「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・・」
一人の少女が、泣いている。
少女の名は、高町なのは。この高町家の末っ子である。
「ごめんな、なのは・・・
俺はな、もう治らないんだ。これは、病気なんかじゃないんだ。
これは、俺が昔受けた呪いなんだ・・・」
少女のすぐ傍には、一人の男性が布団の上で寝ていた。
赤色の髪に、白い髪の毛が混ざっている。肌は、少し日焼けしている位に黒くなっている。
この男性の名は、衛宮士郎。高町家に居候している"魔術師"の青年である。
「ごめんね、お兄ちゃん。
私が・・・私が、もっと治療系の"魔術"ができたら・・・」
なのはは、"If"の世界を夢見た。
もし、自分がもっと魔術ができていたら・・・そんな"If"を・・・
「だめなんだよ。この呪いは、決して治らないんだ・・・
この呪いは、"|この世の全ての悪(アンリマユ)"なんだ・・・・」
「えっ!??」
なのはは、"|この世の全ての悪(アンリマユ)"の名を聞き驚いた。
"|この世の全ての悪(アンリマユ)"とは、なのはが、愛読する本"聖杯戦争"に、でてくる聖杯の中身だったからだ・・・
ちなみに、この"聖杯戦争"という本は、昔、士郎が記憶の整理に執筆した文庫本の事だ。
「ねえ、お兄ちゃん・・・嘘、だよね・・・
"|この世の全ての悪(アンリマユ)"なんて・・・」
「いや、本当なんだ。
俺は、聖杯戦争で|"この世の全ての悪(アンリマユ)"の呪いを受けたんだ。」
「そん、な・・・
う、うわ~~~~~~ん・・・ひっく・・・お、お兄ちゃ~~~ん!!」
なのはは、ついに泣き崩れてしまった。
士郎は、なのはの頭を、撫でてっやった。
その様子は、まるで本当の親子のように見える。
「・・・なあ、なのはは、将来何になりたいんだ?」
「ふえ・・・ひっく・・・わ、私は・・・
私は、将来"正義の味方"に為りたい!お兄ちゃんのように、みんなを助けれるような正義の味方に」
「なのは、正義の味方はな、為れないんだ。
みんなを救うことは、できないんだよ・・・」
士郎は、まるで自分に言い聞かせるように言った。
けれど、なのはは、納得しようとしなかった。
「それじゃあ、なのは。約束してくれ・・・
絶対に、自分を最優先にすること。絶対に、諦めないこと。そして・・・
絶対に、大切な人を見捨てないこと、できるか?」
「うん。絶対に・・・守るよ。お兄ちゃん・・・」
「そうか・・・安心した。」
士郎は、笑っていた。
普段は、あまり笑うことが無かった士郎の満面の笑みが、そこにあった。
「なのは、これが俺ができる最後の応援だ。
具現化開始<<トレース・オン>>」
そう言うと、士郎の胸の辺りが輝き徐々に一つの形になっていく。
それは、黄金の鞘だった。
「お兄ちゃん、これは?」
「なのは、これはな、"|全て遠き理想郷(アヴァロン)"っていう鞘だ。
これを、なのはに渡すよ。」
「アヴァ、ロン・・・」
なのはが、それに触れいるとなのはの中に入っていった。
「あれ、消えちゃった?」
「大丈夫だよ、なのは。
"|全て遠き理想郷(アヴァロン)"は、なのはの中にあるよ。
きっと、"|全て遠き理想郷(アヴァロン)"がなのはの為になってくれるよ」
「お兄、ちゃん?」
「ごめんね、なのは。
今は、少し眠いんだ・・・」
「う、うん。それじゃあ、お外に出てるね・・・」
そう言って、なのはは、部屋の外に行った。
部屋に残った士郎は、まるですぐ傍に誰かいるかのように、独り言を呟いた。
「親父、ごめんな。俺、正義の味方になれなっかったや・・・
でも、いいよな。俺の夢は、なのはが引き継いでくれた。
きっと、なのはなら俺たちみたいに為らない。そして、きっと俺たちが叶えられなかった事を、
叶えるよ。
なんか安心してきた。親父も、俺が代わりに正義の味方になるって言った時も、この感じだったのか?
親父、俺は、もう頑張らなくても、いいよな?」
そう言って、士郎は目を閉じた。
ここに、一人の男の物語が終わった。
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高町家の末っ子"高町なのは"には、大きな夢がある。それは、"大切な人を守ることが出来る正義の味方"になる事である。この夢は、高町家の居候だった青年"衛宮士郎"から、受けついた夢だ。正義の味方を目指す魔術師見習い"高町なのは"は、ある日、"魔法"の力を得る。(このなのはは、運動音痴ではありません。また、Fateの方でも、作者が独自の設定が入っている為、「ありえないだろ、これ………」と、思うところがあるか知れません。そこは、大きな心で見逃して下さい………)