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チラ裏程度のリリカルなのは 作者は著作権を譲渡したいようです 第6話 ~ 第10話

死んだと思ったが気がついてみれば赤ん坊。さらに3年経ってやっと『リリカルなのは』の八神はやての双子の兄と発覚。下手すれば死亡フラグいっぱいの第二の人生であたふたしてたら『とらいあんぐるハート』シリーズのHGS能力者になっていた主人公。そんな主人公の織り成す原作脱線を生暖かい目でお読みください。 ※1.タイトルに関する疑問は注意書きに詳細があるのでお読みください。
※2.にじファンより移転してきました。

2012-04-02 20:50:41 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1758   閲覧ユーザー数:1714

第6話

 

拝啓仮想兄さん、事件です。

 

いや、今回はそんな大きな事件じゃないんだけどね。

 

ただ俺が熱を出してダウンしてるだけだ。

 

 

 

最近、HGS能力で使える能力が増えてきてたんで調子に乗ってたんだけど、やっぱり病気なんだねぇ。

 

朝からボーっとするなぁと思ってたら、熱が42℃もあったんでビックリしたよ。

 

体温計の表示って42℃までしか表示しないらしいから本当はもっとあったかも。

 

普通の人間ならこんな高温だと脳みそパーになっちゃう可能性もあるけど、HGS能力者って体が普通と違うから高温にも耐えられるらしいよ。

 

とらハ3のサウンドステージって言うドラマCDでフィリス先生の姉妹のシェリーも腕が千切れてもすぐくっついてたし、よくよく考えるとHGS能力者の再生能力って人間技じゃないよね。

 

HGSは伊達じゃない!!

 

 

 

いや、よく考えるとHGS能力者は本当に人間じゃないのかもしれない。

 

HGSは遺伝子レベルの突然変異なのだから、人間の未来の可能性の1つ。

 

つまりガ○ダムでいうところのニュータイプのようなものだろうか。

 

ただ、まだ1つの種としては不安定なために薬や機械の助けがなければ生命活動も困難な小さな火種。

 

これが、薬や機械の助けなく普通に暮らせるようになり、HGS能力者の人口がもっと増えれば、どんな風にも負けない大きな火になり、もしかしたらガン○ム種みたいに旧人類(オールドタイプ)と新人類(コーディネーター)とで戦争になる可能性もあるかもしれない……。

 

 

 

まっ、そんな将来は多分ずっと先だから自分には関係ないけどねwww

 

俺としては、この高熱で種無しにならないかの方がずっと大事。

 

ガンバレ俺の遺伝子!HGSの力も借りて生き残るんだ!!

 

そう自分の股間に向かってエールを送ってみた。

 

 

 

と、こんな馬鹿なこと考えられるのも今は薬を飲んで熱がだいぶ下がったからだ。

 

薬はこんな事もあるかもと、矢沢先生からただの解熱剤を以前から貰っていた。

 

ほんとはもっと体に合わせた体調を整える薬の方が良いのだが、俺の場合、成長と共に普通の人間の遺伝子からHGS能力者の能力に耐えられる遺伝子に変化しているので日々変化を調査しなければ俺にあった薬ができないらしい。

 

そんな訳で、熱はだいぶ下がったけど体のダルさが半端じゃなく俺は布団の中で退屈をもてあましてちょっとだけ知的な思考と某ホテルドラマ『ホ○ル』や○ンダムネタに走ってみた。

 

俺の部屋にはテレビが無いからマジつまらんとです。

 

 

 

ちなみにはやて達、愉快な八神一家は俺以外家にはいない。

 

なんという奇遇か、今日ははやてと俺の入園式だからだ。

 

一生に一度(俺の場合二度目だかけ一度目覚えてないから)の初めての入園式が、初めてのHGS症状的ダウンと重なって潰されたのだ。

 

これを例えるならば、女の子が彼氏と念願かなってヴァージンブレイクと思ったら彼氏が変態で後ろのヴァージンブレイクだったよ、みたいな気持ちだろうか。

 

せっかく、はな○幼稚園的に幼稚園の先生とフラグ立てようと思ったのに……。

 

そして目当ての先生の男性同僚に寝取られて、キーッ悔しい!!みたいな。

 

そんな昼ドラ風の楽しい幼稚園生活を想像してたのに、最初から躓いてしまった。

 

しょっぱなで躓くと色々やる気落ちるんだよねぇ。

 

今は体がだるいからなお更だ。

 

あまりに面白くない状況に、とりあえず寝ながら手足を空中に出してバタバタさせてみた。

 

 

「君は何をしてるんだ?」

 

 

声がしたドアの方を見ると、開けっ放しだったドアの前で制服姿のフィリス先生そっくりの女性が呆れた表情でこっちを見ていた。

 

 

「……おもちゃ箱から崩れ落ちた時のショックで少しだけ残っていた動力で動いているゼンマイ人形のマネ」

 

 

「はぁ~、本当に何をしてるんだ……」

 

 

と言いながら頭を抱えるのは、フィリス先生の姉で、正確に表現するとクローンの元になったリスティ槙原こと、リスティさんだ。

 

 

「君は、本当はいい年なんだろう?何でそんなマネしてるのさ」

 

 

実はリスティさんは俺が転生している事を知っている、……というかバレちゃった。

 

数ヶ月前にフィリス先生の紹介でHGS能力者が2人もいる『さざなみ寮』に、はやてと母さんそして自分の3人で遊びに行くことになり、そこでとらハ2の舞台に感激している俺の心を読まれてバレちゃったのだ。

 

フィリス先生は知り合いの心は読もうとしないから良かったけど、リスティさんはさざなみ寮の防犯的な意味合いと個人的な趣味で訪問者の心をちょくちょく読むらしい。

 

「ちょっと2人でO・HA・NA・SHIしようか?」とリスティさんの部屋に連行され(ちなみに俺は連れて行かれる際に仁村真雪から「浩介からフられたからって今度は若いツバメかー?w」とからかわれるリスティさんを見て本当にさざなみ寮に来たんだなぁと実感した)、問い詰められたんで全部教えちゃいましたw

 

いやね、HGSなり立ての俺と、もともと軍事利用を想定して調整されていたリスティさんじゃどう逆立ちしたって相手にもならないし、よく考えるとこっちは別に悪いことはしてないし、将来的に協力者がいた方が良いと考え、話すのは面倒なので心を読んでもらい全部知ってもらいました。

 

 

 

とらハ2のHシーン部分の記憶を見て、「ボクはこんな羨ましい事、耕介にしてもらっていないぞっ!」と襟掴まれた。

 

どうやら、この世界ではとらハ2の愛さんエンドで、とらハ2主人公の槙原耕介さんは、従姉(いとこ)でさざなみ寮のオーナーの槙原愛さんと結婚したみたい。

 

リスティさんは愛さんの養女になり、結果として耕介さんの義娘になったわけだけど、耕介さんの事を完全には諦めきれていないっぽい。

 

自分たちがゲームの存在と知って少し複雑な顔をしてたけど、昔何かで読んだ『物語は作者がアカシックレコードから並列世界の情報をイメージとして受診して作られている説』を話して何とか納得してもらった。

 

そんな訳でリスティさんはこの世界で唯一の俺の理解者である。

 

 

「今日はどうしたんですか?」

 

 

「一応お見舞いさ。フィリス経由で君が家にいるって知ったからね」

 

 

朝、病院に母さんが電話して矢沢先生に連絡入れてたから、そこからフィリス先生に伝わってリスティさんにいったみたい。

 

 

「コレ、おみやげ」

 

 

そう言うとポケットから何かを取り出し渡された。

 

 

「ここじろ?」

 

 

にゃ~

 

出てきたのは、子にゃんこだった。

 

さざなみ寮の半飼い猫の子虎と、森ミルクさん所の飼い猫の次郎の子供の中の1匹、虎次郎の子供だ。

 

俺たちが遊びに行く前日に生まれたそうで、まだ名前がないこの子の兄弟と遊んだ際に冗談で虎次郎の子供だから『ココジロウ(子虎次郎)』と呼んだら、名の響きが可愛いとそのまま決まってしまった。

 

でもそのままじゃアレなので、漢字で書くと『虎々次郎』となった。

 

ちなみにこの子も次郎から続くシャムの血を引いてるらしく立派なシャム雑種である。

 

 

「はやてが随分気に入ってたようだし、この子も2人に懐いてたから幼稚園の入園祝いにプレゼントだよ。はやと達の両親にも許可は取ってあるよ」

 

 

「ウチの親は良いとして、この子の親の了解は?」

 

 

リスティさんはHGSの力を使って猫とも話せるので聞いてみる。

 

さざなみ寮では他にもリスティさんと同じHGS能力者の仁村知佳さんと、猫又(?)の陣内美緒さんも猫と話せる。

 

 

「もちろんそっちも取ってある。美緒のおかげで寮周辺は猫密度が高いからね、大事にするなら遠くに嫁に出すのもいいってさ」

 

 

確かにさざなみ寮周辺は猫王国になっている。

 

美緒さんがいるせいもあるだろうけど、たぶん代々優秀なボス猫がいるせいだと思う。

 

次郎や子虎、子虎の親の黒影など、ゲームの『ラブラブおもちゃ箱』の知識だが、どの猫も人柄もとい猫柄の良い猫がボスの座を継いでるのでそのおかげで周囲の猫が集まってるのだと思われる。

 

 

 

渡されたここじろをお腹に乗せて背中を撫でてやると気持ち良さそうに、にゃーと鳴く。

 

うん、これは麻薬より中毒性が高いよね。

 

 

「ここまでが表向きの用事、ここからはこの前は時間がなくて出来なかった深い話をしようじゃないか」

 

 

そう言うリスティさんの目はキラリと光る。

 

大筋は頭の中読んでもらったけど、はやてと母さんを残してたから詳しいことについては何も話してないからなぁ。

 

長い話になるかもしんない。

 

そう思いながら、俺はここじろに似合いそうな鍋が家にあったか考えていた。

 

 

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話が長くなりそうなので切りました。

もっとも読む側とすればぜんぜん長くないかもしれません。

虎々次郎は、オリ猫です。

 

とらハシリーズはいっぱい猫が出るけど、自分の中じゃラブ箱の次郎の話が一番好きです。

去勢されてたのに、霊具の杖の力で人間になっちゃった時に子虎と子作りしちゃってまさに奇跡ですw

人化した猫同士は子供作れたけど、人化した猫と人間では作れるんだろうか?

まさかのヒロイン猫ルートもありえるかもしれない。

 

 

第7話

 

「それで、深い話というとマリアナ海溝の話ですね」

 

 

「……確かに深いがなぜ君と海の話をしなきゃならない」

 

 

深度1万1000mもあるのに違うらしい。

 

 

「じゃ巨大昆蟲の出てくる腐った森の話ですか?」

 

 

「そんな森、日本中探しても無いだろう」

 

 

夏休みの定番ナウ○カの森の話でもないらしい。

 

 

「わかりました、月9日本テレの1分間で人生が変わる話ですね」

 

 

「1分で人生が変わるってどんな詐欺話だい?」

 

 

う~ん、だったらしい。

 

 

「近所のいつもおじいちゃんとおばあちゃんがフレンチキスしてる家?」

 

 

「その深いじゃない!ってか、それはもう不快な話だろうっ!」

 

 

深井さん家の話じゃないみたいだ。

 

 

「冗談はもうこれくらいにして話を進めていいかな?」

 

 

ジト目で見られちゃった。あんまり見られるとゾクゾクしちゃう。

 

 

「君がうちや翠屋の子達がゲームやアニメになってる世界から生まれ変わったのはわかったけど、それを知っている君がこれからどうするかと言うことだよ。心を読んで君が悪い人間じゃないとはわかってるけど、それでも君の動き次第じゃこれからのこの街はヘタすると大きな被害が出そうだからね」

 

 

真剣に聞いてくるリスティさん。

 

確かにジュエルシードも闇の書の対応次第じゃ街や世界規模の災害になるからなぁ。

 

リスティさんにとって一番守りたいのは家族であるさざなみ寮の人だろうけど、それに関係するこの街も彼女にとっては守りたいモノの1つなのだろう。

 

 

「とりあえず自分としては、平和が一番です。戦いたくないでござる。痛いの嫌でござる。働くのも嫌でござる」

 

 

「言葉だけ聞くと駄目人間の発言だね」

 

 

「でも世界を何個も壊してるモノと個人やダース以下の人数で戦うとか、世界単位で半強制的に管理してる組織で小学生から働くとか、アニメのご都合主義丸出しじゃないですか?そんなのに積極的に関わりたくないですよ」

 

 

魔法も非殺傷とか言いながら、船の装甲ぶち破ったり、人に電撃攻撃や氷付けしたりと、あれじゃ衝撃だけで死んじゃったり、電気や氷で心臓麻痺したりしちゃうよ。

 

多分ウチの人間になると思われるヒト達も、魔法とか言いながら刀や鈍器振り回す人いるしね。

 

あれって魔法使ってもピコピコハンマーやスポチャンのエアー刀になるわけじゃないでしょ?

 

 

「まぁ、それの言い分もわかるけどね」

 

 

「ストーリー的にはやては強制的に関わる――というかもう被害が出ちゃってるのでそっちは何とかしなきゃいけないですけどね」

 

 

「何とかって、何か手でもあるのかい?」

 

 

「こっち引っ越したぐらいから闇の書対策大作戦と称し色々やってます。闇の所に名前書いてみたり、洗脳できないかと思いこっちに都合良い事囁いてみたり、ハッキング出来ないかとUSBコードさしてみたり、煙で炙って闇の所の闇だけ追い出せないかとやってみたりと……」

 

 

「どうにかしなきゃならないのは君の頭の方だろっ!」

 

 

失礼なっ、俺の頭はもうどうにかなってます。

 

転生してから、子供の体に精神が引きづられてるのか、それとも2度目の人生で色んな枷が外れたのか、はっちゃけまくってるのは自覚してます。

 

でもね、やめられない止まらない、なんですわフリーダムwww

 

 

「まぁ数撃ってやれば何かは効果あるかと思い、手当たり次第やってますが今の自分じゃデバイスに精通した人の伝(つて)がないので今のところ子供のいたずらみたいな事しかできてない状況ですね」

 

 

「魔法なんてこっちの世界じゃないものだからね。確かに今は無理かもしれないね」

 

 

「近いので霊力だけど、似て非なるものってところでしょうかね?」

 

 

「う~ん、デバイスっていうのは機械的なところもあるみたいだから薫じゃわからないだろうね」

 

 

リスティさんが薫と呼ぶのは、神咲薫さんの事。

 

さざなみ寮の寮生の1人で実は退魔道・神咲一灯流の正当伝承者でその証である霊剣十六夜を受け継いでいる祓い師だ。

 

もちろんとらハ2のヒロインの1人。この前寮であったけど、もう大学生だった。

 

薫さんは霊具なら詳しいかもしれないけど、さすがにデバイスはお門違いだろうな。

 

 

「と、いう事で何か思いつけばやりますが、それまではお預け状態ですね。リスティさんも何かいい手があったら教えてください」

 

 

「わかった。ところで第1期や無印って君の頭にあるそっちはどうするんだい?」

 

 

あっちかぁ、どうしましょうかねぇ。

 

 

「う~ん、うちには関係ないから関わりたくないけど、魔法世界の住人とコンタクト取っておけば闇の書のほうで何か対策打てるかもしれないんですよねぇ。……でも管理局に関わるのは危険ですし、悩みどころです」

 

 

「淫獣もとい、フェレットや翠屋の子だけ接触してもなし崩しで管理局まで情報が漏れそうだからやめた方がいいだろうしね」

 

 

リスティさんが知ってるのは、俺の知識からの情報だからユーノが淫獣なってるよ、ワロタw

 

管理局の方も俺の悪印象が入っちゃってるかも。

 

これもきっとKYな黒い小さいのや糖尿病末期患者なお年の妖精さんがいるせいかね?

 

この2人はきっと日本人の性格に合わないんだろうなぁ。

 

日本人は場の空気読む事や、苦い抹茶と甘味菓子の調和の楽しみ方を文化にしてるから、それをぶち壊すような行動のこの人達が許せないんだろうね。

 

 

「まっケース・バイアグラ・ケースで臨機応変に行きましょう。知ってる歴史通りに行けば少なくとも知り合いに死者は出ないんですから無理やり関わる必要はありませんしね」

 

 

「随分と薄情な考え方だね」

 

 

「俺は正義の味方じゃなくて一般人だし、自分の幸福を余ってる分は他人に分け与えても自分を犠牲にしてまで分け与える事はしないって方針なのでこんなもんです」

 

 

「ボクも似たようなタイプだから、その考え方を否定はしないけどね」

 

 

「でもその割には将来は警察関係なんですよね?」

 

 

とらハ3でリスティさんは警察の民間協力者をしていると言っている。

 

コンサートの警備主任もしてたり、結局正確にはどんな役職なんだろう?

 

 

「HGS能力者ってのは色々と世間の風当たりが厳しいからね。社会ってやつに奉仕した仕事の方が世間体がいいので一応選択肢の1つとして考えてるよ」

 

 

ニヤリと笑うリスティさん。

 

妹2人と随分違うあくどい理由だなぁ。

 

まぁ、確かにHGS能力者って化け物扱いされてもおかしくないから後ろ楯作るためにもそういう職になった方がいいんだろうな。

 

俺も将来の事、考えておくか。

 

 

「しかし、色々話してみたが何1つ大きな手が打てないものだね」

 

 

「そんな事ないです。リスティさんが順調に警察関係者になってくれれば、警察と日本の法律を盾に管理局をけん制できますし、俺の拙い超能力を先生になってもらえますからね。…そうそう、リスティさんってこんな事できます?」

 

 

そう言うと俺は頭をリスティさんに差し出す。

 

心を読んでもらうと言葉で説明しなくていいから楽だ。

 

お肌の触れ合い回線ですね。

 

 

「超電磁砲(レールガン)?面白い技だね」

 

 

他にも某ビリビリの、砂鉄剣や磁力操作を利用した鉄骨などへ移動方を見せてみる。

 

 

「やってみないとわからないけど、多分出来ると思うよ。これと同じ出力は難しいだろうけどね」

 

 

うわぁリスティさんは原作で電気攻撃を得意にしてるから出来るかもと思ったけど本当に出来るんだ。

 

 

「それでも羨ましい事です。俺なんて空き缶で試したら、バチッて跳ねはしたけどちょっと凹みが出来ただけだったからなぁ」

 

 

アルミの空き缶でこれだよ?中身入ってたらへっこみもしないかも。

 

 

「こればかりは才能だからなぁ。まぁ君はまだ能力が固定してないから練習していけば出力も上がっていくかもよ。……そういえば君は精神感応(テレパシー)のほうは覚えないのかい?」

 

 

そう、原作で出てくる超能力は大抵覚えたがこれだけは俺は覚えていない。……というか覚えようとしていなかった。

 

精神感応(テレパシー)。これはリスティさんが俺の心を読む時に使っている能力だ。

 

リスティさんは、本当は今日みたいに俺に直接触れなくても心を読めるけど、触れないで読むより触れて読む方が力を使わなくてすむらしい。

 

それに心を読むのも表面的な思考(たとえば心の中のつぶやき)を読むのと記憶を読むのでは、だいぶ力の使う多さが違うそうだ。

 

もちろんこれを使えば魔法の『念波』みたいに離れた人間と会話も出来る。

 

便利な能力だとは思うけど……。

 

 

「使っているリスティさんには悪いけど、余計に化け物扱いされません?」

 

 

心の中なんて普通の人間は隠したがるものだから、それを読めるとなると人間はそういう存在を怖がると思う。

 

自分だって、原作でリスティさんのことを知ってるから読んでもらっても良いと信用したけど、何も知らない人間から心を読まれるのはやられたくない。

 

 

「読める事は秘密にしておいたらどうだい?」

 

 

「それだけじゃなく、そんな能力覚えたら自分が際限なく使いちゃいそうで怖いです」

 

 

人間、楽を覚えたり、楽しい事を覚えると歯止めなく使っちゃうからなぁ。

 

一度覚えた快楽はなかなか手放せないし……、だったら覚えない方が良いと思う。

 

 

「でも覚えておくと色々便利だよ?応用すればボク以外の人から心を読まれる事も防げるし……」

 

 

ふむ、でもそうそう全世界で出現例の少ないHGS能力者には会わないだろうし、この街にいるHGS能力者ならバレても困らない人ばかりだしなぁ。

 

 

「それにこの子とも話せるよ」

 

 

そう言って俺の膝の上で眠り込んでるここじろを指差す。

 

ああ、これは悪魔の誘惑……。

 

 

「ぜひ教えてください(キリッ」

 

 

あはは、理性の天使が出る幕もなかったぜw

 

ここじろがいるから土下座は出来なかったが、いなかったらきっと高速土下座ってやつをリスティさんに見せてたかもしれない。

 

 

「随分と急に意見が変わるね(汗」

 

 

「フッ、人間は欲望を糧に進化する生き物さ」

 

 

「意味がわからないよ」

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りで精神感応(テレパシー)を覚える事になった俺のいない入園式の春であった。

 

帰ってきたはやて達が居間に置かれた土鍋に面白い反応するのは言うまでもない。

 

 

※注意事項 良い子はねこは使われなく鍋に入れましょう。お兄さんとの約束だよ。

 

 

第8話

 

「はやと、はやてーバス来たわよー」

 

 

家の外で母さんが幼稚園バスが来たことを知らせてくれる。

 

よし今日も行こうか。

 

俺は勢いよく玄関に駆け出す。

 

 

「よしっ、はやて!ここじろ!ジェットスクリームアタックだっ」

 

 

「にゃっ」

 

 

俺の掛け声にここじろが反応し、背中を駆け上り、頭の上に乗る。

 

 

「それってアイスクリームなんか?」

 

 

はやてはいつも通り俺の言葉の意味は理解していないが、関係なく俺の念動力で俺のすぐ後ろに引き寄せる。

 

靴を履き、玄関を出て、俺たちを迎えに来たバスの横で待つ母さんと迎えの先生の所まで駈けると、跳ねるように念動力で自分を持ち上げる。

 

そしてすぐ後ろに引き連れていたはやての肩に飛び乗る。

 

もちろん直接肩に乗るとはやての服が靴で汚れるので少しだけ浮かせてるが。

 

今の状態は人間(+ネコ)トーテムポールに。

 

 

「聞いて驚け!見て笑え!我ら八神家のはやと!」

 

 

「ん?なまえいうんか?はやてや」

 

 

「にゃ~」

 

 

「そして、八神家のマスコットここじろ!」

 

 

ここじろも自己紹介してるが言葉が通じないので。俺が翻訳してあげる。

 

 

「はっ!!」

 

 

掛け声と一緒に俺ははやての右に飛び、ここじろは俺が勝手に動かし広げさせたはやての両腕の左手に飛び乗る。

 

着地した俺は、はやての右手を自分の左手でつかみ、自分の右手は地面につけ、倒れそうになる体を支える。

 

俺が右手を引っ張っているので普通に考えてるとバランスを崩して倒れるはやては、もちろん俺が念動力で支えているので倒れない。

 

そして、2人と1匹は半開きの扇のような形となる。

 

 

「我ら八神家、魂の3兄弟!!」

 

 

こんな感じで今日も俺たちの『楽しい幼稚園(1冊600円)』生活は始まる。

 

 

 

 

 

 

今日は元気だ!ご飯がうまい!!クラスの悪ガキ(アイドル)の八神はやとです。

 

いやー入園式は休んじゃったからハブられるかなぁと思ったが幼稚園のガキんこじゃ、そーゆーのはあまり気にしないので簡単にとけこめた。

 

むしろ問題なのは、はやての方だった。

 

 

 

幼稚園程度のガキんこじゃ思慮がないから車椅子に乗ったはやてを見て「何であんなの乗ってるの?変なのー変なのー」と言ってイジメたらしい。

 

翌日回復した俺が念動力(サイコキネシス)で持ち上げて運んだら、「おばけだー!おばけがいるぞー!」と言われた。

 

まぁ確かに足も動かさず、少し浮いて動いてたらお化け扱いもされるか。

 

でもカワイイ妹をお化け扱いされて、つい切れちゃってはやてを使って竜巻旋風脚でお仕置きしたとしてもきっと俺は悪くない。

 

やった後、はやてが目を回したとしてもきっと俺は悪くない。

 

 

 

その後に俺の『一〇八もあったらいいなぁの特技』の内の十七番の技『サイキックボイスチェンジャー』で幼稚園児くらいの子供に大人気のヒーローの声色で「君たち、か弱い女の子を苛める事はこのイチゴアズキ☆サンダーが許さないぞ!!」と、正月の屋台で(本当は欲しくもなかったが父親がいらぬ気を使って)買ってもらったお面をアポートで取り寄せ、被ってポーズ付けながら言ったら、なんか一気にクラスの人気者になった。

 

ふっ、幼児の扱いなど容易いものよのう。

 

ちなみに『サイキックボイスチェンジャー』とは俺が開発した技で、口の周りをサイコバリアを応用した特殊なバリアで覆い、自分の声の音波の波長を変える事によって自分の思い通りの声色に変える技である。

 

はやてに絵本を読んでやる時に思い付きで誕生した技で、籠絡にゃんにゃん、もとい老若男女様々な声になれ、声優にもなれるかも?と将来の一つの可能性を匂わせる最近お気に入りの技だ。

 

 

 

そんなこんなで今でははやてもイジメ対象から俺のヒーローショーもどきのアシスタント、ちっちゃなお姉さん役である程度幼稚園でも人気者になっている。

 

でもぶっちゃけスタントでは、自分を念動力で動かすよりやりやすいから殺陣(たて)で大活躍している。

 

毎回目を回してるけどね(笑)

 

 

 

あとはやての移動の際に念動力で動かすのも、普通に動かすと幽霊状態でまたイジメられるかもしれないからもっと普通に歩いているっぽく足を動かすように工夫した。

 

これも実は結構大変だった。

 

初めは、昔ちょっとだけ読んだ少年ジャ○プでやっていた超能力マンガ『PS○REN-サイレン-』で超能力にプログラムを組み込むという方法があったのを思い出し、俺が念動力で動かしている間は足が動くようにプログラムを組んでみた。

 

うん、足は動いた。だけどなんかゲームの初代ドラ○エの動きみたいに前後に動いても横に動いても同じ足の動きで気持ち悪かった。

 

そこで自分の足の動きを参考に、前後左右に動きに合わせた足の動きにプログラムを変更した。

 

すると次に気になったのは、移動の速度に足の動きが合っていないことだ。

 

幼稚園くらいの子供はよく走り回るのに、それに足の動きが合わないとおかしいと思い、移動速度によって足の動かすスピードが変わるように修正した。

 

宙に浮く高さも出来るだけ地面ぎりぎりにして、ドラ○もん並みに浮いてるように見えなくした。

 

そうやって少しずつ直すと人間の普通の動きに似ていくが、その分普通の人のしない動きをすると余計にその動きが目立つようになり、何度も修正を加えてやっと普通に見る限りでは全く違和感なく歩くような動きになった。

 

たぶんパソコンのアプリケーションで例えると、バージョン12.5くらいなったと思う。

 

俺ちょ~頑張った、たぶん普通にHGS能力の訓練するより頑張った。

 

AS○MOとか人型ロボット作った人本当に尊敬するわ。

 

 

 

そんな感じでなかなか楽しい幼稚園を頑張ってます。

 

自分のクラスの担任の先生が嫌な意味で花○幼稚園と同じ男だったことにガックリきたり、他のクラスの女性先生達がみんな女子プロレスラーじゃと思うような人たちばっかりでも負けずに頑張ってます。

 

読心を覚えたら、ここじろが実は300年くらい前の猫又が転生した子猫だって本人から教えられ驚きながらも頑張って暮してます。

 

最近、はやてが料理を覚えようと母さんと一緒に練習して、俺が実験台にされ黒焦げの物体食わされても頑張って生きてます。

 

父さんが、満員電車で女性の口紅をシャツに付け帰ってきた時に、母さんが見た事もない笑顔で父さんを連れて行き、それ以来1週間父さんを見かけなかったこともありましたが頑張って気が付かないフリしてます。

 

フィリス先生が将来医者になるため整体の練習を俺でして、『ん!?まちがったかな?』と言ってるけど頑張って生きてます。

 

リスティさんが俺の記憶からHUNTER○HUNTERを見て、キ○アみたいに電撃を体に浴びさせ能力を得させようとしてるけど頑張って訓練してます。

 

リスティさんが俺の知識読んでマンガ喫茶の代わりにしてるけど頑張ってます。

 

 

 

そんなこんなでもうすぐ4歳。

 

誕生日プレゼントは何を希望しようかなぁ。

 

 

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今日の話の中で出てきたヒーローですがかなり思い付きで決めました。

なのに何故か、イチゴアズキ☆サンダーにはバナナドーフ◇スノーとメロンチャ▽ウィンドという仲間がおり、敵にはライチゴマ●シャドウというのがいるという設定が思い浮かんだ。

これは熱射病というやつだろうか?

厨二病?そんなのとっくに発病してるから心配いりません。

 

そうそう、ここじろの思いっきり後付けの設定ですが本当に書いてる最中に浮かんだ後付けなのであまり突っ込まないでください。

どんなキャラにするかとかこれからゆっくり考えます。

 

 

第9話

 

季節も変わり、蝉がうるさく鳴き、ここじろを頭に乗せて外を歩くと熱中症になりそうな夏。

 

幼稚園が夏休みの入った頃に矢沢先生から、HGS能力者を管理している施設『研究センター』の日本支部がある静岡に行ってくれないかと言われた。

 

なんでも登録に必要なデータだけは向こうに送っていたが、変なフィンにやたら変化する俺を一度じっくり調べてみたいと先方から依頼が来たらしい。

 

 

 

これは強制ではないらしい。

 

センターの人間は医者というよりも研究者ばかりなので、あまりこっちの心情を気にしない検査が行われるかもしれないので行きたくなければ行かなくて良いとのことだった。

 

俺はちょっと迷ったが、自分の能力をちゃんと把握しておいたほうがいいと思い行くことにした。

 

それにこの時期に静岡といえば桃が収穫時期ですからね。

 

桃おいしいよね、桃ピーチ、赤ちゃんのおしり(*‘ω‘ *)

 

 

 

そんなわけで静岡センター向けて出発。今は静岡に向かう車の中。

 

同行者は毎度おなじみのリスティさんとフィリス先生の姉妹に、仁村真雪さんと知佳さんの姉妹。そしてここじろ。

 

俺を入れれば5人と1匹。

 

話を聞いた時は俺だけ行くのかと思ってたが、俺と同じで登録はしていたが直接行ったことのないリスティさんと知佳さんもどうせならとついでにセンターが呼んだそうだ。

 

残りの2人と1匹は、フィリス先生は情操教育を受けたのが静岡センターだったそうで里帰り(?)として、真雪さんは保護者兼運転手として同行。

 

そんでもって、ここじろはいつものごとく俺の付属品として付いてきた。

 

 

 

 

 

はやても付いて来たがったが検査に長ければ3日くらい掛かるそうで、その間にはやても足の検査入院が決まり行けなくなった。

 

頬っぺた膨らませてブーたれるはやてに桃をいっぱいお土産にしてくると言い聞かせて何とか納得してもらった。

 

 

 

車の中では、運転席に真雪さん、助手席にリスティさん、後部席には右に知佳さん、左にフィリス先生、真ん中に俺で、俺の膝にここじろといった配置で乗車。

 

うーむ、こりゃ見ようによってはハーレムだね。

 

心情的には全く相手にされてないけどwww

 

 

 

 

 

 

「はやとくん、お菓子いっぱい持ってきたから食べる?」

 

 

横にいる知佳さんが駄菓子の詰まった袋を差し出してくれた。

 

 

「あっ、じゃあコレとコレ貰います」

 

 

俺は、自分の好きなうまい棒牛タン塩味とみそカツを目ざとく見つけて貰う。

 

 

「知佳ー、ボクにもチーズ味のー」

 

 

前の席から手を伸ばすリスティさん。

 

 

「知佳ー、あたしには酒くれー」

 

 

「ダメ!お姉ちゃんは運転でしょ!はいっ、コーヒーとガム!」

 

 

「徹夜明けの姉に運転させておいて、姉に主食を与えないなんてひでー妹だと思わないか、猫坊主?」

 

 

「あははは…」

 

 

漫画家やってる真雪さんは今回のために徹夜で原稿を仕上げたらしく、少し眠そうだ。

 

真雪さんの今回の同行はただ保護者をするためだけではなく、漫画の取材も兼ねてるらしい。

 

ちなみに真雪さんの言う猫坊主とは俺の事。

 

 

 

「知佳ちゃん、ココア味でなにかお菓子ある?」

 

 

「確かあったはずだよー。あった、はいココアシガレット」

 

 

「ありがとー」

 

 

フィリス先生はこの時からすでにココア好きか。

 

 

「…しっかしめんどくせぇー。人呼びつけるんなら迎えにバスくらい寄越せよって……」

 

 

「あはは、でもお姉ちゃん。ホテル代や食事代とかは全部あっちで持ってくれるらしいよ」

 

 

「俺、お土産代も出してもらうように交渉しました」

 

 

「良しでかしたっ猫坊主!地酒を車に積めるだけ買っておくぞっ!」

 

 

「どうせなら、郵送にしてその代金もあっちに出させたらどうだい?」

 

 

「お姉ちゃんっ、リスティ!?やり過ぎはダメっ!」

 

 

「リスティー、私の故郷みたいな所なんだから、あまり恥ずかしい事しないでー」

 

 

こんな感じでわいわいと進む道中車の中。

 

俺は、真雪さんとリスティさんの横暴を止めるために説得に夢中の知佳さんのお菓子の袋から、ヨーグルを取り出し小言で貰いますよーと宣言し、指で掬ってここじろに与えた。

 

さてさて、このメンツでこの先、何がある事やら。

 

俺はこのおかしな夏休みの旅行に期待に胸膨らませていた。

 

 

 

 

 

追記

 

車の振動でここじろにあげていたヨーグル付きの指が、ここじろの鼻の頭にくっついた。

 

一生懸命、必死で舌を伸ばして舐め取ろうとしているここじろに俺は萌死ぬかと思った。

 

 

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何故か、なかなかストーリーが進まない。

書いていると書く前までに考えていたストーリーと全然違う話の方がすごく書きやすいことがよくある。

これがキャラが勝手に歩きだすという事なんだろうか?

その所為でまた一から話を考え直すからなかなか完成しないけどね。

 

 

第10話

 

道中、はやてに桃をたくさんお土産に買ってやるんだと話したら、真雪さんから「桃は静岡のじゃなく山梨の名産だろ」って言われた。

 

誰かに押しつけられた感じがするが、自分の思わぬ勘違いに羞恥で赤くなってたら、知佳さんやフィリス先生に「まだ幼稚園なんだから間違えちゃってもしょうがないよ」とか、「静岡でも作ってないわけじゃないから」ってフォローされた。

 

中身はいい大人なのに間違えた自分がさらに恥ずかしくなり、思わず高速道路から身を投げ出したくなった。

 

そして、そんな状況を見て笑いを噛み殺し悶えるリスティさんを見て復讐を心に誓った。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで数時間車に揺られて早速やってきました静岡センター。緑広がる山奥にそのセンターはあった。

 

高速使ってきたから思ったより早く着き、何とかお昼ちょっと過ぎには着くことが出来た。

 

センターは赤い屋根に白い壁、どこか見覚えがあるデザインだ。さて何だったろうか?

 

センター前に駐車場に車を置いて、みんなで入り口に向かうと、中から何人かの白衣を着た人が出てきた。

 

先頭の初老の男性は…………どうみてもオーキド博士です。本当にありがとうございました。

 

 

「よく来たのー、わしがこのセンターの所長の大木田じゃよ」

 

 

……訂正。大木田博士らしい。

 

 

「そして、こちらがわしと一緒にこのセンターで働いている女御井クンと亜羅々木クンじゃ。主にこの3人が君たちの検査などの対応に当たるぞ」

 

 

そうやって紹介された後ろの女性2人。ヨロシクね、と挨拶される。

 

うん、髪の色が違うけどあの髪形はアニメのポケモンのジョーイさんに、もう1人も確か新作ポケモンの博士の人だったはず。

 

そういえば、建物も形も……。とらハのゲームの中でも正式名称は出てこなかったけど、センターの正式名称はきっとポケモンセンターだ。

 

 

 

俺がこの世界の不思議さに悩んでるうちに(ポケモン)センター側の紹介は終ったらしく、こちら側の紹介になっていた。

 

 

「わざわざ出迎えて頂きありがとうございます。わたしゃこいつらの保護者代わりの仁村真雪です」

 

 

普段はあまり見ることのできない余所行きのしゃべり方で挨拶をする真雪さん。

 

 

「こんにちはー。私はその真雪お姉ちゃんの妹の仁村知佳です」

 

 

「リスティ・槇原だ。あまり来たくはなかったけど、知佳達だけじゃ不安だったからついてきた。」

 

 

「こらっ、リスティー。姉が無礼でごめんなさい大木田先生。そしてお久しぶりです。みなさん元気でしたか?」

 

 

フィリス先生は、どうやらここに出迎えてきた人はみんな知り合いらしく、リスティさんを叱りながらも挨拶を交わす。

 

次は俺の番かな。

 

 

「そして私がハル ナミオで御座います♪」

 

 

「オイッ!」

 

 

おおっリスティさんいい突っ込み。

 

 

「じゃ改めまして、……お控えなすって!!」

 

 

俺は右掌を低く差し出し、腰を落とす。

 

 

「あっしは生まれは神戸、育ちは海鳴。今回、そちらさんに招待をお受けして遥々この静岡にやって来やした、名を八神はやとという幼稚園児やってるチャチなガキでごぜーます。以後、どちらさんも宜しくおねげー致します」

 

 

「結局ネタかい」

 

 

ネタじゃないよ日本の伝統的な挨拶だよ、銀髪さんにはそれがわからんとです。

 

同じ銀髪でも死んだ魚の目をした天パの35巻を作者が読んだ影響なんかじゃないよ。

 

 

「ほっほっほっ話に聞いていた通りの楽しい子らしいのぅ。さて、長旅だったじゃろうからまずは食堂でゆっくり休憩し、検査はその後やろうかの。そう言えば、お昼はもう食べたかな?ここの食堂はなかなかウマいのでまだなら食べていくがよいぞ」

 

 

さぁこっちじゃ、と大木田博士は俺らを食堂に案内してくれた。

 

 

 

なかなか広くて綺麗な食堂に着くとまず荷物とここじろを席に置き、注文をするカウンターに向かった。

 

メニューを見るとB級グルメで有名な富士宮焼きそばや浜松のウナギを使ったうな重、浜松餃子に真っ黒スープに、牛スジ、豚モツ入りの静岡おでんなど。

 

デザートも、名産のお茶や三ヶ日みかんを使ったソフトクリームや、同じく名産のクラウンメロンを使ったロールケーキなど本当においしそうな料理がいっぱいあった。

 

 

「ほー、なんかここだけで静岡の名物料理を全部食べれるくらいいっぱいあるな。じゃあ、わたしゃ桜えび天ぷらしょうゆらーめんと浜松餃子にでもするかな」

 

 

「じゃ私は同じ桜えびの天ぷらが付いてる抹茶のお蕎麦にするね」

 

 

と、このいっぱいあるメニューの中であっさり決まる仁村姉妹。

 

 

「……うーんボクは何にしようかな?」

 

 

「リスティ、リスティ、この静岡の海で取れたお魚をいっぱい使って作った海鮮丼なんておいしかったわよ。私は前にまだ食べれなかったとろろ麦飯にするわ」

 

 

こちらの姉妹も経験者のフィリス先生がいるから早く決まりそうだ。

 

じゃ俺は、土用の丑の日は実はウナギの旬じゃないというトリビアをあえて選んでうな重にするかな。

 

旬じゃなくてもうまいモノはうまいしね。

 

 

「うな重、ミルフィーユ的詰め込みで。飲み物はおいしい青汁。それと子猫用の食事を」

 

 

「は、はやと君、メニューにない料理言って困らせちゃダメよ」

 

 

俺がつい家での癖で無茶言うとフィリス先生が注意してくれた。

 

家だと母さんが、あらあら言いながら「今は売り切れやわ」とか「昨日食べたでしょ、もうボケちゃったの?」とかうまく流してくれ、いつもそんなコミュニケーションしてたからなぁ。

 

 

「冗談で「あるよ」す」

 

 

置くから料理人のおっちゃんの声が俺の言葉を遮る。

 

 

「え?」

 

 

咄嗟に言われた意味がわからない俺。

 

 

「……ミルフィーユみたいなうな重とおいしい青汁、それに猫用ランチ、あるよ」

 

 

と、ドンとトレイに乗った重箱とコップの緑色のドリンク、それと別のトレイに1つのお皿に纏められたランチが出された。

 

……いつの間に作ったんだコレ。

 

俺に俺の無茶な注文を出した料理人は他には何も語らず料理場に戻り、次の料理に準備を始めていた。

 

俺は青汁だけを少し口をつけてみた。

 

 

「……確かに、うまい」

 

 

渋みも苦味もないフルーティな味の青汁だった。

 

感動した俺は、その料理人の姿に『HERO』を幻視した。

 

 

 

 

 

 

席に戻ると待っていたのは大木田博士だけだった。聞くと他の人はこの後の検査の準備に行ったらしい。

 

席に着くと大木田博士が、食べながらでいいからと前置きを入れて今日の予定を説明すると言った。

 

俺はここじろに猫用ランチを与えながら話を聞いた。

 

 

「さて、今日の予定じゃが、まず君たちがいつも病院でやっておるようにデータを取る事になっておる。その後、このセンターで開発したある機械の実験に付き合ってもらいたいんじゃ」

 

 

「ある機械?」

 

 

「そうじゃ、詳しい話は後でするがのぅ、これがうまくいけば今までの常識を書き変える大発明になるはずじゃ!」

 

 

大木田先生は、だいぶ自信があるようでかなり興奮気味に話してくる。

 

 

「その機械って本当に安全なんですかね?」

 

 

真雪さんが聞く。

 

 

「まだHGS能力者に人体実験はしておらんが大丈夫なはずじゃ。あるプログラムを音楽化させて対象に聞かせ、脳に刺激を与えるだけじゃからのぅ、普通の人間で実験した時は何ら問題はなかったぞい」

 

 

ふむ、話を聞く限りはそう危険な機械ではなさそうだ。

 

 

「……それなら良いんッスけどね」

 

 

どうやら真雪さんも一応納得したようだ。

 

 

「それとのぅ……」

 

 

今までの勢いとは裏腹になぜか申し訳なさそうに次の話をする大木田博士。

 

 

「……その発明に思ったより開発費が掛かってしまっての、国から出ておる研究費だけでは足りなくなってしまったのじゃ……」

 

 

……何か怪しい話の流れ。

 

 

「そこでセンターであるモノを売り出して資金を作り出す計画があるのじゃが……」

 

 

あるモノ?

 

 

「それがこの『HGS能力者SDキャラクターグッズ各種』じゃっ!!」

 

 

ドンッ!と目の前に出された知佳さんやリスティさん達姉妹のフィンを出した状態のデフォルメぬいぐるみ。俺のはまだ開発途中らしく企画書のみ。

 

ってか、本人に承諾なく勝手に作るなよwww

 

 

「これが売れれば、ゆくゆくはゲームやカップヌードルなど色んな方面に進出する予定じゃ!」

 

 

なんだ、そのどっかで聞いたことのある販売戦略は……。

 

 

「ちょっと待ってください!いきなりそんな事言われても私たち困りますっ!」

 

 

そうだそうだ、知佳さん言っちゃれ言っちゃれ。

 

 

「勿論そちらの事も考えておる。こちらからの無理を言うのでな、とりあえず向こう2年間は売り上げの15%、それ以降は10%をそちらの取り分に考えておる」

 

 

書籍だと作者の印税は5~15%と聞くから、キャラクタの肖像権だけを貸してこの割合は結構高い取り分か?

 

 

「別にそれくらいならいいんじゃない?」

 

 

「リスティ!?」

 

 

「ここまでデフォルトされてるとあまり自分のような気がしないし、こっちからは何もしなくても収入が入ってくるんだから別にいいじゃないか」

 

 

ぬいぐるみを触りながら言うリスティさん。

 

 

「そんな……、フィリスは嫌だよね?」

 

 

「ええと、私これ…ちょっと可愛いなぁ、なんて……」

 

 

知佳さんがフィリス先生に助けを求めるものの、どうやらフィリス先生はぬいぐるみの可愛さに取り込まれてる。

 

 

「お姉ちゃんっ!」

 

 

最後の助けと姉を見るが……

 

 

「別にいんじゃないか♪」

 

 

ちょ、真雪さんw いつの間にか大木田博士に酒を注がれ買収されてるwww

 

 

「そ、そんなー……」

 

 

情けない声を出して崩れ落ちる知佳さん。

 

ご愁傷様です。

 

ちなみに俺ですか? 俺は将来はやてにできるだろう3人と1匹の連れ子の面倒のために働かなくて貰える金はもちろん頂いておきますよ。

 

働きたくないで御座るのニート侍に、うっかりドジのお姉さん、見た目小学生のエターナルロリ、そして変身してもコスプレ状態の駄犬じゃまともな所じゃ雇ってくれないから奉公にも出せないんだわ。

 

出来れば管理局になんて関わりたくないから、貰える金は貰っておきますよ。

 

 

 

その後の食事をしながらの話し合いで結局、『HGS能力者SDキャラクターグッズ各種』販売計画については、キャラクタの髪の色と名前を弄って本人との連想を遠ざけるという案で合意に至り決着となった。

 

そして俺たちはデザートまで追加注文したセンターの食堂のおいしい食事に満足し、次の検査に向かった。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、みんなが食事とキャラクターグッズの話で夢中の時、俺がそっと俺の計画書の切れ端で作った⑨のバッチを、車の時の復讐でリスティさんのぬいぐるみに張り付けたのは、俺とここじろだけが知る秘密の出来事である。

 

チルノ乙。

 

 

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まさかのポケモンクロスです。

ポケモンそのままが出てこないので、これくらいなら世界観を崩さないかなぁと思って出してしまいました。

センターでどんな人を出そうかと考えた時に、キャラクタ像の参考になる他のアニメやゲームの博士と付く人を色々思い浮かべていたら、オーキド博士が出てきてこうなりました。

思い付きで出たの割には、セリフも書きやすく、ちょっと変なマッドさも出せる最適なキャラでした。

機会があったら川柳も詠ませたいです。

 


 
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