『改訂版』 第一部 其の十三
益州 綿竹
【緑一刀turn】
「曲者ですっ!!」
一人の兵士の声を切っ掛けに、篝火に照らされた俺達の野営地が騒然となった。
軍議が終わりようやく眠りに着こうとした処での騒ぎだ。
俺は愛用の剣を引っ掴んで天幕を飛び出すと、こっちに向かって走ってくる愛紗の姿を捕らえた。
「ご主人様、ご無事ですかっ!」
「ああ!俺は大丈夫だ!それより他のみんなはっ!?」
「桃香様の所には焔耶が向かいました!朱里と雛里は」
「「きゃああああああああああぁぁぁ!!」」
聞こえてきた悲鳴は朱里と雛里!
俺と愛紗は即座に二人の天幕へと走り出した!
「「朱里!雛里!!」」
二人は一人の兵士に守られ天幕の入口に立っていた。
「「ご、ご主人さま・・・」」
二人共顔は篝火に照らされていても青褪めている。
狙われたのはこの二人だったのかっ!!
「くそっ!うちの軍の頭脳を狙ってくるとは!!」
「お前が二人を守ったのか。よくやった!」
愛紗が朱里と雛里を守った双剣の兵士に労いの声を掛けた。
「い、いえ、私は曲者を見つけ声を上げただけですので・・・」
「それじゃあ最初に『曲者だ』と叫んだのが・・・」
「はい、私です。」
「なんだ、やはりお手柄ではないか。ですね、ご主人様。」
「ああ、それだって充分褒賞に・・・・・アレ?じゃあさっきの悲鳴は?」
改めて朱里と雛里を見ると汗も掻いていて、かなり怯えている様子だ。
「あ、あの・・・さっきの悲鳴は天幕の中をみて・・・」
朱里の説明に雛里は首を何度も縦に振って同意してる。
「天幕の中って・・・まさか!」
俺が中を覗くと荒らされたのがひと目で判った。
「何か盗られた物とか・・・って見ただけじゃ分からないか・・・」
「それがご本を・・・」
「雛里ちゃあぁぁあん!それはっ!」
本?しかも朱里がこんなに慌てて・・・。
「本だと?それは軍略に関する物とかなのか?」
愛紗は二人がこれだけ慌てているのでそう思ったみたいだが、俺には察しがついた。
「あ、ある意味軍略というか、ご主人さまと・・・」
「しゅ、朱里ちゃあぁぁあん!」
「ご主人様と?」
「はわわっ!ご、ご主人さまと戦略についてお勉強する本と!ご主人さま達の素晴らしさを世に広める為に私たちがしたためていた物です!」
「そのような本を・・・・・それは是非取り返して私も読んでみたいものだな。」
「はわわっ!?」
「あわわっ!?」
「ん?私が見るのはいけないのか?」
愛紗は少し寂しそうな顔をするけど・・・・・。
盗られた本の一冊は、多分前に二人が言ってた『性技指南書』だろう。
そりゃ愛紗やみんなに知られたくないよな。
「い、いえ・・・その、深追いしては危険ですから無理に取り返さなくても・・・・・また許昌から取り寄せればいいですから、手に入ったらお見せしますよっ!!」
朱里がチラチラと目線を俺に送りながら言い訳してる。
解ってるって、ちゃんと話を合わせるよ。
「そちらは替えが効いても、ご主人様の事を書いたものは無理だろう・・・」
「それはまた書きますのでご心配無用ですっ!!」
俺たちの事を広める本って、流してる噂をまとめた物だろうか?
今も戦果を各地に広めるようにしてるからな。
「しかし、二人共それでは手間だろう?鈴々と星が追い掛けているから取り返せると思うぞ。」
「「・・・・・・・・・」」
二人とも固まっちゃたよ・・・。
「愛紗ゴメン!逃げられたのだぁ・・・」
丁度そこに鈴々と星が戻ってきた。
「「・・・ホ・・・」」
「この夜道では兵が危険だからそこそこで戻って来たのだが・・・いかがされました主?」
星は俺達の様子に気付いたようだ。
「朱里と雛里の天幕が荒らされて、本を盗まれたんだ。」
「なるほど・・・曲者の狙いは情報収集でしたか。」
「なあ朱里、雛里。俺たちの事を書いた本って、広めた噂を記録した物とかなのか?」
「そ、それは・・・」
「そ、そのような物ですよぉ・・・あはは。」
「それじゃあむしろそのまま敵に渡った方が面白い結果になるかもしれないぞ。」
俺の言葉に愛紗は不思議そうな顔をした。
「どういうことですか?ご主人様。」
「五胡が俺達の戦果を知れば怖気づいて戦わずに逃げるかも知れないし、すぐは無理でも追い払った後で再び侵攻するのを躊躇うようになるんじゃないか?」
「成程、こちらの武勇を見せつけ五胡を牽制する訳ですね。」
「ほほう、流石は主。この状況を逆に利用するのですな。」
「うん、そういう事。それじゃあ警戒を強化して休める兵は休ませよう。」
『御意!』
そう返事をしたみんなを見た時、双剣を手にして周囲を警戒している兵士が目に入った。
彼は俺達が話している間もそうしていてくれたのか・・・。
「もう今日は休んでいいよ。だけどよく将軍達より先に曲者を見付けられたな。」
「い、いえ、私は諸葛亮様と龐統様を愛でる・・・いえ、お守りするために配置についていただけですから。」
「・・・・・・・・」
こいつも変態仲間だったか・・・。
「今度報奨とは別に飲んで語り明かそうじゃないか。お前とは熱い思いを共有できそうな気がするんだ。」
「ほ、北郷様・・・・・分かりました。その日を楽しみにしております。」
そう言って彼は自分の天幕へと戻って行った。
ふ。また一人魂の兄弟が増えたぜ・・・。
「あの・・・どうしたんですか?ご主人さま。」
「え?ああ、曲者を見つけた彼に労いをね。朱里と雛里はもう休んだ方がいい。」
「は、はい・・・ですが・・・」
あ、賊が入った天幕じゃ安心して眠れないか!
「怖い思いをしたもんな。それじゃあ俺の天幕に来て一緒に・・・」
「ご・しゅ・じ・ん・さ・ま・・・・・」
背後から愛紗の声が・・・・・まだいらっしゃったのですね。
結局朱里と雛里は愛紗の天幕で休むこととなり、俺の護衛には・・・・・。
貂蝉と卑弥呼が付くこととなった・・・・・安心して眠れねぇ・・・。
しかし、この騒動が後であんな恐ろしい結果をもたらすとは、俺はこの時まるで想像も出来なかった。
雍州
【エクストラturn】
「月、翠が戻ってきたわ。」
劉備軍別働隊の本陣で、机の上に地図を広げ碁石を動かしていく月。
その手を休め微笑んで詠に振り返る。
「それじゃあお茶を用意してあげないと。」
メイド姿でいそいそとお茶の支度をはじめた。
すっかりメイドさんが板に付いた月だったが、今は劉備軍別働隊を率いる総大将である。
「月ぇ、もうちょっと総大将らしく座っててくれないかしら?」
そういう詠はメイド服ではなく、軍師の装束を身に纏っていた。
「実質的には私がご主人さまから任されてるけど、一応対外的には恋さんが総大将なんだから。それにみなさんにお茶を淹れるの楽しいよ♪」
「まあ、お茶を淹れるのはいいけど・・・別にメイド服じゃなくても・・・」
「もう慣れちゃったから・・・それにこれを着てるとご主人さまが傍にいてくださる気がして・・・」
頬を赤らめる月に溜息で返事をした詠だった。
「ただいまぁ!偵察してきたぜ。」
「ご苦労様です♪はい、どうぞ。」
「お?喉が渇いてたんで助かるよ♪」
湯呑を受け取り翠は一気に飲み干した。
「落ち着いた処で報告をお願い。どんな感じ?」
詠に促され地図を前に翠が碁石を動かしていく。
「あたし達が追い込んだ五胡、それに曹操の魏軍が追ってきたのも臨渭に集まった・・・あたし達がここで・・・魏軍が今ここ・・・後四半刻もしないで攻撃を始める感じだった。」
翠の動かした碁石を睨み、思案する詠。
「この地形でこの布陣・・・・・ボク達が出るのに少し時間の余裕があるわね。」
「なんだ?すぐに援軍に出るんじゃないのか?」
「魏軍は一度攻め寄せてから、引く振りをして敵をここまで引っ張り出すつもりよ。」
そう言って地図の一点を指し示す。
「へぇ・・・配置を見ただけでそこまで解るんだなぁ・・・」
翠は素直に感心していた。
「ボク達は魏軍の目論見をより確実にするために、まず誘き出している最中に敵の遊撃隊が回り込まないように、こちらも遊撃を掛けるわ。」
「ふむふむ。」
「次に魏軍が追ってきた敵に逆撃を開始したら今度はこちら側から・・・」
詠は五胡の本隊と臨渭の街の間に入り込む形に碁石を動かした。
「敵を城に戻さないようにする。」
「包囲するんじゃないのか?」
「そんなことしたら敵が死に物狂いで反撃してくるわよ。西涼を取り戻す前に消耗する訳にはいかないでしょ。」
詠の口からそんな言葉を聞いて、翠は嬉しく感じていた。
「それじゃあ北側に配置しないのは敵の逃げ道か?」
「ええ、それに陽平関側にも行かないようにするためにね。」
更に碁石を動かしていく。
「魏軍が臨渭に入ったのを確認したら、ボク達は
「また山に入るのか・・・」
「次の
「そんなもんなんだなぁ。とりあえずあたしらは臨渭を取り返さなきゃその先もないけどな。」
「それは大丈夫でしょ。ねぇ月。」
「えぇ、『錦馬超』と『飛将軍』の二枚看板があれば敵は逃げ腰になりますよ♪」
「はは、恋と同じくらい名前が売れてりゃいいけどね。」
照れて笑っているが、満更でもないようである。
「むしろ羌族には錦馬超の方が有名でしょ。期待してるわよ♪」
「負け戦続きだったからなぁ・・・ここで汚名返上といきますか!」
こうして劉備軍別働隊は戦闘準備に取り掛かった。
雍州 臨渭西方
【紫一刀turn】
「先鋒突撃っ!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
春蘭と秋蘭が率いる先鋒が五胡の先陣と激突した。
「五胡はうまく釣れるかな?」
「秋蘭がいるから大丈夫でしょう。」
華琳は憎いくらい落ち着いている。
「でも、逃げて見せて誘い込むのって定番だろ?流石に警戒すると思うんだけど。」
「誘い込める様な状況にあるから選択したのよ。」
「今の敵は誘い込みやすい状態だって事か?」
「ええ♪五丈原でかなり乱暴な奇道で攻めたから、奴らの得意な野戦で逃げて見せればあっさり食いつくわよ。」
「なるほどねぇ。」
「それより一刀、逃げ遅れないよう気を付けなさい。敵の足は早いわよ。」
相手は騎馬民族だもんな。
俺の馬術じゃ確かに心許ない・・・。
そんな不安を抱えつつ戦況を見守って三十分くらい経った頃に銅鑼が鳴り響き先鋒が退却を始めた。
「一刀!あなたは先に行きなさいっ!!」
「わかった!怪我しないでくれよ、華琳。」
俺が残ってても足でまといだもんな。
先に行ってもすぐに追いつかれるだろうし。
「ありがとう、一刀♪」
あれ?すごい素直な返事が返ってきた。
こんな状況でそんなギャップ萌の笑顔は反則だぞ華琳!
兵士に守られて駆け抜けながらも自分の顔が赤くなっているのを自覚した。
とにかく、自分に出せる最高スピードで後方に向かって駆けて行く。
「北郷様!敵ですっ!!もっとお速くっ!!」
「なっ!?」
遊撃?伏兵か!?どちらにしろこれ以上のスピードなんて!
「こうなりゃヤケだっ!!」
どうせ追いつかれりゃ殺されるんだ。
俺は鞍にしがみついて鞭を入れ、馬なりに任せた。
鞍から吹っ飛ばされそうになりながら駆け抜けて行くが、敵がジリジリと迫ってくる。
(やばい!殺られる!!)
そう思った時右手前方から銀の流星が疾り抜けた。
「うっしゃおらああああああああああぁぁっ!!」
この掛け声!
懐かしく、勇ましくいその声に振り返ると、
そこには銀閃とポニーテールを振りかざす懐かしい姿があった。
「翠・・・・・やっと会えたな・・・」
翠は一撃で俺を追っていた敵を蹴散らすと直ぐに並走してきた。
「やっぱりご主人様かよ!?その服を見てまさかと思ったけど・・・え?」
俺は翠の馬に飛び移って、翠を後ろから抱締めた。
「ひゃああぁぁああぁっ!!な、何すんだこのエロエロ魔人っ!!」
「翠・・・・・逢いたかった・・・・・」
「ご、ご主人様・・・そんな・・・」
ボコッ!!
鈍い音と同時に俺の後頭部に激痛が!
「戦の最中に何してるのよっ!!」
振り返ると華琳が並走していた。
どうやら絶の石突きで殴られたらしい。
「お久しぶり馬超、洛陽以来ね。援軍感謝するわ。」
「曹操・・・このご主人様は・・・そうか!確かに頭に付けてる紐の色が違うや。」
「あぁ、暫くは違和感があるかもしれないけどその内慣れるわよ。」
「いや・・・既に違和感無くなった・・・」
いかんいかん、感極まって暴走してしまった。
大体俺はどうやって翠の馬に移動したんだ?
全然覚えてないぞ・・・。
「全軍反転っ!!敵を迎え撃てっ!!」
敵を臨渭から充分引き離した所で攻撃体制に移行する。
それと同時に翠も旗を上げると、敵に明らかな動揺が見られた。
『錦馬超』の名前が羌族に与える影響は健在だな。
互いの先鋒が再度ぶつかった処で、更に銅鑼の音が響いてきた。
臨渭の南側の丘の上から牙門旗である深紅の呂旗を中心に、大軍が駆けてくる。
その大軍の中に字の入っていない旗が二つあった。
一つは三日月を真ん中に意匠した旗。緑が考えた月の旗だ。
随所にメイド服のデザインと同じ部分を取り入れるとは、やるな緑!
もう一つは当然詠の旗。
最初は犬か狼の横顔かと思ったが、あれはデコピンした手の形だ。
更にピンクの下縁メガネが大きく意匠されている。
詠のことを知っている人間が見れば直ぐに判るだろう。
そして詠の横にある三日月の旗。
それだけで二人の真名を知るくらい近しい人は気付いてくれるはずだ。
二人が健在だということを・・・。
今度は援軍を得た魏軍が三十分程で敵を潰走させた。
「それじゃあ華琳、今度は冀県で会いましょう。」
臨渭の街に入る前にみんなが集まっての打ち合わせも終わり、既に別れ際だ。
「ええ、あそこを取り戻してようやく前半戦終了という感じね。」
「所であのバカどうするの?」
はい、あのバカです。
「夜まであのままにしておくわ。少しは反省するでしょう。」
俺は縄で縛り上げられた挙句、『私は戦の最中に不埒な行動をしました』と書いた紙を貼られていた。
戦の最初の頃に見せてくれた華琳の笑顔は、今では背筋が凍る笑みに代わっている。
俺の翠にしたことは既に全軍に知れ渡っていて、月も苦笑いで助けてくれない。
恋もみんなから俺がこういう遊びをしていると説明され納得してしまっていた。
こんな遊びで本当に目覚めてしまったらどうするんだ!!
・・・・・やべぇ、今桂花と自分がダブって見えた・・・。
益州 成都西方
【緑一刀turn】
成都。
ここを取り返せば益州はもう大丈夫。
逆に言えばここを取り戻さない限り益州の開放は有り得ない。
「ご主人さま、敵がまた街の外に布陣してますぅ・・・・・」
「・・・いくら野戦が得意って言ってもいい加減学習してもいいんじゃないか?」
朱里と雛里が当惑している。
「普通に考えれば罠でしょうけど・・・」
「ねぇ、ご主人さま。あれって退却の準備をしてるんじゃないかな?」
桃香はそう言うが・・・。
「退却するんなら布陣なんかしないんじゃないか?」
「いえ、ご主人様。もしかしたら奴らは退却前にもう一当てするつもりなのでは?」
愛紗の意見も考えられるな。
「軍師の意見はどう?」
「そうですね・・・私もそれは有りだと思います。雛里ちゃんはどう思う?」
「う~ん・・・確かに有りなんだけど・・・」
「だけど?」
「よく観察すると敵が及び腰というか・・・士気が上がってないんですよ。」
士気が上がってない?
「もしかしてこの間の盗まれた本の影響が出てるのかも・・・」
「成程!我らの武勇に恐れをなしているとう事ですか!!」
「ええっ!?」
「そんなはずは・・・」
「は?なんで二人が否定するの?」
今までの戦果を書いた本なら充分効果があると思うけど?
「い、いえ~・・・と、とにかく罠を警戒して、敵が逃げても深追いしないようにしましょうっ!!」
「孫呉軍にもそう伝えておきますぅっ!!」
ここからは見えないが俺達の南東に孫呉軍が布陣したと連絡が来ている。
二人の態度に疑問を残しつつも戦闘の最終準備を行う事となった。
「牙門旗を上げろっ!!銅鑼を鳴らせっ!!」
敵の異変がこの時はっきり現れた。
明らかに動揺している・・・・・しかも俺の牙門旗を指して。
「なんだ一体?・・・・・ちょっと試しに牙門旗を動かしてみてくれる?」
俺の指示に牙門旗を支えていた兵達が大きく振り回した。
すると・・・・・・。
五胡の兵が逃げ出し始めた・・・・・お
「なんだあれは・・・?」
俺の気持ちを愛紗が代弁してくれた・・・・・まさか・・・。
こっそりと朱里と雛里に近づき話しかける。
「(二人共、この間盗まれた本だけど・・・)」
二人がビクリと背筋を伸ばす。
「(一冊は性技指南書だろ。)」
「(ええと・・・)」
「(それは・・・)」
「(いや、それはいい。問題はもう一冊の方だ。)」
「「(・・・うっ)」」
「(もしかして・・・・・
二人の顔が冷や汗ですごいことに・・・・・やっぱりか・・・。
敵もあの本がどうして軍師の天幕に有ったか不思議だったろう。
だが多分『俺の戦果を書いた本が盗まれた』という噂を聞きつけ、そう信じたんだ。
このままでは自分たちもヤラレると・・・。
い、嫌すぎるぞ!こんな展開はっ!!
しかしこちらの先陣は既に接敵してしまっていた。
もう、この勢いに乗って全軍突撃を敢行しなくてはならない状態になっている。
そして孫呉軍突入のタイミングでもあるのだ・・・。
益州 成都南方
【赤一刀turn】
孫呉軍は朱里からの連絡により予定を早め成都に向かって進軍していた。
「ふむ・・・確かに五胡の動きが妙だな・・・」
一目見て冥琳には判ったようだ。
俺にはよく判らんけど。
「ねえ冥琳。あいつら緑一刀を避けてない?」
雪蓮の言葉を聞いて俺も注意して見てみると、確かに緑の牙門旗を避けてる様に見える。
「何が起きてるんだ一体・・・」
「・・・・・北郷、お前が口上をやってみろ。」
「はあ!?俺がぁ??」
「ちょっとした情報収集とお前の今後の為の練習だ。文句は私が考えてやる。そうだな・・・・・」
そんな訳で俺は雪蓮と一緒に先陣に入り、冥琳から教えてもらった口上を唱い上げる。
「我らは江東の地より馳せ参じし孫呉軍!
俺はこの大陸に平和をもたらす為に天より降りし
三人の天の御遣いの一人っ!!」
「
・・・・・最後のは俺じゃないぞ。
「なあ雪蓮・・・その二つ名は何?」
「え~?『赤い北郷一刀』じゃ迫力に欠けるじゃない。気に入らない?」
「名前負けしてて、すごく恥ずかしい・・・」
まあ、折角雪蓮が付けてくれたんだ。
有り難くもらっておくけど・・・果たして敵はどう反応するのか・・・って、なんだぁ?
「ねえ一刀、なんであいつらお尻押さえて逃げてくの?」
「それは俺が知りたいよ・・・・・」
雪蓮の牙門旗は本陣に残したまま、俺の赤い十文字旗のみを先陣に掲げているのに。
明らかに敵は俺に反応している。
「なんか罠って感じの逃げ方じゃないわよ?兎に角このまま追っ払っちゃいましょう。」
劉備軍の方を見ると、緑も矢を射掛けずそのまま追い立てていた。
「よし、俺達もこのまま追い立てようっ!」
ついに五胡、氐族を追い払うことに成功した。
一応斥候を放って追い掛けさせたが、氐族は国境を越えて戻ってくる気配はないと確認できた。
益州 成都
【緑一刀turn】
「な・・・・・そういう事だったのか・・・」
俺の説明を聞いた赤が愕然としている。
解放した成都の街の中でみんなが復興のために忙しくしている中、俺と赤は打ち拉がれていた・・・・・。
氐族に『天の御遣い北郷一刀』は男女の見境なく『やらないか』な変態として認識されてしまったのだ。
願わくは五胡の他の部族や大陸の人達にこの事が広まらないよう祈るばかりだ。
「二人ともこんな所にいたのか。これから入城して今後の事を話し合うぞ。」
「「冥琳・・・・・」」
「なんだ?二人揃って浮かない顔をして。もしかして氐族が逃げた原因を気にしているのか?」
「「そ、それをどうしてっ!?」」
「朱里と雛里に確認した。安心しろ、他の者には話していない。」
「「ふう・・・」」
「天の御遣いのイチモツが成都を解放したなど、体裁が悪すぎて公表できる訳なかろう・・・二人と話し合って適当な理由で五胡が逃げたと公表する事にしたが、いずれ噂は流れるだろうな。人の口に戸は立てられん。」
うぅ、嫌な噂だなぁ・・・。
さて!気を取り直して今後の事だ!!
「俺は桃香に成都に残って復興に力を注いでもらおうと思うんだけど、どうかな桃香。」
「ご主人さま・・・・・」
桃香が成都に入ってから迷っていたのは知っていた。
ここは俺がその背中を押してやらないといけない処だろう。
「成都、それに蜀は新しい俺達の拠点、家になるんだ。誰かが指揮を取とって復興しないといけないなら、桃香がやらないと。それに桃香がやってくれれば俺達は安心して出陣できる。」
桃香は少し目を潤ませたがその顔を引き締めた。
「うん!任せてご主人さま!戻ってきた時に街の人達が笑顔で出迎える街にしてみせるよっ!!」
「うん、期待してるよ桃香。それじゃあ桃香の護りと補佐は・・・紫苑、焔耶、お願いするよ。」
蜀の事をよく知る二人なら補佐に打って付けだろう。
紫苑は璃々ちゃんの事もあるしな。
「畏まりました、ご主人様♪」
「お館・・・いいのか?」
「焔耶なら桃香を守ってくれると信じてる。頼んだぞ。」
「い、言われるまでもない!この命に代えても桃香様をお守りしてみせるっ!!」
「気張り過ぎてヘマをするなよ、焔耶。紫苑、ワシがお館様をお守りするついでにお前の分も暴れてきてやる。成都の事を頼むぞ。」
「ええ桔梗、あなたも。武運を祈っているわ。」
出来れば朱里か雛里も補佐に付けてあげたいけど、それだと遠征する側が不安になるしな・・・。
「穏、お前も成都に残って桃香の補佐をしろ。」
「は~い、冥琳様。了解しましたぁ~♪」
「冥琳、穏、いいのか?」
「正直に言うと少々辛いが、その分は赤一刀に頑張って貰おう。雪蓮の抑えは頼むぞ。」
「やっぱりそうなるんだよね・・・・・」
雪蓮の抑えか、大変だな赤・・・・・そういえば赤のやつ少しカサカサしてないか?
対して雪蓮はツヤツヤしてるし・・・。
「みなさん聞いてください!」
朱里の声にみんなが注目する。
「五胡追撃軍の次の目標は涼州、曹魏軍との合流です。そして最終目的地は・・・」
ついに最終目的地も決定したか。
「
あとがき
ついに蜀の地を手に入れた劉備軍
これでようやく三国が揃いました。
一刀には不本意なオマケが付きましたがw
元版からの修正で
蓮華や桃香がお留守番になっていますが
全員が敦煌まで行っちゃったら
どう考えてもヤバイだろうと思い
残ってもらいました。
魏軍も誰か許昌に戻さないと。
双剣の兵士
萌将伝で龍退治に同行した彼です。
五胡の間者を見つけてなければ
ただの覗き魔ですねw
紫一刀と翠
感動の再会・・・のはずが
一刀の変態パワーが発現したせいで
あんなことに。
お尻を押さえる五胡兵
一冊の八百一本が歴史を変えた・・・のかも知れませんw
赤一刀の紫苑との再会の感動すら
吹き飛ばしたみたいですしw
朱里と雛里がどんな八百一本を作ったかは謎です。
とりあえず一刀が主役なのは間違い無いようですがw
次回は三国軍が再び集結
三人揃った一刀が何をしてくれるのか?
現時点でまたしても作者は何も考えていませんw
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大幅加筆+修正となっております。
今回は魏軍、劉備軍別働隊「臨渭の戦い」
劉備軍本隊、呉軍「成都の戦い」です。
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