No.457568 魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるは悪魔の子~ 三十話2012-07-22 18:53:26 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2234 閲覧ユーザー数:2160 |
八神家の朝は早い。
家族が増えたこともあり、いつも以上に賑やかになったのは間違いないだろう。
そして、戦士たちの朝も早かった。
「今日はなにすっかな~……」
朝日の出が出ると同時にカリフは充分に体をあっためて庭へ出ようとする。
そこへ声がかかる。
「ん…カリフか……」
「犬……ザフィーラか」
リビングで犬の姿になって寝ていたザフィーラが起きた。
犬の姿のまま立ち上がり、カリフに問いかけてくる。
そして、カリフのラフな格好にザフィーラは聞いてくる。
「これから鍛錬か?」
「あぁ、毎朝の週間だ。ま、しばらくは外にいっからまた寝ててくれや」
そう手をヒラヒラと振って庭へと出ると、後ろからザフィーラから声をかけてきた。
「待て、その鍛錬に私も加えてはくれないか?」
「ほう、お前も訓練をたしなむのか?」
「あぁ、盾の守護獣として鍛錬は欠かせないからな。それにお前は私よりも強い。自分の強さを知りたい」
その真摯な心にカリフは笑みを浮かべた。
「中々殊勝な心がけだな、いいだろう。支度しな」
その言葉を受けてザフィーラは人型に戻ってカリフと共に庭へと出た。
カリフと向き合うと、カリフが先に構えた。
「どれ、少し手合わせしようか」
「あぁ」
ザフィーラも構えると同時に、両者は共に地を蹴った。
「う……朝か……」
朝の日差しによって目覚めたシグナムはその身を起こした。
今まで感じたことの無かったベッドの感触に心地よさを感じながら起床する。
今までに無かったような待遇に戸惑ってはいたが、起きた時の感じはとても心地が良かった。
そう思いながら一階へと降りていくと、そこには既に起きていた主が料理をしていた。
「あ、シグナムおはよう~」
「おはようございます。すみません、寝過してしまいました」
「別にええよ~。これくらいいつものことやし、人数も増えて作り甲斐が俄然でてきたしな~」
昨日の焼き肉のことといい、我等には食事はいいと申したのに、主曰く『これも立派な主の務めや』といって我等に食事を提供してくださっている。
そんな主に感謝していると、外から何やら戦闘音が聞こえてきたから庭に目をやる。
「だからそこは防御じゃない!! ここはガードじゃなくてカウンターで迎え撃て!!」
「くっ! 分かった!!」
ザフィーラとカリフが組手をしており、膝を付くザフィーラに檄を飛ばしていた。
「せやあぁぁぁ!!」
「しゅっ!」
ザフィーラのパンチの嵐をカリフは捌きながら軽いパンチをザフィーラへ繰り出す。
傍から見れば互角なのだが、表情から見れば明らかにカリフが手加減している。
ザフィーラは必死に捌いている様子なのが見て取れる。
そんな中、カリフが威力とスピードを上げた一撃を繰り出す。
「ぐううぅぅ!!」
ザフィーラは捌くのを止めて腕でガードすると、後ろへ飛ばされないために踏ん張る。
そんな姿にカリフがまた檄を飛ばす。
「受けるな!! 今のはカウンターチャンスだったぞ!!」
「はぁ、はぁ…」
「お前は自分でも知らない内に防御に撤している節がある。受け過ぎると体にもガタが必ずくるぞ!」
「はぁ…はぁ…」
「まずは攻撃法を覚えろ! 折角の腕力も宝の持ち腐れだぞ! まずはオレにカウンターを使ってみろ!!」
「あぁ!」
そう言って再び両者は撃ち合った。
(凄いな……この撃ち合いでザフィーラの欠点を見つけて指摘したか……とんでもない観察力だな)
内心ではカリフの手腕に関心し、自分もカリフと手合わせしてみたいという想いもあった。
(くぅ……もう少し早く起きてれば……!)
「シグナムおはよう~」
「はやておはよ~」
悔しむシグナムの後ろでシャマルとヴィータが欠伸をしながらリビングに来ていた。
しばらくしてカリフとザフィーラが戻って全員で音頭を取る。
「「「「「「いただきます」」」」」」
その後、朝飯を食べた後、シグナムが自分にも手合わせしてほしいと申し出てカリフは自分の修業の時間まではいいということで了承した。
どこか満足そうなカリフと嬉しそうに拳を握るシグナムを前にしてヴィ-タは言った。
「バトルマニア共」
そのままザフィーラは見学、シャマル、ヴィータ、はやても手持無沙汰に見学している。
庭の中央に来てカリフはレヴァンティンを構えるシグナムに言った。
「正直なぁ……お前は全体的に防御も攻撃もあるし、技量もある……ヴォルケンリッターの将と言われるだけあってそれといった弱点も見当たらない……」
その言葉にシグナムも面を喰らってしまうが、普通に返す。
「ふ、なら私はかんぜ「と言うとでも思っているのかぁ?」……どういうことだ?」
台詞を遮っての指摘にシグネムは嫌み顔に若干イラつきながらも返すとカリフはニヒルに笑って構える。
「お前にも自分では分かってねえクセがある。今からそこを自覚させる」
「……いいだろう。そこまで言うなら見せてみろ」
カリフの覇気に触発されてシグナムは構え、周りも緊張に包まれて生唾を飲む。
そして、最初にカリフが出た。
「!!」
瞬時にシグナムの眼前に入り込んでカリフにとっては軽めのジャブを放つ。
それを剣の腹で受け止めると、とんでもない衝撃が襲った。
「ぐぅ!」
シグナムの体がのけ反るもすぐに態勢を立て直す。
「余所見するな」
「!!」
カリフの回し蹴りを屈んで避けるも、ポニーテールの髪の毛が斬られるのに戦慄する。
そんな威力の攻撃を放っても相手は息切れ無し、完全に手加減している。
少し歯痒い気もするが、そんなことを考えている余裕はない。
「そら」
パンチは避けて可能であれば受け流しながら反撃を繰り出す。
今の状態でなら拮抗できている。
だけど、このまま受け続けても体力と時間が浪費されてしまう。
(く、このまま離れてシュランゲフォルムで牽制して飛龍一閃で挫かせる!)
シグナムはカリフの攻撃を強めに弾いてその場を離れる。
ここからはシミュレーション通りに魔力を練る。
「レヴァンティン! カート……」
そこまで言った時、カリフが構わずにシグナムに突っ込んできた。
「ちぃ!」
魔力構成を中断して、再び打ち合う。そして隙を見て再び距離を置く。
「ふん」
「!!」
だが、またそこにカリフが突っ込んでシグナムと打ち合う。
そんな動きが三回も続いたところでシグナムは焦りを覚える。
「く! 離れられん!!」
愚痴を洩らしていると、カリフは薄い笑みを浮かべながらシグナムに言う。
「そう、そこがお前のクセであり、弱点だ」
「な……しまった!!」
自分がいつ弱点を吐露したのか、と半ば呆然としていると、カリフがレヴァンティンを下から蹴り上げて弾いた。
「うわ!」
シグナムはおもむろに足を払われて地面に転げる。
「い……つ……」
「そこまでだな」
「!!」
眼前に自分を見下ろしてくるカリフに驚愕し、ここで自分が負けたことを理解した。
なぜ、という気持ちが満たされる中、カリフがシグナムの心を呼んだように答えた。
「お前……魔法に頼り過ぎだな」
「な……そ、そんなことが……」
「シグナム……お前はある程度の距離以上に近づけられて戦っている時、牽制するために魔法使おうとしたろ?」
「!!」
ここで自分のしようとしたことを見抜かれて何も言えなくなってしまった。
「だからさっきのように近距離戦で戦われ続けると魔力を練ることもできずにジリ貧、そして体力と集中力を奪われてさっきのようになるんだよ」
「そ、そうだったのか……」
確かに言われてみればそんな戦法を繰り返してたな……そう思っていると、カリフはすぐに指摘してきた。
「まずは純粋に剣の腕を磨け。後は近距離に入りこまれた時のために少しの体術も覚えておけ」
「……努力しよう」
やはり、我等ベルカの騎士を下したほどの実力者だな……実力が計り知れないな…
我等もまさか教えを説かれるとは思っていなかった。だが、それはつまり私たちはまだ強くなれる余地があると見ていいだろう。
それならば、俄然やる気も出てきた。
「よし、じゃあ後はお前等でやってくれ。オレは自主練するから」
「あ、あぁ…時間を取らせて済まなかったな」
そう言って私はシャマルたちのいる縁側に戻ると、そこには胡坐を掻いたヴィータとシャマルたちが迎えてくれた。
主は飲み物を下さった。
「お疲れさんや~。すっごい強いんやね~シグナムは」
「いえ、私などまだまだです」
これは謙遜でもなんでもない。
事実、目の前の少年に一泡吹かせるどころか一太刀入れることもできなかったのだから。
「でも、さっきの動き全然見えへんかったで。凄かったのはホンマやで」
「それでも、私はあなたを守る騎士です。ここで強くならなければ烈火の名が泣きます」
「ふ~ん、じゃあシグナムから見てカリフくんってどう思う?」
そんな質問に少し悩んでしまう。
「……正直強すぎだと言ってもいいです。あの歳であれだけの強さ、今まで並大抵ではない修業をしてきたのでしょう」
言わせてみれば、底が見えないから格付けもできない。
奴の力、速さ、技量の全てが段違いだ。
加えて、カリフの気という魔力とは違う力もあり、レアスキル級の反則的な技も簡単に扱ってくる。
そんな奴が本気を出す時が来るのだろうか?
「……世界は広いな」
とりあえずは少しずつでいいから強くなっていこう……
目標はすぐ近くにいるのだからな
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井の中の蛙