それから、1年後
建業
蓮華「・・・・・・・・・・」
亜莎「・・・・・・・・・・」
サラサラサラサラ
ジ~~~~~~、パチパチパチパチ
ここは、蓮華の政務室
蓮華は机に向かい、次々と案件の処理を
亜莎は算盤で市場の税収の計算をしていた
亜莎「ふ~~~~・・・・・蓮華様、こちらは終わりましたよ」
蓮華「ええ・・・・・こっちもこの案件で今日の仕事は終了よ」
そして、その案件も蓮華は書き終えた
蓮華「んん~~~~~~~~!・・・・・やっと終わったわぁ」
亜莎「お疲れ様です、蓮華様」
仕事がやっと終わり大きく背伸びをする蓮華と、資料を受け取りそれを指定された場所に収める亜莎
その時
「あ~~、あ~~~、あ~~~~」
それを見計らったかのように、どこからか可愛い声が聞こえてくる
蓮華「よしよし、孫登・・・・・おなかが減ったの?」
蓮華のすぐ横の籠の中に毛布に包まれた赤ん坊がいた
その赤ん坊を蓮華は優しく抱き上げた
亜莎「孫登様も大分大きくなられましたね♪」
蓮華「ええ♪この子はよくお乳をねだるから♪」
亜莎「この分なら、あと半年もすればご自分で立てるようになるかもしれませんね♪」
蓮華「そうね♪」
お互いに優しい眼差しで孫登を見る蓮華と亜莎
そこに
「「「あ~~~~!あう~~~~!ああ~~~~!」」」
亜莎「あ~~~~はいはい!!今行きますからね~~~!!」
蓮華の執務室にはもう3つ籠が並べられていた
亜莎「呂琮、呂覇、呂睦、お母さんはここにいますよ~~~♪」
なんと、亜莎は三つ子を産んでいたのだ
亜莎が籠の中を覗き込むと、安心したのか『キャッキャッ♪』と、嬉しそうな声が聞こえてくる
蓮華「ふふふふ♪羨ましいわ、亜莎、そんなに沢山の宝物を手に入れられて♪」
亜莎「蓮華様・・・・・はい♪わたくしは幸せ者です♪」
蓮華「・・・・・それにしても、亜莎は大丈夫なの?」
亜莎「何がですか?」
蓮華「だって・・・・・あなたは三つ子なのよ、一人だけでも大変なはずなのに」
亜莎「いいえ、こんなのなんて事ありません♪それに百合さんだって三つ子なのに全然苦にしていないんですよ♪」
蓮華「ふふふふ♪そうだったわね♪」
蓮華と亜莎が仲良さそうに話していると
コンコン
聞こえてくるノックの音
この作法は国の上層部に浸透しつつあった
蓮華「開いてるわよ」
亜莎「どうど、お入り下さい」
ガチャ
小蓮「お姉ちゃん、亜莎、仕事終わった?」
穏「お疲れ様です~~」
純夏「お疲れ」
祭「失礼する」
百合「失礼しま~~~す」
美羽「入るのじゃ」
七乃「どうも~~~」
彩「失礼」
次々と入ってくる重鎮達
蓮華「あらあら♪うちもいつのまにかこんなにも大所帯になっちゃったわね♪」
小蓮「うん♪でも凄く楽しいよ~~~♪ね~~~孫紹♪」
小蓮の腕の中には雪蓮の子、孫紹が納まっていた
穏「陸延~~、陸抗~~、ご飯の時間ですよ~~~♪」
穏は双子
祭「黄柄よ♪乳の時間か♪ん♪」
祭も無事一刀の子を生むことができていた
あの戦いの後、祭は一線から退き、ほとんど隠居に近い生活を送っていた
純夏「♪~~♪♪~~♪~~」
純夏の腕の中には太史享元復がいた
そう、純夏は己の望み通り男子を出産していたのだ
純夏もあの戦い以降、戦から遠のき、文官の仕事に精を出していた
百合「諸葛恪ちゃん~♪諸葛喬ちゃん~~♪諸葛融ちゃん~~♪抱っこしましょうね~~♪」
百合の腕の中には三人の赤ん坊がいた
美羽「周循♪周胤♪・・・・・可愛いのじゃ~~~♪」
美羽の手の中には、冥琳の双子がいた
七乃「周邵ちゃん♪周承ちゃん♪・・・・・いい子ですね~~~♪」
七乃の腕の中には明命の双子
彩「甘瓌、甘述・・・・・お母さんはもうすぐ帰るぞ~~♪」
彩の腕には思春の双子がいた
なんと、みんな男の子である
蓮華「うふふふ♪みんな幸せそうね♪」
小蓮「そりゃそうだよ~~~♪こんなに可愛いんだよ~~~♪」
穏「うふふふ~~♪・・・・・あん♥も~~、この子達ったら~~~♪凄く上手にお乳を吸ってきますね~~~♪まるで一刀さんみた・・・・・あ!!」
「・・・・・・・・・・」
穏「もももも、申し訳ありません~~~!!皆さん~~~!!」
蓮華「いいえ・・・・・いいのよ・・・・・」
一同は、普段は顔に出さないようにしているが、一年経った今も一刀の死から立ち直れないでいた
それほど一刀の死は衝撃的なことだったのである
祭「・・・・・しかし・・・・・いい加減ワシらも、一刀の死を受け入れなくてはならんのう・・・・・」
百合「そうですね~・・・・・でも・・・・・」
純夏「ええ・・・・・忘れられっこない・・・・・」
亜莎「一刀様ぁ・・・・・」
小蓮「・・・・・シャオも・・・・・一刀の赤ちゃん・・・・・欲しかったな・・・・・」
七乃「わたしもとうとう駄目でした~・・・・・」
彩「わたしも・・・・・一刀殿の子を身篭ることは出来なかった・・・・・」
美羽「七乃ぉ~~、彩ぁ~~、残念なのじゃ~~~・・・・・」
純夏「・・・・・あ、純刀、お寝んねなの?」
純夏は、以前一刀に決めてもらった真名を太史享元復に与えていた
穏「う~~~~ん・・・・・元復ちゃん・・・・・羨ましいな~~~・・・・・」
祭「ワシももっと早くに一刀に子の真名を考えてもらうべきであったな・・・・・」
百合「そうですね~・・・・・でも、それはもう叶いません・・・・・」
蓮華「そうね・・・・・早くこの子達の真名を決めてあげないといけないわね」
彩「雪蓮殿達は、今頃涼州で五胡の防戦をしているのでしょうな」
七乃「ええ・・・・・一刀さんの敵を懲らしめているんでしょうね~~・・・・・」
百合「それにしても~、どうして純夏さんは一緒に行かなかったんですか~?」
純夏「・・・・・百合も・・・・・もう分かっているくせに・・・・・」
百合「・・・・・・・・・・」
純夏は、あの戦い以降戦いによる充実感を得ることが出来なくなっていた
それからは、完全に方向転換
内政と幼児育成に力を注いでいた
美羽「・・・・・わらわは、もうそんなことどうでもいいのじゃ・・・・・」
百合「美羽ちゃん~?」
美羽「もうわらわは、誰も失いたくないのじゃ・・・・・みんな無事に帰ってきてくれれば・・・・・それでよいのじゃ・・・・・」
純夏「・・・・・そうね・・・・・」
穏「大丈夫ですよ~~、冥琳様が一緒なんですから~~♪」
蓮華「それに思春と明命も・・・・・みんなも付いているから、心配ないわ♪」
蓮華達は、窓の空を見上げて涼州で戦っているみんなの無事を祈っていたのだった
洛陽
華琳「うふふふ♪可愛いわね♪曹丕♪曹叡♪」
ここは洛陽執務室
ここで華琳は、仕事をしながら自分の双子の子の子守りをしていた
季衣「あははは♪春蘭様と悠姉ちゃんと桂花姉ちゃんの赤ちゃん、可愛いな~~♪」
季衣の目の前の籠の中には春蘭の子、夏侯充と悠の子、張雄、桂花の子、荀惲がいた
流琉「楽綝ちゃん♪于圭ちゃん♪李禎ちゃん♪いい子ですね~~~♪」
流琉の籠には、凪と沙和と真桜の子がいた
秋蘭「ふふふふ♪可愛いな~~♪夏侯衡♪」
風「お寝んねですか~~♪程武ちゃん~~~♪程延ちゃん~~~♪」
稟「郭奕♪もっとお乳を飲んで大きくなりなさい♪」
秋蘭、風、稟の腕の中にはそれぞれの子が
なぜ許昌ではなく洛陽なのかというと
あの戦いの後、禅譲の儀を執り行い聖から全実権を譲り受けた華琳は、事実上のこの国の頂点に君臨していたのである
そのため政治の中枢である洛陽へと移籍する必要があったのだ
華琳「うふふふ♪こんなことならもっと早く一刀の子を生みたかったわね♪」
秋蘭「そうですね♪」
季衣「僕も兄ちゃんの赤ちゃん・・・・・欲しかったな~~・・・・・」
流琉「わたしも・・・・・」
ここでも全員男の子であった
華琳「・・・・・そろそろいい加減にこの子達の真名を考えてあげないといけないわね・・・・・そうだわ、みなに話しておかないといけないことがあったわね」
風「なんですか~?改まって~」
稟「華琳様?」
華琳「わたしがこれから言うことは、みなからすれば突拍子も無いことかもしれないけれど、冗談抜きで言うわ」
「・・・・・・・・・」
いきなり真剣な顔になった華琳に一同は背をただし耳を傾ける
華琳「もし、これから先わたしに何かあって、わたしの子がこの国を治めるのに相応しくないとみなが判断したのなら・・・・・その時は・・・・・零・・・・・もしくは、零の子にこの国の実権を譲ること・・・・・そして、みなは零に仕えること・・・・・いいわね」
「・・・・・・・・・」
華琳「あら?驚かないのね?」
風「まぁ~~~、想像は出来ていましたからぁ~~」
秋蘭「はい」
稟「わたしもです・・・・・」
季衣「ボクも・・・・・なんとなく・・・・・」
流琉「わたしも・・・・・」
華琳「・・・・・どうしてかしら?」
風「だって~、あの裏のお兄さんが言っていたじゃないですか~」
稟「はい、晋の国は零殿が創るはずだったと」
風「ならば、零さんの子か孫辺りが晋の国の最初の皇帝になるはずです~」
秋蘭「華琳様が未だにこの国の皇帝を名乗らず、代理と称しているのはそのためでしょう」
華琳「・・・・・ふぅ・・・・・見破られていたか・・・・・」
風「当たり前ですよ~~♪風は一流ですからね~~♪」
秋蘭「何年華琳様のお隣にいると思っているのですか?」
稟「華琳様が桂花を涼州に行かせたのは、それが言いたかったからですね」
風「そうですね~、桂花ちゃんがいたら大反対するでしょうし~」
華琳「ふふふふ♪適わないわね♪・・・・・それにしても、大丈夫かしら?みなは」
季衣「大丈夫ですよ~~♪だってみんなですよ~~♪」
流琉「はい♪きっと大丈夫です♪」
風「いい加減風達も、お兄さんから卒業しなければなりませんからね~」
秋蘭「ええ、一刀が創ってくれたこの国を守るためにも、いつまでも過去に捕らわれていては前には進みません」
稟「一刀殿の行いを無駄にしないためにも、わたし達がしなければならないことは山のようにあります」
華琳「そうね・・・・・みな♪この国を一刀の知る歴史に無いようなすばらしい国にするわよ♪」
季衣「はい♪」
流琉「はい♪華琳様♪」
秋蘭「御衣♪」
風「御衣です~♪」
稟「ははっ♪」
成都
桃香「雛里ちゃん!この案はどう!?」
雛里「・・・・・・・・・・駄目です、これではかえって民の反発を招いてしまうでしょう・・・・・」
桃香「・・・・・そっか」
桃香は、以前から取り入れていた敵討ち禁止条令の案を模索していた
しかし、やはり失敗続きで上手くいったためしが一度も無いのである
杏奈「桃香様ぁ、やはりこの法案は無理があると思いますぅ・・・・・」
柊「そうです、これはこの広大な大陸で使うにはあまりに不向きです」
雛罌粟「それに、民達には親類を殺されれば敵討ちを行うのは当然という価値観が定着してしまっています・・・・・とても成り立つとは思えません」
桃香「・・・・・・・・・・」
雛里「仮にこの国にこの法案が成り立つとしても、それはこの時代ではないでしょう」
杏奈「そうですねぇ・・・・・このような法は、今から千年くらい後でなら役に立つかもしれないですねぇ」
桃香「・・・・・・・・・・」
紫苑「桃香様、焦ってはいけませんよ」
桔梗「その通り、急いては事を仕損じますぞ」
焔耶「そんなに落ち込まないで下さい、桃香様」
桃香「みんな・・・・・うん、わたし急ぎすぎていたんだね、ご主人様の世界に少しでも近づきたいと思ってやってきたけど・・・・・あ!!」
「・・・・・・・・・・」
桃香「ごめん・・・・・みんな・・・・・」
雛里「いいえ・・・・・お気になさらず・・・・・桃香様・・・・・」
蒲公英「・・・・・それにしても・・・・・ご主人様が逝って・・・・・もう一年になるんだね・・・・・」
雛里「ええ・・・・・早いものです・・・・・」
焔耶「わたしはとうとう、お館の子を身篭る事は叶いませんでしたから・・・・・」
蒲公英「蒲公英も~~・・・・・」
柊「わたしも・・・・・」
雛罌粟「僕も・・・・・」
みい「残念にゃ~~~~・・・・・」
ミケ「あにしゃま・・・・・」
トラ「にぃにぃ・・・・・」
シャム「にぃさま・・・・・」
一同が一刀の死を悼んでいると
「「「「あう~~~~!!あ~~~~!!」」」」
桃香「ああ!はいはい!劉禅ちゃん!関平ちゃん!関興ちゃん!」
雛里「どうしたんですか~、諸葛瞻ちゃん」
桃香の机の横の籠から桃香と朱里の子と愛紗の双子が泣いていた
桃香は劉禅と関平を抱き上げ、雛里は諸葛瞻と関興を抱き上げる
それに呼応するかのように
コンコン ガチャ
璃々「お母さ~ん、みんな~~~、この子達が大変だよ~~~」
「「「「ああ~~~~!!あ~~~!!あああ~~~~!!!」」」」
璃々が荷車に多くの赤ん坊を乗せて入ってきた
紫苑「はいはい♪ありがとう璃々♪・・・・・黄仙♪お乳の時間ですか~~♪」
その腕に第二子を包み込む紫苑
桔梗「まったく元気よのう♪厳寿よ♪ん~~~~~♪」
焔耶「お、おい!趙統、趙広!そんなに胸に触るな!/////////」
桔梗は自身の子を
焔耶は星の双子の子を抱き上げる
璃々「馬鉄ちゃ~~ん♪可愛いよ~~~♪」
璃々は葵の子を抱き上げた
柊「公孫続ちゃ~~~ん♪」
雛罌粟「いい子ですね~~~♪」
柊と雛罌粟は白蓮の子をあやした
蒲公英「きゃん♥も~~~蒲公英お乳出ないんだよ~~、馬秋、馬承////////」
蒲公英は自分の姉の双子を抱き上げた
杏奈「法邈ちゃ~~ん♪おっぱいが欲しいのぉ~~♪」
杏奈は自らの子を抱く
聖「この子も元気ね~~♪」
聖も自分の子をあやしていた
こちらもみんな男の子であったが、杏奈の子だけは女の子だった
ちなみに、なぜ聖がここにいるのかというと
聖は全実権を華琳に委託した後、成都に住居を移転することになったのである
理由は、葵が住んでいる涼州に近いことと、気候が比較的温暖なためである
杏奈「・・・・・そういえばぁ、聖様はまだご子息様に名前を授けていないんですかぁ?」
聖「・・・・・ええ、なんだかしっくり来るものが思いつかなくて・・・・・」
柊「でも、そろそろ決めてあげないと可愛そうですよ・・・・・」
雛罌粟「はい・・・・・じゃないと不便ですよ・・・・・」
聖「そうね・・・・・今日中にでも決めるわ」
史実の劉協の子も名前は不詳である
もしかしたら、この事実も聖の判断を曇らせている原因なのかも知れない
桃香「・・・・・それにしても・・・・・今頃みんな・・・・・涼州で戦っているのかな・・・・・」
雛里「はい、また五胡の大群が押し寄せてきたようですから」
焔耶「くっそ~~~~、わたしは今すぐにでも飛んで行きたいぜ~~~~」
桔梗「焔耶よ・・・・・ワシらも気持ちは同じじゃ・・・・・」
蒲公英「そうだよ~~、焔耶まで行っちゃったら主力の将が殆ど出払っちゃうことになるんだよ~~」
焔耶「・・・・・・・・・・」
桃香「愛紗ちゃん、星ちゃん、鈴々ちゃん、翠ちゃん・・・・・他のみんなも大丈夫なのかな~?」
雛罌粟「大丈夫です、華佗さんがついていますから」
柊「はい、一様のようなことには決してなりません」
桃香「うん・・・・・みんな、無事に帰ってきてね・・・・・あそうだみんな、この子の真名考えたんだ、この子の真名はね♪・・・・・」
一同は北の大地に思いをはせ、仲間達の無事を祈っていた
天角
零「・・・・・詠、今期の決算はどうかしら?」
詠「はっきりいってウハウハもいいところね、紙の生産も軌道に乗っているし、リサイクルの循環も文句なし、市場からの税収もうなぎのぼりよ・・・・・これじゃ洛陽と天角のどっちが首都なのか分からないくらいだわ」
零「そう・・・・・徐栄、市場の治安はどのような状態なの?」
徐栄「はっ!最近は市場の規模はさらに増し、人口も増加傾向にありますので、治安維持の人員を増やそうかと思っています」
零「ふむ・・・・・なら警察機動隊の予算は余裕を持たせた方がいいわね」
徐栄「はっ!ありがとうございます!」
零「ふぅ~~~、こんなところかしら?」
月「はい♪お疲れ様です♪零さん♪お茶を淹れ直しますね♪」
零「ありがとう、月」
今日の仕事が一段落し執務室に安寧の雰囲気が広がる
一刀の死後、この荊州は零が治めていた
天角の城に翻っていた十文字の旗は取り払われ、今では司馬の旗が中心に立っていて、この外史では二度と十文字の旗が翻る事はなかった
北郷隊の総隊長は徐栄が引き継ぎ、北郷隊という名も今では警察機動隊になっていた
この名前を命名したのは華琳である
以前蜀で一刀が出した警察という名前を華琳が覚えていたため、この名前にしたそうだ
詠「それにしても、この部屋もそろそろ飾り気良くした方がいいんじゃない?ここはもう一刀の執務室じゃ・・・・・」
月「詠ちゃん!!」
詠「あ!!・・・・・ごめん・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
一気に場の空気がどんよりとなる
零「この部屋は、今後一切手をつける気はないわ・・・・・ご主人様は、戦争の被害を全て修復するまで手を付けないと言っていたけど、きっとその後も装飾なんてしなかったでしょうし」
月「そうですね・・・・・ご主人様はそういうお人でしたから・・・・・」
徐栄「・・・・・もう、隊長が去って一年になるんですね」
零「ええ・・・・・早いものね・・・・・」
そして、一同は一刀の執務室の壁を見る
そこには、一刀のエンゲージリングと折れた忠久の刀身と柄が飾られていた
零「あなた様・・・・・」
折れた一刀の魂は、依然悲しい光を放っており見ているだけで締め付けられる気持ちになる
そんな時
バンッ!!!
麗羽「失礼しますわ!!!」
零「なっ!!?麗羽!!?」
徐栄「えっ!!?麗羽殿!!?」
詠「ちょっと!!?なんなのよ!!?」
月「へぅ~~~~~」
いきなり麗羽が扉を開けてどかどかと入ってきた
斗詩「麗羽様ぁ~~!入る時はノックでしょ~~!」
猪々子「そうだぜ~、姫~~、せめてこれくらいの決まりは守ろうぜ~~」
それに続いて斗詩と猪々子が謝りながら入ってきた
麗羽「そんなことを言っている場合ではありませんわ!!」
月「麗羽さん、なにかあったんですか~~?」
「「「「おぎゃ~~~~!!!おぎゃ~~~~~~!!!おぎゃ~~~~~~~!!!」」」」
麗羽「もぉ~~~~袁譚、袁煕、袁尚何がそんなに気に入りませんのぉ~~~?」
詠「あ~~~~~~・・・・・」
月「へぅ~~~~~~」
零「・・・・・またなの?」
麗羽の右腕の籠の中には、自分の子である袁譚、袁煕、袁尚
左腕の籠の中には詠の子である賈穆、賈訪がいた
斗詩の腕には霞の子、張虎と菖蒲の子、徐蓋
猪々子の腕の中には零の子司馬師に司馬昭がいた
零「まったく情けないわね、それくらいの子守も出来なくてメイドが勤まるとでも思うのかしら?・・・・・ねぇ、司馬師、司馬昭♪」
「「きゃっきゃっきゃっ♪」」
零が猪々子から双子を受け取るとその子達はその通りだといわんばかりに笑顔で答える
詠「全くその通りよ・・・・・でしょ♪賈穆♪賈訪♪」
「「きゃきゃっ♪♪」」
月「張虎ちゃん~~♪徐蓋ちゃん~~~♪お母さんはすぐに帰ってきますよ~~♪」
「「きゃっきゃっきゃっ♪♪♪」」」
徐栄「はぁ~~~~、手慣れていますなぁ~~~~」
麗羽「流石月様ですわ~~♪・・・・・ほらほら袁譚、袁煕、袁尚、お前達も見習いなさい」
斗詩「麗羽様、お一人で三人は大変でしょう」
猪々子「そーだぜ、一人くらい持つぜ、姫」
麗羽「いつもすみませんね、斗詩さん、猪々子さん・・・・・」
なんと、麗羽も三つ子を産んでいたのだ
三人ともなぜ袁の姓を授かっているかというと、聖が麗羽の犯した過去の罪をすでに許していたため麗羽は袁本初の名を取り戻していたのだ
しかし、あくまで麗羽として生きることを決めていた麗羽は袁の名を名乗ることは一切なかった
そして麗羽いわく、この三人は零の従者として育てることにしたらしい
斗詩「いつもすみません~~、詠さん、月様~~~」
猪々子「あたい達があやしても全然泣き止んでくれないんだよ」
詠「それは知っているけど・・・・・時雨や村長も大丈夫だったはずよね」
月「そうですね~・・・・・お二人はどこに?」
猪々子「はぁ~~・・・・・月も分かっているだろ?」
月「・・・・・・・・・・」
詠「あそこか・・・・・」
徐栄「・・・・・・・・・・」
零「・・・・・・・・・・」
そして、一同は目的の場所に到着する
零「・・・・・やっぱり、ここにいたのね」
時雨「あ・・・・・皆様、お疲れ様です」
村長「お疲れ様ですじゃ」
時雨は、中庭に設置された机の上で何か書き物をしていて、村長は天角の城の中庭に作られた一刀の墓の掃除をしていた
もちろん、ここに一刀の遺体があるわけではない
葬られているのは、狛煉の遺体
あの後、狛煉はここに一刀のように丁重に葬られた
村長も村長としての仕事を他の者に譲り、墓守として時雨を手伝っていた
月「時雨さん、村長さん、いつもご苦労様です」
詠「二人共・・・・・なにも毎日掃除しなくてもいいのに」
時雨「いいえ・・・・・わたくし達には、これくらいしかやることが思いつかないので」
村長「はい、これはワシらが好きでしている事なので・・・・・」
麗羽「うううう~~~~、本当に時雨さんも村長さんも健気ですわ~~~~」
斗詩「時雨さん、ご主人様のお墓を掃除する時はわたしも呼んでください、わたしも手伝いたいので」
猪々子「でもよ~~、兄貴の墓ってそんなに大きくないし、綺麗な装飾が付いてるわけでもないからそんなに念入りにしなくったって・・・・・」
麗羽「猪々子さん!!あなたはなんて事を言うんですか!!?」
猪々子「うおっ!!?姫!!?」
斗詩「そうだよ文ちゃん!!時雨さんはご主人様のことを思ってやってるんだよ!!」
猪々子「ちょっと!そんな大声出したら!」
「おぎゃ~~~!!!おぎゃ~~~!!!おぎゃ~~~~!!!」
猪々子「ほれみろ、こうなっちまう・・・・・」
麗羽「・・・・・・・・・・」
斗詩「・・・・・・・・・・」
時雨「はいはい、舜刃、大丈夫よ~~」
机の横には籠が置いてあり、時雨はその中から赤ん坊を取り出した
時雨は、一刀との子に今は亡き元夫の名前を与えていた
時雨「よしよし・・・・・それにしても、旦那様が逝かれてもう一年ですか・・・・・」
零「ええ・・・・・」
詠「そうね・・・・・あっという間だわ・・・・・」
月「ご主人様ぁ・・・・・」
村長「一刀殿は・・・・・早過ぎる・・・・・早過ぎましたなぁ・・・・・」
一同は、一刀の墓を見て憂鬱な気分になる
零「・・・・・でも、わたしは寂しくはないわ」
月「え?」
猪々子「零?」
零「わたしは、ご主人様の子を二人も得ることが出来たんだもの♪」
麗羽「わたくしもですわ零様♪わたくしも一刀さんの子を三人授かることが出来ましたから♪」
徐栄「生まれた時の零殿と麗羽殿の喜びようったら、今迄にありませんでしたからな~♪」
月「本当に羨ましいです、零さん、麗羽さん・・・・・わたしはとうとう、ご主人様の子を授かることは出来ませんでしたから・・・・・」
斗詩「霞さんと菖蒲さんも嬉しそうでしたね~~」
徐栄「嵐殿と恋殿は・・・・・残念そうでしたね・・・・・」
猪々子「雫が一番気の毒だよなぁ~~・・・・・」
零「・・・・・今頃・・・・・雫に霞達は涼州で五胡を防いでいるのね・・・・・」
斗詩「ええ・・・・・ちょうど両軍がぶつかり合っている頃でしょうね」
月「へぅ~~~~、心配ですぅ」
零「出来ればわたしが直接行って、五胡の奴らを皆殺しにしたかったけど」
詠「ちょっと!零はここの城主なのよ!いちいち戦に出ていたらきりがないわ!」
徐栄「そうです!・・・・・わたしも行きたいですけど、わたしは今では警察機動隊の総隊長・・・・・そうそうこの本部を離れるわけにもいきません」
零「・・・・・そうね・・・・・でも、きっと大丈夫ね」
月「はい♪華佗さんもいますし♪」
詠「うん、もう一刀のようなことにはならないわ」
麗羽「どうか無事に帰ってきて欲しいですわ~~」
斗詩「はい」
猪々子「まっ、大丈夫っしょ♪」
時雨「きっと・・・・・きっと大丈夫です」
村長「一刀殿・・・・・皆様を見守っていて下され」
徐栄「張済・・・・・隊長のようにとは言わないが・・・・・しっかりやれよ・・・・・」
涼州北部
雫「・・・・・来ました、愛紗さん」
愛紗「ああ、ご主人様を殺しておいてよくもぬけぬけとやってこれるものだ」
雪蓮「そうね、ここで全員ぶっ殺してやるわ」
霞「一刀の仇、ここで討ったる!!」
嵐「ああ!ここが奴らの墓場だ!!」
菖蒲「はい!この鬼斬をやつらの血で赤く染めます!」
朱里「霞さん嵐さん菖蒲さん、お気持ちは分かりますが、抑えてください」
張済「そうです!作戦を無視して突っ込まないでくださいよ!」
霞「分かっとる!!・・・・・でもあの筋肉妖怪共を見ていると・・・・・むしゃむくゃしてしょうがないねん!」
嵐「くっそ~~~~忌々しい!この大地を我が物顔で行進しおって!」
菖蒲「歯痒いです・・・・・」
恋「・・・・・・・・・・」
そして、地平線の向こうに上がる砂塵は、国境を越えてやってくる五胡の軍団
しかし、なぜ三国の軍がこんなにも迅速に行動できているのかというと
今では狼煙台が国全体に普及し、すぐさまそれぞれの首都に異民族侵略の情報が行きかうようになっていたのである
華佗「気持ちは痛いほどよく分かるが、俺達は死ぬわけにはいかん・・・・・その理由は分かっているな?」
霞「・・・・・分かっとる、ウチらには待っている子供がおるねん、自分から死ぬようなことはせん」
霞は、自分の首にかけた二つの十字架のネックレスを握り締めてそう言った
菖蒲「・・・・・はい、華佗さん・・・・・」
菖蒲も左の薬指に付けてあるエンゲージリングを大事そうに右手で包み込んだ
華佗「ならばいい」
冥琳「朱里、桂花、杏奈、雫、音々音、作戦は分かっているな?」
雫「はい!一刀様の釣り野伏せで、五胡の奴らを一網打尽にしてみせます!」
朱里「はいです!凄い事になりますよ、これは」
音々音「恋殿の見せ場なのです♪」
桂花「もちろんよ・・・・・天和!!地和!!人和!!後方支援頼むわよ!!」
天和「まっかせて~~!!」
地和「いっちょやってやるわよ!!」
人和「はい!!」
明命「こちらもいつでもいいです!」
思春「同じく!」
翠「いつでも来いってんだ!!」
葵「俺は暴れたくてウズウズしてるぞ」
鈴々「にゃ~~~~!早くあいつらをぶっ飛ばしてやりたいのだ~~~~!」
白蓮「鈴々、釣り野伏せは全体の息が合わなければ成功しない、無駄な突撃はするなよ」
春蘭「う~~~~~ん、鈴々にはこの作戦は向いていないと思うぞ」
星「それは春蘭も同じだろう♪」
春蘭「なにお~~~~~!!」
凪「そうやってすぐにムキになるから星さんにからかわれるんですよ、春蘭様」
春蘭「むむむむ~~~~」
桂花「あんたも凪を見習いなさい、あんたと違ってもう立派に将軍をやっているわよ」
そう、凪は北郷隊副官から一気に将軍へと成り上がっていた
今では古参の春蘭、秋蘭、親衛隊隊長の季衣や流琉と同格の待遇を受けていて、恋や葵にも並ぶ誰もが認める将になっていた
悠「・・・・・なぁ、そろそろ動かないと拙いんじゃないのか?」
沙和「そうなの~~、こんな話している場合じゃないの~~」
真桜「あと半刻もしたらこっちに着いてまうで!」
冥琳「ああ!・・・・・各々!!!配置に着け!!!」
「了解!!!!!」
左の薬指に、繋げると一匹の龍となる婚約指輪を煌めかせ一同はそれぞれの持場へと移動していく
迅速に行動していく一同
それは何てことない、普段と変わらない行軍
だが、一つだけ明らかに違うものがあった
そこには、魏、呉、蜀の旗が何処にもなかったのである
あるのは
晋の旗
そう、三国同盟締結から僅か2年で晋王朝が誕生したのだ
皮肉な話である、一刀の死が晋王朝建国を大幅に早くしたなど
華琳を頂点に据え、桃香も雪蓮も零も華琳の部下として日々自分達の領土を治めていた
しかし、だからといってみんなの関係が変わることは一切無かった
三国の王とその部下達は全員、一刀を心から愛していたため上下関係や身分がついたからといって呼び方や態度が変わるなどありえなかった
雪蓮「みな!!!一刀が命をかけて創ってくれたこの晋の国を全力で守るわよ!!!・・・・・(孫紹、お母さん帰ったらすぐにあなたの真名を考えてあげるからね)」
冥琳「ああ!!雪蓮は先頭に立ち恋達と呼応して奴らを誘い込んでくれ!!明命!!思春!!お前達は伏兵として動け!!ミッションスタート!!!!・・・・・(周循、周胤・・・・・かか様はきっと、とと様の敵を全滅させて見せるからな)」
明命「はい!!!雪蓮様!!!冥琳様!!!・・・・・(周邵、周承・・・・・お母さんは、見事お役目を果たして見せます)」
思春「おう!!!・・・・・(甘瓌、甘述・・・・・待っていろ)」
朱里「愛紗さんと鈴々ちゃんと星さんは伏兵兼遊撃隊として行動してください!!白蓮さんと翠さんと葵様は恋さん達の動きに合わせて下さい!!共にこの晋の国を守りましょう!!ミッションスタートです!!!・・・・・(諸葛瞻ちゃん・・・・・お母さん、ご主人様の敵を全滅させてみせるからね)」
愛紗「おう!!みな!!!敵にこの晋の国に入ったことを後悔させてやろう!!!・・・・・(待っているんだぞ関平、関興、母はすぐに帰ってくるからな)」
鈴々「がってんなのだ!!!・・・・・(鈴々も、早くみんなの赤ちゃん見たいのだ)」
星「おう!!!・・・・・(趙統、趙広・・・・・母者はすぐに帰るからな)」
白蓮「ああ!!!・・・・・(一刀・・・・・わたしは一刀の分身を授かることが出来て嬉しいぞ・・・・・・待ってろよ公孫続)」
翠「行っくぜーーーーーーーーー!!!!!・・・・・(馬秋、馬承・・・・・すぐに行くからな)」
葵「涼州筆頭馬寿成!!!行くぜ!!!・・・・・(待っていろよ、馬鉄)」
雫「菖蒲さんと嵐さんは、愛紗さんと鈴々さんと星さんと共に遊撃隊として行動してください!!霞さんは、翠さん、葵様、白蓮さんと連携してください!!張済さんは本陣の防衛です!!!この晋の国には五胡を一人たりとも入れませんよ!!ミッションスタート!!!」
本陣から望遠鏡を覗き込み的確に指示を出す雫の髪は、腰の辺りまで長くなっていた
一刀が去って一年、雫は自身の髪を手入れの時以外は一度も切らずにいた
その理由は、山賊狩りだった頃の一刀を真似ることによって、自分への戒めと一刀を死なせてしまった罪を一生背負っていこうという覚悟の表れだった
雫「(一刀様、私はこの晋の国を一刀様だと思い、全霊で守って見せます)」
風に吹かれて靡く雫の髪は、彼女の決意を象徴するようにキラキラと輝き続けていたのだった
霞「おう!!張遼隊!!!今はあまり気合入れんでええ!!!気合入れるんはもうちっと後や!!!・・・・・(張虎、待っとれや)」
菖蒲「行きます!!・・・・・(お母さんはすぐに帰ってきますからね、徐蓋)」
嵐「奴らにぶつかった後に、やられた不利をして一度退いて再度ぶつかるんだったな!!?・・・・・(一刀よ、わたしはお前に追いついているか?)」
張済「はい!!本陣へは一兵たりとも入れさせません!!!・・・・・(兄上、我らを見守っていてください)」
華佗「みんなくれぐれも無茶なことはするなよ!!!いくら五斗米道でも死人を蘇らせることは出来ないんだからな!!!・・・・・(一刀・・・・・親友・・・・・お前の奥さん達を死なせはしない、だから安心して眠ってくれ)」
桂花「突撃ばっかりするんじゃないわよ脳筋!!沙和と悠姉様は愛紗と鈴々と星と思春と明名と一緒に伏兵兼遊撃隊として行動してください!!!凪!!春蘭を見張りなさい!!真桜!!あの煙幕は大丈夫なんでしょうね!!!?あれを誘い込んだ五胡の中心に放り込んで火計で丸焼きにするのよ!!!天和!!地和!!人和!!来るわよ!!晋の国の力を見せ付けてやりなさい!!ミッションスタートよ!!!・・・・・(荀惲・・・・・待ってなさい)」
春蘭「分かっているっての!!!・・・・・(夏侯充、母様はもう少しで帰ってくるからな)」
悠「よっしゃ!!分かった!!・・・・・(張雄、母様の帰りを泣かないで待っているんだぞ)」
凪「はい!!桂花様!!・・・・・(楽綝、お父さんの・・・・・隊長の敵を討ってくるからな)」
沙和「分かってるの~~!!着いてこいなのこの蛆虫ども~~~!!!・・・・・(于圭ちゃん、待っててなの~)」
真桜「こっちはいつでもええで!!!・・・・・(李禎・・・・・母ちゃん行ってくるで)」
天和「うん!!みんな~~~~~♪♪♪わたし達がついてるよ~~~~♪♪♪・・・・・(一刀、わたし達も一刀の赤ちゃん出来なかったけど・・・・・わたし達は大丈夫だよ)」
地和「このちぃが応援しているのよ♪♪♪頑張りなさい♪♪♪・・・・・(きっと・・・・・きっと見ているわよね、一刀)」
人和「皆さん♪♪♪頑張って下さい♪♪♪・・・・・(一刀さん・・・・・わたし達の歌が一刀さんに届きますように)」
恋「・・・・・ご主人様・・・・・見てて・・・・・」
恋は、一刀の十文字の旗をマント代わりにし一刀の龍滅金剛刀を背中に背負っていた
音々音「恋殿!こんなやつらけちょんけちょんに叩きのめして早く天角へ帰りましょう!ミッションスタートなのです!!」
恋「(コク)・・・・・行く」
そして、恋は龍滅金剛刀を撫で方天画戟を振りかざし、それを目前の五胡に向けた
それを合図に晋軍は、恋を先頭に五胡に突進していくのであった
その戦場の真上で、ひらひらと白い羽と黒い羽が舞っていた
まるで、そこにあるのが当たり前のように
しかし、その二枚の羽が舞っている事が何故か不自然に見える事はなかった
そう、空と一体化し、この大陸全てを見渡しているかのように
その白と黒の羽は空高く舞い上がり
ヒュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして、まるで雲のように流れに逆らわず風に運ばれていくのであった
涼州の空は、この下で戦という名の殺し合いをしているとは思えないほど、清清しく何処までも澄み渡った青空だった
そして、これより後、晋の国内にてとある書籍が販売された
その書籍は2000万部を超えるベストセラーとなり人々の記憶に広く、深く刻み込まれる事になっていく
そう、それはとある御遣いの
あまりに自分勝手で、どうしようもなく不器用で、誰よりも優しく
己を捨て、人々の為に、愛した女性の為に、愚直に、どこまでも純粋に生き
ただ一人、消えていった男の物語
その書籍のタイトルは、こう呼ばれることになる
北郷伝
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