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3dis Log Video_01「出張!ふぁいラジ!でも映像つき」

あいちゃんが取り戻したログについて詳しく。
バラエティチックにかなりの無駄を織り交ぜながら。
ロージュがスタミナ切れたみたいなんで、2章公開はもう少し先のお話になりそうです。
申し訳ありません。

2012-07-08 17:39:24 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:822   閲覧ユーザー数:797

 

 

 

 

 

 

 

3dis Log Video_01

 

 

 

 

 

「出張ふぁいラジ!でも映像つき」

 

 

 

 

 

 

○リーンボックス・第3階層・マトリクスシティ・プレートエリア21・M.A.G放送局前・昼

 

    3階層目だけあって建物を抜けた背景が皆清々しいほどの青空。

    見える建物は全て直方体でできている。

    4つ横に平たく並べられているM.A.G放送局を遠くの方から流し見て、だんだんと手前に行くとそこに見える5pb.

 

5pb.「始まりました、出張ふぁいラジ! パーソナリティの5pb.です! えー記念すべき第1回である今日はボクが日ごろからメディア活動の際にお世話になっているM.A.G放送局前からスタートしたいと思いまぁす。出張ふぁいラジ!では普段音声だけのふぁいラジ!から一転、映像つきでゲストの方と外でお送りしていきます!」

 

    5pb.カメラを意識しすぎて少しだけ肌寒くなるかのようなしぐさ。

 

5pb.「うぅいつになく緊張してきた……さっそく今日のゲストをご紹介します! プラネテューヌの天かける風! 連盟の天使として御活躍しているアイエフさんです!」

 

    左からどこぞのコンビヒーローのようなノリでカメラ画面に入ってくるアイエフ。

 

アイエフ「Hi! プラネ天使のいつもコソコソしてる方、アイエフです!」

 

    アイエフの自己紹介に笑いつつ、5pb.があいさつを返す。

 

5pb.「あいちゃん、今日はよろしくお願いします」

アイエフ「いやぁ~~……ごめんね遅れちゃって」

 

    少し間をためて平謝り。

    5pb.笑顔で返す。

 

5pb.「いえいえこちらこそ。わざわざプラネテューヌから呼びだしちゃってごめんね。今日行く所プラネテューヌだから往復になるよね?」

 

    指で行ったり来たりをジェスチャーする。

 

アイエフ「そうね。まぁ行き帰りポータルだし、長旅で疲れるわけじゃないんだけどね」

 

    ひとしきりの会話の後、放送局を離れて歩き始める。

 

5pb.「それでは、ポータルにつくまでおしゃべりでもしながら歩いていきましょう」

アイエフ「はいはーい」

 

 

 

○本日のルート

 

5pb.(ナレーション)「第1回の今日は、ゲストのあいちゃんが住んでいるプラネテューヌで、本人お勧めのサラダバーを目指します。プラネテューヌ行きポータルを出て、そこから真っ直ぐ5分歩いた所の右にサラダバーはあります」

 

 

 

○リーンボックス・第3階層・マトリクスシティ・エレクトロンエリア18~14

 

    床と言っても差し支えないような地面に先ほどまでとは違い、平面的な配線が異常なほど密集している。

    その上に先ほどと同じような直方体の建物。

    全くと言っていいほど人を見掛けない。

    5pb.アイエフ、適当に会話を交わしながら、斜め左前に方向をゆるやかに変えて歩く。

 

5pb.「最近、天使としてのお仕事の方は?」

アイエフ「最近はーそうねぇ、アイデン村の住人と接触したくらいかな?」

5pb.「嘘!?」

アイエフ「そんなに驚く?」

5pb.「だって……今までどんなに話しかけても返事一つしなかったんでしょう?」

アイエフ「そうは言ったってしょっちゅうアカウントのメンテがあるみたいだからチャンスなら結構あるわよ?」

5pb.「そう言うシステムなの……?」

アイエフ「その子から聞いた」

5pb.「そうだったんだ……」

 

    5pb.ゆっくりと視線を正面に戻し、いぶかしげな表情から息を吐き出していくように少々残念そうな表情へと変わる。

 

 

 先に断っておくが、”───”で囲われた以下の部分は、ライブプレーヤーがゲイムギョウ界の全市民にわたっていると想定し、そのためにマジェコンヌ信者側に情報を公開してしまうことを危惧したためであり、純粋に番組としてもマズい行為をしてしまっていたりするためカットした部分であるが、我々”地球次元世界(プレイヤーディメンジョン)”に住まう市民にとっては何ら影響のない話であるので掲載させていただく。

 

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    すぐさま、話題を変え表情を戻し、目線もアイエフの方へ戻す。

 

5pb.「それで、その子から他に聞いたことは?」

アイエフ「あのねー、あ、やば、これ言っちゃっていいのかな?」

 

    アイエフ、片手で口を軽く押さえるしぐさ。

 

5pb.「まずかったら言わなくてもいいよ?」

アイエフ「あーーー……確かにここで言うとマズいかもなんだけどっていうかホントマズいんだけど、どのみちー、5pb.ちゃんには同じ天使として話しておかなきゃなことなんで……」

5pb.「特例ですけどね」

アイエフ「特例でもなんでも。あーでもなーー……あ、あの、カメラ」

 

    カメラに向けて指をさす。

    そのまま手のひらを向けながら、若干ぐっと力を一瞬込めたかのような言い方で。

 

アイエフ「ちょっと離れてて。音声拾わないでね。ちょっと離れてね」

 

    そう言われてカメラが離れていく。

    アイエフ、5pb.に耳を傾けさせ耳打ちする。

 

 

 

 

 

 

アイエフ「あのねー、一番最初に言っとくけど、その子、あそこの女神っぽいのよ」

 

    5pb.目を見開いてアイエフの顔を疑うように見つめる。

    アイエフに促され、すぐさままた耳を傾ける。

 

アイエフ「でね、そいつがね、女神としてアイデン村の連中にどんな影響を与えてるかは聞いてもわかんないんだけど、あいつらはね、村民証ってバッジ? を使ってログインしてる間は全然コミュニケーションとれないの。ログアウトしてもらうしかないの」

5pb.「うん」

アイエフ「んで、あいつらはね、村民同士だと喋んなくても見ただけで相手のことが”てゅっ”てわかるらしいの」

5pb.「え? なに?」

アイエフ「喋んなくても、相手が言わんとしていることとか何がほしいかとか個人情報とかが、”ぱっ”と見るだけで”てゅっ”ってわかるらしいの」

5pb.「”てゅっ”?」

アイエフ「そう、”てゅっ”」

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    アイエフ、かがんだ状態から身体を起こし、前方にある何かに気付く。

 

アイエフ「あ」

5pb.「ん?」

アイエフ「あっちの方なんかいる」

 

    アイエフの指さした方向に群れた人影を発見。

 

5pb.「なんだろう……?」

 

    人影の方へと歩き始める二人。

    だんだんと姿や特徴がはっきりしてきた。

    今までに見えたものでは一番高さの低い直方体の建物の前で、見慣れた奴が二人、そこの住人と話しこんでいる。

    見慣れた二人に交じって、どう考えても見慣れない奴に、住人がたじろいでいるように見える。

 

アイエフ「あ、あの子達……と、なにあれ?」

5pb.「きぐるみ?」

 

    アイエフと5pb.気になって近づいてみる。

    見慣れた二人が時間差でおじぎをすると住民も住まいに戻り、自動ドアが閉まる。

    見慣れないきぐるみ、ドアが閉じてもなお手を振り続けている。

    見慣れた二人、アイエフ達に気付く。

    アイエフと5pb.も二人と一体の元へたどり着く。

 

5pb.「すいませ~ん」

日本一「やぁ諸君、こんな所でどうしたの?」

アイエフ「またわざとらしい……」

がすと「おや、今日は撮影ですの?」

 

    日本一、カメラがあることを明らかに意識しつつも、二人の方へ目を向ける。

    がすと、もろにカメラ目線。

 

5pb.「これから、あいちゃん行きつけのサラダバーでトークしようと……」

 

    日本一、自信満々に。

 

日本一「なるほど。水入らずね!」

5pb.「微妙に意味が分からないんですけど……」

 

    5pb.苦笑い。

    それでもなお腰に両手をあてて、態度を崩さない日本一。

 

アイエフ「……二人は何してたの?」

 

    がすと、軽く跳ねると同時に大きな帽子の耳がゆれる。

 

がすと「営業ですの。リッチな層を中心に大規模合コンサービスの提供をしてるですの」

アイエフ「合コン……」

 

    またカメラ目線になり。

 

がすと「他にもガーデニング用品や魔法陣デザイン、もちろん錬金術による合成サービスもやってるので、詳しくはざーるぶるぐ・ドット・アトリ──」

アイエフ「だめだめだめ! 勝手にそこまで宣伝しちゃだめ!」

 

    画面下のスペースに大きな手袋でテロップを指示しだしたり止まらないがすとをアイエフが制する。

    アイエフ、ブレもなく黙っている日本一の方を向く。

 

アイエフ「んで、アンタは? ラステイションはどうしたのよ?」

日本一「今日はユニ辺りからお暇をもらったからリーンボックスのパトロールよ」

アイエフ「ユニ”辺り”ってなに?」

日本一「ん?」

 

    日本一、腰に手を当てた状態のまま素っ頓狂な声を出す。

    同時に、そこからしどろもどろになり始める。

 

日本一「いや、あの、それは……その、ケイ以外でユニの所へよく行く諜報員さんに届け出を提出してもらって……」

アイエフ「アンタ正式に許可もらって──」

日本一「だーー!! 言うなーーー!! 言わないでーーーーー!!」

 

    アイエフの言葉を慌てて遮る。

    アイエフ、せせら笑いながら。

 

アイエフ「まーぶっちゃけ本当は文書とか書く必要ないんだけどねー」

日本一「だよねー」

がすと「そーいうもんですの」

日本一「どーしてあそこはわざわざ文書提出しなきゃいけないんだろう?」

 

    5pb.切り出すタイミングを見計らい。

 

5pb.「あのぉ……」

日本一「ん? あぁごめん。こほん」

 

    日本一、一度咳払いをして。

 

日本一「プラネテューヌへ行くのよね。あそこはよく嫌な風が聞こえるわ、マジェコンチーターもよく集会に利用──」

アイエフ「わかるわよプラネテューヌ人なんだし。キャラ作りはもういいわよ」

日本一「あれ……?」

5pb.「じゃあボクたちはこの辺で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

○同・エレクトロンエリア14~プレートエリア14

 

5pb.(ナレーション)「思わぬ再会に盛り上がってしまったボクたち。気を取り直してシティの中心にあるポータルを目指すのですが……」

 

    5pb.アイエフ、後ろからついてくる3体の気配が気になって仕方がない。

 

日本一「青々しい。どこまでも青々としている空!」

がすと「うるさいですの」

アイエフ「……」

5pb.「……」

日本一「ああ! この世界の空は何故こんなにも美しいのか!」

アイエフ「ちょっと、そこのなんか茶番劇やってる集団」

 

    足を止める5pb.とアイエフ、後ろの2人と1体の方を向く。

    日本一、がすともぴたりと動きを止める。

 

がすと「がすとを入れないでほしいですの」

アイエフ「何で後ついてくるのよ!!」

がすと「実はがすとのお姉様方から”おつかい”を頼まれていて、二人のビジネスの広報活動もしなくちゃならないですの」

アイエフ「お姉様方?」

がすと「ですの」

日本一「アタシはパトロールのついで」

アイエフ「よりダメじゃない! よりダメな部類よ!!」

日本一「なんで?」

アイエフ「要はサボりのサボりでしょ!?」

日本一「裏の裏は表! 同じようにサボりのサボりは立派な仕事!」

アイエフ「屁理屈よ!! サボり・オブ・サボりでしょって言ってるのよ!」

5pb.「えと、あのさっきからずっと気になってたんですけど……」

 

    5pb.おずおずと切り出す。

    全員が注目しだして若干たじろぐ。

 

5pb.「う……目線が痛い……お二人が連れている(?)……その、マスコットキャラ(?)は?」

がすと「ようやく触れてくれたですの」

 

    一度カットをして、画面中央で薄オレンジ色をしたきぐるみキャラがポーズをとる。

 

がすと「いつぞやの絵描き歌でかいた、がすと君ですの」

 

    がすと君、ポーズをとるたび「シャキーン」という効果音。

    意外に俊敏な動き。

    がすとの肩を叩き、耳打ちをする。

 

がすと「ん?」

 

    がすと、少し背伸びをしてがすと君の声を聞く。

    背伸びを終えて、がすと君の動きにセリフを当てる。

 

がすと「とりあえず、みなさんで、プラネテューヌへ、れっつごー」

アイエフ「ちょっとだからなんでアンタ達まで!!」

 

 

 

○同・エレクトロンエリア13・最上層地区ローディングポータル

 

    ポータルゾーンについた一同。

    円形の中に□の形が描かれたエリアに寄り集まる。

    アイエフ、携帯を開いてポータルの状況を確認。

 

5pb.(ナレーション)「とまあひと悶着あって、がすとちゃんに日本一さん、そしてがすと君もつれて、ナロールートの団体部屋でプラネテューヌまで向かうことになりました」

 

 

 

○ローディングポータル・ナロールート・団体部屋内

 

    シートにテーブル、テレビに戸棚にミニ冷蔵庫と、そう広くないながらもリビングとしての機能は十分な部屋。

    5pb.が座るシートの前にはアイエフと日本一。

    アイエフも日本一も、前の方のある光景に地味だが、深く入り込んでくるような笑いをこらえられない。

 

アイエフ「……っっっ……ちょっとっっっ……あれっっっ!」

日本一「これはっっっ……これちょっとっっっ」

 

    がすと、5pb.が座ってるシートの隣辺りで正座をし、一生懸命がすと君の空気を抜いている(・・・・・・・・)

    すでに足の方は有機的なふくらみを失くしている。

    今でも、空気の抜ける音が5pb.の耳元で聞こえる。

 

5pb.「……っっっ……あの、日本一さんって普段ラステイションでなにをしているんですか?」

日本一「そりゃーもちろんモンスターから率先して市民を守ってるのよ。ただ、普段がラステイション限定っていうのがなー」

5pb.「ラステイションは結構安泰だって聞きますけど」

日本一「確かに普段はそうなんだけど、たまに起こる奴がとんでもないし難しい事件なの。だからアタシの出る幕がなくって。アタシがラステイションに配属された意味なんなのかなぁって考えちゃったりして」

5pb.「うーん……ちょっと分かる気がします。ボクも、最近シンガーの活動が思うように行かなくって」

アイエフ「あれ? そうなの?」

5pb.「ラジオにライプレの番組持って、それでもギリギリダメって感じで……みんな根本的に振り向いてくれないんです。だからどうしたらみんなが振り向いてくれるシンガーになれるのかなって考えちゃって」

アイエフ「振り向くかぁ……」

5pb.「そしたらなんというか……ボク自身、本当に……」

 

    がすと君から、空気を抜いて潰れながら、とてつもなく下品な音が聞こえてくる。

 

5pb.「っぷふふふふふふふっっっ……」

アイエフ「っちょっとがすと!」

がすと「しょうがないですの! 中の空気入れ替えないと中の人が熱中症(オーバーヒート)するですの!」

日本一「いいのかなぁこういうとこ映しちゃって……」

がすと「スケジュールの都合で中の人が中抜けしちゃったですの」

アイエフ「ベール様よく引き受けたわよねこんな仕事」

 

    がすと、ぺしゃんとなっているがすと君の空気を抜ききるため、折りたたんで丸め始める。

 

アイエフ「っぷふふふふふふふっっっ……!!」

5pb.「丸められてる……っっっ」

がすと「向こうで適当に中に入ってくれる人捕まえなきゃですの~」

アイエフ「もうきぐるみ全肯定じゃないっっっ」

日本一「くくくくくくくくくくっっっ」

アイエフ「ってか、私の話題に触れなさいよぉぉっっっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・シーブヤシティーヒルズ・メインストリート=アイデン村エリア

 

    公道のそのまた更にメインのストリートの両端にビルでない建物はない街。

    人がにぎわっている様子は見える。しかしそのような声は全く聞こえてこない。

    5pb.アイエフを先頭に、がすと、日本一、がすと君がついてくる。

    がすと君、そのきぐるみの身体に汚れがついており、今も妙に落ち着きなく手をパタパタと動かしている。

 

5pb.「さぁ、あいちゃん行きつけのサラダバーがあるというプラネテューヌのシーブヤシティーヒルズについたわけですが、あれ結構人いるじゃないですか」

アイエフ「人はね、いることはいるのよね。でもほら、にぎわってる様子はあってもなんも聞こえてこないでしょ?」

がすと「あー……」

日本一「アイデン村エリアねここ」

 

    がすと君、なにやら声をあげながら住民たちに近づいていく。

 

がすと君「~~~~~っ♪」

 

    がすと、がすと君の行動に気付き手を引っ張って止める。

 

がすと「そっち行っちゃだめですの」

 

    がすと君、がすとが手を引っ張ったことで、そのまま滑って転ぶ。

 

がすと「うわぉ!」

日本一「あぁ、また転んだ」

アイエフ「何回目よこれで」

 

    がすと君が転んでばかりで気が気でない様子の5pb.

    日本一と共にがすと君を起こす。

 

5pb.「よいしょ……っ!」

日本一「見てよこれ。顔真っ黒だよ?」

 

    日本一、がすと君の顔をカメラに見せる。

    鼻辺りから目のパーツにかけて砂などがついて汚れている。

 

日本一「スーアクさん変わってから間もなくしてこんなだよ? さっきも抱きつこうとしてのしかかってきたし」

がすと「がすとは危うく窒息するとこだったですの」

 

 

    一度カットして脇道が見えた所までさしかかる。

 

 

アイエフ「お、あった。今回行く所はこの脇道」

 

    広い公道から狭い私道へとアイエフの指さしにしたがい移る。

    メインストリートから離れていくにしたがってメインストリートの光景から離れていく。

    ビル類は失せ、人通りもなくなった。

    あるのは無秩序に覆い茂った草木と民家レベルの建物。

 

がすと「また随分と極端な街ですの」

 

 

 

○同・外れの私道

 

    しばらく歩いていくと壁一面にびっしりと描かれたリーゼントの黒人DJのグラフィティ。

    「ギャルズに手ぇ上げるメンズはいねぇ」という文字が横にある。

    その下にこじんまりと「サラダバーStreet Love→」の文字。

 

アイエフ「これ店の看板ね。店もうちょっと向こうだけど」

 

    5pb.若干怯えている様子で。

 

5pb.「……すごそうなとこだね」

 

    アイエフ、5pb.の様子を察して。

 

アイエフ「そんなにビビんなくて大丈夫よ」

 

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    一同、矢印に従って十字路の近くまで来る。

 

「ぉぃ……だ行くなよ……ぉぃったら」

5pb.「あれ?」

がすと「……なんか聞こえるんですの」

 

    どこからともなく声が聞こえ、だんだんと近づいて来ている。

    不審がる一同。

 

「しばらくあっちで休めって! お願いだからと~~~~ま~~~れ~~~~~……」

日本一「……なに?」

 

    なにかが引きずられているような音を出しながら声の主が十字路右から現れる。

 

日本一「えっ!?」

アイエフ「ネプ子!? に、ブラン様!?」

 

    引きずられながらもPHZ(パープルハートジーン)の腕をつかんで離さないブランの図。

    何故かPHZの顔が真っ赤。

    心なしかブランの顔も赤い。

 

ブラン「はぁ……お、お前ら……いやいやいや、だめだだめだ!」

 

    ブラン、5pb.達を見て安心したような表情を浮かべたかと思うと急に首を横に振り、自己暗示のようにだめだを繰り返す。

 

ブラン「だめだったらだめだ……」

5pb.「ど、どうしたんですか……?」

ブラン「いいからお前ら、ちょっと離れてろ!」

日本一「え? どうして?」

ブラン「いいから!! あぁっ!?」

 

    PHZ、ブランにすぐさま取り押さえられながらも、力ずくで不思議な構えをゆっくりと取り始める。

    取り押さえようとしてもPHZを止められないブラン、慌てふためく。

    PHZのひっこめた右手から光が収束する。

 

ブラン「わあぁあぁあぁっ!! お前らいいから逃げろ!! ここから逃げろ!!」

アイエフ「なんかよくわかんないけど逃げましょう!」

 

    急いで引き返す一同。

    がすと君がまたも転んで逃げ遅れる。

 

がすと「あぁ! がすと君が!!」

アイエフ「がすと! ストップ!」

 

    次の瞬間、がすと君めがけて、PHZの右手の拳からウルトラチックな光線が放たれた。

 

アイエフ「ビーム!?」

 

    それを余すことなく浴びせられるがすと君。

    間もなく、爆発炎上する。

 

5pb.アイエフ、日本一、がすと「うわああああっ!!!?」

 

    炎の隙間からWH(ホワイトハート)とPHZが取っ組み合いをしているのが見えてくる。

 

5pb.「ひいぃぃぃぃぃぃ~~~~っ!!」

アイエフ「ちょっと! なんなのこれ!?」

WH(ホワイトハート)「ごめん……この姿のネプテューヌに酒呑ましたらどうなるんだろうって思って……好奇心に負けた結果がこれだよ……」

アイエフ「つまりネプ子は今酔っぱらってるわけ!?」

WH「ホントごめんみんな!! そのきぐるみ後で弁償するから!!」

 

    そう言ってPHZにつかみかかったまま大ジャンプしてその場を去るWH。

 

がすと「それっ!」

 

    がすと、等倍拡大で取り出した杖を振ってがすと君の炎を一瞬で消す。

    煙の中で、中の人むき出しで黒焦げになって倒れているがすと君。

 

5pb.「あぁぁ……弁償とかその前に、モコちゃん(中の人)大丈夫かなぁ……?」

 

    がすと君だったものの元に集まる一同。

    見た所中の人=モコは一切焦げてはいない。

    アイエフ、開いたきぐるみの穴の中に手を突っ込む。

 

アイエフ「あつっ!」

 

    暑さでいったん反射的に戻すも、また手を突っ込み、モコを引き上げる。

    日本一も反対側を持ってモコを救出。

    火元から離れた所にそっと置く。

 

モコ「うい……うぅ……」

 

    モコ、目を回している。

 

5pb.「怪我とかは……ないみたい。気絶してるだけだね」

アイエフ「どんだけ悪運強いのよこの子」

がすと「でもどうするんですの? がすと君の現物は無くなっちゃったですの」

日本一「予備スーツとかないの?」

がすと「残念ながらそこまでの資源がないですの……」

アイエフ「しょうがない。即席でがすと君作りましょう! 紙とかテープとかそういうので!」

がすと「厚紙とかはがすとが用意できるですの!」

5pb.「ハサミなら、局の人に送ってもらえば……!」

日本一「テープ代わりになるかどうかわかんないけど、ばんそうこうなら有り余るほど!」

アイエフ「都合よく揃ってるわね。よし、お面のような形にするわよ!」

 

    ここでいったんカメラは止まる。

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○同・「Street Love」前

 

アイエフ「ついた!」

日本一「ここかぁ」

がすと「過激そうな店ですの」

 

    「Street Love」とスプレーで描かれたグラフィティが看板。

    グラフィティ化しているのは看板や店全体だけではなく、前の道路や両隣りの物件にも及んでいる。

 

日本一「どうだいがすと君パスタサラダは好きかい?」

 

    日本一が振ると、カメラは新生がすと君の方へと向く。

    キョトンとした表情のモコの顔の周りに、ディフォルメしたライオンのたてがみのようにがすと君の顔が張り付けてある。

    風に吹かれて、厚紙で出来たがすと君フェイスがばたばたと揺れる。

    アイエフ、思わず噴き出す。

 

アイエフ「っつふふふふふふふっっっ」

 

    釣られて周囲もくすくす笑う。

 

5pb.「っぷふふっっっ」

がすと「くくくくくっっっ」

日本一「っくふふふふふふっっっ」

モコ(がすと君)「……ほえ?」

 

    モコ、わけが分からない様子で首をかしげる。

 

5pb.「え~~~……ここにつくまでに、ちょっとした”事故”がありましてっっっ……」

日本一「むき身ッ! むき身だッ!」

5pb.「きぐるみが修復不能になってしまったので、現在がすと君はこんな感じですっっっ」

アイエフ「どういうことよこれっっっ」

 

    ここで一度画面をカット。

 

5pb.「あ、そうだ。大事なこと忘れてました」

日本一「なに?」

5pb.「誰が代金支払うか」

アイエフ「……へ?」

5pb.「じゃんけんで負けた人が、今回おごりです」

アイエフ「えぇぇぇぇぇちょっとちょっとちょっと! そんなことしちゃうの?」

5pb.「しちゃいます」

アイエフ「えと……そういうんじゃなくて割り勘に」

5pb.「しません」

アイエフ「……今日はやけに強気に出るわね」

がすと「じゃんけんが一番平等ですの」

日本一「それじゃあ行きましょうかー!」

アイエフ「ちょっと待った!!」

 

    アイエフ、待ったをかけて皆が見ているのをしり目に一生懸命祈っている。

    他のメンバーも祈り始める。

    モコ、不思議そうにそれを見つめている。

    手が決まった様子の四人。

    それぞれスタンバイ。

 

アイエフ「せーの……」

5pb.アイエフ、がすと、日本一「さーいしょーは」

がすと、日本一「Cats!!」

 

    と、ネコの構えを取る。

 

5pb.「ぐ、ん? んん?」

アイエフ「待って待って待って待って、なに? 今なんて言った?」

がすと「キャッツですの」

5pb.「なぜキャッツ?」

日本一「えー常識じゃん」

アイエフ「んなわけないでしょ!」

がすと「いいからやるんですの!」

 

    全員、じゃんけんの準備が完了する。

 

アイエフ「せーの……」

5pb.アイエフ、がすと、日本一「さーいしょーはCats!! じゃんけんぽんッ!!」

 

    結果、パーの日本一が一人負け。

 

日本一「ノぉッ──!!!?」

アイエフ「ぅっっっっし!!」

5pb.「ほっ……」

がすと「日本一、ごちそうさまですの」

日本一「くああぁぁぁ~~~~~っっ!!」

 

    屈辱に膝を突く日本一。

 

アイエフ「よっしゃぁ~~っ……久しぶりにじゃんけん勝った気がする!」

 

 

 

○お店紹介

 

    「Street Love」の全体像が見てとれる。

    内装も外観を裏切らず、ストリートビジュアルを前面に押し出した作りになっている。

    手を模した赤、緑、黄色のカラフルな椅子。

    ペンキをぶちまけたような妙な塗装のテーブル達。

    カウンター側のテーブルにはいちいちグラフィティが描かれている。

    サラダバーと言うだけあって野菜を意識し、緑を基調とした配色ではあるが、同時にそれがケミカルチックな印象も呼び起こす。

    正直、人によっては嫌悪感を催すような店。

 

5pb.(ナレーション)「本日のゲスト、あいちゃん行きつけのサラダバー、『Street Love』。独創的な店の空気と、主人であるスミッティさんの人柄もさることながら、主力メニューであるパスタサラダが人気を博しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・シーブヤシティーヒルズ・「Street Love」店内

 

アイエフ「ごめんくださ~い」

 

    アイエフが店の押し扉を開けると、ニット帽にサングラスをつけた陽気そうな黒人の男が返事をする。

 

スミッティ「ようアイエフ。久しぶりだな」

アイエフ「先週来たばっかりじゃないスミッティ」

スミッティ「俺にとっては随分と久しぶりだ」

5pb.「お邪魔してます……」

がすと「ですの!」

スミッティ「おう、今日は取材の日かい?」

5pb.「ええまあ。ここでサラダをつまみながらトークをしていこうと」

スミッティ「そいつはいい。どうぞ遠慮なく、ウチのとびっきりのサラダをお供に喋っていってくれ」

がすと「店の内装も看板も全部スミッティ氏が?」

スミッティ「ああそうだ。俺が描いた」

がすと「今度がすとが持ってる別荘のペイントを依頼したいですの。ルウィーでお姉様方が今度やる『NINJADYNASTYホールディングス』の新製品のプロモーションの会場に使用したいですの」

アイエフ「宣伝ねじ込んできたな……」

 

    スミッティ、口笛を吹き鳴らす。

 

スミッティ「~♪ 別荘持ってんのか。人は見かけによらねぇな。けど残念。俺はガムタイプなんでね、スプレーも少ないしコマンドも複雑で扱いづらいぜ? ま、その分スコアは高いけどな」

がすと「……どういうことですの?」

スミッティ「細けぇこたぁいいんだよ。それより、トーク番組をここでやるんじゃなかったか?」

5pb.「あ、そうでした……」

アイエフ「それじゃあスミッティ、ミルクパスタ5つ」

スミッティ「おう。待ってな」

 

    スミッティが厨房に向かうと、カウンターの席に座り始める一同。

 

アイエフ「こっからが見物よ? この店の名物なの」

日本一「どういうこと?」

アイエフ「調理中は音楽かけてラップを披露してくれるの」

 

    ここで一旦カット。

    店内のミラーボールが回り、ジャズ混じりのR&Bが流れる中、スミッティが調理しながらラップを披露してくれる。

 

スミッティ「踊り 明かせ 明日のために On the stage and showt この喉からすまで STOP THE WAR! 騙されるなCommon Law♪ STOP THE WAR! 信じ抜けYour Road♪ STOP THE WAR! 限りある命を♪ STOP THE WAR! 生き通せDon't stock the wrong...」

 

    スミッティのラップが終わり、一同が拍手を送る。

    ここでカットし、いよいよ本番トークに移る。

 

5pb.「さて、パスタも届きました見てくださいこの……白い……大地を」

 

    5pb.パスタの紹介にだんだん自信がなくなってきている。

 

がすと「古っ」

アイエフ「ドンマイ5pb.ちゃん」

日本一「でもこれホントにおいしいよ!」

モコ(がすと君)「あま~い!」

 

    各々、ミルクパスタのサラダを食べ始める。

    5pb.言いかけてカメラを見るとあることに気付く。

 

5pb.「それでは……あぁ……尺がもうなくなってきてるって……」

アイエフ「どっか適当なとこで止めときゃよかったわね」

5pb.「質問は1個か2個が限界みたい……」

モコ(がすと君)「ねーねー」

アイエフ「ん? なにモコ、じゃなかったがすと君?」

モコ(がすと君)「あいちゃんと5pb.ちゃんっていつからともだちなの?」

5pb.「え? う~~んと、ともだち、かぁ……」

アイエフ「あぁ、あのね? いっちゃん最初は、バージョン1の時に森で歌ってた5pb.ちゃんを散歩中に見つけてね、それで5pb.ちゃん、こっち見て、ものっっそい悲鳴あげて逃げちゃって……」

 

    5pb.赤面して言葉が出ない。

 

アイエフ「で、何回か会ううちに心開いてくれたのね。この子プライベートだと人前でまともに喋れないくらいすごい内気なのよ」

5pb.「あ、うん……でも今はだんだんと克服してはいますよ?」

アイエフ「そうね。そうじゃなきゃこんな番組やらないものね」

 

    アイエフ、苦笑い気味。

 

アイエフ「それである時、その時インディーズで出してたCDが妙に売れなくって、それで違法コピーで売りさばかれてるからオリジナルが売れないことが分かってそいつらこらしめた時あたりかな?」

5pb.「あれは本当にありがとうねあいちゃん」

アイエフ「いえいえとんでもない。私の燃えたぎる正義が黙っちゃいなかっただけなので」

日本一「なぁんだアイエフもそう言うとこあるじゃん!」

アイエフ「あぁんもう無駄に食いつかれた」

日本一「ひーどーいー」

5pb.「ふふふっ……あ、最後の質問になっちゃうかな。最近、なにかちょっとした事件があったと聞きますが……」

アイエフ「事件……んーまぁ事件って言っても正しいわね。ちょっと、思い出したことがあるの。今までなぜ忘れてたか分からないくらいのもの」

5pb.「はい……」

アイエフ「この子、モコに前ね」

モコ(がすと君)「ん?」

 

    モコ、アイエフにさされてパスタをリスのように頬張ったまま振り向く。

 

アイエフ「別に信仰してる女神は今も昔もいないって言ったの。でもそれは違ってて……昔、私がいた、い、異教徒でいいのかな? 生まれ故郷とは違う女神を信仰する組織だった頃のギルドのこととか、私が昔、グリーンハート様、ベール様を信仰してたってことを思い出したの。今更ね」

5pb.「今でもベール様を信仰しているのでしょうか?」

アイエフ「今はちょっと違う。でも……そう言うのがあったから……今、こうしてプラネテューヌのために、ネプ姉妹のために働いていけるっていうのはあるかな?」

5pb.「えと……なにがあったんでしょうか?」

アイエフ「いっちばん最初の、マジェコンヌ討伐の旅の時ね、私と、コンパと、ネプ子の三人で結構長い間旅してたの。で、リーンボックスに着いた時、当時の教会の教院長っていうのに、ネプ子やっつけたら正式にリーンボックスの国民になれるっていわれて、正直に言うと揺れちゃったの」

5pb.「その時はベール様を?」

アイエフ「うん……その時はっきり断らないで色々うだうだしちゃったから、結果的に教院長ってやつが先に動いちゃって、それでネプ子を危険な目にあわせちゃったんだけど、あの子ったらそんなの全く気にしてなくって……申し訳ないっていう気持ちはいっぱいなんだけど……それ以上に嬉しくなっちゃって……だから……絶対こいつ等の傍から離れてやるもんかってその時から思ったの」

5pb.「なるほど」

アイエフ「だからそう、信仰じゃ、ないよね。純粋に、あの子達のそばにいたいって思える」

 

    ここで一度カット、そして5pb.がカメラに向けてあいさつをする。

 

5pb.「さて、出張ふぁいラジ! 拙いながらそろそろお時間となってきました。どうでしたかあいちゃん、今日一日振り返って」

アイエフ「いや、一緒にパスタ食べに来ただけなのにすごいエネルギー使ったような気がするっっっ」

5pb.「ふふふっ……やっぱりそう思う?」

アイエフ「とにかく久々にいっぱい笑って楽しかったです!」

 

5pb.「それはなによりです。では、次回の放送で、またお会いしましょう。さようなら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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