No.458869

魔法少女リリカルなのはmemories 第一章 消された記憶(メモリー) 第九話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-07-24 23:45:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2242   閲覧ユーザー数:2186

 翌日の朝、フェイトは何も知らないままいつも通り目を覚ました。

 目を覚ますともうなのはが居ない事に気づき、朝食の準備をしているのだとそんな風に思っていたのだが、その考えは見当違いでなのははもうこの家には居ない。否、このミッドチルダにすらなのはは居なくなっており、フェイトとヴィヴィオの前から姿を消したのだ。

 まだそんな事すら知らないフェイトは、とりあえずヴィヴィオを起こさないようにベッドから降りてリビングへと向かった。

 

「なのは早いね……ってあれ?」

 

 リビングに向かうとなのはの姿は見当たらず、誰も居なかった。なのはは一体どこに居るのだろうかと思い、フェイトはなのはを探す事にした。しかし家のそこら中を探し回っても、なのははどこにも居なかった。それは当然の事であり、もうなのははこの家に居るはずがないのだから――

 まだなのはが居なくなったことを知らないフェイトは本当になのはがどこに行ったのだろうかと思いながらも一度リビングに戻ってみると、テーブルに一枚のメモが置いていあることに気づく。

 そう、なのはがここから居なくなる時に書置きをしたメモである。

 一体何のメモ書きだろうと読んでみると、それはなのはがフェイトに当分姿を消すような言葉が掛かれてあった。それを読んだフェイトはすぐに家を飛び出して家の周りを探したが、とっくに家を出て行ったなのはを見つけられる筈もなかった。

 一旦フェイトはすぐに家に戻り、電話を持ってなのはに電話を掛ける。早く出てくれないかと焦りながらもフェイトは待っていたが、電話が繋がったかと思ったら電源を切っているという言葉が聞こえてくるだけ。

 仕方なくフェイトは電話を切り、すかさずはやてに電話を掛ける事にした。今度は数回のコールで電話が繋がり、はやての声が電話から聞こえる。

 

『うーん……フェイトちゃん、こんな朝から一体何の用なんや?』

 

 かなり眠たそうな声ではやては電話に出ていたが、フェイトは眠たそうなはやてに余り気にせずに、すぐにはやてになのはが居なくなったことだけを伝える。

 

「な、なのはが居なくなった!!」

『へ? フェイトちゃん、それは一体どういうことや? もしかして朝からそんな冗談を――』

「本当に居なくなったの!! ヴィヴィオを置いてたった一人で!!」

『……ほんまか?』

 

 はやては最初冗談だと思ったが、フェイトの言葉がどう見ても冗談に聞こえなかったので眠気が一気に覚めていた。はやてはなのはが最近元気が無いのには気づいていたが、それがどうして居なくなるにまで発展するのかという事がまったく分からなかった。

 

「本当だよ。後でそのことは詳しく話してあげるから、はやても知り合いに電話してなのはを情報を探して、なければなのはを探してくれるように頼んでくれる? もうミッドには居ないかも知れないけど、念のためにお願い」

『分かっとる。こっちもなのはちゃんの情報が入り次第、フェイトちゃんにすぐに伝えてあげるからそっちも頑張ってくれな』

「うん、とりあえず頼むね」

 

 フェイトははやてとの電話を切り、すぐに他の人に電話を掛ける。エリオやキャロなどとなのはの知人などにも電話を掛け、さらには念のためミッドチルダになのはが行方不明になった事を気づかれないように電話を掛けていた。なのはの行方不明がミッドチルダ内で知れたら大変な事になり、大問題になりかねなかったからだ。

 ミッドチルダの戦力とも言える『エースオブエース』の行方不明はさすがに不味く、だからこそフェイトの身近な人物でなのはの知り合いにしか電話を掛けなかったのである。

 

「そっちもなのはを見つけたら連絡をくれてね」

「ん~……あれ、フェイトママどうしたの?」

 

 はやてに電話をしてからもう何度目かの電話を切って次の人に電話を掛けようとフェイトがしていると、ヴィヴィオが起きてきてリビングに入ってきた。

 ヴィヴィオはまだなのはが居なくなった事を知らないので、朝からそんなに慌ててどうしたのかと思ってフェイトに話しかける。さすがにフェイトの慌てぶりには何かあったのかとヴィヴィオにも分かり、それが尋常ではないという事も一度見ただけで分かっていた。

 それから少しすると、ヴィヴィオはなのはが居ない事にすぐに気づいて、なのはがどこに居るのかという事をフェイトに聞こうとする。

 

「あれ、なのはママはどうしたの? まだ寝ているの?」

「……なのははちょっと急の仕事が入ったらしくて、当分帰ってこないらしいの。だから当分は二人っきりになるかな?」

 

 フェイトはヴィヴィオにまでなのはの事でまた心配をかけたくなく、ヴィヴィオには本当の事を言わない事に咄嗟にしてた。しかしヴィヴィオにそう言ったが、多分なのはが当分見つかる事はないだろうとフェイトは思っていた。多分なのはが家を出たのはフェイトとヴィヴィオが寝てから二,三時間後にであると思うので、もうミッドチルダ内を探しても見つかる事はないだろうと内心思っていた。

 さっきまで連絡をしていたのは、まだミッドチルダ内に居るという僅かな可能性に賭けてみることにしてみて、誰かがなのはを見たと言う事も考えられたからであったからである。けどフェイトは内心ではなのはが見つかるという可能性は少ないだろうとは思っていて、なぜならそんな簡単になのはが見つかるような行動はとらないと思っていたからだ。

 フェイトはヴィヴィオも起きてきた事だったので、とりあえず電話を置いてヴィヴィオの朝食を作る事にする。なのはが居なくなった事が気になってしまい、まだ朝食の準備をまったくしていなくて今から作る事になったのだ。

 それから朝食を二人で食べて、ヴィヴィオは学校に向かった。ヴィヴィオを玄関の前で手を振って学校へ行くのを送り、ヴィヴィオが見えなくなるとフェイトは家の中に戻った。それからまたフェイトは電話を掛けようとしたが、その前に電話が掛かってきた。もしかしたらなのはの事で見つかったのではと何故か思ってしまい、フェイトはすぐに電話に出ていた。しかし電話の相手ははやてであった。

 

『フェイトちゃん、今から会わへんか? どうしてなのはちゃんが居なくなったかそろそろ詳しく知りたくなったから今大丈夫か?』

「……分かった。それなら私の家ではやてを待ってるから」

『分かった。そんなら、そっちに向かうな』

 

 はやてからこちらに来るという事を聞いてから電話を切り、とりあえず焦ったところで意味がないともってのんびりとはやてを待つことにした。やっと少しリラックスできる時間が出来、はやてが来るまでコーヒーを飲んでいる事にしていた。

 数分してはやてはなのはとフェイトの家にやって来て、フェイトは玄関のドアを開けてはやてを中に入れた。それからフェイトははやてをリビングにあるソファに座らせて紅茶を二つのティーカップに注いで、はやてと自分の前に置いてフェイトも椅子に座った。はやてはティーカップに入っている紅茶を飲むと本題を聞こうとした。

 

「それで、なんでなのはちゃんは突然居なくなったんや? しかも昨日までは元気がなかったんのに」

「とりあえず元気がなかったことだけは話すよ」

 

 フェイトははやてに昨日あった事を全て話し始め、なのはが夢で見ていた少年、フィルノ・オルデルタの事がなのはが忘れられていた幼馴染であり、そしてフィルノが今ロストロギアを盗んだとして指名手配されていることを。

 

「なるほどな。じゃあ一つ聞きたいんやけど、その後なのはちゃんの言動に何かあらへんかったか? ほんの些細の事でもええから答えてくれへんか?」

「なのはの言動に?」

「せや、何でもええからあったらわいに教えてくれへんか? たぶんその時にはもう決意していたんだろうと思うけどな」

 

 その質問にフェイトは考え始めたが、少し考えていると何か思い当たる事が一つだけあったことに気づいた。それはなのはとフェイトが家に帰っている間での事になのはが言った言葉だ。

 

『もしかしたらまた二人に迷惑を掛けちゃうかも知れない。ううん、今度は二人だけじゃないかな? たとえそうなったとしてもフェイトちゃんは私を心配してくれる? たとえ私がなにか悪いことをしても』

 

 あの時なのはがどういう意味で言ったのかフェイトは分からず、どうしてそんな事を言ったのか気になってた。しかしそれがどういう意味だったのか、あの時あまり考えなかったけど今になって少し分かったのだ。

 そう、あの時なのはがあんな事を言ったのは、もしかしたら自分が過ちを犯す可能性があったからであり、そうなった場合はフェイトが自分を止めてくれるかとなのはは確認したかったのである。そしてフェイトはなのはが記憶を取り戻した時からフィルノに会おうとしているのだと分かったのだ。もしかしたら、フィルノと一緒に行動するかもしれないという意味だったのである。

 フェイトはあの時どうして詳しく考えなかった事に後悔し、あの時気づけばなのはを止められたかも知れないと思っていた。

 

「どうやらその反応やと、なんかあったわけやな」

 

 はやてはフェイトの表情を見てすぐに何かあったと分かり、そしてあの時止めておけばこうならなかったと後悔して、フェイトが自分を責めている事も分かっていた。

 

「もう過ぎた事や。とりあえず今はなのはちゃんを探さなければな」

「でも、私があの時気づいていればこんな事に……」

「だからもう過ぎた事なんや!! いつまでも落ち込んでないでなのはちゃんを探すべきやろうし、そんな事をしてもなんの解決にもならへんのや!! 後悔していると言いおるのなら、なのはちゃんをはよ見つけるべきやないんか!!」

 

 フェイトがいつまでも落ち込んでいたのを見て、はやては少しイラだっていた。いつまでも後悔しているだけでは何の意味が無いのだからさっさとなのはを見つけるべきで、何もしないで落ち込んでいる場合ではないと思った。

 少しイラだっていたはやてを見てフェイトは少し驚いていたが、はやてが言った事は確かに事実だった。こんな事をしていても何の意味が無いと気づき、早くなのはを見つけるべきだと思ったのだ。

 

「確かにそうだね。早くなのはを見つけないと」

「そういうことや。はやくなのはちゃんを見つけて、どうしてこんなことをしたのかその時に聞くんや」

 

 フェイトははやてに言われて、なのはを早く見つけるべきだと思い、そしてなのはを連れ戻すのだと決意するのだった。

 けどフェイトは知らない。またしてもこのことで後悔し、なのはがとんでもない事になるとは思いもしなかった。


 
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