No.450835

真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第四話 英傑 

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

第二話では、また新たなオリキャラが登場しました…が正体は明かしませんでした。

特に見た目の描写とかそういうのを入れなかったのも、正体を隠すためです。

続きを表示

2012-07-11 00:47:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3347   閲覧ユーザー数:2996

~聖side~

 

一悶着はあったものの、俺たちとその女性、兵たちは寿春の城へと向かった。

 

寿春は賊達の拠点からは二十五里ほど(約10km)しか離れておらず、日も傾きかけていたので全員急ぎ足で帰路に着いた。

 

その道中、

 

「それにしても、賊百人相手に三人で挑むとは、あんたらいい度胸してるね~。」

 

「いやいやそれほどでも。今回は情報があったんで勝てただけですよ。」

 

「情報とは?」

 

「邑で得たあの城の抜け道や造り、後は兵の数や兵糧の場所が“見え”やすかったってのも勝因ですかね。」

 

「うん??“見え”やすかったとは??」

 

「文字通りですよ??」

 

「では、お主は城に入ってから策を立てたのか?」

 

「はははっ、そんなまさか…。流石にそんな無謀も出来ませんし、急にそこまで頭は回りませんよ。」

 

「では、どうやって“見た”んだい??」

 

「だから文字通りですってば…。」

 

「???」

 

「あぁ~。えっとですね~。つまり、聖様は特徴的且つ人間離れしたその眼によって、大体周囲二里半くらいまでなら天から物事が見えるそうです~。」

 

「なんだいそりゃ!?五胡の妖術とかの類かい?」

 

「そういうのじゃないらしいですね~。つまりは、規格外な人間ってことです~。」

 

「なんとまた…。」

 

 

その女性は半信半疑の様相を見せる。

 

まぁ、無理も無いだろう。

 

俺だっていきなり、「空からの視点で物事が見える」とか言われたら、『どこの厨二病患者予備軍だよ』って言いたくなるし…。

 

でも、残念だけど、これって事実なんだよねぇ~。

 

 

「じゃあ、ちょっと証明してみましょうか?」

 

「出来るのか!! では、是非頼む。」

 

「そうですね…。」

 

 

そう言って、森の木々を見やる。

 

風がふき、枝がゆれ、葉と葉がこすれる音があたりに響く。

 

俺は目を凝らし、“空から”の視点で獲物を見やる。

 

すると、ちょうど一里くらい先の所に開けた場所が見える。

 

そのあたりに獲物はいないかな…。

 

 

「!!」

 

 

ちょうどその時、開けた場所に女の子が一人走ってきた。何かに追われる様子で必死に…。

 

すると後ろから二人の男…。

 

腰には黄色い布…。黄巾賊か!!!

 

追われる少女は、振り返りながら逃げてるため足元が…あっ、転んだ!!

 

まずい!! このままだと危ない!!

 

 

俺は急いで矢を番えると、

 

 

「芽衣!! 奏!! ここから一里先、そこに開けた場所がある。そこに賊と女の子が見えた。 …女の子が襲われそうだ!! 賊の数は二人。一人は俺がやる!! だからもう一人の殲滅を!!」

 

 

言葉の途中で、芽衣と奏は俺の言いたいことを理解し、すでに走り出していた。

 

本当に二人は優秀な将だよ…。

 

一緒に寿春へ向かっていた女性と兵たちは、何が起こっているのか訳が分からず立ち尽くしていた。

 

 

程なくして、芽衣と奏がいるであろう場所に俺たちは向かった。

 

そこには、弓で頭蓋を射抜かれた男と、首と体が一生くっつくことは無い男が横たわっていて、芽衣と奏の傍には、恐怖に体を震わせる少女の姿があった。

 

 

「大丈夫? 怪我は無い?」

 

「…。(キッ)」

 

 

鋭い眼光をこちらに向ける。

 

明らかに敵視している目線。

 

 

「俺は黄巾賊じゃないから、そんなに警戒しなくても良いよ。」

 

 

やわらかく、そしてそっと…警戒心を解すように俺は微笑んで見せた。

 

敵意の無いその笑顔に、少女は徐々に警戒を解いていってくれた。

 

 

「良かったら、話を聞きたいんだけど。そうだな…こんなところじゃなんだし、寿春までついてきてもらってもいいかな?」

 

「…分かりました。」

 

 

少女はそう言いながら首を縦に振った。

 

こうして、一人増えた状態で俺たちは再び寿春の城へ歩みを進めた。

 

 

どうにかその少女を救えたことに、安堵していた俺に、

 

 

「なぁ、お前さんはやっぱり化け物か妖術使いなのか…?」

 

 

という心を抉るような一言が…若干引き気味だし…。

 

 

「…それはちょっとひどくないですか…。流石に傷つきますよ…。」

 

「いや、だって…なぁ…私らの居た位置からじゃあ少女の影すら見えなかったぞ…。まぁ、それこそ確かに、空から見ていたとしか言いようが無いと言えばそうだが…。それに加えて、あの状況下で一里先の男の頭に矢を射掛けるのだろう…? 人間離れしてるにも程があろう。」

 

「…弓は俺の特注ってこともあって二里半くらい先までなら射程内ですし、それくらいの遠当ての練習は積んできましたから…。」

 

「確かに、生半可な努力であんなことが出来るようには思わん…。それこそ弓の境地に達していると見える…。ふむ…お主武官としてやっていけるだけの能力は持っているようだね。」

 

「あははっ。お褒めに預かり光栄至極。」

 

「いい、謙遜するな。その武はこれから誇れるものだ。日々精進するのだぞ。」

 

「はいどうも。」

 

「うむ、いつかは手合わせを願いたいものだ。」

 

「そうは言われましても…剣相手は少々厳しいんですがね…。」

 

「まぁ、いつか…な。」

 

「そういえば、お名前を聞いて無かったですね。」

 

『そういえばそうか…。我が名はs『申し上げます!!寿春の城が見えてきました!!』…。」

 

 

ちょうどその時、先に様子を見に行っていた兵が帰ってくる。

 

こいつなかなかのKY…。エアーリーディング検定受けて来い!!!

 

 

そんなことを考えてるうちに、寿春の城へとついた俺たち。

 

俺と芽衣、奏、先ほど襲われていた少女以外の人達は城に行くと言って向かっていった。

 

俺たちも今日の宿を取り次第向かうことを告げ、分かれることになった。

 

 

寿春の町はそれこそ広陵よりも大きく、市も発展していて、なにより人々に活気が満ちていた。

 

大通り界隈の人の往来は激しく、通りには店主の元気な声や、話をしている町民たちの笑顔が見て取れた。

 

この町を統治しているという揚州刺史、孫文台の政に関する能力の高さが垣間見えた気がした。

 

 

俺たちは宿を取ると、先ほどの少女と話をしながら、城へ向かった。

 

 

「あの…先ほどはありがとうです…。そして、疑ってしまってごめんなさいです…。」

 

 

ぺこりと頭を下げると、その金色の髪が揺れ、頭に乗ったベレー帽がずれる。

 

その瞳は、吸い込まれるような深い青色をしていて、白い肌と良い対比となり、顔の大半を占めるその大きな黒縁眼鏡に負けず、目元の黒子が色気を醸し出す。

 

背丈は芽衣より少し小さいくらい…。160cmくらいだろうか…。胸は…まぁそれなりのものをお持ちで…。

 

 

そんな感じで改めて少女を見てると、

 

 

「ん?? どうかしたんですか??」

 

「はっ!! いやっ、気にしないで。とにかく無事で良かったよ、え~っと…。」

 

「名前を教えて無かったですね。私は諸葛瑾と申しますです。」

 

「俺は徳種聖、よろしくね、諸葛瑾さん。」

 

「よろしくお願いしますです。」

 

 

やっぱり女の子なのか…と心の中で呟く。

 

諸葛子瑜…孫呉に仕える文官で、伏竜と名高い諸葛孔明の兄(この世界だと姉なんだろうな)で、諸葛孔明を孫仲謀に会わせ、有名な赤壁の乱の蜀呉の勝利を演出する。

 

 

しかし、この世界の諸葛瑾は…気持ちのいいくらい特徴的な言葉遣い。透き通るような声。そして仕草一つとっても…一体なんだってんだこの可愛い生物は!!

 

大佐!! 理性が限界突破しそうだぜ!! …自重しないとな…。

 

 

少し長く考えすぎたかもしれない…。

 

 

「…私の顔に何かついてるですか?」

 

 

しまった!!! 顔を見つめてた事に気付かれたか…。ここは不信感を与えないように、真実を伏せ、且つ誠実な言葉で対応するしかない!!

 

 

「いやなに、可愛らしいその顔に見惚れちゃって。」

 

「「!!!」」

 

 

あっれ~~~…。

 

誤魔化すため、とっさに出た言葉がドツボに嵌ったような…。

 

なんだか芽衣と奏の後ろに不穏なオーラを感じるけどきっと気のせいだよな…。いやっ、そうであって欲しい…。

 

 

「…可愛らしいですか…。あんまり言われ慣れていない言葉なのです。( //)」

 

 

諸葛瑾さんはその表情をさほど崩すわけでもなく、冷静にその言葉を返してきたように見えた。

 

 

しか~し、俺はその頬が、薄く桃色に染まっているのを見逃さなかった!!

 

ふふふっ純粋だね~…愛い奴よの~。

 

 

「もっと、自信を持ったほうがいいと思うよ。諸葛瑾さんは綺麗だし可愛いし…あぁ、後は笑った方がもっと可愛いとは思うけどね(にこっ)」

 

「っ!!! …まぁ、分かったのです。(゜゜///)プイッ」

 

 

少女は赤らんだ顔を隠すようにその視線を外すのだった。

 

そして後ろでは、「「またか…。」」と言っている二人がいたとか。

 

 

「話は変わるんだけど、諸葛瑾さんはこれからどうするの?」

 

「私はもとよりこの城で孫堅様に仕えるために来ましたから、城へ仕官の伝をしに行くのです。」

 

「そう、じゃあ仕官できるといいね!!応援してるよ。」

 

「ふんっ!!あなたに応援されても仕方ないのです…。」

 

「まぁ確かにね。でも、きっと大丈夫だよ。これだけの善政をしてる人なんだ、人を見る目は確かだと思う。諸葛瑾さんは能力がある…。だから、大丈夫だよ。」

 

「まっまぁ…能力はあるのです!!あなたとは違うのです!!」

 

「…福田か…。懐かしいな…。』

 

「???」

 

「いやっ、気にしないでくれ。こっちの話だ…。」

 

「…変な人なのです。(くすっ)」

 

「おっ、笑ったな。」

 

「!!」

 

 

思わず笑ってしまった顔を隠す諸葛瑾さん。

 

 

「なんで隠すの? 笑ってた方が可愛いって言ったじゃん。ねっ、もっと見せてよ!!」

 

「ばっ!! …だっ誰があなたになんか見せるかです!!(プイッ)」

 

 

そう言うと、諸葛瑾さんはそっぽを向いてしまった。

 

あらあら、ちょっとやりすぎたかね…。

 

 

とりあえず、不機嫌になった諸葛瑾さんを宥めながら俺たちは城に向かった。

 

 

城の門兵に連れられて玉座の間に通される。

 

やっと孫文台に会える。そう思うと嬉しかった。

 

なんと言ったって三国志においてあの呂奉先と互角の武を持ち、庶民の出から刺史にまで成り上がった勇将。

 

そういう人とこれから会うのだから嬉しくないわけがない…。まぁどうせ女なのだろうけど…。

 

 

玉座の間で待つこと数分。

 

 

「孫文台様がいらっしゃいました。」

 

 

と、扉のところに居る兵が告げる。

 

周りの人はその頭をたれながら拱手する。

 

俺たちは平伏しながら拱手して待った。

 

俺たちの脇を“その人”が抜けて、玉座へと座る。

 

そして、開口一番にこう言った。

 

 

「あっ、顔を上げて良いぞ。さっきまであんなに普通に話してたじゃないか。」

 

 

「えっ!!」

 

 

頭を上げて玉座に座る“その人”を見る。

 

そこには、さっきまで一緒に寿春へと来ていた女性の姿があった。

 

 

「改めて自己紹介する。揚州刺史、孫文台だ。先ほどの賊の件、助かったぞ。」

 

「え~っと…。ちょっと待って貰っていいですか。ちょっと整理が…。」

 

「こ~らっ、私が自己紹介をしたと言うにお主は名を名乗らんのか?」

 

「あっ、すいません。俺は徳種聖、広陵郡の県令をさせてもらっています。」

 

「あぁ~。そういえば少し前にそんな報告もあったな…。と言うことは、お前は噂の天の御使いなのか!?」

 

「そう言う人もいます。」

 

「えっ!!! あなたがあの噂の天の御使いさんなのですか!?」

 

 

先ほどまで孫堅の正体に驚いて固まっていた諸葛瑾さんが、今度は俺の正体を知り驚いて声を上げた。

 

 

「まぁ、そういうことです。」

 

「あらっ、あなた。元気になったようだね。名前を聞かせてくれるかい?」

 

「あっ…はいです!! 姓は諸葛、名は瑾。字は子瑜と申しますです。」

 

「そう。ところで、諸葛瑾はあんなところで何をしていたのだ?最近は賊も多く、女の一人旅はお勧めしんぞ。」

 

「はい。実は孫堅様、あなた様にお仕えするべくこの地に赴きました。是非仕官の件考えていただけ無いでしょうか?」

 

「あらっ、う~ん。今は役人の募集はしていないのだけど…。そこまでの熱意を無碍にするのも可哀想ね、まぁこの城に居たいのなら何とかしてあげようじゃないか。」

 

「ありがたき幸せ。この諸葛瑾。必死に働くことをここに誓うです。」

 

「期待してるわね。で、徳種と申したか。お主は何の目的でここまで来たのだ?」

 

「はい、俺たちは今後の為に旅に出ることに決めました。今回はその報告と残してきた俺たちの仲間が県令をやっていることを告げに来ました。」

 

 

嘘ではない…。

 

ただ、本音を言えば怪訝な雰囲気になるだろうと思ってこう口にした。

 

これから敵になりうるかもしれない人たちに町や政治、軍部系統を見せる人なんていないもんな…。

 

 

「ふ~ん。あなたは私を侮辱する気かしら?」

 

「どうしてですか?」

 

「私が気付かないとでも思った? 刺史という立場にいるものとして、人を見る目は持ってるわ。 あなたは何か隠してる。 まぁそれを言ったら、この場の雰囲気が悪くなるとか、自分たちの立場が悪くなるとか、そんなところで本音を言わないのでしょう。しかし、この孫文台。そんなことでどうこうするような人ではない!! 素直に話しておくれ。」

 

「…分かりました。…孫堅様はこの国の将来について考えたことはおありですか?」

 

「当たり前だ。昨今は賊が増え、朝廷の権力は地に墜ち、各地の諸侯が力を蓄え始めている…。近いうちに朝廷は崩落するだろう、そして諸侯がその力を示し、国の統一をかけて戦いを始める乱世となる。私はそう考えているのだが?」

 

「俺も同意見です。朝廷の失墜による皺寄せは、明らかに民の生活に被害をもたらす。そうすれば、多くの人々が飢餓に苦しみ、戦争に恐怖し、安定な生活などすることは出来ない。 俺は、そんなのが許せないんです。その為に俺は、一諸侯として立ち上がることを決意しました。 …しかし、皆の上に立って引っ張っていけるだけの経験や知識がありません。 なので、色んな町を見て参考にしようと思ったのです。これがこの町に訪れた理由です。」

 

「ふむ…。徳種よ。そなたの掲げる思想、理念とはなんだ?」

 

「俺の理念は『和を以って貴しと為す』。 …全員が手に手を取って平和な世を…世界を作る。そうすれば、皆の願いは叶う。それが俺の理念であり信念なんです…。 勿論、手に手を取り合うためには、話し合いの場を設ける必要があります。その為には、力でその関係にもっていかなければならないのは事実。そのことで多くの人の命が消えていく…。 …甘い考えなのは分かっています。でも、後の未来、そうならなければならない。いや、しなければならない。 それが、命が尽きた者たちへの追悼であり、その家族への謝罪だと思うから…。」

 

「うん、まっすぐな良い目をしてる…。良いぞ、徳種。気に入った。お主をこれより孫家の客将として扱う。この町や我が政を見てしっかり学べ!!しかし、ただで住ますわけにはいかん。少しは働いてもらうぞ!?」

 

「ありがとうございます!!孫堅様。 一生懸命勉強させていただきます。」

 

「うむ。よし、皆のもの。今日はこの者達の歓迎の宴を開くぞ!!早速用意せい!!」

 

 

そういうと、孫堅様は嬉しそうにその場を後にした。

 

俺たちはそれぞれに宛がわれた部屋へと女官に連れられて向かい、夜には宴に参加した。

 

宴は大いに盛り上がり、孫呉の面々と顔合わせを行った。そこで色々な人に酌をされて、自身では強いと思っていたが、それでも立てなくなるくらいまで飲まされた。

 

しかし、他の人はそんな量では足らないくらいに飲んでいる。…孫呉は化け物か!!ってセリフが良く合いそうだ…。そんなこんなで夜は更けていくのだった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
4
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択