No.413239

機動戦士ガンダムSEED白式 12

トモヒロさん

12話

2012-04-23 23:24:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4002   閲覧ユーザー数:3869

分かたれた道 前編

 

 現在、アークエンジェルはクルーゼ隊の船と距離を起きつつ、地球へ向けて、移動している。それは先の戦闘で、アークエンジェル側が救助した民間人を人質にとったためである。一夏それに怒りを覚え、MSデッキで白式から降りた後、そのままブリッジへ上がった。眉間にシワを寄せた顔で。

 

 「どう言う事なんです!?さっきのは!!」

 

 一夏の開口一番は怒声だった。一気に視線は一夏へと集中する。その怒声をかけられたナタルは「やはりな」と言わんばかりに予想していたような顔で一夏に振り向いた。

 

 「どうしたも何も、被害を抑えるために、最善の事をしたまでだ」

 「子供を人質にとるなんて、大人のやる事ですか!?」

 「なら貴様は、あの状況を打開する事ができたのか?」

 「それは…でも、どんな理由があったって…!」

 「やめろ、一夏」

 

 後からブリッジに入ってきたムウは頭に血の登った一夏の肩を掴む。

 

 「何でですか!ムウさん」

 「今のは少尉の言うとおりだ。悔しいが、ああでもしなきゃ、コッチが危なかった」

 「ムウさんまで、そんな事言うんですか!?」

 「こうなっちまったのは、俺達が弱いからだろ?」

 「ッ!!」

 「俺にもお前にも、艦長や副長を非難する権利はねぇよ」

 

 それ以降、一夏は黙り込むしかなかった。そのまま、ブリッジを下り、その場を後にした。

 

 

 『救助した民間人を人質にとる。そんな卑怯者達とキラは戦わされている…』

 『ち、違…』

 『何が違う!お前もその卑怯者と同じだろうに!キラとラクスは必ず救い出す…必ずだ!!』

 

 先の戦闘の最後にイージスのパイロットに言われた言葉が今更になって一夏の頭にリピートされる。

 悔しい…そう思ったのは何年ぶりだろうか。3年前、一夏の世界でIS世界大会が開かれ、自分の姉、織斑 千冬の決勝戦当日、一夏は何者かに誘拐された。

 その時の自分は何の力も無く、自分の無力さに嘆いた。あの後駆けつけた千冬によって、一夏は助かる事が出来たが、それと引き換えに決勝戦は千冬の不戦敗となってしまった。

 だから、一夏は強くなりたかった。自分の姉を護れるくらいに。

 しかし、今の自分はどうだ?昔と違って、白式という『力』があるのに。あの桃色髪の少女、ラクスと言う子を人質にしてまで、生き延びた。

 

 (俺が…弱かったから…)

 「クソォォォォオオオオオオオーーッ!!!」

 

 一夏の命一杯握られた拳が通路の壁に叩きつけられようとしたその時…

 

 「どうなさいましたの?」

 

 背中から誰かが声をかけてきた。その拳は寸手の所で止まり、一夏はハッとして後ろを振り向く。

 そこにはラクスが一夏の顔を覗き込む様に見ていた。

 

 「き、君は、また?!」

 「お散歩をしておりましたら、こちらから大きなお声が聞こえたものですから」

 

 その大きな声とは先程の一夏のものだろう。一夏は無意識に出した声とは言え、恥ずかしさのあまり顔を赤くする。しかし、一夏は現状、人質と言う立場の人間が艦内をウロついていることに、一気に血の気が引いた。

 

 「勝手に出歩いてちゃまずいよ。君は、その…、人質…なんだし…」

 「まぁ。でも、このピンクちゃんはお散歩が好きで…」

 『ハロ!』

 

 ラクスはそこら辺に漂っていたハロを両手に載せる。

 

 「というか、鍵が掛かっていると、必ず開けて出てしまいますの」

 『認メタクナーイ!』

 (原因はコイツかよ!?)「とにかく、早く部屋へ…」

 

 「あああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 一夏が「戻ろう」と言いかけた時、奥から、また誰かの声が聞こえる。今度のそれはさっきの一夏のより大きいのではないかと思う程の声だった。

 一夏はその声の主をしっている。

 

 「…キラさん」

 「ッ!?」

 

声の元をたどると、星が散らばる宇宙をバックに、強化ガラスの前で泣き叫ぶキラの姿があった。キラは一夏達に気付くと、軍服の袖で急いで涙をふく。

 

 「い、一夏、何で…その子は?」

 「あぁ、どうやらまた勝手に出歩いてたらしいんです」

 「はぁ…また、…ですか」

 

 キラが呆れた様に視線をラクスへ向けると。ラクスのジッと見つめていた目とあってしまった。キラはまだ涙は残っているのかと思い、再び袖でふく。

 キラが再び目を向けると、ラクスは外を見ていた。

 

 「戦いは終わりましたのね」

 

 ラクスの言葉に一夏とキラがうつむく。

 

 「…はい、貴方のお陰で」

 「なのに…お二人とも、悲しそうなお顔をしていらっしゃいますわ」

 「僕は…本当は戦いたくなんて無いんです…僕もコーディネーターだし、アスランはとても中の良かった友達なんだ…」

 「アスラン?」

 「それって…あのイージスって言うMSのパイロット…ですか?」

 

 一夏の言葉にキラはギョッとする。

 

 「ッ!?どうして、それを」

 「初めてあいつと戦った時、キラさんの名前を呼んでたから、もしかしたらと思って…」

 「彼も貴方達も優しいのに、残念ですわ」

 「君も、アスラン・ザラを知ってるの!」

 「アスランはいずれ私と結婚なさる方ですわ」

 「え?」「えぇ?!」

 


 
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