No.446415

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~赤き狂戦士~

時空管理局特務殲滅部隊---通称「インフェルノ」。そこには管理局員、次元犯罪者の両方が「赤き狂戦士」と恐れる青年が所属していた。そんなある日彼は、インフェルノの部隊長の命を受け新しく設立された部隊「機動六課」に異動する事になり、狂喜的な笑みを浮かべ素直に異動を受諾する・・・彼の笑みは何を意味するのか?

2012-07-05 13:49:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1083   閲覧ユーザー数:1060

 

第二章 始まり

第二十二話「地球出張任務5」

 

 

 

「「「ごちそうさま!!」」」

食事をすませた六課メンバーと現地協力者メンバーが片付けを始める。

その中には先ほど翠屋で別れたばかりの美由希とハラオウン家から来たアルフとエイミィ

が混じっていた。

あのヴァンとハーナが争っている際に実は、差し入れを持ってくるのもかねて3人で車で来たのだ。

 

 

「さて、サーチャーの様子を監視しつつ、お風呂済ませとこか」

「「「「はいっ!!」」」」

「風呂だァ?あのコテージに風呂なンざあったかァ?」

 

 

コテージの室内を一通り確認していたヴァンははやての言葉を怪訝に思い聞き返す。

 

確認した中には浴室などあのコテージにはなかったからだ。

 

 

当然風呂に入りようがない。

 

 

「ああ、隣の湖で皆仲良くジャボンかァ」

 

「んなわけあるか!!銭湯に行くんよ」

 

なんだ、と本気で残念がるヴァン。

 

そんな彼に女性陣は汚らわしい物を見る目を向けている。

 

 

「銭湯ですか・・・私は初めてですね」

 

「そうなん?ならハーナちゃん運がええな~。初銭湯が今から行く銭湯で」

 

「???」

 

 

 

何が運がいいのかと思うハーナ。銭湯の存在は知識としては知ってはいる。

なのではやての言葉が理解できないのだ。

 

ただ少し大きめの風呂に入るだけで、どこが運がいいのかと思ったのだ。

 

 

「行けばわかるよ、ハーナ」

 

「すっごく気持ちいし、きっとハーナちゃんも気に入ると思うよ」

 

 

ますますわからなくなる。だが、同時に彼女達の言葉でハーナは少しづつ銭湯に対する興味が

湧いてきていた。

 

 

「さて、機動六課一同。着替えを準備して出発準備っ!」

 

「これより、市内のスーパー銭湯に向かいます」

 

「スーパー・・・」

 

「セントウ・・・?」

 

 

銭湯の事を知らないスバルとティアナは首をかしげる。

 

エリオとキャロも同じような感じだ。

逆に銭湯の事を知っているなのは達は、これから行くスーパー銭湯の事を思い出し、心躍らせている。

 

 

「スーパーねェ・・・面白そうだなァ。さっさと行こうぜェ」

 

 

なのは達の様子を見てヴァンもスーパー銭湯に対して少しだけ興味を持つ。

 

実は彼は大の風呂好きだったりする。

 

その度合いはマニア級で、かつて彼が隊長兼艦長も務めていた戦闘用次元航行艦アスカロンに

温泉を付けるくらいだ(その時の経費は彼の自腹で、0の数は6だったりする)。

 

 

 

「は~い、いらしゃいませ~。海鳴スパラクーアへようこ・・・・団体様ですか~?」

 

「えっとぉ・・・大人14人と・・・」

「子供は4人です」

 

「あン?」

 

 

そこで再び疑問を持つヴァン。どうやらフェイトの子供が4人という言葉に引っ掛かったようだ。

 

「フェイト。子供の人数間違えてンじゃねェかァ?エリオとキャロとリイン、アルフ、ヴィータンで

5「ちょと待てよ」どうしたヴィータン?」

 

 

子供の人数を手で実際に指差し数えていると、ヴィータがヴァンに話し掛ける。

 

何故か顔が引きつっている。

 

「オイ、お前今、私を子供の中に入れなかったか?」

 

「ン?入れたが何か問題あるかァ?」

 

「私は大人だ!!お前よりもずって年上だぞ!!」

 

 

ムキになって言うヴィータ。

 

だが逆にその姿で大人だと言っても説得力がない上にさらに子供らしさに磨きがかかっている。

 

 

「(いやァ・・・幾多の時を転生を繰り返した夜天の書の守護騎士だろうと俺様よりは歳下なンだがなァ・・・)」

 

「いいか?私は大人だぞ」

 

それだけ言うとヴィータは店員に自分は大人料金だと主張を始める。

若干困りながらも、最後はヴィータの主張どおりにする。

そしてヴァンはこれで終わったら、自分ではないと思い必死にヴィータにかける言葉を考える。

・・・そして閃いた。

 

 

「あンまり怒るとシワが増えるよ、ヴィータお婆ちゃん」

 

 

 

ピキ

 

 

 

 

 

 

 

ふとそんな何が弾ける音がその場にいる者の耳に入った。

 

発信源はヴィータからだった。

 

 

 

同時にゆっくりと顔をヴァンに向ける。

 

 

「テ、テメェ・・・ついに言ってはならない事を口にしたな?」

 

 

「♪えー?別にボクチンナニも言ってないよォ~ヴィータお婆ちゃん♪」

 

 

 

ビキビキ

 

 

 

 

さらにヴィータからさっきと同じ音が聞こえてくる。

 

そしてゆっくりとした動きで彼女は自分の首にかけている待機状態のグラーフアイゼに手を伸ばす。

 

 

「ヴ、ヴィータちゃん?多分無理だろうけど抑えてね?一応言うけどここ管理外世界だよ」

 

 

 

「うっ!くく・・・!!」

 

 

なのはの言葉で必死に怒りを抑えようとするヴィータ。

物凄い形相だ。歯を食い縛ってまでいる。

一同がどうなるかヒヤヒヤしながらヴィータを見ている。

 

そして皆の思いが届いたのか、最後はフーと息を吐いたり吸ったりを繰り返し、

なんとか爆発を抑えこんだであった。

 

そんな彼女を見てヴァン以外のメンバーはこう思った・・・

 

身体は子供でも頭脳は大人!その名は・・・鉄槌の騎士ヴィータ!!

 

 

・・・と。

 

 

「あ、はい!ではコチラにどうぞ!」

 

 

そんな空気の中店員がヴァン達を浴場へと案内する。

 

実はヴァンとヴィータの会話からずって苦笑気味だったりする。

 

 

「お会計しとくから先に行っててな」

 

 

会計をはやてがするという事で全員が先に進む。

 

 

「良かった・・・ちゃんと男女別だ・・・」

 

「広いお風呂だって。楽しみだね、エリオ君!」

 

「あ、うん。そうだね。スバルさん達と一緒に楽しんできて」

 

「えっ?エリオ君は?」

 

「えっ?!ぼ、僕は、ほら、一応男の子だし・・・」

 

 

狼狽しまくりのエリオ。

 

見るからに顔が赤い。

 

なんとかこの話の抜け穴を見つけたいようだ。

 

 

だが・・・

 

 

 

「うん・・・・・・でも、ほらっ、あれ!」

 

 

キャロが指差す方向を見る。

 

そこには入浴施設の利用規定が書かれていた。

 

 

そこに書かれている内容は

 

「女湯への男児入浴は11歳以下のお子様のみでお願いします」

 

というものだった。

 

エリオの現年齢---10歳・・・なんという伏兵だ。

 

この利用規定を利用すれば11歳未満の子供は女湯へ入りほうだいだ。

全ての男性が11歳にはなるが、やはりこういったラッキールールは全ての男には

最高のイベントだろう。

 

いや、そうに違いない。

 

だが純粋なエリオにはこの規定とキャロの誘いは地獄の苦しみだ。

 

そしてそんな余裕がなくなってきたエリオにフェイトが追い討ちをかけるように、言葉をかける。

 

 

「せっかくだし、一緒に入ろうよ?」

 

 

「フェイトさんっ!!」

 

 

まさかの援軍にキャロが感激の声を上げる。

 

確実にじわじわと逃げ道を断たれて行く。

 

 

「い、いいや、あああのですね!そ、それはやっぱり、スバルさんとか隊長達とかアリサさん達

もいますしっ!」

「別に私はかまわないけど」

 

「って言うか、前から頭洗ってあげようかーとかいってるじゃない?」

「うっ、ぐっ」

ますます追い詰められる。

 

「あたしらも良いわよ?ねっ?」

「うん」

 

「いいんじゃない?仲良く入れば」

「・・・貴方はまだ子供なのでそこまで考えなくてもいいのでは?」

 

「そうだよ。エリオと一緒にお風呂は久しぶりだし・・・入りたいなぁ」

 

 

大人の余裕。これはもう尊敬に値します。だがそんな大人の余裕はエリオを追い詰めて行くと同時に

男としてのプライドを傷つけていく。

だがそれでもエリオは諦めない。

 

「あ、あ、あのっ!お気持ちは非常に・・・なんですが・・・すみません!!

遠慮させていただきます!!」

 

「「えっー」」

 

フェイトとキャロが本気で残念がる。

また、その時の二人の顔が余りにも男であるエリオには非常にくるもので若干揺らいでしまう。

 

だが彼はここで起死回生の切り札を見つける。

 

 

「そ、そうだ!!ヴァンさんと一緒に入ります!!」

 

 

そう、彼はこの中で唯一同性であるヴァンの存在を思い出し、

この場で彼の名を救世主かのように叫ぶ。

 

 

そしてヴァンを見るエリオ・・・だったが・・・

 

 

「うばばばばば!!こいつっあいいなァ。肩の疲れが取れる取れるゥゥゥゥ」

 

 

だがそんな救世主は休憩室にあるマッサージ機に座り、すっかりくつろいでいる。

 

しかもまだ風呂にも入っていないのに、いつの間に注文したのか、巨大なフルーツたっぷりの

トロピカルジュースまで飲んでいる。

 

 

「あァァン?どォォォしィィィィたァァァァ?」

 

 

震動で声が震えている。幸いな事にヴァンはエリオの視線に気付きエリオに声をかける。

 

あまりのヴァンのくつろぎっぷりに目が点になっていたエリオだったがヴァンの下に行き、

彼を無理やり引っ張り立たせる。

 

 

「オ、オイ?なンだよ?まだ利用時間の半分も使ってねェーぞ?」

 

 

とさっきまでエリオ達が話していた内容を知らないヴァンは突然マッサージ機から立たされてワケが分からず自分の後ろで自分を押すエリオに声をかける。

 

 

「ほらっ!ヴァンさん!早くお風呂に入りましょうよ!」

 

ヴァンを男湯へと押していくエリオ。よくそんな小さい身体で大きい身体のヴァンを動かせるものだ。

これも訓練の賜物なのだろう。

 

 

「エリオ、テメェ!俺様はまだ、トロピカルジュースまだ飲ンでねェーンだぞ!?せめてあの

ドリアンだけでも食わせろ!!三千円もしたンだぞあれ!?」

 

「なんでそんな高い物をいきなり買って飲んでるんですか!?それよりほらっ!!

お風呂が僕達を待ってます!!」

 

「風呂が俺様達を待ってるワケねェーだろ!?」

 

 

エリオがボケ、ヴァンがそれに対してツッコムというあり得ない事が起こっいる。

そしてそのままヴァンはエリオに物凄い速度でヴァンを押して言った。

 

「むっ・・・行っちゃった・・・」

 

男湯の入り口を見ながら残念そうに呟くフェイト。

母親としては子供と一緒に入りたかったのだろう。

 

そしてその後すぐに、シャマルがロッカーを確保したと知らせ、女性陣は女湯へ移動を始める。

 

 

「・・・えーとっ」

 

 

 

もう一度注意書を読むキャロ。そして彼女はそこである事に気付き笑顔になる。

 

 

「ふふふ!!」

 

 

キャロの笑みは一体何を意味するのか?

 

 

 

 

 

---------------------------------------------

 

 

 

男湯の脱衣所では何故か涙目のエリオがいる。

 

大方、無理やり連れて行かれた事で怒ったヴァンに拳骨をもらったのだろう。

当然トロピカルジュースは持ってきてはいない。

三千円は無駄になったのだ。

 

だがいつまでもそれを気にするほどヴァンは小さくはない。

今ではこういう公共の場が初めてのエリオに、ロッカーの使い方や風呂の入り方などを教えている。

服を脱ぎ浴場に入る。

 

時間帯が良かったのかほとんど人はおらず、ほぼヴァンとエリオの貸し切り状態になった。

 

 

「は~い、どうぞ」

 

「ありがとうございますっ」

 

シャワーがある場所まで移動している最中にそんな声が二人の耳に入り、二人は後ろを振り替える。

 

 

「「あン?(は?)」」

 

 

そこにいた予想外の人物に思わず声をあげてしまう。

 

エリオは既に顔は真っ赤だった。

 

それもそのはず。女湯へ行ったと思っていたはずなキャロがタオルに身を包んで男湯にいるからだ。

そして唖然としている二人の下へ下心のない純粋な笑みを見せ、嬉しそうに二人の方ふ向かってくる。

 

 

「エリオ君、ヴァンさん!」

 

「キャ、キャキャキャキャロ!?」

 

「おおっ!エリオ、お前ラップの才能あるンじゃねェーかァ?」

 

「そ、そんな事言ってる場合ですか!?な、なんでキャロが!?」

 

「???」

 

 

赤くなりながらも必死にヴァンにツッコミを入れる。

 

だが完全にパニックにエリオは陥っている。

 

 

「キャ、キャロっ・・・ふ、ふふ、服っ!」

 

「うん女性用更衣室で脱いできたよ?エヘッ。だからほら、タオルを・・・」

 

「見せなくていいからぁぁぁ!!!!」

 

 

パニックになっているエリオが絶叫に近い声でキャロの行動を止めるように話す。

 

 

「うんまァ、あれだなァ・・・カオスだなァ」

 

 

目の前で行われているエリオとキャロのやりとりを見て思った事を口にする。

 

もしこの場にヴィータがいたらお前が言うなと間違いなくツッコまれているだろう。

 

「あ、エヘヘ、ごめん」

 

「ていうかっ・・・こっち・・・男性用っ!」

 

「女の子も、11歳以下は男性用の方に入っていいんだって。注意書にも書いてたし、

係の人が教えてくれたから」

 

「なるほどなァ。オマエ意外と行動力があるなァ」

 

「???」

 

 

ヴァンの言葉で首わかしげるキャロ。

子供にはヴァンの言葉がわからないようだ。

 

これだけの行動力が世の中の女性にあれば、きっと婚活などという名ばかりの

合コンに近いものなど必要ないだろう。

 

そして少子高齢化などという社会問題も無くなるだろうに。

 

と内心そう思いながら2人をシャワーの方へ促すヴァンであった。

 

 

 

--------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

「うはぁ~幸せぇぇぇ~」

 

 

「アンタなんて声だしてんのよ?」

 

 

数ある風呂の中で滝湯に浸かり、すっかりリラックスしているスバル。

 

その幸せそうな声にツッコミを入れるティアナ。

だが彼女も湯の気持ち良さをきっちり堪能して、気を抜けばスバルのような声を出すかもしれない。

 

「気持ちよすぎて、あの世に逝きそうですぅぅぅ~」

 

「にゃはは、本当に渡ったちゃったらダメだよ?」

なのははスバル達が入っている湯の中に入る。

その後からはやてとフェイトも一緒に入ってきた。

 

美女ばかりの集まり・・・まるで天女が入浴しているようである。

 

 

「あの~なのはさん」

 

「何?スバル?」

 

「なのはさんとヴァン副隊長って付き合ってるんですか?」

 

 

「ふうぇ?!あ、あぶくぶくぶく・・・」

 

 

スバルの不意討ちな発言に思わず動揺し、湯の中に顔事浸かってしまう。

 

「ちょ、バカスバル!!またアンタ!!」

 

「す、すみません、なのはさん!!」

 

またと言うのは、おそらくヴァン達の歓迎会の事だろう。

その時に、スバルはハーナに同じ質問をし、物凄い冷たい視線をハーナに送られ思わず恐怖したのだ。

 

ちなみにその時のハーナの解答は否だった。

 

 

「に、にゃはは。いいよ、いいよ。で、どうして私とヴァン君がその・・・付き合ってると思ったの?」

 

 

「えと・・・何となく雰囲気で・・・」

 

 

おずおずと応える。

 

その隣でティアナが呆れてしまっている。

 

 

「確かに・・・スバルの言う事にも一理あるなぁ」

 

「は、はやてちゃんまで!?」

 

「ごめん、なのは。その・・・私もそう思う」

 

 

まさかの幼なじみ二人からの指摘に完全に取り乱しているなのは。

部下の前でそうなるのはどうとか今はそんな事を考えている余裕はない。

 

 

「じ、じゃあ、皆は何でそう見えたの?」

 

「なんでって聞かれたらね・・・」

 

「やっぱり、なのはちゃんがヴァン君と話してる時が一番いい例えちゃうの?」

 

「ど、どうして?」

 

 

はやてはからかう気は一切ないのかわりと本気で考えて話している。

 

それでなのはも真剣な面持ちではやてへ尋ねる。

 

 

「だってな。なのはちゃんのヴァン君と話している時の顔ってめっちゃ楽しそうなんやもん。

そうや!!バカップルみたいなんや!!」

 

「バカップル!?」

 

はやての発言でもう完璧に動揺を隠せないなのは。

 

「私はさっきなのはに言った事が答えかな?もう周りからはそう思われちゃってるんだし、

いっその事この際思い切ってヴァンに告「フェイトちゃん!!」ムググムグ!?」

 

 

バーベキューで二人で話した事となのはが気付いた感情の事を話そうとしたフェイトの口を

迅速で封じる。

 

それでフェイトは自分が危うくとんでもない事を暴露しようとしていた事に気付く。

 

(ごめん、なのは!つい・・・)

 

(もぉ~フェイトちゃん!!後でお話だよ?)

 

 

念話でなのはにフェイトは必死に謝るが、結局お話される羽目になってしまう。

小学生の時国語で習った「口は災いの元」ということわざを思い出し、

今度から気をつけるように決意を決める。

 

 

 

「あれ~?なんか怪しいな2人ともぉ~?さては何か隠しとるなぁ~?」

 

 

当然今のミスをはやてが見逃すはずはない。

 

 

さっきと違い、今はからかう気満々の表情でなのはとフェイトを見ている。

 

 

「あ、えっと、私はちょっと別のお風呂に行って来るね?」

 

「えっ!?ちょ、待ってよなのは!!私も!!」

 

浴槽から出たなのはについて行こうとするフェイトだが、腕をはやてに掴まれ動けない。

 

(ごめんね、フェイトちゃん)

 

「な、なのは~」

 

 

念話で謝り、さそくさ別の風呂に向かう。

 

そして近くにあった「露天」と書かれた扉を開けてそこに入る。

 

はやての玩具にはなりたくはないのだろう。

 

一方、そんななのはにはやてへ生け贄に捧げられたフェイトは・・・

 

「さぁ白状するんや~」

 

 

「や、やめてぇぇぇ!!」

 

 

乳揉み狸へと化したはやてに胸を揉まれていた。フェイトが落ちるのも時間の問題か?

 

 

 

 

 

 

-------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~・・・任務中にここまで楽してんのはこれが初めてかもしれねェなァ」

 

 

両手を石垣にかけ、頭にタオルを乗せ湯を堪能しているヴァン。

彼は今湯けむりたっぷりで乳白色の湯の風呂に浸かっている。

エリオとキャロは最初にいた風呂場までは一緒にいたが、たじたじのエリオを見たヴァンはエリオを

さらに困らせる為に念話でキャロに子供用の露天風呂に行くよう仕向け、

今は一人全年齢使用可能な露天風呂に入っている。

 

 

「しかも誰もいないと来たモンだァ。これで酒までありゃあ文句はねェが、今日は我慢だなァ」

 

バーベキューの時もそうだが、一応今は任務中だ。流石に彼でも任務中には酒を飲んだりはしない。

 

まぁ自由奔放なのは変わらないが・・・

 

 

「さァーてェ・・・上がってコーヒー牛乳でも飲むかァ」

 

長い時間入っていると、やはり水分が欲しくなる。

身体が水分を欲しがってると感じ、彼は風呂から出ようとした。

 

 

「えっ!?ちょ、ヴァン君!?」

 

「なのは?・・・・・・・ナニっ!?」

 

思考停止に一瞬陥ったヴァンだがすぐに今、自分が立たされている状況を理解する。

お互い沸きだす湯気で身体全身は見えない。

 

なのはにとっては感謝このうえない状況だった。

 

 

「オイオイ・・・なのは、オマエいつからそンな奴になったンだよ?よもや男湯へ乗り込んで男の裸を

そンなに見たいのかよ?」

「そ、それはこっちのセリフ!!ここは女湯だよっ!?」

「ああン!?ナニ寝呆けた事抜かしてやがる?俺様は男湯から来たンだよ」

「ふぇぇ!?」

 

しばらく言い争う。

 

お互いに何がなんだかわからない状況に困り果てる。

だがどちらも相手が嘘をついているとは思えず、何故にこのような状況になっているかを

よく考え始める。

 

「なるほどなァ・・・どうやらここは混浴みてェだなァ・・・」

「そ、そうみたいだね・・・」

 

ヴァンが考えた内容を口にし、なのはもそれに納得する。

 

そして面倒くさそうにため息を吐き、上がって言い争っている間に身体が冷めてしまった為に

もう一度、湯へ浸かり直す。

 

「ほら、テメエも入れ。俺様より湯に浸かってなかったはずだァ。身体を温めろよ・・・」

 

 

とりあえずそうなのはに話し、なのはもコクっと頷き、少し離れた場所から湯へ入る。

 

「はァ~気持ちいいなァ~」

 

「・・・私の裸見てもうそんな態度なんだ・・・」

 

 

すぐさま、湯を堪能し始めたヴァンに呆れるなのは。

 

女心からすればもう少し恥ずかしがってほしかったのだろう。

 

 

「言っとくが俺様は何も見ちゃいねェーよ。誠に残念だがほとんど湯煙で何も見えなかったよ」

 

「誠に残念って・・・ヴァン君のエッチ・・・」

 

 

恥ずかしがりながらそう話すなのは。だが、今のヴァンの発言が少しだけ嬉しかったのか、

実は内心喜んでいたりする。

好きな相手に自分の裸を見れなかったから残念だと言われれば、複雑ではあるが嬉しものだろう。

そしてその会話を期に、2人は何も話さなくなる。

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 

「(どうしよう・・・さっきあんな話ししたばかりだから変に意識しちゃう・・・)」

 

必死に言葉を考えるがやはり何も浮かばない。

それどころか、さっきはやて達に言われた事を思い出し、さらに考えられなくなるなのは。

 

「オイ・・・」

 

「は、はいっ!!なんでしょう?!」

 

何故に敬語?と思いながらも続きを話す事にするヴァン。

特に彼は緊張していない様子。

 

 

「前にも言ったがオマエ、彼氏とかいねェのかァ?」

 

「い、いきなり何?」

 

本当にいきなりすぎて、さらに頭が混乱する。

 

だがあえて緊張をほぐす為になのははその話しに乗ってみる事にした。

 

 

「・・・いないよ。今までそういった感じの話は全然ないんだよねぇ」

 

「そォーかァ。なンか意外だなァ。オマエならいくらでもそンな相手がいても可笑しくないンだがなァ」

 

「い、いや・・・私ってほら・・・わがままだからさ、だからきっとそれで男の人も寄り付かないんだと思うよ・・・」

 

 

自分で言ってしまい、だんだんと泣けてくるなのは。

ヴァンの顔を見るが彼は今、石垣に後頭部を乗せ、目をタオルで隠している為にその表情は見えない。

 

「・・・それに、私は一度落ちちゃってるかさ・・・いつまた落ちるかもしれない私と付き合っても相手の人が可哀相だよ。きっと私のせいで悲しい思いをする人が出ないように、神様がそうしてるんだよ・・・」

 

「・・・・・・・・」

再び2人は沈黙する。しかし、なのはは今の会話で緊張が大分抜けていた。だが代わりにやり場のない悲しみが彼女の中をかけめぐる・・・

 

「(なんでこんな話始めたんだろう・・・)」

 

よくよく考えれば、こんな話をしてしまえば、気まずくなるのは当たり前だ。誰だってどう声をかけたらいいかわからなくもなる。

 

だがヴァンだからこそ、何か言ってくれるのではないかと思いなのはは話したのだ。

 

「(何、私は期待してるんだろう・・・)」

 

これじゃ誰かに励ましてもらいたいと言ってるようなものだよ。

自分らしくないと感じ、とりあえずヴァンの下から離れる事を選択する。

 

これ以上彼と一緒にいると弱い自分を見せてしまうと思ったからだ。

 

 

湯船から離れるなのは。

 

 

「のぼせそうになっちゃったから先に上がるね」

 

タオルで目を隠したヴァンにそう言い残し、露天風呂を後にしようとする。

 

 

 

「・・・神サマは諦めない奴に手を貸すンだぜェ」

 

「えっ?」

 

 

扉に手を掛けた時にヴァンがなのはに声をかける。

 

体勢はさっきのままだ。なのは少しだけ後ろに戻る。

 

 

「確かに世の中理不尽な事ばっかで、なンでこンに世界は歪んでンだって思う事もある・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「だがなァ、それで卑屈になンのはダメなンだよ。

どんなクソ見たいな運命さだめだろうとなァ・・・」

 

 

「・・・ヴァン君はもし、これから先にどんなに足掻いても逃れられない

運命が待っていたらどうするの?」

 

 

「らしくない事を言うなァ、なのは?」

 

「えっ?」

 

自分らしくないとはどういう意味だろう?彼はどこでそう思ったのかと考える。

悩んでいるなのはに、ヴァンは顔を向ける。

 

「俺様の前にもし、うざってェー運命があるンなら、俺様は戦うぜ。戦って戦い抜いて、その先に何があろうと決して諦めねェ・・・諦めないその心こそが最大の武器になるンだからなァ」

 

「・・・諦めない心が最大の武器・・・」

 

「お前も似たような事をいつも言ってるだろォ?・・・全力全開でやるってなァ」

 

 

「あっ・・・」

 

 

ヴァンにそう言われ彼が自分らしくないと言った意味を理解する。

そうだ・・・私はいつも、どんなに諦めたくなる状況でもいつも全力全開で走り抜いてきたんだ。

 

ようやくそれに気付いたなのはにヴァンは軽く笑いかけ、タオルを巻き、なのはの隣を通りすぎる。

 

 

「だからさァ、お前が望むならお前の事を好きな奴は絶対に近づいてくると思うぜェ・・・ようは気持ちの持ちようなンだよォ」

 

 

なのはの隣を通りすぎ、露天風呂の扉に手をかける。

 

そこで彼は背中に違和感を感じた。

何か温かく、そして柔らかい感触が彼の背中を支配する。

 

それがなんなのか、確認する為に振り返る。

 

 

そして思わず笑ってしまった。

 

 

「オイオイ・・・また演技か何かかァ?」

 

 

 

背中にある感触の正体に話し掛ける。

 

 

 

そしてそれはさらにヴァンの腹部までに届く。

 

 

 

「にゃはは、今度は演技じゃないよ・・・ごめんね、嫌だろうけどちょっと、しばらくこうさせて」

 

 

なのははヴァンの背中から抱きつき、自分の手を彼の腹部まで持っていき、握りしめる。

 

 

「嫌じゃねェーよォ。早くしろとは言わねェーがァ、手短になァ」

「ありがとう・・・ヴァン君・・・今日はなんだか優しいね・・・」

 

「そりゃどうもォ」

 

ヴァンも自分の腹部にある彼女の手を握る。

 

お互いに心休まる感覚が身体を伝ってくるのを感じながら、二人はそのまま動かなくなる。

 

他人にこの状態を見られたら勘違いされるのは百の上も承知している。

 

 

だが今の二人・・・特になのははそんな事は関係ないと思っている。

 

 

 

・・・この時間だけは誰にも邪魔されたくない・・・私が私として頑張れる力をくれる時間・・・

家族とか友達とはまた違う意味での大事な人・・・だから今は彼の傍にただいたいんだ・・・

こんな弱い自分を、今だけは許してね・・・ヴァン君?

 

 

「・・・・ああ」

 

 

聞こえるはずのない彼女の心の声にまるで聞こえているかように返事をする。

 

そして彼のその時の表情は狂気でもなければ破壊者としての顔でもない、

慈愛に満ち溢れた表情・・・・・・・見る者によっては救われぬ者に

手をさし伸ばす天使のように見え、

 

優しく神々しい姿だった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~赤き狂戦士~

BAD END

 

「オイ・・・」

 

「は、はいっ!!なんでしょう?!」

 

何故に敬語?と思いながらも続きを話す事にするヴァン。

特に彼は緊張していない様子。

 

 

「オマエの胸を揉ませてくれねェかァ?」

 

「・・・・・・」

その瞬間、露天風呂から桜色の閃光が突き抜けたという・・・・

BAD END

 

 

・・・・という感じのものを書いてみました。

って今回は一番長い話でした。

 

 

 


 
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