亡国機業、戦闘
二人、特に壁は壊れた格納庫を眺めるということはしなかった。壁はまるで、水を持っていない時に、ジャングルで湧き水を見つけた時のような感じだった
二人が入ったのを確認してから、俺も中に入る。
そこは色々な機材がたくさんあって、たくさんのクリアケースが鉄製の棚に並べられていた
二人はISに乗るための準備をしている。スコールが人っぽい形のISに乗って、壁がディスプレイを弄っていた。どうやら最適化(フィッティング)というやつをしているらしい
こいつらがこれをやっているうちに、俺は破壊した壁をどうにかするか。足音が段々近くなってくるのがわかるしな。ふむ、ちょっと急ぐか。スコールと壁はまだ終わりそうにないしな
まず妖力をぽっかりと穴の開いた壁に張り付ける。というかこれで終わったようなものだ。見た目と感触を周りのコンクリートと似たようなものにする
これで見ても分からないし、触っても分からない。
ここで後ろ、つまりISを弄っていた二人から声が聞こえる
「ねぇ、外に来ている兵士たちは大丈夫なの?」
「大丈夫だ。あいつらが気がつける筈がない。安心しろ」
「めっちゅ色が違うし、薄っぺらいじゃねぇかよ!!」
いつの間にか威勢が良くなった壁が、尤なことを言ってくる
今回は面倒だったので、外側の表面だけをコンクリートにした。そういうわけで内側から見れば、へこんでいるし色も違うという感じになっているのだ
壁はそこからずっと文句を言っていたが、急にそれがピタリと止まった。ようやく人間どもが、駆けつけたのだ
耳を格納庫の壁につけて、外の話を盗み聞きする
「―――――――は、本当なのか!?!?」
「はい! 確かに何者かによって格納庫が破壊されました!」
「……だが破壊された形跡がまったくないぞ」
そこまでの話を聞いて耳を放す
どうやらやつらは、俺の細工を見抜けなかったようだ。
さて、後はこいつらのISを待つだけだな
★★★★★
「「終わった~~……」」
待つこと数分、やっと終わったようだ。外では慌ただしく奴等が動いている
だが一向に入ってくる気配がない。格納庫の具合から、監視カメラの動画は偽物とでも判断したのか?
そりゃそうか。大破した壁がものの数分で修復されるなんて、普通は考えられないからな
「よし、早く撤収するわよ」
改めて二人の姿を見る。二人とも宙に浮いていて、スコールと壁は脚部と胸部、腕部にアーマーを装備している。武器はアサルトライフルで、壁には八本の脚がある
「よっしゃ!! いくぜぇ!!」
壁は俺が破壊したところに銃を撃つ。どうやら普通に貫通するとか思っているみたいだが、そんな器用なことはしていない
つまり………………
「はっはっはっうおっと!! おい、なんで跳ね返ってくるんだよ!?」
弾が反射するわけだ。そのため高笑いをしていた壁は跳弾した弾に当たりそうになった
「おい! 今銃の音がしなかったか!?」
しかも、今ので俺たちのことがばれてしまったようだ。まったく……壁は馬鹿だな
さっさと退散するために、妖力弾を天井に放って上に道を作る。その時の音とかは気にしない
天井にて爆発が起こる。俺は破片が落ちてきても大丈夫だが、スコールと壁は大丈夫だろうか。
そんなことを考えていると、不意に体が物凄い勢いで持ち上げられる。どんどん持ち上げられて、あっという間に上空へ
「ありがとう。今回はあなたのお陰で助かったわ」
俺の上から声が聞こえる。どうやら俺を掴んで持ち上げていたのは、スコールだったようだ。壁だったら、少なからず驚きだが
「なぁスコール、何でそいつ持ち上げたんだ? あそこで棄てればよかったじゃん」
それが一応恩人に対する態度かよ、と心の中でツッコミをいれる。そしていつまでも掴まれているのは色々と不便だから、スコールの手から抜け出すことにした
案外ISの手からすり抜けることが出来た。そのまま空中を飛ぶ
スコールの表情は脱出出来た時の安堵からまったく変わっていない。予め俺が飛べるものだと思っていたみたいだな。
壁は大層驚いている。そこら辺スコールとは、雲泥の差があるな。いちいち表情に出すな
脱出したものの数十秒後、後ろの方に気配を感じた。それはまあまあの速さでこちらに近づいてくる
二人を見てみるが二人とも察知している気配がない。こちらのスピードが結構遅いので後少しで追い付かれてしまうだろう
「二人とも、気がついているか?」
俺の問いかけに、二人は首をかしげる
「後ろからISらしきものが、近づいてきているんだが――――」
「――――――――どうする?」 その言葉に二人は後ろを振り向く
「ちょっと待ってもらえないかしら?」
そこには、スコールが纏っているISと類似しているものを纏った、女が佇んでいた
「へっ! 待つわけねぇだろうがよぉ!」
壁は女の話を見聞きもせずに、アサルトライフルを乱射する。しかし慣れていないせいか、まったく狙いが定まっていない
女も銃を撃たれて黙っている気はないようだ。虚空から銃を取り出して壁を正確に狙い撃つ
「ぐっ!! があぁぁぁ!!!」
ISというものは便利ものでシールドバリアーなるものがあり、銃弾を撃たれても死なないようになっている
当たり前ながら、それは永久的にではない。シールドバリアーの発動と共にSE(シールドエネルギー)が減っていき、これが無くなるとシールドバリアーは発動しなくなるのだ
壁は必死に避けようとするも、中々避けることが出来ない。SEもどんどん減っていっているのが分かる
この状況をマズイと見たスコールは、女への射撃を開始する
しかし相手は恐らく訓練された者だ。スコールの射撃なんか物ともせずに、今度は二人を相手に戦闘を始める
二人は善戦しているが、徐々に圧され始める
「くっ……厳しいわね…………」
「あ~~!! 当たんねぇなぁ~~!!!」
「あれだけ威勢たっぷりだったけど、案外弱いのね」
「はぁ!? うるせーよぉ!!!!」
今まで観戦していたが、このままでは二人して死んでしまうので、助太刀することにする。壁は動きが単調になってるし
何となく仮面でも着けようかな? ちょっとばかし加工して。なまはげの仮面でも着けるか
「おい、下がれ二人共」
「分かったわ。援護してるわね」
「はっ!! るせぇ、黙ってろ!!」
スコールはしっかり下がってくれたが、壁はそうはいかなかった。壁は無視をして戦闘を続けている
ため息を一つついて、壁を沈黙させに向かう。壁はもう大したSEも残っていない状況だ。後数発喰らったらあぼーんだな
状況は悪い方へと変わっていく。女は武器を銃から刀へと変え、瞬間的に加速して壁へと急接近する
これに見事に壁は対応出来ていなかった。驚きで固まりましたって感じだ
人間にしたら相当速いスピードなのだろうだが、俺からしてみればそうでもない。まだ序の口といった感じだ
女の初速の倍以上の速さで壁に接近。刀が振り下ろされる前に、壁を抱えて刀の攻撃範囲から離脱する
そのため女の刀は空を斬った。また壁は、目を閉じて来たるべき衝撃をじっと待っていた
いつまでも経っても衝撃が来ないことに気が付いたのだろう。恐る恐るといった感じで、目を開く
「うおわっ!! 何でてめぇが居るんだよ!!」
「スコール、頼んだぞ」
「分かったわ」
「ちょ、無視すんじゃねぇ!!」
壁の発言を無視して、スコールに壁を渡そうとするが中々上手く事が運んでくれない。
壁が俺に対して銃を向けてきたのだ。もちろん女はこの隙を見逃すわけなく、此方に再度突進してくる
それを撃退するために、壁から銃を奪って女に向けて的確に撃つ。こうすることによって、俺に集まっている二つの脅威を一時的に除外することに成功した
今のうちに壁をスコールに渡すか
「さて邪魔だから、退いてくれないか」
「…………お、おう……」
二回目はすんなりと動いてくれた。何故か頬が赤かったりしたが、緊張によるものだろうか?
あと銃はスコールに向かって投げておいた
さてスコールと壁を一応援護に回したところで、女と一対一になる
武器はどうしようか。|あっちの世界(幻想郷)の武器でもいいが、それだと確実に瞬殺だろうしな。というか武器を使ったらつまらないか
ISを装備した人間がどれほどのものか、知りたいし
「次の相手はあなたかしら」
「ああ、そうだが」
「その仮面は何かしら?」
「これは“なまはげ”というやつだ。気にするな」
「ま、そんなことはどうでもいいわね」
「うむ、まったくだ」
その言葉を合図に、女は俺に向かって銃を乱射してくる。様子見といったとこか? それでも結構な量が飛んで来ているが
俺はその弾丸の間を通り抜けるのではなく、大きく上へと飛翔する。次に右、下、左といった感じで相手を上下左右に揺さぶる
銃一丁では当たらないと判断したのか、もうひとつの銃を取り出して、これでもかという位撃ってくる
スコールと壁の援護は何にも効いてないし。撃ってはいるみたいだけど、外れたり避けられたりでまったく意味がない
しばらく避けていると、女が二丁の銃を閉まって刀を取り出した。早々に決着をつけたい考えなのだろう。瞬時に加速してこちらに突っ込んでくる
それに合わせて俺も相手の女と同じ位のスピードまで加速
これに女は多少の動揺を見せたが、すぐさま落ち着きを取り戻した。そして刀の有効範囲内に入ったその瞬間に、刀を全力で振り下ろした
これを寸でのところで、身体をずらして避ける。そしてその勢いで、結構遅めの裏拳を放つ
これが見事に顔にヒットし、気絶はしていないだろうが急降下する。これでやる気が失せた俺は、降下と回転の勢いをのせて蹴りを放つ
女は身体が“く”の字に曲げて、体勢を立て直す暇が無いまま地面に背中を強打した
案外呆気なかったな。もうちょっと楽しめると思ったんだが……
せめて裏拳は避けて欲しかったがな。あれくらいチルノとかはともかく、霊夢や魔理沙なら簡単に避けれるレベルだし
はぁ~~、とため息を一つ。女への落胆と、ISという存在への失望が口から溢れでる
「おい、帰るぞ」
「……お、おう……」
「……わ、分かったわ……」
二人とも何やら呆然としていたので、声をかける
そうだな、しばらくは暇潰しとして――――
――――――こいつらを鍛えるか
――――――――――あとがき―――――――――
なんで過去の俺は意味不明な強化フラグを建てたのだろうか・・・
どうかしていたのだろうか、昔の俺は(倒置法)
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幻想郷の危機を救う為“天草 将樹(あまくさ しょうき)”は自らの同類と戦い、何とかそれをおさめることが出来たがその代償(?)として、ISの世界に飛ばされてしまった。数億を生きた生物は、ISというものがあるこの世界をどう見るのか。 ※この物語には最強物・アンチ・東方成分が含まれています ※この作品駄作かも、注意 以上を頭の片隅に置いておいてください。それでは、始めましょう………… ※これは以前、にじファンの方で投稿していたものです。