ifストーリー ビーター 間のお話し・その2
アスナSide
「……何か用か?」
今までとは打って変わって、冷淡な表情になったキリト君が訊ねた。
「あ~、用があるのは俺じゃなくてキバオウさんなんだ…」
ディアベルさんは少し気まずそうにそう言った。少し後ろにいたキバオウさんが前へと出た。
「その……すんまへんでした!」
「……なんだ、いきなり」
突如謝られたキリト君は少々困惑しているようだ。
「『ベーター』やからっていうだけで、いちゃもんとかつけて。
あんたらかて人間なんやから、恐怖とかあるんは当たり前やのに、
それを理解しようともせぇへんであんなこと言って、ホンマにすんまへん!」
「……わかった、気にしないでくれ。俺もあの時は言い過ぎたからな」
「いや、あんたは悪くあらへん。ワイもベーターに偏見持ちすぎやったわ…」
「まあ、いいじゃないか…。お互いに思うところがあったって事で」
お互いに譲ろうとするキリト君とキバオウに、エギルさんが一言いったことで、
キリト君は苦笑を、キバオウさんは少々の照れ笑いをした。
再び空気が穏やかなものになるのが分かった。
けれど、キリト君の表情はまた暗くなった。
「だけど、キバオウ。やっぱりあんたの言う通りだよ…。俺はβテスターの中でも最悪の存在だからな…」
彼の言葉からはどこか重いものを感じた。一体どういう意味なんだろうか?
「βテスターっていってもほとんどの奴らがレべリングのやり方も知らない素人ばかりだった。
いまのあんたらの方が上だよ。でも俺はな、テスト中に俺と他数名しか辿り着けなかった層まで上ったんだ。
だから、他の誰もが知らない情報を知っている。情報屋なんか問題にならないくらいに…。
ちなみに上ったのは第28層くらいだったかな」
「「「「っ!?」」」」
キリト君の言葉に私は勿論、みんなが絶句した。驚愕どころの話ではない。彼は……彼らは異常だ。
公式では、二ヶ月で第8層までしか上れなかったはずなのに…。
彼と一部の人達は半年で28層まで上がったのだ。
「だからキバオウ…。あんたが言った事はβテスターには当てはまらない。
それは俺のようなβテストの異常者、チーターに言うものだ…」
キリト君の自虐的な言葉にわたし達は黙るしかなかった。
そこでふと、言葉が聞こえた。
「ビーター……」
「ビーター?」
呟いたのはディアベルさんだった。聞き慣れない言葉にキリト君も呟き。私達は首を傾げた。
「あぁ、いや…。『βテスター』の『チーター』で…『ビーター』かな…と」
なるほど。だけど、それ自体はいい呼び名ではないけど…。
「ビーター……いい呼び名だな。俺はそれを名乗る事にする」
「「「「えっ!?」」」」
彼の言葉に私達はまたもや驚いた。これをいい呼び名って。
「これを利用しない手はないな…。よかったら協力してほしい事があるんだが…」
キリト君がお願いをしてきたので、わたし達は取り敢えず彼の言葉に耳を傾けた。
「……というわけだが、頼めるか?」
「キリト君…貴方……」
「そんな事をしたら、お前が…!」
「そうや! 一度あんなこと言ったワイが言うのもあれやけど、それはあかん!」
「そうだ! やめたほうがいい!」
キリト君が話した内容にわたしは愕然とし、エギルさん達は反対の意を表した。
「頼む…。俺達『ビーター』には覚悟がある。
これを成功させれば、テスターと非テスターの諍いを少なくできる……だから頼む」
彼がしっかりと頭を下げてきたので私達は何も言えなくなった。
「……ワイは協力する」
「キバオウさん!」
キバオウさんが協力を申し出たことにエギルさんが反応した。
「ワイがやれば成功する確率は上がる。他のみんなは乗せられてくれるはずや!
でもなキリトはん…。こんなん、この一回きりやで…」
「ありがとう、キバオウ…」
キバオウさんは辛いと思う。和解する事ができたキリト君に、これからしないといけないことを考えると。
「なら、俺も協力しよう」
「……俺は緩衝剤になればいいんだな?」
「ふ、二人とも!?」
ディアベルさんとエギルさんも協力することを決めたらしい。
「頼む、ディアベル、エギル…」
これだけでもう準備は整ったといえる。後は、私が黙っていればいいだけ…。
「それじゃあ、みんな…頼む」
「「「おう(ああ)」」」
キリト君に対して三人が答えた後に帰った。
私はその場に残り、彼の服の裾を掴んでいる。
結局その後、私はキリト君について一緒の宿の同じ部屋に泊まり、明日に備えた。
アスナSide Out
To be continued……
後書きです。
ご都合主義により、ディアベルとはちゃんと知り合わせて、キバオウとは和解させました。
次からはアニメ沿いの展開になります。
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作者のご都合主義が全開しますw
それでも楽しんで頂ければ、幸いです。
どうぞ・・・。