No.430189

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第十四話 亡失

果たしてブランの命運は?
続きをどうぞ。

久々バトルシーン書いた…疲れた……。

2012-05-30 19:55:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1036   閲覧ユーザー数:984

現在ラステイション

 

もう既に日は完全に落ちきり、辺りは暗がりに姿を落としていた。

ラステイションの裏通り、ネオンの光もほとんど届かない裏路地の中、その中に4つの影があった。

影の1つ、レオンはその通りの真ん中で退屈そうに立ち尽くしていた。

 

レオン「あーっ、つまんねえ!」

 

思わず感情が声に表れた。

その時、スーツの胸ポケットから機械音が鳴り出した。

無意識のうちにレオンは胸ポケットに右手を入れ、慣れない手つきで相当古い型の無線機を取り出し、右の耳につけた。

 

レオン「俺だ。なんだ、ライか。」

ライ「なんだって何だよ。どうなってんのか心配して連絡したってのに。」

レオン「心配ならあの温室育ちの小娘(ガキ)にでも掛けとけ。」

 

ライの言葉にレオンが鋭く毒づいた。

無線から聞こえるノイズ交じりの声は音の無い裏路地に寂しく響き渡った。

 

レオン「そっちは順調なんだろうな?」

ライ「ああ、さっき終わらせたぜ。」

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

現在リーンボックス

 

 

 

無線機に耳を傾けているライの目線の先には2人の男がうつ伏せに倒れていた。

2人の心臓は既にその機能を停止していた。

一見すればそれはまるで歩いている途中、何かの拍子で急死してしまったかのような整った死体だった。

――その首が180度後ろを向いてさえいなければの話だが。

 

ライ「やっぱあまり良い気分はしねえな……。」

レオン「お前、甘いからな。」

 

ライの言葉にレオンが再び毒づいた。

真剣に言った一言だったのか軽くあしらわれたライの顔は少し苦味を帯びていた。

 

ライ「ひっでーな。そっちは?」

レオン「もう終わってるに決まってんだろ。もう切るぞ。」

ライ「え、ちょt『ブツッ』」

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

無線を耳から離してレオンは傍にある3つの影に目を向けた。

2つは建築物の壁にもたれ掛かるようにして膝を曲げ、地に尻餅を着いている。

もう1つは仰向けに膝を曲げた状態でその場に崩れ落ちていた。

3つの死体の共通点は3つだった。

1つは全員男であること。

もう1つは全員が種類は違えど拳銃を握り締めたまま死んでいること。

最後の1つは全員ミイラ化して死んでいることだった。

肌は完全に干からびて骨が浮き出ており、変色した体からは白い煙が立ち上っている。

その死体全部があたかもずっと昔からそこにあったようにミイラは光をなくした目で不気味に宙を眺めていた。

レオンはしばらく死体を視界に入れると、反転して再び無線機に手を掛けた。

薄暗い闇の中で無線に目を向けながら周波数を合わし、レオンはそれをおもむろに耳に近づけた。

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

現在プラネテューヌ

 

表通りから大分離れた裏路地、その中に金色に輝く美があった。

一見すればそれは夕顔(ムーンフラワー)と錯覚するような美貌の持ち主だった。

抜群のスタイルの元に広がっている中世風の純白のドレスはもちろんのこと、月光を浴びて輝く”貴族”特有の白い美貌が、その少女をまるで幻覚のように見せていた。

だがその妖艶さの裏には血の匂いが隠されていた。

瑠璃色の瞳の奥には血色の炎が燃えている。

唇は血のように赤く、そこには飢えを感じさせる。

吸血鬼の飢えを。

 

「なんじゃ?」

 

美貌の持ち主『ラミーカ』は無線を耳につけながら美しい声を上げた。

 

レオン「そっちは終わったのか?」

ラミーカ「私を誰と心得る? とうの昔に終わっておるわ。」

 

言うなりラミーカは自分の足元に冷たい目線を送った。

ラミーカの足元にはやはり、死体があった。

足元にあるうつ伏せの男の死体は首下に2つの跡があり、全身の血の気が抜けおちて肌の色が蒼白となっていた。

だが辺りには血の一滴も落ちてはいない。

この男がどうやって死んだのかは想像するに容易い。

 

ラミーカ「やはり男の血は濃いが不味い。喉の渇きも潤せぬ。」

 

唇と前歯についた血を指先でぬぐいながら、ラミーカは退屈そうに無線に向けて呟いた。

 

レオン「いちいち食ってんじゃねえよ。」

ラミーカ「貴様に口を出す権利など無い。お前はお前の仕事をこなしておればよいのじゃ。」

レオン「あーそうさせて貰うぜ!『ブツッ』」

 

ラミーカの言葉に反応してレオンは強引に無線を切った。

鼻で笑いながらラミーカは身を翻し、右手を目の前に突き出した。

目を瞑り、しばらく何かを念じると、右手を中心に何やら黒い空間が形成された。

躊躇せずラミーカはその中へと歩みを進め、その身を完全にその空間へと落としていった。

 

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

 

現在ルウィー

 

銀色の粉粒が舞うルウィーの町外れの中をエスターは嫌々に歩いていた。

向かう先は昨日、エスターが惨殺した犯罪組織の隠れ家の倉庫だった。

とは言えエスター本人の気は進まなかった。

先日の出来事で犯罪組織のメンバーはどうも自分にとって物足りない事を痛感していたからだ。

大して強くも無く、またいい声で泣く訳でもない(これはあくまでエスターの価値観なのだが…。)人間の討伐はエスターの好奇心を少しも駆り立てはしなかった。

いっそこのままエスケープしてやろうかと考えを巡らせながらも、目の前には昨日と同じ場違いの倉庫がそびえ立っていた。

 

エスター「チッ。」

 

扉をなくした倉庫に向かって舌打ちをしながらエスターはポケットに両手を突っ込んで薄暗い倉庫の中に足を踏み入れた。

倉庫を見回すエスターの目には1つの人影があった。

影は明らかに先日の犯罪組織のそれとは異なっていた。

その影が小振りなことは薄暗い倉庫の中で遠目で見ても明らかだった。

最初、エスターは夜更かしして遊んでいる子供かと思い、ため息をつきながら近づいた。

だが暗闇に目が慣れ、影との距離が近づき、影の正体が分かると同時にエスターの顔には驚きと疑念、そして狂気が舞い降りた。

不気味に頬を吊り上げながらエスターは自分に目を向けている影に向けて口を開いた。

 

エスター「犯罪組織の残党がいるかと思ったら……随分とかわいいのがいたもんでさァ。」

 

影の持ち主、ブランは依然としてエスターを見続けている。

エスターとブランの距離が2m程に近づき、エスターが歩みを止めたとき、ブランは初めて静かに口を開いた。

 

ブラン「あなた……何者?」

エスター「俺ですかい? 俺はエスター、まあ、てめえがここにいるって事は昨日犯罪組織とかいうメンバーを殺した男。って言った方が分かりやすいですかい?」

ブラン「!!」

 

エスターの言葉にブランの顔に驚愕と緊張が走った。

その表情の変化を見逃さなかったエスターは薄ら笑いを浮かべながら口を動かした。

 

エスター「どうした? てめえを殺した相手が犯人じゃなくて驚いたんで?」

ブラン「!!!てめえ、何で……」

 

言いかけてブランはとっさに声を止めた。

鼻で笑うエスターにブランは鋭い視線を送った。

睨まれたエスターは怖がるどころか一層に口元を吊り上げながらブランの周りを歩き始めた。

 

エスター「図星ですかい? 残念、復讐にでも来てたんですかい?」

ブラン「!! 違う! そんなつもりじゃ……。」

エスター「無かった。なんて言い切れるんで?」

ブラン「……。」

 

ブランは言葉を失った。

目の前の男の言葉の全てを否定できない自分がいる。

それが嫌で嫌で仕方なかった。

エスターはかまわず歩きながら続けた。

 

エスター「プラネテューヌの女神も気の毒でさァ。この世界のためとか言ってゲハバーンで女神の命を奪って世界を救い、今じゃ他の女神から敵視されてる。あと一歩でてめえも同じ立場だったのに、アホ臭。」

ブラン「……。」

 

うつむいたまま、ブランは黙ってエスターの言葉を聞いていた。

挑発的なエスターの口調はさらに激しさを増した。

 

エスター「てめえ、怖いんだろ? 実際にそいつと会うのが。俺を見たときに少し安心してましたぜ? ああ、最初からそいつのことなんてどうでも良かったとか? 自分が傷つくのが怖くてそいつを傍においておk『うるさい』あ?」

ブラン「うるせえって、言ってんだよおぉぉおおお!!!!」

 

叫びながらブランの体は白い光に包まれた。

光が収まると同時にブランの、否ホワイトハートの手には巨大な斧が、服装は白いスクール水着のような形状に、髪は青みがかった銀髪へと変貌した。

目の前のエスターを睨むよりも先にホワイトハートは地面を蹴って前に出た。

直後にエスターをめがけて躊躇無く斧が振るわれ、バゴンと音を立ててクレーターを形成した。

だがエスターはすでに軽く横に跳躍し、斧での一撃を避けていた。

ホワイトハートは再びエスターを睨みつけ、力任せに何度も斧を振るった。

 

エスター「ホントのこと言われてキレたんで?」

 

笑みを浮かべて斧をかわしながらエスターはブランに更なる挑発をかけた。

ギリリと奥歯をかみ締めながらホワイトハートはさらに攻撃の手を激しくした。

 

ホワイトハート「うるせえんだよ!! もう元に戻んねえことなんて分かってんだよ! だから私は、私はあああぁぁぁああああっ!!!!」

 

縦横無尽に斧を振り回しながら感情任せにホワイトハートは言い放った。

だがホワイトハートは気付かなかった。

その言葉がエスターの表情を変えたことに。

突如エスターはかわす動作を止めた。

諦めたのかと思いながらホワイトハートは斧をエスター目掛けて振り下ろした。

だがエスターを真っ二つにするはずだったその斧はエスターの上げた右掌の中で停止していた。

 

 

ホワイトハート「なっ! ぐあっ!」

 

刹那、ホワイトハートの体は斧ごと何か(・・)によって宙に飛ばされた。

ホワイトハートはそのまま壁に叩きつけられ、力なく下にずり落ちた。

壁にもたれてへたり込んだ状態のまま、ホワイトハートはうつろな目で前を確認した。

その瞬間、ホワイトハートは目を疑った。

自分を飛ばしたエスターが既に自分の目の前にしゃがんでいたからだ。

 

ホワイトハート「なっ、てめ、ぐっ! ぐああっ!!」

 

ホワイトハートが言い切る前にエスターの右手はホワイトハートの首を絞め付けていた。

とっさにホワイトハートは斧から手を離し、エスターの右腕を両手でつかんだ。

だがホワイトハートがいくら力をこめてもエスターの右腕はピクリとも動かなかった。

 

ホワイトハート「畜生……離、せっ……ううっ…。」

エスター「てめえに……何が分かるってんだよ。」

 

必死にあがくホワイトハートを締め付けながらエスターは狂気のこもった瞳で睨みつけていた。

表情は一変し、その顔からは先ほどの笑みは一切消滅していた。

鬼の形相でエスターは再び口を開き始めた。

 

エスター「何も失ってねえてめえに何が分かる? 俺の大事なもん全部奪っていったてめえら女神なんかに何が分かるってんだ!!! てめえらのせいで俺達は生きる場所を失った! 特にルウィーの女神、てめえのせいであいつは死んだ!!……てめえを今すぐぶち殺すことなんざ簡単に出来るぜ。ああ、殺してえ! 首へし折って、体切り刻んで、内臓ぶちまけて、それでも俺の怒りは収まらねえ!! この怒りと憎しみが消えることなんざ一生ねえんだよ!!!」

 

凄まじい怒号は倉庫中に響き渡った。

それに伴い、エスターの右手にこめる力も増した。

エスターの五本の指はホワイトハートの細い首にゆっくりと食い込んでいった。

 

ホワイトハート「あぐっ…ぅぁ……くぅ……ぅぅ…っ。」

 

悲痛な喘ぎ声は徐々に小さくなっていった。

既にホワイトハートの頬は赤く染まっていた。

苦しげな顔が酷くなるにつれてホワイトハートが両手にこめる力は徐々に弱くなっていった。

意識も薄れてきており、目の前がだんだんぼやけているのが分かった。

――死。その言葉がホワイトハートの頭をよぎった。

だがその瞬間、なぜかエスターの右腕はホワイトハートの首から離れた。

呼吸が戻ると同時に激しい嘔吐感がホワイトハートを襲った。

 

ホワイトハート「けほっけほっ、げほ…っ……はぁっ……はぁ……。」

 

右手を首にあて、左手を地面につきながらホワイトハートはしばらく地面にひれ伏すしかなかった。

嫌悪感を顔に凝縮させたエスターはその様子を見下すと同時に身を反転させ、出入り口に歩みを進めた。

ちょうどエスターの右足が倉庫の出入り口の2m前ほどに迫ったとき、ひ弱な声がエスター歩みを止めた。

 

ホワイトハート「待ち……や………が…」

 

今にも倒れそうなよろよろとした足取りでホワイトハートはエスターの方へ歩き出した。

もう体力は限界に近かった。

それでもその足取りは一歩一歩エスターに近づいていた。

 

ホワイトハート「まだ……勝負…は……着いて……!! うあっ!」

 

だが無情にもその足取りはかき消された。

エスターの放った何か(・・)は、ホワイトハートの体を再び宙へと舞わせ、壁に思い切り叩き付けた。

ズドォンという轟音と共に凄まじい衝撃がホワイトハートを襲い、それは彼女の限界に近かった最後の体力さえも無慈悲に奪い取った。

そのままホワイトハートは重力にしたがって地面にくずれ落ち、うつ伏せに床に倒れこんだ。

直後にホワイトハートを白い光が包み込み、その光が消えた後には元のブランの姿があった。

 

エスター「カタス―――終わるま―――その後――――速攻――殺―――。」

 

エスターの声はブランにはほとんどが聞き取れなかった。

朦朧とした意識の中、ブランは顔だけをエスターの方へ向けた。

 

ブラン「ぅ……くっ………ぁ。」

 

最後にブランが見たもの、ぼやけた視界の中で最後に確認したのはエスターがうす緑の炎の中に消える瞬間だった。

シェア95%越えの全力の自分を圧倒した。

その敗北を実感する間もなくブランの意識は闇に沈んだ。

 

 


 
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