【ⅵ】
1
玉座の間を後にした後、風を抱えたまま通路を抜け、兵舎を傍らに見ながら、おもてに出る。砦の南門の前では、すでに陣の設営が随分と進んでいた。砦の建て舎は――そのまま用いるには老朽化が進んでおり、またそう清潔でもなかったのだ。
もう一刻もすれば、夕暮れ時になろうかと云う昼下がり。
陣に向かうと許褚と典韋が出迎えに現れた。風を軍医に見せるからと許褚が彼女を抱えて行き、一刀は今、典韋に案内される形で、曹操の元へと向かっていた。
「あの――」
傍らを歩く典韋が見上げるようにして声を掛けてくる。
「なにかな」
「えっと、ありがとうございました。その色々と」
「え?」
典韋の意図するところが一刀には、今一分からない。
「あの、村のこととか」
「ああ。でも大層なことはしてないからなあ。お礼を云われるとくすぐったいよ」
「でも長老が云ってました。賢人様の薬を畑にまけば、収穫がどっと増えるそうじゃ――って」
「賢人様はよしてくれ」
一刀は苦く笑う。村で趙雲にも云ったが、専門で学んだわけでもない知識を教えて回ったのは、浅学をひけらかしたようで恥ずかしいのだ。
「じゃ、じゃあ。その、に、兄様と云うのは」
「へ?」
「あ、いえ、その……。季衣が兄と呼ぶお方ならって。お嫌でしたか?」
許褚が一刀を『兄ちゃん』と呼ぶのは、きっと兄と云う意味ではなく、若い男と云う意味なのだろうけれど、典韋がそう呼びたいのなら別段構わなかった。
「かまわないよ。そう呼んでくれて」
「えっとじゃあ――」
こほん、と典韋は咳払いをひとつ。
「に……兄様」
「はいはい」
「えっと、兄様はその――天の御遣い様なのですか」
「なんとかって占い師の話に照らし合わせると、そうなるみたいだね。でも実のところさ、ただの人間なんだよな。俺」
そう云って一刀は手の平を典韋に向かって開いてみせる。典韋もつられるように手を開いて、それを一刀の手の平に合わせてきた。
「指は五本」
「……へ?」
「腕は二本。脚も二本。目と耳はふたつずつ。鼻と口はひとつずつ」
笑んで諭すように一刀は云う。
「同じ人間。きみが思っているような、偉そうなものじゃない。ただ少し遠いところから来たと云うだけでさ。だから、そんなに緊張しないでくれな?」
典韋の小さな手の平から手を離して、一刀はそっと彼女の頭を撫でた。典韋は心地良さげに目を細める。
「じゃあ兄様?」
「ん?」
「ちょっと触ってみてもいいですか?」
そう云って典韋は一刀が着ている白い詰襟を見る。幼いとは云え、彼女も女性であるから、服や何やに興味があるのだろう。
「いいよ」
微笑ましく思いながら快諾する。
「へえ、なんだかつやつやしてますね」
「あー、そうかポリエステルは知らないよな」
「ぽりえすてる?」
大きな眸で典韋がこちらの顔を覗き込む。
「そう云う素材」
「天の素材ですか?」
そう呼ぶほど大層なものではないかもしれないが、ただこの時代から見れば石油加工製品であるポリエステルは天の素材に見えるのかもしれない。
「そうだな」
「きれいですね」
感心したように典韋は一刀の腕を撫でている。中々に珍妙な光景であり、作業中の兵士の中にはおかしなものを見るような目を向けてくる者もいた。
「それで典韋――」
そこで一刀は云いよどむ。『さん』を付けるべきなのか、『ちゃん』を付けるべきなのか。彼女を見るに微妙な年齢であるから――どうしたものか。
ただ悩んでいると、典韋の方が意外なことを云った。
「流琉でいいですよ?」
「え……いや、でも――」
典韋と出会ったのは盗賊襲撃の翌日であるから、すなわち昨日と云うことになる。そのような短期間で、気軽に真名を許されてよいのか――などと思っていると、聡い彼女はこちらの悩みを察したようで、
「私がそう呼んで欲しいんです。兄様は村の恩人ですし、これから華琳さまの元で共に戦う仲間になるんですから」
足取りも軽やかに、そう云った。
「分かった。ちなみに、俺には真名はないから」
「へえ……天の人はみんなそうなんですか?」
「そうだね」
一刀は柔らかく肯定する。自分が知らぬだけで、国によっては似たような風習があるのかもしれないが、そんな話は今必要ないだろうと一刀は思い直す。
「それじゃあ、流琉」
「はい!」
「流琉――か。きれいな響きだな」
「あ、ありがとうございます。私も気に入ってるんです、この名前。お父さんとお母さんがくれた大切な名前だから」
「そっか」
答える一刀の手を、流琉がそっと取る。
話の流れが良くなかったかもしれないと、やや愁いを帯びた彼女の表情を見て思う。隠し切れぬ寂しげな彼女の態度から察するに、彼女の両親はもう――。
時代柄、珍しいことではないのかもしれないが。
「あ。あそこですよ、兄様」
思考を遮るように流琉が前方を指差す。
そこには天幕がひとつ、やや砂っぽい風に打たれながら佇んでいた。
「じゃあ、私はここで」
流琉はつないでいた手を離す。
「あれ、流琉はこないのか?」
「華琳さまから席を外すようにと」
「そうか、悪いね。案内してもらって」
「いえいえ、それじゃあ兄様。失礼しますね」
最後に淡く笑むと、流琉はこちらには振り返らず駆けて行った。彼女の頭に飾られた青いリボンが揺れている。設営作業に戻り、忙しなく兵に指示を出し始める彼女を見て、一刀はすっと目を細めた。
※
「北郷一刀だ」
天幕の内側にいるであろうその人物に、一刀は告げる。
「入りなさい」
中にいたのはふたり――曹操、そして軍師文官らしき少女。少女は濃厚な殺気を漂わせながら、こちらを睨みつけていた。余程こちらが気に食わないらしい、と一刀は胸の奥で苦笑する。
「流琉は?」
曹操が首をかしげる。
「席を外すって。きみの云いつけなんだろ」
そう云うと、曹操は満足そうに笑む。
本来なら一刀の到着を流琉が曹操に知らせるべき場面かも知れない。しかし、一刀が天幕に到着した時点で何か聞いてはならぬ話が交わされるかも知れないと流琉は思ったのだろう。その幼い気遣いを察した曹操は楽しげだった。
「よく来たわね一刀。改めて名乗っておきましょう。姓は曹、名は操、字は孟徳。こっちは軍師の荀彧」
――曹操に荀彧か。大物が出て来たもんだよな。
声にも表情にも出さず、改めて思う。
「じゃあ、俺も。姓は北郷、名は一刀。字はない。ちなみに云っておくと真名もない」
「へえ。ねえ一刀。天に住む者には真名がないの?」
「そうだな。そう云った風習はないよ。親しい者に呼ばせるって云うなら一刀がそれに近いけど――」
云いさして、曹操と荀彧の顔色が変わるのに気が付いた。
――戯志才さんともこんなやりとりがあったっけ。彼女どうしたんだろう。
そんなことを思いながら、
「ただ、真名ほどの重みはないから気にしないでくれ。くれぐれも、不公平だからこっちも真名を預ける、とか云わないように」
――今度は先に牽制しておこう。
一刀の言に曹操と荀彧は小さく嘆息する。
「そう。ではこれからも一刀、と呼ぶようにしましょう。――一刀」
「なにかな」
「明日、盗賊討伐を行うのだけれど、あなたも協力なさい」
この言葉に、一刀は少しの間瞑目し、
「……そうだね。大口叩いた分くらいは働かせてもらうよ」
と答えた。
「当然よ。でもあなた、武の心得があるようには見えないのだけれど――」
見えてもらっては困ると、こっそり思う。力の売り時は選ばなければならない。とは云え、自分の腕がどこまで通用するのか、未知数ではあるのだが。
「頭脳働きを期待していいのかしら」
曹操の言葉に、荀彧が露骨に反応する。
「ここから南へ云ったところに砦があってね。盗賊どもはそこを根城にしているらしいのよ。どうする?」
「それは俺に」
策を考えろと云うことか。一刀は僅かに眉根を寄せる。
流石にそこまで求められるとは思わなかった。曹操が北郷一刀と云う天の御遣いを手に入れた今、求められるのは天の知識であろうと思っていた。
――いきなり兵の命を預かるような仕事を任せるのか? 天の軍略を見せろとでも?
否、違うだろう。
荀彧を差し置いて新参の一刀に策を任せる道理はない。それでは荀彧がないがしろにされてしまうし、古参兵に不満も出よう。新参の策などに命を預けられようかと。
曹操は今、こちらを試している。一刀が彼女に告げた通り、こちらを値踏みしているのだ。『天の知識の詰まった事典』以上の価値があるのかどうかを見極めようとしている。
「華琳さま!」
荀彧が声を上げる。
「このような男に――」
「桂花」
曹操が鋭く制する。
「一刀、あなたなら――盗賊どもをどう落とすかしら」
考える。
ここで引き下がるのは悪手だ。こちらが価値を見定めろと云った以上、こちらの力は示さねばなるまい。そこで、曹操を納得させるだけのパフォーマンスをしなければならないだろう。
「地図だとか、砦の見取り図だとかはあるかな」
曹操が視線で支持をすると、荀彧がクモかムカデでも見るような顔で差し出してくる。一刀はそれを受け取ると、ボールペンと手帳を取り出し、簡単な図を書き写した。これもパフォーマンスのひとつである。
「それは?」
案の定、曹操がボールペンと手帳に興味を示す。
「ん? ペンと手帳」
「ぺん?」
小首をかしげる曹操の眼前に、一刀はペンをかざしてみせる。
「書くための道具。ここのところにインク――まあ墨の代わりのようなものが入っていてさ」
一刀はわざとらしく、カチカチとペンをノックした。
「書きたいときだけ先を出して、使うんだ」
曹操、そして荀彧までが興味津々と云った様子であった。勿論、彼女らの興味はボールペンに留まらない。手帳に使われている紙は彼女らにとって、かなり上質なものであるからだ。
ただ、あまり解説が過ぎてもありがたみがなくなると云うもの。一刀は話を本筋に戻す。
「まあ、策の本案は荀彧さんが出してくれるとして」
一刀は前置きする。
「えっと、こっちの兵数とあっちの人数は分かるかな」
「桂花」
荀彧がひとつ咳払いをする。
「は。こちらは千。盗賊どもは斥候の報告によると千二百ほどよ。砦への追い込みはさっき終わったと報告があったわ」
勿論、荀彧が視線を合わせてくれることはない。
「将は、曹操、許褚、典韋、荀彧――」
「それから夏候惇と夏侯淵と云うふたりがいるわ。あと、あなた」
――やっぱりいるのかそのふたり。
頭の片隅で思う。
「じゃあ、俺の出す仮案だけど」
さり気なく自分の案は仮のものだと断っておきながら、一刀は手帳に記した図に矢印を書き足していく。
「まず砦の前に、ごく少数の囮部隊が展開して向こうを挑発する。銅鑼とか太鼓とかってあるかな?」
「あるわ」
「じゃあ、それで。敵が出てきたら囮部隊は撤退。敵は追いかけてくるだろうから、その背後を伏兵で叩く。伏兵は夏候惇、夏侯淵部隊に任せよう」
曹操は沈黙で続きを促す。
「挑発に応じなかった場合は城攻めになるだろうけど――相手は血の気は多くても脳味噌は小さい盗賊どもだから、挑発にはきっと乗ってくる。それから、攻めるのは夜明けの少し前にしよう。一番気持ちよく眠っているところを喧しく挑発すれば怒りも倍増するだろうから、相手は冷静な判断が出来なくなる。それに無理に叩き起こされた時って、自分で思っているより身体が重いから、相手の動きはより鈍重になるだろう。統率も取れず、動きも鈍い。こちらの損害も最小限に抑えられるんじゃないかな」
単純な策だと思う。
ただ、盗賊相手ならばこれで十分だろう。と云うより、状況として難解な手段を用いる余地がない。
最低限の労力、損害で、最大の効果を生むこと――現代でも古代中国でも、この重要性は変わらないはずだ。
「で? 囮役は誰がするのかしら?」
「俺がする。もし兵を預からせてもらえるのならば、だけど」
「大丈夫なの? さっきも云ったけど、あなた、まるで戦えないでしょう」
「逃げ足だけには自信があるんだ。だから曹操にはこの砦の南門で本隊を指揮して欲しい。この砦と南の砦は一直線だから――」
「伏兵が漏らした分を挟撃するのね」
「うん。たぶん、そうはならないだろうけどね」
夏候惇と夏侯淵の部隊――想像でしかないが、盗賊を討つのにそう手間取りはしないだろう。
「桂花、どうかしら」
「……」
「桂花?」
「は……。その――私もこの者と、同意見です」
荀彧は実に不愉快そうにそう云った。中々どうして、相当に嫌われたものである。
「そ。じゃあ、これでいきましょう。作戦開始は明日の夜明け前。それでいいのね、一刀」
曹操は不敵に笑んでこちらを見る。
「かまわないが……。いいのか?」
「何がかしら」
「俺みたいな新参の策でいいのかってこと」
「かまわないわ。新参だろうが古参だろうが力ある者、才ある者、気高き者を私は認めるわ」
「分かった」
「――話はこれだけよ」
「そうか、じゃあ俺は失礼するよ。設営の手伝いでもしてくるとしよう」
そう云うと曹操は余裕のある表情で、
「いい心がけね。ただ、あなたはもう将なの。あなたのことについては全軍に触れを出しておくわ。この意味、分かるわね?」
「相応しい振る舞いをせよ、と」
「そう云うこと」
「分かった。――ああ、そうだ」
ふと思いついた一刀は懐を探る。
「なにかしら」
「これ、三本あるんだ。よかったらひとつどうぞ」
そう云ってボールペンを差し出す。
「いいの?」
「替えのインク――墨がないから大事に使ってね」
「そう。じゃあ、ありがたくいただいておくわ」
最後に笑みを交わし、一刀は曹操の天幕を後にした。
取り敢えずは上手く乗り切ったと、胸中で嘆息しながら。
2
夜――兵たちはたき火を囲んでいる。食事を終えたばかりの兵は、早々に眠りにつくものが多かった。作戦は明日の朝早くに開始される。そのことはもう触れが出ていた。
一刀は一応兵たちにも受け入れられたらしい。一応と云うのは、それが表面上に過ぎないのか否か判別がつかぬからである。否、判別がつかぬのではなく、きっと――興味がないのだ。
そんなことをゆらゆらと揺れる炎を見つめながら思う。一刀は兵たちの輪から外れて座り、ひとり、ぼうと陣の様子を眺めていた。
そんな時である。
「おまえが、北郷一刀か?」
こちらへ寄ってきた気配が、そんなことを云った。
見上げるとそこには短く整えた髪を後ろへ流した女が、こちらを見下ろしている。
「ああ、そうだ」
「私は夏侯妙才と云う者だ。隣に座ってもかまわないか?」
「どうぞ」
答えると夏侯淵は一刀の傍らに腰を下ろした。
「俺のことは、曹操から?」
「うむ。明日の策を考えた軍師殿に挨拶をしておこう思ってな」
「よしてくれ。別に俺は軍師ってわけじゃ――」
「華琳さまはそうなさるおつもりのようだぞ?」
「……そうか」
たき火の赤い光が、夏侯淵の白い頬を照らしている。
「北郷は――天の御遣いなのか?」
澄んだ目でこちらを見ながら、夏侯淵が尋ねてくる。
「――らしいな」
「なんだ、他人事だな」
「御遣いって云うのは、ちょっと正確じゃないんだ。ただ天から落っこちて来ただけで、誰かに遣わされたわけじゃない」
数瞬の沈黙に、焚き木の弾ける音が滑り込んだ。
「ふむ――だが、こうも云えるのではないか。北郷は天命に遣わされたと」
「へえ」
「なんだ?」
「いや、そう云うこと云う人なんだって思ってだけだ」
夏侯淵はやや顔をしかめる。
「どういう意味だ」
「なんかこう、浪漫のある感じ? そんなこと云わなそうに見えたからから」
「ほう――北郷が私にどのような第一印象抱いたのか、よくわかった」
云われ、一刀は頬をかいて誤魔化した。
「本当は姉者も連れてきたかったのだがな」
「えっと――夏候惇、だっけ?」
「うむ。明日に備えて寝ると云って聞かんのだ」
「新参の俺に構う時間が惜しいってところ?」
「いや――」
夏侯淵は苦笑する。
「華琳さまは北郷に随分興味をもっておいでだったからな。妬けるのだろう」
「夏侯淵は妬かないの?」
「私が? ふふ、そうだな。華琳さまが北郷ばかり寵愛なされるなら妬きもするだろうが、あの方はそんなことはなされぬ。それに私もおまえに興味を持っている」
――寵愛って、曹操、女同士でそんなことしてるのか?
あられもない光景が脳裏をかすめたが、二秒でそれをかき消す。
「どうした?」
「い、いや。なんでもない」
「そうか。――今日は少し挨拶したかっただけだ。明日は早い。私は休むよ」
「分かった。わざわざありがとう」
「うむ。ではな」
夏侯淵は潔く去っていった。
爽やかで気持ちの良い人物だったと思う。
一刀は何気なく、天を見上げた。星が多い。元いた時代では、こんな星空を見たことがない。小学生のころ行った臨海学舎の時の空よりもずっと、星が多いように思う。
天の御遣い――自分がそんなものだとしたら、この星空の向こうから来たとでも思われているんだろうなと、そんなことを考える。
物思いに耽るひと時――しかしそんなひとりの時間は、そう長くは続かなかったらしい。
「――兄様」
背後から窺うような声がした。
「あれ、流琉。まだ起きてたのか」
彼女の手には、椀がひとつ。
「兄様、夕食すませてませんよね?」
「……え?」
意外なところを突かれ、おかしな声が出る。
「えっと、今日の食事当番、私が引き受けたので。兄様、食事取りに来てませんよね」
流琉は将のひとりである筈だが――その彼女が食事の用意をしたのだろうか。
「あ、ああ。明日の策のことを考えてたら、時間を逃してしまってさ。ははは」
食欲がなかったと云うのが本音だった。
「あのこれ、兄様の分です」
少女は椀と匙を差し出す。わざわざ温めなおしてくれたのだろうか、中身の雑炊は湯気を立てていた。
「ありがとう」
礼を云って受け取ると、流琉は一刀の隣に腰を下ろした。
ひと口すくって味わう。
雑炊ではあるが、具も多く、しっかりと腹にたまる。味もかなり良い。戦場での食事は粗末なものだと思っていたから、少し意外だった。
「うん、うまい」
「よかったぁ」
流琉は白い歯を見せて笑む。
この少女も、明日は命を掛けることになるのだ。彼女は本陣に詰める予定だからそう危険はないはずだが、それでも戦場では何が起こるか分からない。
命を落とすこともある。
場合によっては、自分の策によって、この娘が命を――。漫然と食事を口に運びながら思う。
考えても見れば、随分と急な話になったものだと思う。
この時代に飛ばされ、風たちと出会い、村を襲った盗賊を撃退し、明日はその盗賊を根絶やしにする。有り体に云えば、殺すのだ。
村でのことを思い出す。
一刀は盗賊をひとりも手にかけていない。一刀が使ったのは無手の技であり、命を取らずとも簡単に相手を無力化できた。
しかし、盗賊は皆殺しになった。
村の衆が殺したのである。
一刀が打ちのめした敵を、雑多な農具で叩き殺したのだ。ひとりの例外もなく、殴殺したのである。
共犯だ――直接手は下さずとも、あの時、北郷一刀は人殺しの片棒を担いだのである。
だからだろうか。
今は、明日のことを思っても、それほど動揺していなかった。
「……兄様」
傍らに座る流琉が声を掛けてくる。
「ん?」
「私、明日が初陣なんです」
「――俺もだよ」
流琉があっけにとられたような顔をしている。
「でも明日の作戦は兄様が……」
「うん、でも戦場に出たことはない。天の、俺の住んでいた国は戦なんか全くない平和な国でね。人が死ぬようなことも、滅多になかったんだよ」
そう――日本と云う国は、本当に平和だった。少なくとも、一刀が生きていた時代は。
「……怖く、ないですか」
「それがさ。不思議と落ち着いてるんだ。そのことに少し戸惑ってはいるけど」
「強いですね、兄様」
「鈍いだけかも」
そう云って、雑炊の残りをかき込む。
食欲はなかったが、食べ始めてしまえば、中々どうして食べてしまえるものだ。
「流琉は、怖い?」
「怖いです」
「――そうだよな」
流琉はこれまでも村で盗賊退治をしてきたわけだから、人を殺すのが初めてと云うわけでもないはずだ。ただやはり、敵味方合わせて二千人もの人間がひしめく戦場と云うものは、恐ろしく感じるのだろう。
椀を洗わねばならないと思った時、兵のひとりが気を利かせて取りに来てくれた。一刀より少し年上だろう男であった。椀を渡すと、兵はこちらに礼をとり、足早に去っていった。
「じゃあ、明日、流琉は俺が守ろう」
「……へ?」
「上手くやれば、きっと本陣には敵が来ないからさ。ま、ひとつ任せとけって」
云いながら、少し乱暴に流琉の頭を撫でる。こうしていると、本当に妹が出来たような気になる。
「兄様……」
「ん?」
「季衣が、その程昱さんの天幕で寝てしまったみたいで」
どうやら許褚はずっと風についていてくれたらしい。何かと忙しくしていた一刀は、結局、風の様子を見に行くことが出来ていない。きっと明日の戦が終わってからになるだろう。
「そうか、許褚にはお礼を云っておかないとな」
「あの、兄様?」
「なに?」
先ほどより更に萎縮した様子の流琉に、なるべく柔らかい声を掛ける。
「私、季衣と同じ天幕なんです」
「そうか」
「その、だから、私、ひとりで寝ることになっちゃって」
「うん」
そこで流琉は云いよどむと、息を大きく吸った。
「に、兄様!」
「え、あ、はい!」
「一緒に寝てください!」
「おう、分かった! って――えぇッ?」
――いやいやいやいや。ちょっと待ってくれ。
「嫌、ですか?」
一緒に寝る分には構わないのだ。流琉ほど幼い娘を女として意識するほど、己の欲望の範囲は広くないつもりだと、一刀は思っている。
しかし古代中国において、結婚適齢はどれほどだったか。少なくとも現代日本におけるそれよりは低いはずで、もし自分と流琉が同じ天幕で眠ったなら、おかしな誤解を生みやしないか。
取り合えず自分はいいとしてもだ。流琉が誤解を受けていいはずがない。
そんな考えが、一瞬のうちに一刀の脳味噌を駆け抜けた。
「あの……兄様?」
しかし、流琉は実に不安そうだった。
自分の意思で覚悟して曹操軍に加わったのだとは云え、彼女はまだ幼い。
――仕方ないか。
一刀は息を吐きながら、笑ってみせる。このまま彼女を放っておくのも忍びない。
「かまわないよ。じゃあ、今日は一緒に寝よう」
「あ……はい!」
「よし、腹ごしらえも済んだことだし、天幕に戻るとするか」
大きく頷いて、流琉は立ち上がる。
一刀は自然に流琉と手を繋ぐと、のんびりとした足取りで天幕に戻った。
一陣拭いた夜風は思ったより冷たく――今夜ひとりで眠るのは心細いかもしれないなと、一刀は再び星空を見上げながらそんなことを思った。
3
「北郷さま! 準備できました!」
曹操から借り受けた兵が声を上げる。辺りは未だ暗い。空が僅かに白んでいる程度である。
一刀は黒い外套を身に纏って、騎兵百を伴い、南の砦の前にいた。
「よし! 遠慮はいらない。思い切り打ち鳴らしてくれ!」
刹那、銅鑼の轟音が響き渡る。
明け方には相応しくない、騒音が空気を振動させる。
初めに跳び起きたのは門番、そして砦の上にいる見張り番である。しかし、どれもこれも眠っていたのか、こちらを見るや否や慌て始める。
――見張り、寝てたのかよ。
呆れながら、更に打ち鳴らすように指示を出す。
すると、砦の内部が俄かに騒がしくなり始めた。
そしてしばらくすると、砦の門を開け放って、盗賊どもが飛び出してくる。
――早すぎないか?
挑発の文句を考えていた一刀は、やや拍子抜けだった。
「北郷さま――やつら」
「今のこっちの銅鑼、出陣の合図と間違えたんじゃないだろうな?」
一刀が云うと、兵士は笑みを呆れたように引き攣らせながら「ははは、まさか」と答えた。しかし、そのまさかが、どうやら正解のようである。
表情を引き締めた一刀は、最低限の嘲りを口にする。
「獣に身をやつした盗賊どもよ! 我が主、曹孟徳の名のもとに貴様らを討伐する!」
その声に、盗賊どもが怒声を上げる。
こちらが少数であるからか、盗賊どもは余裕の笑みを浮かべ、突撃を仕掛けてくる。
もう少し。
もう少し引き付けてから。
そう――あたかも、砦から予想外の数が出てきたことに恐れおののいたかのような、そんな素振りで。
「今だ! 退くぞ!」
合図を出し、撤退を開始する。
すぐ背後には盗賊の獰猛な姿。
しかし、それでも相手は歩兵。こちらは騎兵、追いつかれるはずもない。
だから相手が諦めてしまわぬよう、もう少しで届きそうだと云う、そんな甘い蜜のような距離を保って駆け抜ける。
そして――。
背後で別種の声が上がる。
「北郷さま! 夏候惇隊、夏侯淵隊! 突撃を開始したようです!」
「分かった! このまま本陣まで駆け抜けるぞ!」
「了解!」
駆ける。
駆ける。
明け方の冷たい空気を切り裂いて、疾走する百の騎馬。
このままいけば、囮部隊には被害なく、作戦は成功しそうだ。
そう思った時、その予想を叩き壊す声が――轟いた。
※
本陣にて、風は曹操の傍に控えていた。
戦が始まったのだろう、遠くに兵たちの声が響いている。
北郷一刀が囮役を買って出たと聞いたのは、彼が出立してしまってからのことだった。砦に乗り込んだ時と云い、今回と云い、本当に無茶が好きなひとだと思う。
しかし、彼はもう云ってしまった。
止めることも、咎めることも出来ない。
今できるのは、こうしてただ待っていることだけだ。
「華琳さま」
荀彧が報告を持ってくる。
「北郷隊が誘導に成功、夏候惇隊、夏侯淵隊が追撃に入りました」
「そう、ここまでは、一刀の策通りにことが進んでいるわけね」
曹操は楽しげにそう云う。
しかし、風の胸中は穏やかではなかった。
隣には本陣の護衛として許褚と典韋が控えている。典韋の顔色が優れないのは、気のせいだろうか。
「報告申し上げます!」
再び斥候が慌てた様子で駆け込んでくる。
「御前よ! どうしたの!」
荀彧が声を上げる。斥候に焦った様子でいられれば、他の兵が動揺しかねない。それを嫌ったのだろう。
「緊急でございますゆえ、ご容赦!」
「かまわないわ」
曹操が促す。
「敵、盗賊部隊より、騎馬三十騎突出!! 北郷隊! 振り切れません!」
「なんですって!?」
荀彧が歯噛みする。
「あいつ……逃げ足には自信があるんじゃなかったの!」
「落ち着きなさい、桂花」
曹操が立ち上がる。
「皆のもの! 愚かな盗賊どもが策につられこちらに迫っている! 我らはこれより突撃し、賊どもを挟撃する! 出陣準備!」
号令がかかるや否や、本陣が慌ただしくなる。
このまま本陣が押し出し、挟撃すれば盗賊は殲滅できるだろう。
しかし――北郷一刀が無事であるとは、限らない。
「お兄さん……」
胸の奥が縮む思いで、風は戦場の彼方を見つめる。
その時、傍らから飛び出していった影がひとつ。
「流琉ッ!!」
典韋が得物を抱え、飛び出していったのだ。
つられて飛び出していこうとする許褚に――。
「季衣ッ! よしなさい!」
曹操からの怒号が飛ぶ。
「でも、華琳さま!」
「こっちから人をやって連れ戻させるわ。あなたはここにいなさい。華琳さまの護衛でしょう」
荀彧に諭され、許褚は引き下がる。
眼前では、典韋の影が随分と小さくなっていた。夜明け前の薄暗闇ではもうじき、典韋の姿は見失われてしまうだろう。
それでも、戦はもう、止まらない。
※
「だはははははッ! 逃がすか! 官軍ども!!」
背後から強烈なだみ声が響く。
先頭の馬にまたがるは、体格のいい盗賊団の中でも、一際大きな巨躯――首領である。
「北郷さま! 背後より敵部隊騎馬突出、振り切れません!」
「ちぃ! なんであっちの馬はあんなに速いんだ!」
雑多な武器ばかり振り回す盗賊には不釣り合いなほどに、向こうの馬は速い。良い馬を行商からでも奪ったのか。
特に首領のまたがる黒い馬は他の馬よりも随分と大きく、迫力も段違いだった。
ただ数は三十騎ほど。こちらは百騎。
――応戦するか?
否、こちらは今追われている立場。それに大して距離も開いていない。このままだと方向転換している間に、大きな犠牲が出る。
「先に行け!」
一刀の声に隣を走っていた兵士が驚愕する。
「な、なりません! 北郷さま!」
「違う! 別に死にに行くわけじゃない! これは策だ! きみたちはこれから全速力で駆け抜け、本陣に合流してくれ! 俺は策の最後の一手を実行した後、すぐに離脱するッ!」
勿論、方便である。
「し、しかし!」
「大丈夫だ! 急いでくれ!」
「くッ! りょ、了解いたしました! 北郷さま、どうか、ご無理なさりますな!! ――皆! おれに続け!!」
兵士は一刀を除いた九十九騎を連れ、速度をさらに上げる。一刀はうしろの騎馬をかく乱するため馬を操る。
しかし、それだけでは振り切れそうにない。
一刀は胸元から二本の煙草を取り出した。出発前、その先端に油を染み込ませておいたものだ。
それらを口にくわえ、手早くライターで火をつける。
そして燃える煙草を左右に一本ずつ放った。
炎の塊となった煙草は走る敵の馬の鼻を焼き、周囲を巻き込んで転倒させる。
「やってくれるじゃねえか!!」
首領が叫ぶ。
動揺のためか、相手の馬の速度が落ちる。
その機を逃さず、一刀は馬の速度を上げる。
距離を離す。
そして、馬を蹴りつけると、ひらりとその場へ飛び降りた。馬はそのまま本陣に向かって走っていく。
「囲め!!」
首領が声を掛ける。
転倒に巻き込んだとは云え、まだ二十騎は残っている。盗賊たちは馬から降りると、一刀を囲んだ。馬上の戦闘になれていないからだろう。
「やってくれたじゃねえか、え? おい」
首領が腰から曲刀を抜き、残虐に笑った。
「……」
「声も出ないってか」
つられ、二十の盗賊たちが一刀を嘲る。
「まあいい。官軍様よ。俺らに喧嘩を売った報いってやつは、受けてもらうぜ。――おまえら、かかれッ!!」
首領の号令に、盗賊の手下どもが思い思いの得物を抜き放ち、疾走する。
一刀は動かない。
まだ、動かない。
盗賊どもは、我先にと腐肉にたかるハイエナのよう。
不恰好に肩を揺らすようにして走るのは、無意識のうちに相手を威嚇しようとしているからか。
「死ねやぁぁぁぁぁ!!」
刃の先端が迫る。
あと数瞬で、それらが北郷一刀を刺し貫く。
その――刹那。
一刀の身体が沈む。
そして、煌めくような蹴りが、周囲の盗賊どもを一蹴した。
「な……ッ」
盗賊の首領が驚愕に息を呑む。
二十人の部下を一撃で下した男を見る。
一刀は胸元から、そっと。
深紅の仮面を覗かせた。
「く……くくくく」
首領が笑いだす。
「そうか、てめえか。……てめえか!! 仮面男!! だはははははは!!」
狂笑。
哄笑。
「そうか! おまえか! そうだ! おまえだ! おまえでなくちゃだめだ! おまえなんだ! 俺たちを終わらせるのは! 俺を終わらせるのは! 鬼畜に堕ちたこの俺を、地獄の底に叩き落とすのは、てめえなんだ!! 仮面野郎!!」
首領は曲刀を振るい威嚇する。
「さあ! 終わらせてみろ、若造! 獣に身をやつした俺たちの! 腐ったその生きざまを終わらせて見せろ! この俺に、無様な死に花を咲かせて見せろ!! さあいくぞッ! さあいくぞッ!! 俺は名もなき獣ッ! いざ尋常に、勝負だッ!! 小僧ッ!!」
巨躯が疾走する。
地が揺れるほどの狂走。
そして、首領は曲刀を一閃する。――しかし、空を切る。
一刀は跳躍している。
眼前に捉えるは――髭にまみれた首領の顔面。
蹴撃一閃、首領の身体が宙を舞う。
「がはぁッ!!」
大きな身体が地面を叩いて転がる。
しかし、大男は獲物を手放すことなく、すぐさま身を起こすと、再び一刀に襲い掛かる。
昨日とは比べ物にならない気力。死生を掛けた戦闘に、首領の生命が燃えている。獣の足掻きは終わらない。
「そんなもんかよ、小僧!!」
叩きつけられる曲刀。
だが、当たらない。
一刀は読んでいた。
躱していた。
首領の右の脇腹に、拳を叩き込む。
「ぐ、がぁッ!」
叩きつけた拳の向こうで、あばら骨の砕ける音がした。
「ち、畜生ッ!!」
再び一閃。
しかし、一刀はそれを冷酷に躱し、次は左の脇腹に猛撃を喰らわせる。
再び、骨の砕ける音。
それから――。
首領は幾度立ち上がっただろう。
一刀は幾度彼を打ちのめしただろう。
男たちの戦舞は、気が付くと朝日に照らされていた。
白い朝日の中。
白いままの、一刀の頬。
赤く血に染まった、首領の顔。唇は切れ、歯は欠け、鼻は砕け。それでも震える足で、立ち上がる。立ち上がらねば、終わらぬと云うように。
一刀に立ち向かってくる。
けれども、最後の一撃。
顎に見舞ったその一撃は、首領の足を沈黙させた。
意識はあるのだろう。
ただ、倒れ伏したまま。
曲刀を投げ出したまま。
荒い息をするばかりで――首領は動かない。
一刀は投げ出された曲刀を拾い上げ――先ほど倒した二十人の盗賊たちの元をまわっていく。
ひとり。
また、ひとり。
胸に曲刀を突き立てて――一刀は、とどめを刺していく。
その様を、首領が見ている。
己の曲刀で、手下が殺されていくその様を。
そして、一刀が全ての手下を殺し終わった頃――首領はその身を起こす。
まだ足は回復しない。膝を折り、座り込んだままで。
けれども、上半身は起こし、一刀と真っ直ぐに対峙する。
白い朝日が強くなっていく。
「終わりだ」
一刀は、その時の訪れを告げる。
「そうかい」
首領はそれでも笑っている。そして、太いその両の腕を、広げる。
「さあ! やれ!」
一刀は曲刀を引いて構える。
そして。
「あばよ!! 伊達男ッ!!」
一刀は――その分厚い首領の胸を、一片の躊躇いもなく、刺し貫いた。
首領の目が見開かれる。
映っている。
その潤んだ瞳に、一刀の姿が映っている。一刀の顔が映っている。
冷酷で、冷徹な表情が映っている。
一刀はそれを見つめながら、曲刀から手を離した。
終わった。
全て、終わった。
殺した。
殲滅した。
鏖殺した。
空を見上げる。
青い、青い空はどこまでも遠く、透き通っている。
一刀はひと息つき、肩の力を抜いた。
しかし、それも一瞬のことだった。
「にい、さま……?」
振り返った先には、幼い少女が立っていた。
短く整えられた髪には、青いリボン。その色は見上げたばかりの空のようで。
彼女は一刀を見つめ、そして狼狽している。
恐れている。
――ああ、俺は。
彼女を、見れば分かる。
――俺は。
流琉の、その顔を見れば。
――いまこの男を。
身を引く流琉の姿を見れば、自ずと悟る。
自分は、この男を、盗賊の首領を、殺した時と同じ顔で流琉を見ているのだ。
確信する。
なぜなら。
流琉の大きな眸に。しっかりと。
その冷徹な貌が。
映っているのだから。
そして陽光は照らしだす。
戦場に立つ者の姿を。
戦場に倒れ伏すものの姿を。
白い日光線はそれらの者たちを平等に貫き、祝福し、そして告げる。
戦いは、終わったのだと。
《あとがき》
ありむらです。
まずは、ここまで読んでくださっている読者の皆様、コメントを下さったかた、支援をくださった方、お気に入りにしてくださっている方、メッセージをくださった方、えっとそれから……兎に角応援して下さっている皆様、本当にありがとうございます。
皆様のお声が、ありむらの活力となっております。
今回は盗賊討伐編でした。まあ、ちょちょいと盗賊をやっつける程度なので、あっさり描いてみましたが、戦闘シーンは中々に難しいですね。上手く伝わっていますでしょうか。
で――一刀さんがあっさり人を殺してしまっていますが、その辺りの精神構造は後々明かそうと思います。
二人目の真名は流琉で。決めていましたとも、はい。ただ流琉の場合は大層なイベントもなく、逆に素朴に、やや寂しげに真名を許してみようかと思いました。
どうだったでしょう。
さて、ここで少し私の一刀さんの現状をおさらいしておきたいと思います。
まず一刀さんは大学二年生、二十歳であると云うこと。そのため、冷めていたり現実擦れしているところがあります。
また、前回の外史では貂蝉(卑弥呼も)と大陸をまわっており、武芸はとても達者、馬にも乗れますし、読み書きも出来ます。それらのスキルは忘れていたはずなのですが、序章の貂蝉キッスによって目覚めています。
ただ今の一刀さんは、自分にスキルがあるのを自覚しつつも、誰と共にそれを習得したのかを思い出せずにいます。これは外史に渡った際の制約ですね。
それから、アイテムをいくつか持っています。布袋(酒瓶、チェスセット入り)、煙草ひと箱、ライター、望遠鏡、ボールペン三本、手帳、携帯電話。
どれも一刀さんの大切なものであり、一刀さんの身体の一部として外史にやって来ています。それぞれの品に思い出がありますが、全部語り切れるかは、わかりません……。
チート臭いな、思われるかもしれませんが、そんなチートな一刀さんを痛めつけていきたいと思います。
ちなみに一刀さんは今は無手ですが、いずれ得物を扱ってもらいます。もう少ししてからです。かっこよく書けるか、今から心配ですが、期待してお待ちいただければと。
それでは今回はこの辺で。
次回は――黄巾に行くか、小休止な話を入れるか、少し考えます。
コメント、感想、支援などなどじゃんじゃんください。とても嬉しく思っています。見る度にうきうきした気分になります。
今後ともよろしくお願い致します。
ありむら
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独自解釈独自設定ありの真・恋姫†無双二次創作です。魏国の流れを基本に、天下三分ではなく統一を目指すお話にしたいと思います。文章を書くことに全くと云っていいほど慣れていない、ずぶの素人ですが、読んで下さった方に楽しんで行けるように頑張ります。
魏国でお話は進めていきますけれど、原作から離れることが多くなるやもしれません。すでにそうなりつつあるのですが。その辺りはご了承ください。
あと私の描く一刀さんは少々お強くあります。苦手な方はごめんなさい。
今回は盗賊殲滅編。
早く黄巾に入りたいです。