【関羽 side】
「ぬららららあああああぁぁぁぁあああ!!!」
ドゴーーーン!!
「な、なんだ!?」
その日の朝は、この世のものとは思えない奇声と凄まじい地響きで目が覚めた。
敵襲かと思い武器を持ち、寝間着姿のままで部屋から飛び出すと、他の皆も同じようにそれぞれ武器を持ち廊下に出てきていた。
「一体、さっきの音は何なのだ?」
「あたしもさっきの音で目が覚めたんだ。何か庭に落ちたみたいだけど、一体なんだって言うんだよ」
音の聞こえた方へと足早に向かいながら、隣に並ぶ馬超こと翠に尋ねてみたが彼女も状況がわかっていない様子であった。
音がした庭に向かうと見回りをしていたらしい兵たちが何人か集まっていた。
「一体どうしたと言うのだ!」
「はっ!地響きが聞こえたのでこちらに来るとこんなものがあったのです」
そう言った兵が地面に突き刺さった
そこに刺さっていたのは浅黒い筋肉の塊、卑弥呼であった。
「ふ~……やれやれ、参ったわい」
地面に頭が突き刺さり、抜けない様子の卑弥呼を兵たちに命令し引っこ抜いた。
「で、卑弥呼よ、何があったのだ?」
「うむ、至急の知らせがあって文字通り飛んできたんじゃが、着地に失敗してのぉ。ご覧の有様じゃ」
「…そうか。それで、至急の知らせというのは?」
「うむ、司馬懿の居場所が分かった」
司馬懿……その名で先ほどまでとは打って変わり、場の空気が一気に緊張する。
私達は急いで他の皆を集め緊急の会議を行うことにした。
「司馬懿さんはどこにいたんですか?」
卑弥呼の知らせを受け、皆を招集後、一番に口を開いたのは我が軍の軍師である諸葛亮こと朱里であった。
余談だが朱里は今回の戦、他の者よりも張り切っているように見え、いつもなら卑弥呼の姿を見ただけでも卒倒しそうなほどの繊細な心の持ち主であるが、今は鼻息あらく迫るように卑弥呼に質問をしている。
「彼奴めはまだ魏の領内に潜伏しておった。蜀との国境に近い郿というところじゃ」
地図を持ってこさせ卓上に広げると、卑弥呼はその場所を指でコツコツと指し示した。
「そこで一体何を?」
「兵を作っておる」
「兵を、作る?」
「そうじゃ。知っての通り魏では今、司馬懿によって人は皆石に変えられてしまった。
じゃからその代わりの戦力となる兵たちを特殊な妖術を使って作っておるんじゃ」
人を石に変え兵士を作るとは、いよいよ化物じみてきたな。
そう思っていると再び朱里から質問が飛んできた。
「蜀の近くでということは、やはり目的は
「ほぼ間違い無いじゃろうな。奴の目的は孫権を絶望に突き落として殺すこと。
そして、そのためにお前たちを狙ってくる」
そう言い卑弥呼は、この場にいる武将たち全員を見渡した。
「なぜ、私達なのですか?」
「うむ、それはまあ、こことは違う世界でお前たちはあ奴と強い関係を持っておってのぉ。詳しいことは言えんが、まあそんなところじゃ。
……じゃが、この世界でもそれなりに関係を持っているものがおるようじゃがの」
卑弥呼は私と劉備様こと桃香様の方に意味ありげに視線を送った。
その視線に気がついた桃香様は頬を紅く染めうつむいてしまった。
「おほん。それで朱里よ、我らはどうする?」
「はい少し待ってください」
そう言うと、使いに魏との国境付近の詳しい地図を持ってこさせ、もう一人の軍師で朱里の親友である龐統こと雛里とともにああでもないこうでもないと話し合いを始めた。
「その、司馬懿さんの目的は私たちなんですよね?」
「うむ、そうじゃ。彼奴の目的はうぬ達を殺すことじゃ」
「じゃあ、私達が動くとこちらを目指さなくては行けないんですよね……」
少しして結論が出たのか、朱里たちはある場所を指さした。
「………これでどうでしょうか」
「うむ、承知した。では、このことをあっちにおる貂蝉に送るから少し待っておれ」
朱里と雛里の話を聞き、卑弥呼はその情報を呉にいる貂蝉に送ると言い出した。
「ふぬっ!流派!漢女道亜細亜方面は、漢女の風よ!」
何をするのかと見ていると、その隆々の筋肉を更に膨れ上げさせ天に向け両手を掲げ叫び始めた。
「全新系烈!天破侠乱!!見よ!道亜細亜方面は、赤く燃えている!!」
すると、なにか気合のようなものが卑弥呼の身体から飛んでいった様に見えた。たぶん。
「ふぅ、やはりこの技は疲れるわい……これで、あちらにも情報が伝わったぞ」
「そ、そうですか。で、では皆さん、早速準備に取り掛かってください」
朱里の言葉であっけに取られていた皆は、我に返ると各自準備を行うため動き始めた。
何はともあれ、最後の戦いが始まろうとしていた。
【関羽 side end】
「ピコーン!むふっ」
「ひっ!?」
朝、城の庭に突き刺さっていた貂蝉が発見され、一騒動があった。
貂蝉は司馬懿の居場所についての情報を伝えにやって来た。
それにより魏の面子を含めた全員で現在、軍議を行なっていた。
その最中に先ほどの貂蝉の奇声である。
後、悲鳴を上げたのは亞莎である。
他の皆は貂蝉の奇行にある程度慣れたようであるが、気の弱い亞莎はまだ慣れない様子で、ビクビクしながら軍議に参加していた。
「どうした、貂蝉?」
「さっき蜀に行った師匠、卑弥呼から電波を受信したわ」
電波?受信?よくわからない単語が出てきて皆の首をかしげる。
「蜀のみんなの方針が決まったそうよ。
あの娘たちは、蜀と魏の国境付近にある五丈原で司馬懿の軍勢を迎え撃つそうよ」
「我らはそこに援護に行けば良いんだな」
蜀の行動を聞き、夏侯惇が言った。
「そうね。でも、それじゃあ少し足りないような気がするわ。何か無いかしら」
「何か戦いを決めるものか……」
夏侯惇の発言に華琳と周瑜こと冥琳は戦いを決める作戦を考える。
戦いを終わらせる方法か……。
「司馬懿は俺しか倒すことができない。だから……」
俺は思いついた作戦を話し始めた。
「な!?そんな無茶なことをさせられるか!」
「無茶なのはわかってる。この作戦は俺だけじゃ無く、皆にも負担をかける。
でも、俺が司馬懿を倒すために力を貸して欲しんだ」
俺は皆に向け頭を下げる。
「ふぅ、一度言ったら聞かないんだから。分かったわよ、任せなさい」
「そうだな。我が知力を持って全力でお前を助けよう」
雪蓮と冥琳が優しく微笑む。
「仕方がないのぉ。王なら着いて来いとどっしり構えてみせよ」
「仕方がありません~。これも惚れた弱みと言うものですね~」
祭はやれやれといった様子で、穏はいつものようにニコニコとしていた。
「わ、私も微力ながらお手伝いいたします」
「はい!粉骨砕身、務めさせて頂きます!」
亞莎は恥ずかしそうに、明命が元気良く答える。
「お兄ちゃんはシャオが守ってあげるんだから」
「私も、この身に変えてお守りします!」
小蓮はちろりと舌を出し片目をつぶり微笑み、烈火が血気盛んな顔を見せる。
「よっしゃー!張り切って行くぜ!」
「分かりました。早速準備に取り掛かります。万端に整えてみせます」
栄はやる気みなぎる様子で、茶々が冷静に返答する。
「旦那様のため、私も頑張らさせて頂きます」
「我ら魏も受けた恩を返すため、我らの領地を取り戻すためともに戦うわ」
良々はいつもの無表情で有るがどこか意気込みある目で、華琳は両腕を組み堂々とした様子で発する。
「私達の気持ちは皆一緒です。この世界を守りたい。私はこの世界で一刀様と共に生きてゆきたいのです」
そして、思春が俺の頬をそっと触れる。
「あなたと共に、参ります」
新章で最終章突入ー!
最後の戦いの場は迷ったのですが、話の作りやすそうな五丈原にしました。
五丈原は司馬懿と孔明の最後の戦場。
個人的にはここで三国志が終わり、後はエピローグかなと思います。それほど孔明の死は印象の強いものだと言うことです。
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最終章突入!
司馬懿との戦いに向け……
ではどうぞ!