No.408805

ACE学園 第15話『ポロリは用意出来なかった/Pへの扉』

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

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2012-04-15 10:47:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:936   閲覧ユーザー数:933

昼ごはんを食べた後、いくらか遊んだ士樹たちはルーテシアの母メガーヌ・アルピーノが経営するホテルの温泉でゆっくりしていた。

 

 

「ふぅ、いい湯だな」

 

「俺達はたいがいシャワーなんだが、こういうのもたまにはいいな」

 

「そう言えば、士樹は時々来てるんだよな?」

 

「ああ、アインハルト達がやるオフトレに付き合う形でね」

 

 

音無とルルーシュ、稟と士樹は温泉を楽しんでいた。

 

 

「光がまぶしいよ……」

 

「そうだね、神ちゃん」

 

 

前回、馬鹿をやった神王と魔王はダークサイドに落ちかけている。

 

「2人ほど地獄兄弟になりかけているけどね」

 

 

士樹に対し稟は苦笑いで応える。

 

 

「ん、滝湯から人影が来るぞ」

 

 

もやのかかった視界の中を進んできたのは、大樹だった。

 

 

「あれっ、君達もここに来ていたんだ?」

 

「大樹さん、どうしてここに?」

 

「イクスに誘われたんだよ」

 

(本気で大樹さんを捕まえにいくつもりなんだ。まあ、それぐらいしないと駄目か)

 

「以前、刹那の世界へお宝をちょうだいしにいった時も追いかけられたからね」

 

「後で刹那から聞きましたけど、自業自得ですよね。しかも、オーズ・ガタキリバコンボまで持ち出したみたいですし」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「やっぱりここの温泉は良いね」

 

「そうだね、ヴィヴィオちゃん」

 

 

一方、女湯ではヴィヴィオとシアが中心となっていた。

 

 

「若い子は元気でいいわねぇ」

 

「亜沙ちゃん、ばば臭いですわ」

 

 

高等部3年の亜沙は年齢に似合わぬお風呂の楽しみぶりを披露している。そんな中、1人だけ憂鬱そうにしていた。

 

 

「こういう時こそ士樹と一緒に入りたかったです」

 

「あいかわらず大胆だね、アインハルトは」

「うー、私も負けてられないっす」

 

 

シャーリーが、平然と恥ずかしいことを口にするアインハルトに感心するが、他のメンバーはだいたい赤面していた。

 

 

「こ、恋人どうしって一緒に入浴するのが普通なんですか?」

 

「稟も喜ぶ……?」

 

 

イクスは赤面しながら、銀髪ロリのプリムラは疑問を口に出した。

 

 

「私が結弦と一緒に入ろうとすると、顔を赤くして顔を背けることが多いけど嫌なのかな?」

 

「嬉しいとは思いますが、基本的に男女は別々に入浴しますよ」

 

 

奏の問いに対してネリネは汗を流しながら発言した。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

入浴後、稟と音無は一緒に食堂まで歩いていた。

 

 

「気持ちよかったな」

 

「ああ」

 

「おーい、ヴィヴィオ達からトランプをしないかって誘いを受けてるんだが、お前らはどうする?」

 

「夕食にはまだ時間があるだろうし、それもいいな」

 

 

音無と稟はレイからの誘いを受け、テーブルに近づいていった。

 

 

「? 士樹は一緒じゃないんですか?」

 

「先に来ていなかったのか?」

 

「珍しいな、士樹がアインハルトといないなんて……」

 

「士樹なら外だよ」

 

 

浴衣を着ているアインハルトと男子2名の疑問に対して大樹は親指で窓の外……ホテル裏側の森をさす。士樹はそこで空を見上げながら歩いていた。

 

 

「散歩をしていたんですね」

 

「士樹、ここに来るとけっこうあの辺りを歩いていることが多いね」

 

「みんなー! ご飯が出来たわよ!!」

 

 

ホテルの主であるメガーヌがキッチンから呼びかける。その声が聞こえたのか士樹が慌てて時計を見る。

 

 

「馬鹿な!? 予定時刻より30分も早いぞ!!」

 

イレギュラーに弱いことで有名なルルーシュ・ランペルージも予想外の事態に慌てていた。

 

 

「今回は、事前の仕込みがほとんどだったから早く準備できたのよ」

 

「そういうことですか」

 

「匂いからすると、スペアリブで味付けににんにくを使っていますね」

 

 

ルルーシュはそれを聞いて納得し、亜沙は匂いから料理の内容を推測する。

 

 

「本当だね。いい匂いが漂ってきたよ」

 

「士樹が喜びますね、割とニンニクは好きですし」

 

 

シアが子供っぽく匂いをかぎ、アインハルトも嬉しそうにする。

 

 

「じゃあ、士樹が戻ってきたら食べられるようにしようか」

 

 

ルーテシアはそう言って手のひらでパンパンと音を立てて一同を取りまとめた。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

夕食後、士樹は再び森を散歩しながら月を見上げていた。途中、足音がしたので歩みを止めた。

 

 

「そこにいるのは誰かな?」

 

 

その声に反応してアインハルトが出てきた。

 

「ここで何をしていたんですか?」

 

「ちょっと故郷のことを思い出していただけさ。雰囲気が似ていたからね」

 

 

後をつけていたことを責めもせずに士樹はアインハルトの質問に答える。

 

 

「そう言えば、あなたは地球で生まれ育ったわけではありませんでしたね。あなたの過去について聞いていいですか?」

 

 

ACE学園は、非常に多くの世界から人間が集まる。その中には、複雑な事情を持つ者も少なくない。故に、事件が絡んだり、よほど心を許している人物でない限り他人の過去はあまり詮索しないという不文律があった。

 

 

「ま、僕だけアインハルトの過去を知っているのは不公平だし、話すよ」

 

 

士樹はアインハルトに振り返って話を始めた。

 

 

「“俺”の国ベールセールは緑豊かで、農業が盛んだった。だが、支配階級の貴族が腐っていた。奴らは自らの利益しか考えず、農民から搾取を繰り返していた」

 

「誰もそれを止めようとしなかったんですか?」

 

「国王でさえ法律に縛られてろくに是正出来ないんだ。貴族の横暴を止められる人間なんていないさ」

 

 

士樹は呆れや悲しみと言ったマイナスの表情を浮かべながら話を続けた。

 

 

「“俺”の父親である領主もそんなクズの1人だった。農民のことは何も考えず、自分の都合でしか物事を考えられない男だった。奴は息子である“俺”にさえろくに自由を与えようとはせず、自らの傲慢のためにただ教育するだけだった。そんな生活を続けていた“俺”からは感情が少しずつ無くなっていった」

 

 

士樹は呼吸をして話を進めた。

 

 

「ある日、火事が起こった。“俺”は瓦礫に挟まれ、動けなくなった。それを助けてくれたのが……」

 

「アクエリアスドライバーを探しに来た大樹さんだったんですね」

 

士樹は頷いた。

 

 

「僕はあの人の瞳に引き寄せられ、1か月ぐらい一緒にした後地球のACE学園に来てその可能性を目の当たりにしたんだ。そこから先は君も知ってのとおりだ」

 

「そうだったんですか……」

 

 

2人の間にしばしの沈黙が流れた。しばらく思案した後、アインハルトが口を開いた。

 

 

「この後、もう1回一緒に温泉にはいりませんか?」

 

「それは魅力的は誘いだね。だけどその前に……居るのは分かってるんだ。出てきてよ」

 

 

士樹が少し離れたところにある木々にアクエリアスドライバーを向けながら問いかけるとレイとヴィヴィオ、亜沙が出てきた。

 

 

「俺とヴィヴィオはちょっと夜風に当たりに来ただけだ。話はほとんど聞き取れなかったら安心していいぜ」

 

「テヘヘ、気になったので後をつけてみました」

 

「まったくもう」

 

 

士樹はアクエリアスドライバーをいじりながら答えた。

 

 

「念のために亜沙先輩の記憶を消去――」

 

「誰にも言わないからそういうのは止めて!!」

 

 

士樹があまりにも自然な動作だったので亜沙は慌てて止める。ちなみに、亜沙もそれほど話を聞いてはいない。士樹は亜沙にいぶかしむような視線を向けるが、作業を中止した。

 

 

「これからは気をつけてくださいよ」

 

 

士樹はそう言って密かに笑みを浮かべながらホテルに戻っていった。アインハルトも少し遅れて着いていく。

 

 

 


 
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