No.401881

真・恋姫†無双~覇王を育てた男~曹嵩編(プロローグ)4

TAPEtさん

これ以上つづかなくて決して自分のせいじゃありません。

2012-04-02 23:35:34 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4006   閲覧ユーザー数:3448

「今私たちが居る場所だけど、この地図から見て私たちが目標としていた場所と、途中で諦めて出てきちゃったことを考えたら、この辺りだと思うわ」

 

曹嵩は持ってきた地図に小石を置きながらそう言った。

 

「一番近い村から半日ぐらいの距離か。それでもまだ運が良い方だな」

「そうね、周りに何もない荒野だったら本当にそれっきりだったわ」

 

とは言え、

 

「お前、半日も歩けるのか?」

「馬鹿にしないでよ。それぐらい……」

 

俺は曹嵩の顔をまっすぐ見ると、曹嵩は強気な口を止めた。

 

「……わからないわ」

「……」

 

何年も屋敷の中でだけ生活していた生娘。

剣術などに長けてるとは言っても持久力は別だ。

隠し穴で力尽きてしまったのが昨夜のことだ。まだそれ程体力があるとは思えない。

 

「でも仕方がないでしょ?動かないとどうにもならないじゃない」

「焦ることはないだろ。一日ぐらい、ここで休んで少し休憩してから動いても良い」

「ここでもう一晩過ごすというの?危険すぎるわ」

「道中でお前が力尽きた状況で何か起きたらその方が危険だ。賊などにでも会ったら俺だけでお前を守れる自身はない」

「………」

 

曹嵩は自分のせいで計画が狂ってきたことに責任を感じているのだろう。

でも、だからって更なる無茶をするのは良い判断とは言えない。

ただでさえ危険な道を選んだ俺たちだ。一歩間違えればそのまま滅ぼされる。

 

「…商団よ」

「え?」

「この時期だと、この辺りを通る商団もあるはずよ」

「そこに乗せてもらうというのか?しかし、そう上手く行くのか?」

「ここにもう一度野宿すると言っても安全というわけじゃないわ。私たちには毛布一つもないのよ。賊だって居ないってわけじゃないし。どっちも危ないのなら、動いた方がまだマシだわ」

「……」

「………あなたは反対なの?」

「……」

 

曹嵩が俺の意見を聞いてきた。

その仕草はいつも曹嵩とは少し違っていた。

普段知ってる曹嵩なら強引にでも自分が考える方に進もうとしていただろう。

でも、今の曹嵩はまるで俺が反対したらどうしようかと怖がっているようだった。

 

「あ、あなたが嫌だというのだったら…」

「俺はお前の安全を考えたら、やっぱりここに居た方がまだ良いと思う」

「……そう、それならわかったわ」

「でも」

「?」

「それでお前の気が済まないのなら、俺はただお前を守るために動くだけだ。万が一にでもお前独りだけで行かせるなんて選択肢はない。今も、これからも」

「……一刀…」

 

最も、このまま俺が反対した所で、彼女が強引に疲れた体で行こうとすると、俺は付いて行くしかない。

でも、曹嵩は俺に更に賛成するか反対するか意見を聞いてきた。

それはつまり、俺が自分の意見に反対して自分から離れることを恐れているみたいだった。

 

そういうのは、俺が望む曹嵩の姿ではなかった。

自分の往く道を自らの力で進もうとする姿。

曹嵩はそんな姿でなければならない。

俺はそんな曹嵩を側で支えたいと思って今ここに居るんだ。

 

「あ」

「どうした?」

「この音って……」

 

曹嵩の話を聞いて俺は耳を傾げた。

 

「馬車の音よ」

「まさか、ほんとに来るとは」

 

タイミングが良すぎるじゃないか。

 

「取り敢えず、行ってみましょう」

「ああ」

 

俺は曹嵩と一緒に馬車の音がする方へ向かった。

 

 

 

 

馬車は街から街を回る雑貨商人のものだった。

俺たちはその商人に次に行くまで馬車に乗せて欲しいと言った。

 

「まぁ、俺としては乗せてやるのは構わんが、こんな所に男女二人だけに居るなんて、一体どういうことなんだい?」

「え、あ、それは……」

 

俺は戸惑った。

そういえば、こんな所に男女二人だけでぽつんと居るなんておかしい。

先に口を合わせて置くのだった。

と、思っていた時

 

「夫婦です」

 

と、曹嵩が言った。

 

「お、おい」

「実は…私たちが居た村が賊に襲われてしまって、それでここまで逃げて来たんです」

「そうか。災難だったな。最近賊が増えてきてるからな…話は分かった。乗ってくれ」

「ありがとうございます。どうやってお礼をすれば…」

「要らんわ。俺も昔街を襲った賊に妻を殺されてしまったんだ。それからはこうして街から街を渡りながら一つの所に長居することなくずっと動き回ってるんだ」

「あ」

「死んだ妻に申し訳なくて、定着して新しく妻を娶ることも出来ずに……俺は死ぬまでこう生きるつもりだよ」

「……」

 

商人はそう言いながら俺を見た。

 

「若者。お主は自分の嫁ぐらいはちゃんと守ってくれ。例え自分が死ぬことがあっても、それが夫として義務じゃ」

「あ……はい」

 

商人を気圧にそう答えたものの、

 

いや、夫婦じゃないのですが……

 

・・・

 

・・

 

 

 

「おい、なんで夫婦とか言ったんだよ」

 

馬車の裏に乗せてもらった後、俺は商人に聞こえないように曹嵩に文句を言った。

 

「仕方ないでしょう。だってそう言った方が一番自然じゃない」

「他にあるだろ。兄妹だとか、俺が従者とか言ったら」

「あなたと私全然似てないでしょう。それに、従者持ちのお嬢様なんて、自分から姿バラしてるのと一緒じゃない」

「それは……」

 

確かに曹嵩の言う通りだが、だからと言って。

 

「何よ、少しは感謝しなさいよ。あなたみたいなのと演技にでも夫婦になってあげてるのだから」

「…ぁあ、もう好きにしろ」

 

どうせ口だけの演技なんだ。

問題はないだろう。

 

 

 

 

と思ったらコレだよ……

 

街に無事到着した俺たちは宿屋を探していたのだが、丁度街はお祭りが始まって人がいっぱいだった。

当然宿屋も周りから来た旅人でいっぱい。そんな状況でやっと空いた部屋のある宿屋を見つけたのだが……

 

「部屋はあるんですけど、一人用の部屋しか残ってないんですが……」

「構わないわ。この部屋でも頂戴」

 

ベッド一つしか残ってない部屋しかなかった。

 

「お前はここに泊まれ、俺は他に探して見る」

「何言ってるのよ、あんたは。二人で泊まるのよ」

「は?!」

「当たり前でしょ?あなたと私はその……ふ、夫婦なんだから」

「いやいや」

 

それはあくまでそう口合わせしてるだけで、何もそこまでしなくても……

 

「い、言っておくけど、あなただけ床で寝るとかもダメだからね」

「最後の逃げ道まで先に塞ぐなよ。もう詰んだだろうが」

 

つまり、アレか?

俺にお前と一緒に布団で寝ろというのか。

俺が正気で居られると思っているのか、お前は。

 

「い、一応言っておくのだけれど、私の体に指一本でも触ったら容赦なく切り落とすわよ」

「しねーよ」

「…即答されると逆に腹立わ」

 

どうしろと。

 

「もう良い。俺は床で寝るわ」

「駄目だって言ってるでしょう。私の言うこと聞いてくれるんじゃなかったの?」

「んだよお前生殺しさせるつもりのくせに無茶言うなよ!」

 

ついぶっちゃけてしまった。

 

「なっ……」

「…こほん、取り敢えず、言いたいことは分かったけどさ、別に夫婦だという理由で同じ寝床で寝ることを強いられるわけじゃないだろ。しかもこれ一人用だし」

「そ、そうね。良く考えてみたら、こんな小さな寝床にあなたと一緒に寝たら私があなたに押されて落ちてしまうかもしれないじゃな」

「そそ、俺割と寝相悪いんだよね」

「そ、そう…じゃあ、あなたはもう床で寝てしまいなさい。寝床は私が使うわ」

「ああ、そうしてくれ。俺は下に行って余る毛布とかあるか聞いてくるから」

 

そう行って俺はスタコラサッサとその部屋から出て行った。

今ので割りと凄く胸がドキドキしてきた。

 

別に曹嵩のこと肉欲的な対象として見てるわけではない。ないのだが……じゃあ完全に興味ないと言ったら嘘だろう。

 

でもまた冷製に考えてみたら、俺の世界だと今の曹嵩の子に手を出したら俺捕まるレベルじゃないのかとも思う。

こんな世界に来てそれが何の関係があるのか聞かれるともちろん何の関係もないけど……

しかも男女一緒に夜逃げしたくせに今更なにを言いますかって話なんだけど……

 

ああ、じゃあ俺にどうしろってんだよ!あのまま襲って切り落とされればよかったのかよ!

 

……はぁ、疲れる。

 

 

 

 

 

結局その夜はろくに眠れず夜が明けてしまった。

今日でも宿屋に部屋が空いたらそっちに行こう、と思いながら床から立ち上がると、ふと布団で寝ている曹嵩の顔が目に入った。

 

「……ふぅ…」

「……」

 

寝てるうちに髪の毛がちょっと乱れてる寝顔とか、軽く寝息をたてながら膨らんで縮むをことを繰り返す胸を見ていると……

ええい、もう良い。ちゃっちゃと起こすぞ。

 

「曹嵩、おい、起きろ」

「……うぅ…かずと……?」

「もう朝だ。起きろ」

「……あともうちょっと…」

 

と言いながら布団を顔まで被ってしまった。

別に早く起きた所で何かあるわけでもないが、なんかこう……人はちゃんと眠れなかったのに二度寝しようとする姿を見ると無闇に腹が立った。

 

「おい、曹嵩」

「うぅーん…!」

 

無理矢理布団を剥がすと日の光が嫌なのかまた布団を被ってしまった。

 

「いい加減起きろって」

「…うるさーい!」

 

三度目起こそうとした時、曹嵩の拳が俺の顔面に直撃して、俺はそのまま後ろに倒れた。

 

「いってー!」

「……起こすんじゃないわよ」

 

と言いながらまた曹嵩は眠ってしまった。

あぁ…もう好きにしろ。

 

・・・

 

・・

 

 

 

「うーん……?もうこんな時間なの?一刀、……ぷっ!どうしたのその顔の痣は?どこかにぶつけたの?」

「…………しらね」

 

 

後で聞いたら曹嵩は朝が弱いらしい。

無理矢理起こそうとしたら取り敢えず睡眠を優先するため、起こす相手に何をするか自分でも憶えてないらしかった。

これでもう一つ賢くなった気もするが、その対価はとても痛かった。

後…

 

「ごめんなさいってば。男が一々そういうので拗ねないでよ」

「拗ねてない」

 

ただこれからお前がどれだけ寝ても絶対に起こさない。そう思っただけだった。

 


 
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