方向を移動させる。この世界は一人良く知っている世界でもある」
「一体そこに何の用があるのですか?」
リィナの質問にフィルノ以外の全員が思った。管理外世界なんか向かって、何の意味があるのだろうかと思ったのである。管理外世界に行くという事は本当に何かが無い限り行く必要なんてなく、ロストロギアが管理外世界に落ちてしまった時ぐらいでしかないのと思ったのだ。
「いやちょっと待って、管理外世界に行くという事はもしかしなくても……」
管理外世界に行くことは大体がロストロギアぐらい。そうなれば、フィルノが管理外世界に向かうのもほとんどの確立でロストロギアを探しに行くという事であった。
アリシアがフィルノに言おうとしていた事はなんとなく全員分かり、フィルノは全員が自分が何を言おうとしているかなんとなく分かった感じを見て微笑みながら言い始めるのだった。
「多分、全員が思っている通りだ。俺はあるロストロギアを手に入れるためにその管理外世界に行こうと思ってる」
フィルノの言葉はやはりそうかと納得した。
「それで、その管理外世界は何処なの?」
納得したところで、アリシアはその管理外世界の場所は何処なのかとフィルノに聞くのであった。さっきからフィルノはもったいぶって場所を言って来なかったが、そろそろ言って欲しいと思ったのである。
アリシアがそう聞くと、フィルノは一度なのはの方へ顔を向け、なのはもそれに気づいたが、どうして見たのかと疑問に思った。
しかし、その数秒後になのははフィルノが向いた理由が分かったが、それはなのはにとって少し嫌な事であった。
「ま、まさかだとは思うのだけど……」
「多分、なのはが思っている通りだ。これから向かう先は第97管理外世界。なのはの故郷であり、俺が生まれた場所だ――」
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「まさか、こうなるとは思わんかった……」
はやては一枚の報告を見ながら、溜め息を吐いたのである。
その隣に居たフェイトはちょっと苦笑いをしていた。
「まぁ、こちらの方が動きやすいと言えばそうかもしれないね」
はやてとフェイトが居るのはなのはとフェイトの家。はやては事情聴取の結果をフェイトに聞こうとしてきたのである。
そしてその話が終わると二人で他愛無い会話をしていたら、はやてに一つの報告が突然やって来たのである。
特務六課の設立。そこまでははやての予想通りだったが、問題はこちらである。
「『今回の敵であるフィルノ・オルデルタ、高町なのは、エメリア・ラスティル、デュナ・シルフィア他彼らの仲間を一人残らず殺してもよい』か……」
管理局から間接的に殺傷設定の承認がされていたのである。はやてはこんな事を頼んだつもりは全くなかったし、言ったつもりもなかった。
フェイトが動きやすいと言ったのは、それは周りに被害を余り齎さなければなんでもしてもよいという意味でもあった。またそれは出力リミッターを一つも掛けずにしてもよいという事でもあったのである。
そう意味ではありがたい事であるのだが、管理局から見れば殺しても良いから何としてでも相手の目的を阻止しろという事であった。
「管理局も、相当焦っているようね……」
「こんなにも研究所が破壊されてしまえば、管理局の威厳も保てないし、これ以上彼らを見逃していれば管理局の立場が危ういと思ったのだろうやな」
それからはやては特務六課のメンバーを見る。
そこには、八神はやて、フェイト・T・ハラオウン、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ、ヴィータ、シグナム、アギト、リインフォースII、シャマル、チンク・ナカジマ、ディエチ・ナカジマ、ウェンディ・ナカジマ、ギンガ・ナカジマ。そして、旧姓トーマ・アヴェニールことトーマ・ナカジマ、リリィ・シュトロゼック、アイシス・イーグレットの三名の名前もあり、それ以外にも名前が存在していた。
「しかし、こんな身近なメンバーばかりで魔導師ランクもかなり高いのに、出力リミッターが一つも掛かっていないのはさすがにどうかと思うのやけどな」
「確かにそうだね」
「まぁ、殺傷設定の許可が出ていようが多分私が許可しないのやけどな」
苦笑しながらはやては言う。フェイトもはやてが人を殺すなんてさせるわけがないと分かっていたので、そういう命令が出ていたとしても殺傷設定にはしないだろうと思った。
それからはやては座っていたソファーから立ち上がり、持ってきた自分の荷物を持つ。
「さて、一旦特務六課のメンバーを集めた方が良さそうやから、フェイトちゃんも来てくれるか? 今日は仕事ないんやろ?」
「本当は事件多いのだけど、何故か私が担当されることが最近減っているからね。だから今日も仕事は無いよ」
実は言うと、ここ最近の執務官の仕事はかなり忙しかったりする。なのはが破壊した研究所なども原因の一つであるが、全体的に事件が増えているのである。
しかしフェイトは事件が多いのに担当に回されず、ほとんど非番な時が最近多いのである。ちなみにそれはティアナも同じらしい。
「まぁ、仕事無くても給料は一緒だからな。とりあえず一緒に来てくれるか?」
「どの道家に居ても暇だからね。ヴィヴィオは学校から帰ったらノーヴェと練習するとか言っていたし」
「そういえば、ヴィヴィオはなのはちゃんのこと知っているん?」
「私からは言ってないけど、前に聞いてきたから多分学校から知ったのかもしれない」
「そうか……」
はやてはヴィヴィオもなのはが事件を起こしたという事をやはり知っていると思い、内心溜め息を吐いていた。
「まぁ、その話は後にして今は行くのでしょ? ヴィヴィオには書置きしておけば大丈夫だから」
「そうやな。それじゃあ行こうか」
フェイトの言葉ではやては気を取り直し、ヴィヴィオに書置きをしてから二人は家から出ていくのだった。
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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