No.419175

ゲイムギョウ界の守護騎士

ゆきさん

宿屋に来てから二日が経過。1人置いてきぼりにされたタイチはいつもとは違う変身をして今現在の依頼主の元に向かう。思わぬ訪問者から逃げるため、体ほぐしにダンジョンに向かう。そこで待ち受けていた人物が!?

2012-05-06 15:07:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1160   閲覧ユーザー数:1123

第13話 女体化して出かけるもんじゃない

 

俺がこの宿屋に来て二日がたつ。周りには誰もいないのはここが俺の部屋だからである。

今は昼時なんです。ちなみに隣の部屋にいるはずの四人組は依頼主のシアンって人のお手伝いで朝から出かけている。ここで、今のオレの状況を整理するとこうなる。

 

二日前にここにたどり着き、そのときにアイエフのケータイがぶち壊れ、精神が幼児化してしまったアイエフと一緒に寝た。そして昨日の朝にはアイエフはすっかり元に戻っていた。しかし、そこで問題が発生した。オレの体は力の使いすぎのせいか、布団から一歩も動けなかった。

それで軽くごまかし一日寝たっきりを過ごした。で、今日は完全に体力が回復したのだが起きたときには机の上に置手紙だけが置いてあった始末だ。

 

「どこ行ったか分かんないしなー......魔王化<デモン・ディマイス>で気配探索でもしよっかなー。けどなー、正直なところ動きたくないしな。さすがのセフィアもそうそう連続で仕掛けては来ないよな」

 

オレは布団から出て、机の上の置手紙の内容にもう一度目を通した。

「モンスター退治に行ってきます。今回の目標、資材運び」か。.......気になるが、今日はどうしようもないな。下のほうには依頼主の工場の場所が簡易的だが地図で書かれていた。

というか、資材運び(?)一体全体どうなってるんだ?

 

「なんか、置いてけぼりにされてるような気がする。.......暇だな」

 

一人続く沈黙。しかし、じっとしてるのは性に合わないな。

オレはついこの前のエンマからの手紙を思い出した。.......あんなことして意味あるのかな?

常に魔王化?疲れるだけじゃん。けど、なんかやらないと我が身に危険が降り注ぎそうだな。

近くの椅子に腰をかけいろいろと考えてみる。

 

「....................よし、使い慣れてるほうを使おう」

 

オレは立ち上がり深呼吸して心を落ち着かせる。

ふー..........やりますか。

 

「魔王化<デモン・ディマイス>..........っぐ!?」

 

すぐに体から溢れてきた濃密な闇に包まれていくのが分かる。

だが、それと同時に謎の頭痛が襲ってきた。

 

 

 

「お前は二人で一つだ。ナイトメア、絶対に聖騎士<セフィア>を見つけ出せ!分かっているな?」

 

「僕は、僕が守護騎士<ハード・ナイト>になる為にも」

 

大きな広間で少年と女性が話している。周りにはこれといった目立った物は無く、柱が何本も縦に聳え立っているだけである。少年の目は広間の奥の扉をずっと見つめている。

 

「さあ、行け!今こそ貴様が守護騎士になるときだ!」

 

少年は女性に対し軽く首肯し、フードを深く被り扉に向かって歩き出した。

そして、彼はまだ見ぬ未開の地へと足を踏み入れた。

 

 

「何、何なの?ナイトメア?......今のは私?」

 

頭痛の際によくも分からない映像が頭の中を通っていた。

だが今は、とりあえず確認しなければならない。変身がちゃんと出来てるかどうか。

部屋の端っこにある鏡立てでその姿を確認する。

 

「よし、問題は無いとは言い切れない。.........いつも思うんだけど何故に巫女服?」

 

鏡の目の前に立つのは黒髪のポニーテルの巫女服な少女。

身長は特に変わってはいない。胸はまあ、それなりにあります。

 

「さっきのは何なのかな?......今はいいか。後でまたじっくりと考えよっと」

 

私はTHE巫女服でラステイションの街を走り抜けた。目指すはパッセ工場!

 

 

 

「へー、ここがシアンさんの工場なんだ」

 

「まあ、ここで話すのもなんだし、もうちょっと落ち着く場所に移動するか」

 

場所は変わって私は今、依頼主の女の子ことシアンさんの工場を訪れていた。

最初に私が工場に入ったときは「オレにも春が来たぜー!」とか変な台詞が四方八方から聞こえた。

その後、ここパッセ工場の工場長のシアンさんに軽く嘘が入った事情説明を行い、今の状況に至る。

 

「皆さん、がんばってくださいね!」

 

私は工場員の人たちに笑顔で軽く手を振り、シアンさんの後を追った。

 

「今なら、彼女の笑顔だけでオレは何時間でも働けるぜ!」

 

後ろから、聞こえてくる声は一瞬で鳥肌が立つようなものばかりだった。

だって「結婚してくれ!」なんて聞いただけでおかしくなりそうね。私、一応男だからね。

容姿はまったくの女の子だけど。

 

「さっ、好きな席に座ってくれ」

 

「じゃあ、ここで」

 

気がつくといつの間にか食堂に来ていた。なんというか、昔ながらって感じがするなー。

....おなかへっ....へ、減ってなんか無いんだからね!

私はシアンさんのすぐ横のカウンター席に座り、早速話を切り出した。

 

「シアンさんっていつネプテューヌさん達に会ったんですか?」

 

シアンさんはジッと目で私を見てくる。

もしかして、変身がばれたの!?

 

「名前。まだ、お前の名前を聞いてないぞ」

 

「へ?......わ、私の名前?」

 

シアンさんは私の問いに軽く首肯した。......この状態でクレハを使う気にはならないね。

というか、変身した意味って何?こういうときぐらい変身いらないんじゃない?

.......それについてはライカに後で抗議するとして、今は名前だね。

なんか、いい名前ないかな?......やばい、シアンさんがなんか変な目で見てる気がするよ。

そこでベストなタイミングで食堂の扉が開かれた。

 

「たっだいまー、シアン!....その人は?」

 

「きっとお客さんですー」

 

「にしても変な格好してるわね」

 

「......お兄様の馬鹿」

 

訂正、最悪なタイミングです。......打開策打開策。

ネプテューヌ達はまるで自分の家のように慣れた感じでそれぞれカウンター席に座ってくる。

誰にも聞こえないくらいの小声でライカに怒られました。

打開さ........誰か、私に助け舟を!

 

「その方は私の親しい友達です」

 

「名前はなんていうの?」

 

ライカの助け舟は沖に出る前に不慮の事故で消えてしまいました。

隣の隣のネプテューヌから名前を聞かれ戸惑う私。

とそこで、ライカが私に「任せてください」と静かに言ってくれた。助け舟復活だね!

私は心の中で何回もライカにお礼をした。うん、やっぱり持つべきものは友達だよね。

 

「彼女の名前は.......零華です」

 

「れいかさんですか?よろしくですー」

 

「こ、こちらこそよろしくね。こん.......」

 

や、やばい、これ以上ここで話してたらいつボロが出るか分からないよ。

ネプテューヌとコンパは信じているけど、シアンさんとアイエフは完全に疑ってるよね?

とりあえずここから抜け出して、宿で聞けばいいね。

 

「えっと、私用事あるから帰るね」

 

それだけを言って、食堂の中から抜け出した。

 

 

パッセ工場から移動すること20分ぐらい。場所は......ダンジョンです!

いやー、さすがに丸一日寝てたら体が鈍るといいますか。ようはリハビリみたいなもんだよ。

とりあえず、気配を探しながら歩いておりますが、全くもってモンスターの気配がしないです。

 

「おかしいね、これじゃあ、まるで「おや、お綺麗な人だ。よかったら私をダンジョンの出口に連れてってもらえませんか?」

 

私はその場で「ひゃ!」と変な声を上げてしまった。モンスターの気配に集中しすぎたせいか、目の前に立つ長身のめがねの男の人の存在にに気付きませんでした。あんまり驚かせないで欲しいな。

 

「自己紹介がまだでしたね。私の名前はガナッシュです。アヴニールと言う会社で働かせていただいている者です」

 

ガナッシュさんは深々と頭を下げてきた。私も男のときはこんなふうにしたほうがいいのかな?

なんかイメージ壊れるからダメだね。私は思考を吹き飛ばすように首を横に振る。

 

「あ、え、えーと。私の名前はタイ....零華です。世界を旅している、旅人かな?....あの、じゃあ、早速行きましょうか?」

 

「はい、お願いします」

 

ガナッシュさんは私に向かってにこやかな笑顔を送ってきた。.....なんか調子狂うな。

私はそれに対し苦笑しながら返し、出口に向かって歩き出す。ガナッシュさんもそれについてくる。

 

「あのー、アヴニールって何をしてる会社なんですか?」

 

「そうですね。主に無人兵器や何らかの機械を作ってる会社ですね。まあ、私達従業員はほとんど資材の運びやそういった肉体労働ばかりですけどね」

 

「じゃあ、誰が機械を作ってるんですか?」

 

「機械ですよ。うちの社長は人が作るものを信じれない人ですからね、全部機械で作ってるんです」

 

「けど、それじゃ、何の発展も無いんじゃないですか?」

 

「そうですね。人が作るからこそ、そこに新しい可能性を見出せるのかもしれません。それでも社長は「人間に機械ほどの精密さがあるのか。いいや、断じて人間に機械ほどの精密さは無い!」とか、何とか言ってる始末なものですから」

 

「そんなんじゃ、ラステイションはいつまでも「そのセリフは社長に言ってあげてください。もし、あなたが社長と会うようなことがあったらお願いしますね」.....はい」

 

かつて人を信じれなかった私だからこそ、伝えなければならない。

そんなことを話していると、ダンジョンの出口についていた。

 

「零華さん、ありがとうございました。また、どこかでお会いできること祈っております」

 

「は、はは、こ、こちらこそ色々と教えてもらってありがとうございます。もうダンジョンで迷わないでくださいね?......って言うか、何であんなところにいたんですか?」

 

「あー、それは会社に必要な物資がきれていたもので、それでこうして私がダンジョンに捜索に行っていたのです」

 

「そうですか。ではここら辺でさようなら」

 

私は手を振り、ガナッシュさんが見えなくなるまでそこで止まっていた。

 

「あの人、怪しい。護衛1人つけないでダンジョンに向かうなんて。それに、あのダンジョンからは全くモンスターの気配がしなかった。......なんか、引っかかるなー」

 

私はそこで大変なことに気付いた。

空はすっかり夕暮れであった。

 

「解除!....やっべ、怒られる!」

 

オレは変身を解除し急いで宿屋に向かった。

その後、四人による説教を何時間も正座させられて聞かされたことは、戦闘なんかよりも非常に酷なことであったことは言うまでもない。......はぁ、今日は一段とついてないな


 
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