No.450226

真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第三話 誤解と和解

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

前話では、この物語の主人公の設定を紹介しました。因みに、数値はゲームの『三国志』シリーズを参考にしていただければ、主人公の強さが分かっていただけるでしょうか…。

特性についてはこれから徐々にどんなものなのかは明らかになっていきます。後の話をお楽しみに…。

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2012-07-10 01:29:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3532   閲覧ユーザー数:3194

~聖side~

 

寿春へと向かう道中、とある邑での出来事。

 

いつも通り俺たちは、邑の人達に頼まれる形で、近くに根城を置く黄巾賊の討伐に出かけていた。

 

 

「さぁ~て…おイタが過ぎた餓鬼共を討伐に行きますか…。」

 

「民に害をなす悪餓鬼は、神の名のもとに成敗して上げなきゃね~ふふふっ。」

 

「「…。」」

 

「(なぁ、お頭。芽衣って刀持つと性格変わりすぎじゃないか?)」

 

「(う~ん、まぁしょうがないかな…。)」

 

「(初めて見たときは、目を疑ったよ…。)」

 

「(人それぞれ性格はあるからね…。芽衣は刀を持つと、血が見たくて仕方なくなるらしいよ…。)」

 

「(怖ろしいな。あいつ本当に同じ人間か…。)」

 

「(ははは…。)」

 

「二人とも、さっさと行きましょう。そろそろ衝動が抑えられなくなってきたの…。」

 

「「っ!!! よしっ、行こう!!」」

 

 

なんか…少し黄巾賊がかわいそうに思えてきた…。そんな気がした。

 

黄巾賊の根城は森の奥にあり、道が一本しかないこともあって、伏兵を警戒しつつ林道を通っていく。

 

普通は警戒用に何人か監視役が居るはずなのだが…そこは黄巾賊ということだろうか、一人として姿を見ないまま根城にしている廃墟の城にやってきた。

 

賊の数は百強、それに対して俺たちは三人。

 

兵数差を考えれば、圧倒的に不利なのだが、そこは皆の武力と策によって、今までもやってきていた。

 

 

「さて、まずあの城の地図とかってある?」

 

「地図は流石に持ってないですね~…。ただ邑の人達に聞いた情報だと、こんな感じかと。この地点に隠し通路があって、これを通ると城の中庭に出れるそうです。」

 

 

そう言って芽衣は竹簡を広げる。

 

因みに、今は剣を鞘に納めているので、いつも通りである。

 

 

「う~ん、見たところ普通の古城って所か…ここの所、糧食が積まれてるね…。兵は…少ないみたいだし、初めにここら辺焼いちゃう?」

 

「「…。」」

 

「ん?? どうかした??」

 

「お頭…なんでそこに糧食が積まれてるってわかるんだ?」

 

「えっ!? だって積まれてるよ…。兵は5人くらいが巡回してるくらいだし…。」

 

「だから、なんで城の外でそんなものが見えるんですか~?」

 

「ああ、そのこと。 言ってなかったっけ?? 俺は目が良いんだけど、それと同時に大体二里半(約1キロ)くらいなら、平地で見えてる光景を、そのまま上空から見ることが出来るんだ。 俯瞰的な視点ってやつで、俺はこれを(衛星視点|パラサイトシーイング)って呼んでるけど…。 こういうの出来る人は、俺の居た世界でもいるんだけど、俺ぐらい高いところから見てる人は、あんまり知らないかな…。」

 

「「…。」」

 

「どうした? 黙ったりして??」

 

「いやっ、聖様って色々と規格外だなって思いまして~…。」

 

「そうだな…。そんな視点されたら塀の意味が無いぞ…。」

 

「まぁ、見えるだけで何か出来るわけじゃないけどね…。」

 

「…まぁそこは置いておいて…。 聖様の報告どおりなら、糧食を焼きに行って、相手が恐慌状態の間にここの首領格を討ち取るって感じですかね…。」

 

「よしっ、じゃあそれで行こうかい。誰が糧食を焼きに行く?」

 

「俺が行くよ。火矢を使えば焼くのも楽だし、俺の弓なら、気付かれること無くできると思うよ。」

 

「じゃあ聖様お願いしますね。首領格の人は奏がお願いします!!」

 

「任された!!! あたいの“竜胆”でちゃっちゃとやってくるよ!!」

 

「じゃあそれぞれ作戦開始です。火の手が上がるまで私と奏は中庭の位置で隠れて待ちましょう。」

 

「心得た!!」

 

「それじゃあ皆、また後で…。危ないと思ったら逃げるんだよ…。皆無事で帰る。これが合言葉だ。」

 

「「応っ!!!」」

 

 

三人は、隠し通路を通って城の中庭に出る。

 

そこから、俺は別行動で糧食を焼きに倉庫のある方へ移動する。

 

衛星視点で見た通り、賊は5人ほどが巡回しているだけだった。

 

 

「さて、ちょっと奇策に出ますか。」

 

 

矢を四、五本番えて賊たちの近くに落ちるように打つ。矢は賊たちの近くに落ちて、それに賊たちが気付く。

 

 

「おいっ、矢が飛んできたぞ!!」

 

「敵襲か!?」

 

「誰か波才様に伝えて来い!!残りは確認に行くぞ!!」

 

 

そう言って、巡回していたやつらはその持ち場を離れた。

 

 

「まったく…単純なやつらだな…。さて、じゃあ焼かせてもらうか。」

 

 

隠れ場所から出てきて火をおこし、糧食を焼いていく。

 

全てを焼くわけではなく、持って帰れるくらいの量だけ残して…。

 

すると、煙を見つけた数人がやってきた。

 

 

「おいっ!!てめぇなにしてやがる!!」

 

「皆~!!! 敵襲だ~!!!」

 

「大変だ!!! 糧食が焼かれてるぞ~!!!!」

 

 

城の中であわてふためく賊共…。

 

まさに恐慌状態となっていた。

 

 

「…まぁぞろぞろとおいでなすって…。 じゃあやるかね…乗る気じゃないが…。」

 

 

こうして、戦いは勃発した。

 

 

 

~奏side~

 

城の倉庫の方から煙が見える。

 

合図が見えたので、私と芽衣は草むらから飛び出し、賊共に切りかかっていく。

 

 

「奏!! ここは私がやるわ!! あなたは首領を!!」

 

「分かった、任せろ!!」

 

 

私はそこを芽衣に任せ、一人、竜胆と共に賊共の間を抜けていく。

 

 

「この軍の首領は誰だ!!! ここに、天の御使いが一の槍、凌公績が居るぞ!!」

 

「なにを小癪な…。この波才が貴様を討ってやる!! 覚悟しろ。」

 

 

波才と名乗る男は、剣を片手に私の前に飛び出てきた。

 

 

「貴様がこの軍の首領か!! その首、差し出してもらうぞ!!」

 

「何を小娘が!!! 返り討ちにしてくれるわ!!」

 

 

二人とも一気に駆け出す。

 

獲物同士が激しくぶつかり合い、火花が飛び散る。

 

流石に、波才も首領という立場にいるだけある。

 

その身のこなしは他の賊とは明らかに違った。

 

がしかし、相手はそれこそ一角の武将、凌公績。

 

十合ほど打ち合うと、波才は肩で息をしているのに対し、奏は呼吸を乱す事無く、武器を構え直す。

 

 

「おいおい…。もう終わりかい?? つまらないね…。」

 

「はぁはぁ…ばっ馬鹿にするな!! …ぐっ、ぜぇぜぇ…。」

 

「あんまりお前に構ってる暇も無いんでね…。さっさと終わらせるよ!!」

 

「やらせるか!!!」

 

「っ!!! くぅ!!!」

 

 

後ろから別の賊が切りかかってきたが、それを槍で受け止めることが出来た。

 

しかし、急な攻撃だったためバランスを崩してしまう。

 

 

「もらった!!!!」

 

 

その隙を逃さず、波才は切りかかってきた。

 

何とか地面を転がる形でその攻撃をかわし、右わき腹から左肩にかけて槍を薙ぐ。

 

刃先は波才の肉を切り裂き、波才の体からは真っ赤な血が吹き出る。

 

 

「ばかな…。こんなところで…。」

 

「悪いね…。 敵将波才、凌公績が討ち取った!!!」

 

 

この後、首領の消えた黄巾賊は私たちに降伏し、私たちはそれを縛って、城を出る準備を進めた。

 

 

 

~聖side~

 

奏が波才を討ち取り、場は完全に沈静化を見せていた。

 

俺たちは、降伏してきた賊たちを後ろ手に縛り上げながら、城を出る準備をする。

 

その時、

 

 

「全軍抜刀!!! この者たちを捕らえよ!!」

 

「「「応っ!!」」」

 

「えっ!!」

 

「何!?」

 

 

赤い鎧を着た集団に囲まれ、俺たちは武器を置く。

 

そして、後ろ手に拘束された状態で、先ほどの指示を出していた女性の前に出される。

 

 

「一体俺たちが何したって言うんですか!!」

 

「黙れ下郎!! お前たち黄巾賊が今までしたきたことを考えろ!!」

 

「俺たちは黄巾賊じゃないです!!」

 

「嘘をつくな!! その証拠に体に黄色の布を…巻いてないわね…。」

 

「だから言ってるじゃないですか!! 俺たちは黄巾賊じゃない、黄巾賊は全員そっちに縛ってあります!!」

 

「…じゃあお前たちは何者なんだい?」

 

「俺たちは、邑の人達からの依頼で、黄巾賊を討伐に来ただけです!!」

 

「何!!! たった三人で、こいつ等百人を相手にしたって言うのかい!?」

 

「そうです!! とりあえず、俺たちが黄巾賊じゃないと分かったんなら、この縄を解いてくれませんか!?」

 

「…まぁ良いかね。おいっ、こいつ等の縄を解いてやれ!!」

 

「はっ!!」

 

拘束されていた縄が解かれて、俺たちはその女性と向き合う。

 

兵を引き連れているところを見ると義勇軍か何かかな…。

 

それにしては装備が立派だが…。

 

 

「どうやら私の勘違いだったみたいだね。悪かった。」

 

「とりあえず誤解が解けたみたいで良かったです。黄巾賊を寿春の城に連れて行きたいんですが、手伝ってもらえますか?」

 

「あぁ。そこは私たちが受け持つよ。三人でこの人数を運ぶのは大変だろ??」

 

「ありがとうございます。ちょうどそこ等辺をどうしようかと思ってたんで助かります。」

 

「なに、勘違いのお詫びとでも思ってくれれば良いさ。」

 

「ははっ、じゃあお言葉に甘えますね(にこっ)」

 

「っ!!! …ま…まぁそうすれば…い、良いんじゃないか?( ///)」

 

 

その女性は、そう行ってその場から去っていった。

 

その頬をほんのりと赤く染めて。

 

 

「(なぁ芽衣。あれって…。)」

 

「(えぇ…。聖様に自覚が無いのも困ったものね…。)」

 

「(まったくだ…。)」

 

 

後ろでは、何やら芽衣と奏が話しているが、良く聞こえないのでまぁ仕方ない。

 

こうして、俺たちは黄巾賊討伐戦を終え、寿春へと向かうのだった。

 


 
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