No.455848

世界を越えし男と数の子たち 第38訓 誰にでも大事な思い出はある

俺はこの日、掛け替えの無い奴らに出会った。
俺は車に跳ねられて死んだと思ったら、なんかよく分からんが別世界に行ってしまったみたいだ。
気が付けば、マッドな科学者や12人の姉妹と暮らしていたり、組織にケンカ売って犯罪者になっちまったり。平凡な日々を送っていたり
そして--俺は戦う。ナンバーズ達を、世界を守るために。

2012-07-19 21:02:28 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1230   閲覧ユーザー数:1213

前回の続きです。

グリンが語る『アイツ』との思い出とは一体?

前回のあらすじ

 

優斗、セイン、ウェンディ、ディードが池で釣りをしてたら河童を釣り上げた

    ↓

逃げようとしたが、河童に捕まり、怒られた

    ↓

河童の皿が割れ、後ろから5人の男達があらわれ、河童に池から出ていけと言う

    ↓

河童は反抗し、男達は去っていった←今ここ

 

ーーーーーーーーーー

 

優斗達は、焚き火を5人(?)で囲い、釣り上げた魚を焼いている最中である。

 

割れた河童の皿を、ウェンディがセロテープで貼り付けて修復している。

 

ウェンディ「ホラ、直ったっスよオッサン」

 

ウェンディがグリンの頭をはたくと、『バリンッ!』と音がした。

 

グリン「アレ?今『バリンッ!』っていわなかった?」

 

ディード「気のせいですよ」

 

優斗はグリンの方を向く。

 

ユウト「オッサンよォ。引っ越しするってんなら手伝うぜ」

 

グリン「余計なお世話だバカヤロー」

 

グリンは、池の方を向く。

 

グリン「…アレを見ろ」

 

優斗達は、グリンと同じ方を向く。

そこには、コケが生え、天辺に花が咲いている『何か』があった。

 

グリンは、それを見ながら言う。

 

グリン「あそこに、妙なモンが見えるだろ。ありゃ昔、俺が乗ってきた『船』だ」

 

ディードは船から、グリンに目を向けて聞いた。

 

ディード「グリンさん。あなた、この世界の出身ではないんですか?」

ディードの問いに答える。

 

グリン「俺達の種族は、清い水がねーと生きられねー」

 

グリンは、過去を思い出しながら、4人に語り出した。

 

ーーーーーーーーーー

その昔、俺達の世界は天変地異で水を失い、みんな、新天地を求めて旅立った

 

そして、俺がたどり着いたのが、この世界『ミッドチルダ』よ

たまげたよ、こんな住みやすい世界があったなんて

 

あの頃ぁ、宝石を一人占めしたような気分だった…

 

だが当時…まあ、今もかもしれんが、俺の姿はこの世界の人間にとっちゃ化け物以外の何者でもねェ

 

迫害され、俺は池に戻り、孤独に生きるようになった

 

ーーーーーーーーーー

 

グリン「人はよォ、他人の中にいる自分を感じて、初めて生きてる実感を得るんだ。

 

俺は生きる場所は得たが、死んでたも同然だったんだ」

 

 

『アイツ』に会うまでは

 

ーーーーーーーーーー

 

 

そいつは、何時の間にか池のほとりに居たんだ

 

なーんにもせずに、ただずーっと池を眺めてんだよ、いつも

 

俺も最初は隠れてたんだが、そのうちバカらしくなってな、聞いてみたんだ

 

グリン「お前、いつもそこで何やってんだ?」

 

 

娘は俺を見て少し驚いた風だったが、平然と答えた

 

娘「部屋に居ても1人だからつまんなくて、どうせなら自然(ここ)で1人で居ようと思ったんだけど、

 

 

2人だったんだね」

 

 

娘は肺を患っていた

 

人に伝染(うつ)る病だ

はれ物扱いされ、部屋に隔離されてたところを忍んで出て来てたのさ

 

ーーーーーーーーーー

 

グリン「きっと、誰でもいいから、話し相手が欲しかったのさ、俺も『アイツ』もな」

 

セイン「………」

 

グリン「それから、『アイツ』と語る時間だけが俺の生きる時間になった。たわいもない話しかしなかったが、楽しかったよ」

 

ーーーーーーーーーー

 

 

娘「おじさんはいいね」

 

グリン「何が?」

 

グリンは池に浮かんで背泳ぎをしている。

 

娘「こんなにキレイな水の中自由に泳げて。私、小さい頃から身体弱かったから、泳いだ事なんて無いんだ」

 

一度でいいから、自由に泳いでみたいよ

 

 

透明な世界を…

 

 

娘の言葉を聞いたグリンは、娘に言った。

 

グリン「……身体、治しゃいい」

 

娘「無理よ、もうずっとだもの」

 

グリン「バカヤロー、人生は長いんだぜ。

オメーが身体治すまで、ここは俺が護っといてやるよ」

 

 

キレーなままでな

 

 

グリン「だから、さっさと身体治してきな」

 

グリンが言った。すると、娘が右手の小指を差し出した。

 

娘「わかった、約束だからね、おじさん」

 

グリンも、右手の小指を差し出し

 

グリン「おおよ」

 

2人は、ゆびきりげんまんをした。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

グリンは、話し終えると池の中に帰って行った。

ユウト「…約束っつったって、何年前の話だよ」

 

ディード「さあ…」

 

ディードは、古くなった『船』を見ながら言う。

 

ディード「乗ってきた船があんなになるくらいですから、少なくともその娘さんはとっくに……」

 

ディードは、グリンの話を思い出した。

 

優斗は空を見ながら言う。

 

ユウト「…酔狂にも程があるぜ、つきあいきれねーや」

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その日の夜、池の近くに、昼間池に訪れた5人の男が居た。

近くにはブルドーザーが三台あり、池を土で埋めようとしている。

 

ゴルフクラブを持った男が、池に居るであろう河童…グリンに向けて言った。

 

男「クク…、腐れ河童、俺も、もう限界だよ。池ごと、土の下に埋めちゃうもんな~」

 

隣にいる、眼鏡を掛けた男が、不安そうに言う。

 

眼鏡男「でも、大丈夫なんですかね?河童の祟りとか」

 

男「バカか、河童なんか居るわけ無いだろ。ありゃ、他の次元世界から来た、ただのオッサンだ」

 

 

ブルドーザーが、土を押して動き出した。

 

ブルドーザーに乗った、太った男が呟く。

 

太った男「…ったく、なんで夜中に、こんな事しなきゃならねーんだ」

 

男が呟いていると、ブルドーザーが『ガクンッ!!』と、止まってしまった。

 

太った男「んだオイ、止まっ…」

 

太った男が下を見ると、ブルドーザーが地面に飲み込まれていくのが見えた。

 

太った男「!!」

ブルドーザーの周りを見ると、河童の格好をしたセインが、IS『ディープダイバー』で、ブルドーザーを少し沈めていた。

 

セイン「あたしは四郎河童だよ」

 

セインの言葉を聞いて、太った男は悲鳴を上げた。

 

太った男「ぎゃあああああ!!」

 

 

離れた所に居る、細身の男は、太った男の悲鳴を聞いて、太った男に、ブルドーザーを動かしながら、何があったのか聞いた。

 

細身の男「オイ、どーした?キャタピラに金●でも巻き込まれたか!」

 

しかし、太った男から返事が無く、細身の男は作業を再開する。

 

細身の男「…何だったんだ?」

 

???「もしかしたら、ブルドーザーが地面に飲み込まれてるんじゃないっスか?」

 

細身の男「んなわけねーだ…」

 

細身の男は固まった。自分は他の奴と離れた所に居る、今の声は誰の声なんだ?

 

そう思った細身の男は、ふと右側を見る。

 

するとそこには、河童の格好をしたウェンディが、自身のIS『エリアルレイブ』でライディングボードを飛行させ、自分の隣で座って浮いていた。

 

細身の男「!!」

 

ウェンディは、ライディングボードから一つスフィアを出し、細身の男に向けながら言った。

 

ウェンディ「あたしは三郎河童っス。おじさん、あたしキューリが欲しいっス」

 

ウェンディの言葉を聞いて、細身の男は悲鳴を上げた。

 

細身の男「ぎゃあああああ!!」

 

 

細身の男から離れた所に居る、中肉中背の男は、離れた所に居る、細身の男にブルドーザーを動かしながら、何があったのか聞いた。

 

中肉中背の男「何やってんだ?オイ、どーした?キャタピラに●玉でも巻き込まれたか!」

 

中肉中背の男が、細身の男に聞く。

 

その時、後ろから『ガタッ』と音がした。

後ろから、河童の格好をしたディードが、剣を構えている、そして

 

ディード「二郎河童、推参!!」

 

剣を、中肉中背の男に振り下ろす。

 

中肉中背の男「!!」

 

バキィッ!!

 

中肉中背の男は悲鳴を上げ、気絶した。

 

中肉中背の男「ぎゃああああ!!」

 

 

離れた所に居る、髪がセンター分けの男と、眼鏡を掛けた男は、中肉中背の男の悲鳴を聞いて、ゴルフのスイングをしながら言う。

 

男「なーに、ギャーギャー騒いでんの?キャタピラに金●でも巻き込まれたか?オイ!ちょっと見てこっ…」

 

男は眼鏡を掛けた男の方を見る、すると、眼鏡を掛けた男は白眼を剥いて気絶していた。

 

男「な、なんだ…」

 

 

男の後ろに、河童の格好をした優斗が現れる。

 

優斗は、男の頭を腕で締め付ける。

 

男は優斗を見た。

 

男「てめーは!」

 

ユウト「蝦夷は洞爺湖から参上つかまっった、河童四兄妹が長男、太郎河童!!」

 

優斗は、男の頭を締め付けながら言う。

 

ユウト「この土地から今すぐ手ェ引いてもらおうか?さもなくば、河童の祟りが…」

 

男が苦しそうにして、優斗に言う。

 

男「かっ…勘弁してくれ、河童といえば何だ?キューリか?好きなものを言え。俺は髪の毛は余りないが、金だけはあるぞ!」

 

男が優斗に聞く、しかし優斗は男を締め落としながら、男に言った。

 

ユウト「好きなもの…そーさなァ…

 

 

 

天玉うどんと

 

酔狂な奴かな…」

 

男は、口から泡を吹きながら気絶した。

 

ーーーーーーーーーー

 

翌日、優斗は池に釣りをしに来ていた。

 

池からグリンが優斗を見ている。

 

グリン「んだ、てめー。また来てたのか」

ユウト「よォ、きーたぜ。この土地、売りに出されたらしいな。これで、暫くは大丈夫なんじゃねーの?」

 

グリン「そうか…、なあ、何か、本物の河童が現れたらしいぞ」

 

ユウト「そいつァ恐ェな」

 

グリン「………、ひょっとして、お前『ピチャッ』!」

 

池から何かが跳ねる音がした。

 

優斗が音がした方を見ると、一匹の魚がおよいでいた。

 

ユウト「おっ、あんなキレーな魚、この池に居たんだな」

 

グリン「ハハッ、楽しそーに泳いでらァ」


 
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