No.408820

ACE学園 第17話『バレンタインという名の闘争』

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

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2012-04-15 11:08:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:947   閲覧ユーザー数:945

20XX年1月、時空管理局の追っていた次元犯罪者がACE学園内のチョコレート工場に迷いこみ、追手と激しい戦闘を繰り広げたことで同工場は操業不能に陥った。

 

バレンタインに色めいていた女子はこの事態にもめげず、抵抗を続けていた。しかし、バレンタイン直前になって神界のYさんが暴走し、何を血迷ったのか僅かながら存在していたチョコを食いつくしてしまった。犯行理由は、「娘からチョコを貰えないから」らしい。その後、Yさんは娘である双子の姉妹によってフルボッコにされたのは言うまでもない。

 

結果、せっかくのバレンタインデーであるにも関わらず好きな男性にチョコを送れない女子が続出した。しかし、そんな状態に陥ってもなお抗おうとする者達がいた。

 

 

 

★★★★★

 

【ACE学園高等部・調理室】

 

 

「ついに……この日が来たで」

 

 

ボブカットの茶髪にバッテン型の髪飾りが特徴の女性、大学部の八神はやてが教台に立っていた。

 

 

「チョコを手に入れるために様々な世界を駆け巡ったその苦労がようやく報われようとしているんや!! 皆、はりきって行くよ!!」

 

『はい!!』

 

 

調理室にいたたくさんの女子が呼応するように返事した。

 

 

「貴重なチョコや、今回はBFF社のサイレントアバランチを見習って、皆で力を合わせて助けあうんやで!! それでは、調理開始!!」

 

戦いのゴングが鳴り響き、あらかじめ各テーブルで配置に着いていた女子達は調理に取りかかった。

 

 

「意気込んでみたはいいんですが、どうすればいいんでしょうか?」

 

「まずは、チョコを刻んでそれからボウルに入れて湯煎にかけてください」

 

「湯煎? 鍋に入れて直火にかけるのは駄目なんですか?」

 

「絶対に駄目です」

 

 

オロオロするイクスにアインハルトがいつになくキッパリと言い放つ。

 

 

「ストラトス先輩、張り切ってるねぇ」

 

「士樹にチョコを贈れないって理由で倒れたぐらいですしね。むしろ、本人はそっちの方を気にしていたね」

 

「私もひなっちへの愛なら誰にも負けませんよ」

 

 

ユイは中等部から参戦しているヴィヴィオと会話しながら気合いを入れる。

 

 

[で、どういうチョコを贈るの?]

 

 

ユークリウッドの疑問にヴィヴィオは少しの間首をひねる。

 

 

「クッキーなんてどう? 作り方は私とアインハルトさんで教えればなんとかなりますし。アインハルトさんはどうですか?」

 

「分かりました。それで行きましょう。チョコの準備はこちらでやりますので、生地の準備はそちらでお願いします」

 

「任せてください」

 

 

調理が始まって15分くらい立つと、どの班も何をつくるかだいたい決まり、必要な材料を揃え始めていた。その様子を遠くから見ていたはやては満足げに頷いていた。

 

 

「皆、上手くやっとるなぁ。でも、」

 

 

はやてが向けた視線の先には、土見ラバーズ班の中でガチガチに固まっているネリネがいた。

 

 

(あの子がネリネちゃんか。アインハルトや亜沙から話は聞いとったけど、ホンマに料理があかんみたいやな)

 

 

はやてはネリネの側にそっと寄り、声をかけた。

 

 

「隣、いいか?」

 

「ひゃあっ!?」

 

 

緊張していたネリネははやての接近に気づかず、びっくりした。

 

 

「なにも難しいことをせえとは言ってへん。レシピ通りにやればいいね」

 

 

喋りながらも必要な材料や道具をテキパキと揃えていた。

 

 

「すごい……」

 

「こんなもん慣れや。それに、チョコっていうのはただ形を整えればいいってわけやない。自分の裸に塗りたくってプレゼントするって方法もあるで」

 

 

まるで小悪魔の様に囁かれたはやての言葉はネリネだけでなく女子の大半を赤面させた。一部を除いて……。

 

 

「その手が有りましたか!!」

 

「アインハルトさん、ここには小学生とかもいるのでそういうのは自重してください」

 

 

アインハルトが実行に移す前にヴィヴィオが呆れながらも止めに入る。

 

 

[歩も喜ぶ?]

 

「だ、男性とはそういうものを好むものなんでしょうか?」

 

「……あまりやりすぎるとかえって引かれるからやめた方がいいよ」

 

 

男子禁制のため、唯一の突っ込み要員と化したヴィヴィオは頭を抱える。そんなことがあったが、チョコ作りじたいはそこそこ順調に進んでいった。

 

 

「クッキーが焼き上がりました!!」

 

 

アインハルトがオーブンを開き、火傷しないように気をつけながらクッキーの乗ったトレーを取り出した。

 

 

「良い具合に焼けましたね」

 

[まだ袋に包んでラッピングする作業が残ってる]

 

 

ユイは嬉しそうにはしゃぎ、ユークリウッドも笑みを浮かべている。他の女子達も程度に差こそあれどチョコが完成したことに歓喜していた。

 

 

「ほぉ、どれどれ」

 

 

八神はやてがやってきてチョコクッキーを1個つまんで口の中に放り込む。

 

 

「結構いけるで、これ」

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!! 後は、これをひなっちに渡すだけだ!!」

 

「大樹さん、今はどこにいるんでしょうか?」

 

「今日は、士樹といるはずですので一緒に行きましょう。ヴィヴィオさんは?」

 

「じゃあ、ここでお別れですね」

 

「ご武運を」

 

 

ユイが敬礼をしたところでその場はお開きになった。

 

 

 

★★★★★

 

【高町家】

 

 

「お邪魔します」

 

 

アインハルトがイクスを先導する形で家の中へと入っていくが、中には誰もいなかった。

 

「静かですね」

 

「留守なんでしょうか?」

 

「その声、アインハルトにイクスか?」

 

「2人そろってどうしたんだい?」

 

「士樹、大樹さん!」

 

「この声は、こちらからですね」

 

「庭だよ」

 

 

士樹の声が聞こえた方へ行くと、縁側でお餅を食べている2人の姿が見えた。

 

 

「皆でクッキーを作ったんです。2/14は過ぎてしまいましたが……」

 

「気にしなくていいのに」

 

 

アインハルトはしっかりと両手でラッピングされたクッキーを士樹に手渡す。イクスもたどたどしいくもなんとか大樹にクッキーを渡すことができた。が、大樹に頭を撫でられて嬉しさのあまり気絶してしまった。

 

 

「ありがとう、アインハルト」

 

「あの、味の感想を……」

 

「アインハルトに食べさせてほしいんだけど……、駄目かな?」

 

「別に構いませんよ」

 

いたずらっぽく笑う士樹にアインハルトは肯定の返事を返す。女子達の努力は実り、遅咲きのバレンタインは、満開を迎えようとしていた。

 


 
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