No.402315

機動戦士ガンダムSEED白式 11

トモヒロさん

11話

2012-04-03 21:54:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3837   閲覧ユーザー数:3704

消えていく光

 

 アークエンジェルは、友軍との合流する。そのニュースはアークエンジェルのクルーのみならず、避難民の人々にも朗報であった。

 しかし、このアークエンジェルの中で、素直に喜ぶことのできない人物が一人。

 一夏は自室で、白式の待機形態であるガントレットを見つめていた。

 

 (あと少しで、アークエンジェルに増援が来る。人も増えるし、そうすればキラさん達は戦わずにすむ…でも、俺は)

 

 そう、この艦の戦力でもある白式は一夏にしか動かせないのだ。打鉄やラファールなどの量産機ならば、まだ女性だけでも動かせただろう。しかし、白式は一夏の専用機なのだ。つまり、一夏が軍を抜けると言うことは、それと同時にMS一機分の戦力が抜けるということになる。軍がそんな痛手を見逃すわけがない。自分はこのまま軍で働かせられるのだろうか…。

 

 Beー!!Beー!!Beー!!Beー!!

 「!?」

 

 一夏の思考は突然鳴り響いた警報により遮られた。一夏はバッと近くに浮遊していた軍服の上着を身につけ、部屋を出る。

 

 「大丈夫だよね?パパの船、やられたりしないわよね!?」

 

 MSデッキに向かうT字路でフレイの声が聞こえてきた。一夏はとっさに、曲がり角の壁に隠れる。

 

 (…何で俺が隠れなきゃいけないんだ?)

 

 そんな事を思いながらも、一夏は声のする方向に聞き耳をたてる。

 

 「大丈夫だよ、フレイ。僕達も行くから」

 

 どうやら、話し合いては、キラだったらしい。キラはそれだけを言うと、ちょうど壁際に隠れていた一夏とばったり出会う。

 

 「あれ、一夏?何やってんの?こんな所で」

 「キ、キラさん…ははは、何でもないですよ!それよりさっきの話し…」

 「あぁ、この先で、戦闘が起きているみたいなんだ。それで、そこの船にフレイのお父さんがいるらしくて」

 「そうだったんですか。じゃあ早くMSデッキに急ぎましょう!」

 「うん!」

 

 

 数分後、一夏とキラはパイロットスーツに着替え、MSデッキに到着する。

 

 「遅いぞ!坊主共!」

 「すみません!」

 「すぐ出ます!」

 

 キラはストライクへ乗り込み、一夏はMSデッキの床を蹴り、そのまま無慣性移動をしながら白式を展開、搭乗する。

 すると、ストライクと白式にブリッジから通信が入る。

 

 『敵はナスカ級にジン3機、それとイージスがいるわ。気を付けてね』

 

 一夏とキラは頷く。

 そして、ストライクはエールを、白式はビームライフルとシールドを装備、先の順で発進し、戦闘宙域へと飛翔した。

 

 

『本命のご登場だ…雑魚にあまり時間をかけるなよ』

 

 アスランはMA形態のイージスでエネルギー砲を放つ。命中した艦の装甲を紙の様に貫通し、その艦はあっけなく轟沈した。

 その刹那、イージスのコックピットにアラートが鳴る。モニターには二機のMSの機影があった。

 ストライクと白式だ。

 アスランはイージスをMS形態へと戻し、バーニアを吹かせ接近する。

 

 ストライクと白式は二手に別れ。イージスに向かってきたのは、白式だった。アスランはストライクを追おうとするが、それを純白の翼が遮る。

 

 「チィ!」

 「キラさんの邪魔はさせない!」

 

 白式とイージスが同時に、ビームを撃つがイージスはそれを軽く交わし、白式はシールドで防ぐ。しかし、白式はかまわず、イージスへ距離を詰め、ライフルを腰にマウントさせて雪片を引き抜く。

 イージスもビームサーベルを抜き、プラズマと実体剣が交差し、発生したスパークが互いを退ける。

 

 「前々から聞きたいと思っていた」

 「何だ?」

 「お前は何でキラさんを知っている?」

 「何かと思えば、そんな事か…俺とキラは幼い頃からの親友だ!」

 「それって、幼馴染ってことか…だったら、何でお前が襲ってくるんだ!」

 「俺は元々軍人だった。キラを戦場に駆り立てたのはお前達じゃないか!」

 「それもお前達ザフトがヘリオポリスを襲わなければ、そんな事にはならなかった!キラさんだって、普通にあそこで暮らしていけたはずなんだ!」

 「お前はいつまでもネチネチと…」

 

 二機とも武器をビームライフルに変えスパイラル軌道で撃ち合う。

 一夏もビームの速度に慣れてきたのか、ギリギリ回避できるようになった。アスランは、その先を読み、白式の軌道上に照準を直す。白式はまた、シールドでビームを防ぐ形に戻った。

 また一つ、連合の戦艦が落ちる。そして一夏はそのフラッシュバックの向こうにヴェサリウスがモントゴメリィに狙いを定めているのに気付いた。

 

 (たしかアレにはあいつのお父さんが…!)

 「やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおーーーーーーーッ!!!!」

 

 しかし、一夏の叫びも虚しく、ヴェサリウスの種砲がモントゴメリィの側面を貫く。

 刹那、フレイの父、ジョージ・アルスターの乗ったモントゴメリィは真空の宇宙に静かに爆ぜた。

 

 「そ、そんな…守りきれなかった…」

 『ザフト軍に告ぐ!』

 

 一夏が目の前の事に唖然としていると、アークエンジェルから全域に通信が入る。発信しているのはナタルのようだ。一夏はナタルの声にハッとし意識を現実に引き戻す。

 

 『こちら、地球連合軍所属艦、アークエンジェル。当艦が現在、プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している』

 「何!?」

 

 白式のサブモニターに映し出されたそこのは、ナタルと例の桃色髪の少女が写っていた。

 

 「あ、あの子が!?」

 『偶発的に救命ポッドを発見し、人狼的立場から保護したものであるが、以降、当艦に攻撃が加えられた場合、それは貴艦のラクス・クライン嬢の責任放棄と判断し、当方は自由意思でこの件を処理するつもりである事を、お伝えする』

 「卑怯な!!」

 

 アスランが怒鳴り上げる。それもそうだろう。劣勢に立たされたとは言え、それを機に人質をそれも民間人を盾にしたのだから。 

 一夏は信じられないような目でサブモニターに映るナタルを見ていた。

 

 この戦闘はなんとも格好の悪い幕引きとなった。


 
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