No.449980

ティアーズ・トゥ・ティアラ~彼女の笑顔~

天狐さん

帝国の偵察兵
彼は知ってはいけないこととを多く知ってしまった。
それでも彼は決断した道を止まらない


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2012-07-09 21:15:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2712   閲覧ユーザー数:2663

 

彼女たちに出会えてよかった

 

 

 

そして、出会わなかった方がよかった

 

 

思い出すのは、偽りの日々

 

 

それに、輝くのは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   彼女の笑顔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また偵察、ですか」

 

 

俺は任務としてとある蛮族の偵察を言い渡された

 

 

「ガイウス隊長も偵察兵雇って下さいよ。俺一応突撃兵ッスよね?」

 

「おい、口の効き方を考えろ!」

 

「気にしないでくださいよ。だいたい、今更口調変えたら違和感あり過ぎじゃないッスか」

 

「ははは!違いない。まあ、そろそろ偵察兵を雇わないといけないってのは分かってるけどな。今までおまえ以上の偵察をしてきた奴がいないんでな。どうしてあそこまで調べ挙げれるんだ?」

 

 

副官殿を落ち着かせ、我らの隊長ガイウス殿は俺に聞いてきた

 

ああ、そういや知らないんだっけ

 

 

「俺は元老院に席を置く(ジジイ)の孫なんですよ」

 

 

別段隠してるわけでもないので話す

 

 

「さらに言うと五兄弟の末弟で兄たちは優しいし才覚もあり体に異常はない。どう考えても後を継げないってわかったんス。だったら自分に合う職を探そうって事に至って手に職をつけてたんで。

鍛治師に商人、漁師や狩人、音楽家やドルイドもやりましたね。結局一通り職をやっても合わなかったんで仕方なく入隊したら、ガイウス隊長の目に止まって今に至るって感じッス」

 

「なるほどな。その時の経験を生かしてそこに合わせた職をやって馴染んでるのか。案外、偵察兵が一番合ってそうだが」

 

「なんスかねぇ……

正直違和感を感じるんス」

 

 

本音を漏らしたら、ガイウスさんに大笑いされた

 

まあ、こんな人だから俺も副官殿も含め多くの人に慕われてる

 

っても一度この人の下につかなきゃわかんないだろうけど

 

 

「こっちからもいいッスか」

 

「ああ。なんだ?」

 

「なんでドルウクが拉致った妖精王の血族のいる奴らを調べるんで?」

 

 

途端、空気が変わる

こちらも真面目に聞くか

 

 

「どうしてそこまで知ってるのか知らないが、あまり口外にするなよ。士気に関わる。

で、何故かだったな。あいつらに見慣れない顔があったんで名前を聞いたら、魔王アロウンって名乗った」

 

「……あのクソデブめ、私欲のために魔王を起こしたのか」

 

「信じるんだな」

 

「隊長が嘘をつく意味ない。ならホントに言った。

実際それならソイツの妄言って思うとこだが、ずっと置いてある原型を留めてない琥珀金(エレクトラム)の塊が冗談じゃないって証拠だ」

 

「ああ。短剣(ソレ)を本気で投げたのに、気付いたら俺の足下に刺さってた」

 

 

強い

 

素直にそう思うことにする

 

偵察にも力のある奴を使わないといけない理由がわかった

 

 

「了解ッス。コレよりゲール族の偵察の為にエリン島を出ます。副官殿、船と剣をお願いします」

 

「わかった。お前が無事であることを祈る」

 

 

ガイウスさんに一礼して2人とも準備にかかった

 

出航は夜、兵が眠ってから

 

船にあった慣れ親しんだ剣、クレイモアを背負いサッサとエリン島を出て行った

 

そして1時間後、俺は海魔(クラーケン)のおかげで漂流する羽目になった

 

 

 

 

 

 

気がついたらどこかの砂浜

 

周りにいるのは俺を喰らおうとする異常に大きいカニども

 

 

「嘘だろ!背が縮んだのか!?ただでさえチビッコ扱いされてるのに!」

 

 

ショックだ

 

とりあえずクレイモアでカニを真っ二つにする

 

憂さ晴らしにカニを狩り続けるが数が多すぎる

 

まあ倒せないこともないだろうけど、終わった倒れそうだ

 

楽々と倒していると上空から石が―――

 

 

「ってうおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

とっさに避けたものの着地に失敗し転がる

 

 

「っ、殺す気かぁぁぁ!」

 

 

そう言った後の俺の記憶はない

 

気付いたらどこかの一室だった

 

 

「気がつきましたか?」

 

 

ベッドのそばに少女がいた

 

 

「頭が痛い。ついでに岩が降ってきて罵倒した後の記憶がない」

 

「ご、ごめんなさい!

に~さまが飛ばしたカニがぶつかっちゃったんです」

 

 

そうか・・・

 

赤い景色は夢じゃなかったんだ

 

 

「とりあえず君のに~さまとやらを全力で殴りとばしたいけど」

 

「だ、ダメです!」

 

 

むぅ、仕方がないか

 

因みに岩を落としたのは彼女らしい

 

その分もに~さまとやらに犠牲になってもらおう

 

その後アロウンという男がやってきて、一時的に仲間入りする事になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなりの月日が経ち、色々と事件が起きた

 

定期的にに~さまことアルサルを伸したり、アザラシ妖精のスィールの大切なものをアロウンが焼き払い嫁がせたり、アルサルが木を蹴って巨大クワガタこと鉱山妖精のラスティを捕まえたり、ロンディニウムに突貫したり、幼い頃からの知人のオクタヴィアがハム扱いされたり、ルブルムを壊滅させた

 

で、わかったことが幾つかある

 

一つ目は妖精に懐かれやすい体質らしい

 

平然と会話をしていたのが妖精ってことを知ってアロウンに話したら驚いてたな

 

二つ目は俺の身長は妖精の一般的な身長と変わらないこと

 

・・・悔しくなんかないさっ!!

 

三つ目は俺の技術は本当は妖精クラスらしい

 

剣を作ればラスティに泣かれ、靴を作ればエポナに怒られる

 

自覚はなかったんだけどなぁ・・・

 

そして最後に

 

俺は好きな人が出来た

 

作ってしまった

 

 

 

自覚はなかったが、いざ自覚したら泣きたくなった

 

特に夜になると不安定になるので、庭に出て星を見ることにしている

 

 

「どうしてこんなことになったんだろうな・・・」

 

 

そろそろガイウスさんがエリン島を鎮圧してこの島に来るだろう

 

あまり時間がない

 

 

「俺はどうすりゃいいんだろうな。なぁ、オクタヴィア」

 

「・・・気づいてましたか」

 

 

ははっ、気配の消し方が甘いよ

 

オクタヴィアは俺のそばに来る

 

 

「もうそろそろガイウスさんがここに来るだろう。そうしたら俺はここから去る。

去らなきゃなんない」

 

「・・・リムリスのことが心残りですか?」

 

「さすがはガキの頃からの付き合いだ。よくわかってるじゃん」

 

「あなたが悩んでる姿なんて想像できませんでした」

 

「これでも結構悩んでんだけど?ま、今回みたく何日も悩むことなんてなかったけどなぁ」

 

 

誰にも悟らせないつもりでも、コイツにはばれる

 

ばれてなきゃおかしいか

 

 

「婚約者だったのに、お互い別々の人が好きになっちゃったな」

 

「・・・・・・ええ」

 

「親同士が決めたことで、アウレリア家が失脚したせいでジジイがなかったことにしたけど、嫌いじゃなかったんだぜ?」

 

「私にとってあなたは今でも越えたい壁です」

 

 

知ってるか?

 

君は俺をもう越えてるんだ

 

だってさ

 

君は大切な人を護れる

 

俺はこれから大切な人を居場所ごと消しにいかなければならないんだ

 

 

「・・・・・・リムリスを頼んだ」

 

「あなたらしくない。いつものあなたならこういうときに挑発するような言葉をかけている」

 

「だろうね。でも、アロウンは少なくとも俺が帝国兵って知ってるだろうし。お互い意味がない」

 

 

それに、コレは直感だけど

 

俺たちは負けるだろう

 

結束力の差が段違いだからね

 

 

星を見ていると、梟がやってきた

 

足には手紙が結ばれている

 

時は来たり、か

 

 

「・・・・・・神は残酷だ」

 

 

オクタヴィアは同意してくれない

 

 

「さて、寝ようか。

明日は闘うことになりそうだ」

 

 

俺は裏切れない

 

だから俺は裏切る

 

誰もがほめてくれる、誰にも誇れないことを俺は行う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けて、皆は狩りに行った

 

俺は用があるといってサボった

 

いつもどおりエポナのもとで靴作りをしてる

 

 

「アンタって靴作り以外に出来ないの?」

 

「出来るけど?たとえばアクセサリーは自作だし」

 

「金細工?」

 

「まぁな。時間がかかって面倒なんだよ」

 

「じゃあ時間があれば納品してくれるの?」

 

「時間があればやったけど、明日いなくなるからな。はっきり言って、ない」

 

 

「はぁ!?聞いてないわよ!!」

 

「言ってなかったし。だからこの靴で終わり。

ラスティのとこにも琥珀金(エレクトラム)の剣も数本納品しておいたし・・・

今から細工の仕方を教えようか?」

 

「タダならお願い」

 

「了解」

 

 

その後帰ってきたラスティとスィールも交えて細工教室が開かれ、日没まで熱中してしまった

 

そのときの題材が俺が暇つぶしで、でも意味を持たせて作った金細工の首飾り

 

そのときスィールに俺がリムリスに抱いてた思いを気づかれた

 

しかも口にされたのでエポナたちにもばれた

 

腹いせに琥珀金(エレクトラム)の塊を投げつけたので憂さ晴らしは出来たし、俺にはもう関係ない

 

夕食を終えアロウンに旅に出ると伝えた

 

 

「もし路銀が尽きたらまた来るがいい。また傭兵として雇ってやろう」

 

「は、アンタも凄い存在だねぇ。ここまで堂々とされちゃまた来たくなるだろうが」

 

 

追い払ってくれなかった

 

ああ、今はコイツが憎い

 

コイツはわかってて自由に行動させ、追い出さなかった

 

そんな風に言われちゃ、明日の朝までいなくちゃならないだろ?

 

いつもみたいに「さっさとどこかに行ってしまえ」って言ってくれればよかった

 

荷造りを終えた俺はまた星を見上げていた

 

 

「荷造りは終わりましたか?」

 

「リムリス・・・・・・ああ、ついさっきね。もし良かったらお茶を入れてくれないか?」

 

「わかりました。少し待っててくださいね」

 

 

そういって準備が出来ていたお茶を入れてくれた

 

あいつめ

 

 

「アロウンあたりに言われたのか?」

 

「はい、『そろそろ荷造りも終わっている頃だろうから労いの茶でも入れてやれ』と」

 

 

一応、礼を言っておこうアロウン

 

最後にこんな機会をくれるなんて

 

 

「・・・長い間、このアヴァロンに居たはずなのにあっという間だったよ。

本当に楽しかった」

 

 

リムリスは静かに聞いていてくれる

 

 

「アルサルとリアンノンのおかげで気絶して仲間になって、何故か妖精さんのみんなに親しまれて、掃除を手伝ったり、靴作りをしたり、狩りをしたり、料理を振舞ったり、剣を作ったり、アルサルを相手にしたり、スィールの応援をしたり・・・本当に飽きることのない毎日だった」

 

「私も、とても楽しかったです」

 

「そうか・・・

リムリス、旅から帰ってきて、君と再会したときに言いたいことがあるんだ。いつになるかはわからないけど、それを聞いてくれるかな?」

 

「はい。その日が来ることをいつまでも待っていますね」

 

 

そういって彼女は微笑んでくれた

 

俺の言いたいことはわかっていないだろう

 

ただ善意でそう言ってくれる

 

そんなときの彼女の笑顔が好きだった

 

その後二人でゆっくりとお茶を楽しみ、お開きとなった

 

そして俺はすぐにアヴァロンから消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が帰還してから帝国軍は攻勢に回れるようになった

 

アロウンたちは前線基地に奇襲をかけれなくなり、こちらから何度かちょっかいを出すことで精神的に揺さぶりをかけて士気を落としにかかる

 

念のためにブリガンテス族に警告しておいたが、やつらはゲール族を助けに来るだろう

 

そして、アロウン負傷の報告が入り、城攻めが始まった

 

2日が経ち、ガイウスさんは城壁を崩しにかかっている間、それを悟られないように副官殿と俺で指揮を執り派手に闘った

 

3日目にモルガンとオクタヴィアが俺の横を通り過ぎて城内に入った

 

俺は帝国の正規の鎧と兜を被っていた為に気づかれずにすんだ

 

すぐにガイウスさんが帰ってきて城壁がかなり深いところまで築かれてることを知った

 

だから俺たちは門をぶっ壊すことにした

 

4日目は籠もられてしまいまともに攻撃も出来なかった

 

だが門を壊す準備は整った

 

夜が明けたら最後のときが始まる

 

5日目の朝

 

ついにアルサルがやってきた

 

それもブリガンテス族を引き連れてだ

 

計画は崩された上にアロウンが起きてしまった

 

そして真っ向からの戦争が始まった

 

俺は短めの槍を右手に、刃渡り40センチの剣を左手に持つ最も慣れた型で敵を薙ぎ払う

 

10人ほど倒したとき、オクタヴィアが立ちはだかった

 

 

「私と闘って貰おう」

 

「わかった。昔馴染だからって手加減はしない!」

 

「こちらもするつもりはない!」

 

 

互いに手の内を知っているからこそ、防ぎ回避し隙を突く

 

相手のクセを見切り、互いに有効打が入らない

 

 

「オクタヴィア、君は強くなった。いや、俺が弱くなったのか」

 

「どちらでもない。ただ、あなたには迷いがある!」

 

 

そりゃあね

 

割り切っても苦しいものは苦しいんだよ!

 

 

「この戦いをしている間何度も白昼夢をみた。君らと笑い合って心から楽しそうにする、そんな夢だ!

だが現実はこれだ!仲間と思っていたものを裏切り、蹂躙する!

もう引き返すことすら出来ない!

俺たちの道は分かたれた!ならぶつかるしかないだろう!

俺はガイウス隊長と共に在り続ける!

オクタヴィア!お前の進む道を示せ!」

 

 

一旦離れた後、渾身の力で突く

 

その攻撃は避けられ、オクタヴィアは懐に入ってくる

 

来るであろう攻撃を防ぐ為、左手を動かしたら剣がなく矢が刺さっていた

 

矢が飛んできた方向を見ると、モルガンが弓を構えていた

 

 

 

負けたよ

 

 

そう思うと同時に、俺の体はオクタヴィアの斬撃を受け入れていた

 

ふと横目で見ると、ガイウス隊長は亡くなっていた

 

俺は得物を手放し、亡骸のもとへ行く

 

ゆっくり、ゆっくりと

 

 

「隊長、ここでアンタが死んでちゃ帝国に反旗を翻すことができ無いじゃないッスか。

俺たちの敗因は、きっとアロウンたちの結束力を甘く見たからッス」

 

 

兜を脱ぐとその場に座り込む

 

 

「なんでおまえが・・・」

 

「アルサル。俺は元々帝国兵だよ。神聖帝国って名乗るようになってからは忠誠心なんてなかったけど」

 

 

アルサルだけは言葉にしていたが、アロウンとオクタヴィア、それにオガムを除いた全員が驚いていた

 

驚いた顔が見れるなんて思わなかったが

 

 

「オクタヴィア。正直お前が羨ましかったよ。俺も無能な上官の部隊だったならさっさと君らのもとにいたのだろう。終わってしまったことだから愚痴っても意味ねぇか・・・

隊長、すぐにそっちに逝きます。ただ伝えてないことがあるんで待っててくださいよ」

 

 

俺は刺さった矢を引き抜き篭手を外す

 

リアンノンが駆け寄ってきた

 

 

「今治しますからじっとしててください!」

 

「ムリだよ。治したところでもう血が足りてない。だから治さなくていい」

 

「でも!リムリスさんに伝えることがあるんでしょう!?」

 

 

は、リアンノンにもばれてたか

 

 

「いいんだよ。元々伝えるつもりもなかった。

頼みごとがいくつかあるんだが、皆いいか?」

 

 

拒否してくる者がいないので、さっさと言ってしまおう

 

あれ、急に血の味がしなくなってきた

 

 

「一つ、俺が帝国兵だったことは言わないでおいてくれ。俺自身のために

二つ、俺が死んだら、欠片も残らないほどに焼き払って欲しい。ネクロムだっけか。あんな風になってまで闘いたくないから。

この2つはいいか?」

 

「わかった。言わないでおくし、族長の俺から命じておこう」

 

 

アロウン、つくづく話のわかるやつだ

 

 

「三つ目、スィール・・・この首飾りを彼女に渡してくれないか?理由は適当でいいからさ」

 

「はい・・・」

 

 

俺は愛用の首飾りをスィールに渡しておいた

 

 

「泣くなよ。俺は後悔してないんだから。

あ、オクタヴィア。ソレの花言葉はいうなよ。重いものだから」

 

「わかっている」

 

 

案外オクタヴィアが悲しんでくれてるってのはうれしいか?

 

アルサルもラスティもモルガンも悲しそうにしてくれてる

 

俺の存在ってのは大きかったんだな

 

リアンノンとスィールにいたっては大泣きだし

 

 

 

もう、願い事はないか・・・

 

一気に脱力して、倒れる

 

視界に青い空が広がる

 

そう思っていたのに見えるのはリムリスの笑顔ばかり

 

 

 

「ったく、俺ってヤツは本当に――――――――」

 

 

 

 

 

 

―――――――彼女の笑顔が大好きだったんだな―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空以外の何かを見て、あの方は逝った

 

アロウンは約束どおり遺体に火をつけ、焼いた

 

アルサルやモルガンは割り切れないようで冴えない顔をしている

 

 

「あの、オクタヴィアさん。あの首飾りに描いてある花って」

 

 

ラスティが聞いてくる

 

 

「ああ、帝国の東部でしか咲かないからこちらでは見かけないだろう。あの方が言っていた花言葉だがな―――――――」

 

 

教えたら、スィールとリアンノン、ラスティが涙をいっそう流していた

 

どれほどあの方の想いが大きかったのか十分に理解できる

 

 

敗走兵の収容を終えた後、私とラスティとリアンノンはスィールについていって、リムリスに首飾りを渡した

 

あの方は『旅に出たら長い間帰ってこれないから渡しておいてくれ』と言っていたという話にいておいた

 

おかしいと思いもせずリムリスが首飾りを身に着けた

 

そこで限界が来た三人は飛び出していった

 

恐らくはエポナのところだろう

 

不思議そうにしているリムリスに気にしないように伝え、私は三人を追いかけた

 

 

あなたは一つ勘違いをしていた

 

ここにいるものは、誰一人としてあなたに裏切られたつもりはなかった

 

ともに食事をし、笑い、闘った

 

それだけで十分な戦友だった

 

 

 

 

 

 

 

「なぁアロウン」

 

「何だ?」

 

「帝国兵は嫌いだけど、アイツは嫌いじゃなかった。わざわざ俺を鍛えてくれたし、リアンノンたちも助けてくれていた。お前も嫌いじゃなかっただろ」

 

「適度に怠けさせてくれたしな」

 

「結局はそこか!!

そういえばあの花の花言葉ってなんだったんだ?」

 

「俺も知らん。オガムは知っているか?」

 

「はい。あの花の花言葉は――――――」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――『あなたを永久(とわ)に愛す』、そして『笑顔を忘れない』ですよ―――――――

 

 
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