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魔法少女リリカルなのはmemories 第一章 消された記憶(メモリー) 第十話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-07-24 23:56:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2083   閲覧ユーザー数:2014

「これから、どうしようかな?」

 

 その頃なのははミッドチルダからかなり離れた場所に移動し、どこかの森の奥深い所で一休みしていた。

 本当ならこんな筈ではなく、ミッドチルダを離れればもしかしたらフィルノがなのはの前に現れるだろうとほんの少し思っていて、人気の無い森に移動してみたのだが一時間してもフィルノは現れず、さすがにこんなことで来るわけがないかとなのはは思っていたところだった。

 人が来ないのは森の奥深くにいどうしたからフィルノがもしかしたら現れるのではないかと思っていたが、まさかフィルノが来ないとは思っていなかったのだ。まだフィルノの魔法はなのはから解けていないので、居場所も分かっていると思っていたためにこういう行動を起こしたのが、結果は失敗して一時間以上経過してもまったく来る気配はしていなかった。

 本来ならミッドチルダから別の次元世界へと移動しようとしてのだが、念のため現れるかどうか確認を取っていたのである。まぁ、フィルノにもフィルノなりの事情があったのかもしれないが。

 

「ってなると、自力でフィルノ君を探さないといけない事になるね」

 

 かなり時間が掛かってしまうかもしれないが、それしかフィルノを探す方法がないので、地味な作業ではあるが頑張って探すしかないのであった。

 

「とりあえず少し歩いたら寝てようかな?家を出てからまだ寝て無いしね」

 

 けれどもさすがに家から出てもう七時間以上になり、ベッドで横になった時も二,三時間はそのまま横になっていたが、一睡もしてなかったのだ。入院している時に寝たのが最後であ、さすがに眠気が襲ってきてもおかしくなかったのだが、それでも今寝るべきなのかは少し悩んでいて、それよりもフィルノを探すのを優先すべきなのではないかと思ってあれから一度も寝ていなかったのだ。さすがにそれはなのはでも眠気に勝てるわけではなく、いつ寝てもおかしくなかった。

 

「あ、やっぱりこれは寝ないとかなり危ないかもしれない。少し寝てようかな?」

 

 なのはは結局は睡魔に勝てなかったので、諦めて木を背中に掛けて寝る事にしまった。しかも少し前のなのはと違って、寝ることで怯える事はなく普通に眠り始めていた。あの夢で出てくる人物がフィルノだという事を思い出したので、その夢を見ようとも何も怖い事はなくなっていたのである。

 そしてなのはは眠りに入り、ここ最近見ていた同じ夢を今日を見るのであった。フィルノとの幼い思い出であるその夢を。

 

 

----

 

 

 そしてなのはが睡眠を始めた頃、ある一人の男性が木漏れ日すらないほどの森林の中に立っていた。

 ここは第24無人世界。この世界はどこ行っても森林で自然のままの世界であり、彼はそんなところにたった一人で立っていたのであった。

 

「もう少し待っていてくれ。まだ、俺にはそこに行けないんだ」

 

 まるで誰かが居るように彼は言っていて、そして悲しそうだった。

 フィルノ・オルデルタ。そう、彼こそがテュディアというロストロギアを盗み、ユーノが今懸命に調べていてなのはの幼馴染であった人物だ。

 そんな彼がどうしてこんな無人世界に居るのか、それはフィルノ本人以外には分からない事であった。

 そしてフィルノはまたしても独り言を良い始めた。

 

「どうやらなのはは俺の記憶を取り戻したようだけど、あの夢の事をどう思っているかな? 記憶が取り戻せるまで悪い事をしちゃったからな」

 

 フィルノは少し自嘲気味に言いながら、微笑んでいた。けどそれはフィルノにとって気持ち悪かった。どうしてなのはを苦しめたのに微笑んでいられるのか。そんな自分自身が気味悪かったのだ。

 そしてフィルノはそんな自分にため息を吐いて言う。しかし、尚も可笑しな微笑んだままであった。

 

「もう、侵食(・・)は始まっているんだな。ほんの少しながらも少しずつ……」

 

 フィルノは独り言でも訳が分からないような言葉だった。なのはと分かれてからフィルノに何があったのか。それはフィルノ本人しか知らるわけがなく、フィルノ以外には答えられる人物なんて誰もいなかった。いや、正確には一人だけ存在するのだがそれは追々と話すとしよう。

 そこでフィルノはある事を思い返していた。偶然にもそれはなのはが見ている夢と同じ内容であった。

 

「だから、俺はもうあのときにみたいに戻れないのか。こんな体になってしまったし、それに目的のためなら全てを犠牲にしてきたから今の俺になっているのだからな」

 

 もう、フィルノに後戻りという言葉は無かったのだ。とっくにその覚悟はしていたし、こうなることを予測して自分で決めたのだから。

 そして、フィルノはまたしてもなのはが寝るたびに見る夢を思い出してみることにした。

 

 

 

 

『大きくなったらどうするの?』

 

 

 そう、6歳のときになのはとフィルノが約束をした夢。

 

 

『大きくなったら?』

 

 

 それは何度もなのはが見ていた夢で、何度も同じ夢を見てなのはを怖がらせてしまった夢。

 

 

『そう、大きくなったら』

 

 

 そして、なのはが幼い時にフィルノと会話していた内容は、この物語の始まりともいえる夢。

 

 

『大きくなったらフィルノ君のお嫁さんになりたいなの』

 

 

 いや、そのときから始まっていただろうとも言える夢。

 

 

『僕のお嫁さんになりたいの?』

 

 

 他の言い方をすれば、全てはここから始まり、そしてこれから始まろうしている歴史上を変える出来事になる悲劇の原因とも言える夢。

 

 

『うん』

 

 

 そんなことはまだフェイトやはやて、そしてなのはですら知らない。

 

 

『分かった。大人になったら結婚しよ』

 

 

 知っているのはたった一人だけ。けどその一人も自分がこんな事を起こすとは誰もが思わなかっただろう。

 

 

『うん』

 

 

 そう――

 

 

 

 フィルノだけがこの先の展開を知っていて、自分がこの後何をするのかを全て知っているのだ。自分が歴史を変えてしまうような出来事を起こそうとしている事を。

 すべては自分のためでもあり、なのはのためでもあったが、それよりも彼を動かしていたのは復讐のためであった。その復讐のためなら、たとえ自分や全てを犠牲にしようと成し遂げようとしているのであった。

 

 

 

 

「――さて、そろそろ行きますか」

 

 フィルノはあの頃の事を思い返すことを止め、ここから移動こうとした。魔方陣を発動してフィルノはこの世界から移動するのだった。


 
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