No.446285

亡き少女の理想と共に

流狼人さん

『私は皆が笑って暮らせる世の中にしたい』
たった一つの願いを叶える事が出来なかった少女の墓にたった一人佇む青年。天から招来された彼は何を想い、墓に突き刺さった一つの宝剣を握るのか。

2012-07-05 07:26:43 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4408   閲覧ユーザー数:4085

時は漢王朝末期。農民が黄巾党と呼ばれる賊へと堕ち、略奪等が全国で起き始めたのだ。腐敗した王朝も流石に見過ごす事が出来ず各地の有力者達に黄巾党討伐の御触れを出した事からこの物語は始動する。

 

 

 

とある村。普通の農村で日頃では民達は田畑を耕し、子供達が元気に遊んでいる風景が思い描ける場所であった。少し違うとしたら、其処に噂の人物が『いる』。それだけであった。

 

しかし、その村は今紅蓮の炎となって消え逝こうとしていた。

 

なぜか?

彼らの手にした者は『天の御遣い』という救世主。

 

しかし民達にとっては救世主でも、『漢』の悪政の甘汁を吸い続ける汚職者達には目の上のたんこぶであった。故に全国にこう触れたのだ。

 

 

 

今、黄巾党の盟主こそが天の御遣いなり。かの賊は天の声と偽り賊を諭している。あれが天から遣わされた者であるはずが無い。漢の世を良くする為、『天の御遣い』を討取れ。

 

 

 

~??~

どうして?

『殺せ!天を名乗る偽者を殺せ!』

 

なんで ??

『ここにいるやつ等は洗脳されているに違いない!殺せ!老若男女関係なく殺せ!』

 

こうなった!!

『はん、怨むなら・・・偽の『天の御遣い』を怨むんだな!』

 

 

俺はただ、いきなり訳の解らない場所に落されて・・・そんな俺をやさしくしてくれた皆の力になりたくて『御遣い』を名乗った。

無論、虚勢だけのハッタリだったが御陰で村を襲った賊たちを追い払う事が出来たのだ。でも・・・朝廷が出した御触れのせいで官軍に村を滅ぼされたのだ。

皆も奮戦したが、わずか100の村人と3000の官軍では話にもならず、半日でこの村は消え去った。

 

 

俺は今、井戸の中に身を潜ませていた。ホントは皆と一緒にいたかったが気付いたら井戸の中にいた。身を潜ませていた井戸は余り深くなかったので直に出る事が出来た。

そして見てしまった。村人達の惨状を。

 

家は燃やされ崩れ落ち、村人達が彼方此方で横たわっていた。

 

此れは俺の罪なのか、『天の御遣い』と名乗った罰なのか、俺が弱いからなのか。

 

そんな自問が頭を過ぎらせる。そして、

 

「覚悟!『天の御遣い』北郷

 

“ザシュ”

 

カハ!!」

 

何時の間にか手に持っていた剣で襲い掛かった兵士を殺した。

 

「はは、ざまーねーな。

 

 

 

 

畜生・・・畜生畜生畜生!!なんなんだよ!人が人を助けて何が悪い!人助けに理由があるのかよ!!ふざけんな!!」

 

泣き喚き、怒鳴り散らし少しでも自分の罪を自覚していく。

でも無意味だと自覚できる。

 

『力なきは罪』

 

あらゆる場では力が物を言うものだ。

 

俺には力は無い。兵士を一人二人斬り殺せても十人を一瞬に斬る事等出来やしない。

 

 

だから俺は旅に出る。強くなってやる。そして・・・

 

 

 

 

村人達の墓を作り終え俺は一つの墓に黙祷する。

俺を庇い勝手に死んだ理想家の墓だ。

 

『私は皆が笑って暮らせる世の中にしたい』

 

あいつは常々そういっていた。そしてその世を見る事、創る事無く勝手に逝ってしまった。

 

 

思えば、俺はその為にこの世界に来たのかも知れない。あいつは死ぬ運命だから俺が・・・いや、身勝手な予想はやめよう。

 

 

俺は理想家にして俺を拾ってくれた恩人、一夜を越した仲。何より王の器であった少女の墓に拱手し、

 

「行って来る桃香、劉玄徳。お前の言う皆が笑い合える世界・・・出来る限り早く出来る様にしてくるよ。」

 

そういって背を向け村を後にした。

 

 

『いってらっしゃい。一刀さん。』

 

今は亡き少女の応援を風で感じつつ、彼『北郷一刀』は彼女の遺剣である靖王伝家(せいおうでんか)を携え『劉備玄徳』として旅に出た。

 

後に平和を導いた魔王と語られる、彼の第一歩出会った。

 

御分かりかも知れませんが『奪われた御遣い』のリメイクです。にじファン崩壊に伴い『聖処女』と共に此方に移動させる心算です。また暫く御世話になります。


 
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