「ただの貧血ね。多分寝不足だと思うわよ」
医者――っていうより、もはやなのはの主治医に近い存在になっているシャマルがフェイトとヴィヴィオに向かって言い、それを聞いた二人はただの貧血だと聞いてホッとしているのだった。しかしフェイトはそれ以外にももう一つ気になっている事があった。
どうしてシャマルがここに居るのかという事である。フッケバイン事件の時に機動六課の大半のメンバーが集まった特務六課が解散された後、シャマルは元の職場である時空管理局本局の医療局に戻ったはずであるのに、何故普通の総合病院であるここにシャマルが居るのかとフェイトは思っていたのである。
「後、私がどうしてここに居るのかと思っていそうだけど、ちょっとこの病院に用があったの。そうしたら、いきなりなのはちゃんが搬送されてきたから驚いちゃったわ」
そんな事を思っているフェイトに気づいたのか、シャマルはフェイトが思っていた疑問に答えるのだった。
それを聞いてフェイトは納得し、シャマルはここに用事があって、そこに偶然なのはが搬送されただけであったという唯の偶然であった。
「まぁなのはちゃんに何かあったというなら私はすぐに駆けつけるけどね。なのはちゃんはあの時みたいにまたムリをするような気がするから。」
フェイトはそれを聞いてなんとなくシャマルがそう言う理由が分かってしまう。
JS事件の後、傷ついたなのはにシャマルが主治医についていたので、なのはが無理をする可能性がある事を知っていたからだ。もちろんなのはは一度ガジェットドローンIV型によって刺されたときに無理をしないことを心掛けているが、自分の事になると無理するところはまだ残っていたのである。迷惑を掛けないためにも自分一人で解決しようとするのは今も昔もあまり変わっていなかった。
「さて、それじゃあなのはちゃんの所に行こうか」
それからシャマルは立ち上がり、フェイトとヴィヴィオにそう言って、三人でなのはが寝ている病室へと向かうのだった。
エレベーターで上の階へと上がり、なのはの病室がある階に止まると三人はエレベーターから出て行き、それから数分歩いて行くとなのはの病室に着いて病室の扉を開ける。なのはが居る病室は個室であるのでベッドは一つしかなく、そのベッドんはなのはが眠っていたのだった。
そんななのはをみて安堵していたフェイトだったが、疑問に思っていた事が一つあった。シャマルが言うにはなのはは寝不足で倒れたと聞いていたが、なのははほとんどフェイトとヴィヴィオと一緒に寝ていたはずだったので、どこにも寝不足になるような要素は一つもなかったのだ。なのにどうして寝不足になっていたのかとフェイトは疑問に思っていたのである。
それと最近、なのはが何かを考えている事に気づいているので、それが原因でなのはは毎日全然眠れていなかったのではないかとフェイトは思ってきていた。
けどフェイトは今の段階でなのはに何かをするようなことは無かった。なのはが話してくれない限りフェイトができる事なんて無かったので、それがフェイトにとって悔しかった。友達のために何も出来ない自分に胸が苦しめられ、とてつもなく辛かったのだ。
「……ん、あれ、ここは?」
『なのは(ママ)!!』
フェイトがそんなことを思っていると、ベッドで眠っていたなのはが目を覚ますのだった。
なのはが目を覚ましたのを見てか、フェイトとヴィヴィオはなのはが眠っていたベッドの近くに近づいていた。
なのはは目が覚めて全く見覚えがない場所であったので、ここがどこなのかとなのはは戸惑っていたが、すぐにフェイトとヴィヴィオの声が聞こえてきたので、別に怪しい所では無いと理解する。
そして辺りを見渡してここがどこなのかという事に気づき、さらにはシャマルも居るということもあってすぐに病院の病室だと分かったのだ。
「私、どうしちゃったの?」
しかしなのははどうして病院に居るのか分かってなく、どうして自分が眠っていたのかと思っていた。どうやら自分が家で倒れてしまった事に気づいていないようだ。
フェイトはなのはが寝不足で倒れたという事を話し、それを聞いたなのはは倒れた時の事を思い出すのだった。自分がヴィヴィオを起こしに行こうとしている時に、突如眩暈がして何も見えなくなったことを。
「そっか、あの時私は倒れちゃったんだ……」
「なのはママ、大丈夫なの?」
「大丈夫だよヴィヴィオ。久々にぐっすり眠れたから」
ヴィヴィオはそれを聞いて安堵していた。起きて早々になのはが倒れていたのを見ていたのでフェイトより心配をしていたのだった。
またなのははさっきの言葉に寝不足だった事を認めていた。このままの生活を続ければ自分が寝不足でいつか倒れるだろうとは何となく分かっており、それが今日にやってきたてのだろうと思ったのである。
「なのは、一体何を悩み考えているの? 寝不足になるということはちゃんと眠れていないんでしょ?」
そしてフェイトは今までなのはが黙っている事を聞こうとするのだった。一体、なのはは何で悩んでいるのか。それが寝不足を招いている事くらいはフェイトだってすぐに分かっていた。
なのはは一度何かを考えるような顔をするのだが、これ以上は隠し切れないだろうと思った。貧血で倒れてしまったのだから、フェイトが心配をするのは当たり前だと思ったので正直に答えることにしたのだった。
「……もうばれちゃっているから全て話すよ。けど私にもよく分からないの」
「なのはでも分からないってどういうこと?」
そう、実際なのはにも分からない事ばかりなのである。あの夢は何で毎回見て、夢に出てくる少年は誰なのかなどと、分からない事が多すぎるのだ。
それでもなのはは夢に出てくる内容を一つも漏らさずフェイトに話した。それを聞いたフェイトは考え始めた。
「その夢に出てくる少年は、なのはは知らないのだよね?」
フェイトは確認をする為になのはに聞いた。なのはは「うん」っと小さく言って頷く。
「う~ん……、私も分からないかな。シャマルは何か分かりそう? こういう事ならシャマルに聞いたほうが得意そうだと思うから」
「私も分からないわね。確かに夢に関する事なら私に聞いたほうが分かるかも知れないと思うけど、今回についてはよく分からないわね」
フェイトは考えても訳が分からなかったが、医者であるシャマルなら何か分かるかも知れないと思って、フェイトはシャマルに聞くのだった。
しかしシャマルから返ってきた言葉は自分でも分からないという事であった。
しかし、シャマルはそれに続けてこう言うのだった。
「けど、ユーノ君なら分かるんじゃないかしら? 魔法についてならユーノ君の方が詳しいし、精神系の魔法もあるとは聞くからそっちの可能性もあるかもしれないわよ」
シャマルに言われて、なのはとフェイトは納得した。確かにこれが魔法の事なら無限書庫の司書長をしているユーノ・スクライアの方が詳しいかもしれないという事はあり得ることであった。ならば今度、ユーノに会って聞いてみるかとなのはとフェイトは思うのだった。
「さて、一応なのはちゃんは明日まで入院だからゆっくりしてなさい」
「あ、でも仕事の方が……」
「それは大丈夫よ。今日は休むと言ってあるから」
「でも……」
っとなのはは何かを言おうとしたが、これ以上先の言葉は言えなかった。シャマルの顔を見たと時、かなり笑顔な顔をしていたので押し黙ってしまったのだ。相変わらずシャマルには頭が上がらないでいて、シャマルが患者とかに笑顔で向けたときは大半が言う事を聞きなさいと言う顔であったのだ。
それを見ていたフェイトはなんか可笑しくて笑いだした。JS事件の後、なのはがシャマルに頭が上がらないのは知っていたが、目の前で見ると少し面白くて笑ってしまったのだ。
「フェイトちゃん、笑わないで欲しいの!」
そんな笑っていたフェイトを見て、なのはが顔を膨らましながらフェイトの方に向いていた。
そんなにぎやかな二人の顔を見ながら、シャマルは邪魔者は消えようと思って病室を出ていくのだった。
Tweet |
|
|
2
|
1
|
追加するフォルダを選択
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
続きを表示