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IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第十九話~銀の暴走と赤き残光~

束登場! そして福音、アムロの宿敵再び……。

2012-03-18 18:09:48 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1606   閲覧ユーザー数:1580

 臨海学校の二日目の朝、専用機持ち+箒さんはお母さんに言われ岩場に来ていた。

 

 二日目は一日中、ISの装備試験とデータ取りに追われる。特に専用機は専用のパーツテストがあるんだけど、これも量が多くて大変そうだ。僕と夏兄とエリスさんはそんなパーツは無いんだけどね。白式はどんな装備も拒むし、僕とエリスさんは作れる人がいない。どうも従来のISの装備では対応できないらしい。まぁ、νガンダムといいZZガンダムといい、このままでも十分強いのですよ。さすがガンダム!

 

 しかし、専用機持ちではない箒さんがいるのだろうか? 何かあるのだろうか……。

 

「今日から篠ノ之も専――」

「ちーちゃ~~~~ん!!」

 

 ずどどどどどど……! と何かが走ってくる音がする。どうもあの崖からのようだけど、声で分かる。あの人しかいない……!

 

「……束」

 

 影が崖をジャンプしてお母さんに飛ぶ込もうとする。が! お母さんはそれを最低限の動きでかわしながらアイアンクローをかます。あぁ痛そうだ……。

 

「やあやあ! 会いたかったよ! ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめ――って痛い! 痛いよ~!」

 

 お母さんの指に更に力が入っていく。あぁ、自分の幼馴染にも容赦がないのがお母さんらしい……。

 

「うるさいぞ束」

「ぐぬぬぬぬ……相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

 アイアンクローからの拘束を抜ける束さん。あなたも只者ではないのがよく分かります、はい……。

 

 そして向いたのは実の妹の箒さんだった。何年ぶりの再開なんだろう? 箒さんは束さんのこと嫌いなようだけど……。

 

「やあ!」

「……どうも」

「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」

 

 どんっ! 実の姉を日本刀の鞘で突いた箒さん。でも分かる気がする。さっきの発言はよくないでしょうよ……。

 

「殴りますよ」

「な。殴ってから言ったぁ……。し、しかも日本刀の鞘で突いた! ひどい! 箒ちゃん! ひどい!」

 

 お腹を押さえながら涙目になって訴える束さん。そんな二人のやり取りを、一同は、ぽかんとして眺めていた。

 

「いや~、こーくんも久しぶりだね~。それにレイちゃんも」

「束さんはいつもテンション高いですね。それとレイちゃんって誰です?」

[僕のことだ。全く、その呼び方は止めてほしいと言ってきたのだが……相変わらず飛んだ子だ]

「ふふん♪ それは褒め言葉として受け取るよ♪」

 

 アムロ・レイだからレイちゃんか……。これじゃ男じゃなくて女子になってしまいますよ。

 

「光輝? 今のが、あんたのISの声なの?」

「そうだよ。ってなんで知ってるのさ? まだラウラさんと織斑先生しかしらないはずだけど」

「私が教えたからな。こいつらなら信用できると思ってな」

 

 まさかお母さんが教えていたとは……でもこのメンバーなら大丈夫かな。

 

[どっちにせよ、いつかは話さなければならない日が来るんだ。僕は構わない]

「僕もいいですよ。アムロさんの言う通りですし、このメンバーなら信頼できます」

「そうか。――という訳だ。オルコット、凰。これで分かっただろう?」

 

 そうか。この二人はトーナメントの事件の時には居なかったからか。まぁ今度ゆっくりみんなとアムロさんで話せることができればいいなぁ。

 

「まぁいい、束。自己紹介ぐらいしろ。こいつらが困ってる」

「え~、めんどくさいなぁ~。……私が天才科学者の束さんだよ、はろ~。おわり~」

 

 そう言って、くるり、と回ってみせる。ぽかんとしていたメンバーが、やっとここで目の前に居る人がISの開発者にして天才科学者の篠ノ之束さんだと気付いたらしく、少し騒がしくなる。

 

「まさかこの人があのISの開発者……」

「しかしなんでまたこんなところにいますの!?」

「す、凄い……!」

 

 ISの開発、基礎理論を開発した束さんだが、政府から世界的指名手配中であり、逃亡中の身である。なのになんでまた臨海学校に現れたんだろう? 

 

「さぁ大空をご覧あれっ!」

 

びしっと直上を指さす束さん。その言葉に従って僕を含めた全員が空を見上げる。何か来る!?

 

 ズズーン!

 

「うあ!」

 

 近づいてきたのは分かったけど、早過ぎてか反応が出来なかった……。激しい衝撃を伴って金属の塊が落下していた。

 銀色をしたクリスタル型の何かは、壁が倒れてその中身を表す。

 

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿(あかつばき)』! 全スペックが現行のISを上回る束さんお手製のISだよ!」

 

 ぜ、全スペックが現行のISを超えるだって!? 最新鋭機で最強の機体じゃないか! 

 

「さあ箒ちゃん! 今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか! 私が補佐するからすぐに終わるよん♪」

「……お願いします」

「堅いよ~。実の姉妹なんだし、こうもっとキャッチーな呼び方で――」

「はやく始めましょう」

「ん~、じゃあ、はじめようか」

 

 箒さんは束さんが嫌いらしいからなぁ……。凄い無愛想だよ。

 

「箒ちゃんのデータはあらかじめ入れているから後は更新データだけだね。箒ちゃんの好きな近接戦闘を基に万能型にしているISだからすぐに馴染むと思うよ!」

「それは、どうも」

 

 うわ~、なんか気まずい雰囲気だぁ。この二人の間にはとてつもない亀裂がある。本当は仲のいい姉妹だったかもしれないのに……。どうしてこんな……。

 

[――光輝くん……それでも人は分かりあえるさ。絶対に]

「――アムロさん……」

 

 僕の考えが伝わったのか、暗い夜に引きずりこまれそうなところをアムロさんに助けられた。そうさ、人は分かりあえる!

 

「まぁ後は自動処理に任せればいいかな。さていっくんにこーくん! 二人のISを見せて。束さんは興味深々なのだよ」

「わ、分かりました」

「え、あ。はい」

 

 僕と夏兄はISを展開させる。白式とνガンダム――こう並んでみると白が目立つなぁとか思ったりする。束さんは宙にディスプレイを出し、白式とνガンダムのデータを見ている。

 

「ほほ~、見たこともないデータだね。二人が男の子だからかな?」

「束さん、俺達がISを使える要因ってなんですか?」

 

 夏兄が拝見中の束さんに尋ねる。確かにそれはそうだ。僕の場合は僕の特別な脳波が反応したって言ってたけど、夏兄の場合はどうなんだろう?

 

「それがわからないんだよね~。謎なのだよっ! でもISを装着したいっくんも中々だね☆」

「ど、どうも……」

 

「照れるいっくんもいいねぇ。さて――」

「お、織斑先生!」

 

 そう言って駆けてくるのは山田先生だ。すごい慌てているがなにかあったのだろうか? 山田先生がお母さんの耳元で話していると、お母さんの顔色が変わった! な、なにがあったの!?

 

「山田先生は生徒達に至急、旅館で待機させるように指示を。専用機持ちは私に着いてこい! もちろん、篠ノ之もだ」

「は、はい!」

 

なにか大きな事件でも起こったのだろうか? だとすれば一体……!?

 

 

 

「では現状を説明する」

 

旅館の奥にある宴会用の部屋に専用機持ちとお母さん、山田先生が集合している。照明を落とされた薄暗い室内に、大型のディスプレイが浮かんでいる。

 

「二時間前、試験稼働していた、アメリカ・イスラエル共同開発の第三世代軍用IS「銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)」が制御下を離れ暴走。衛星による結果、福音は此処から2キロ先の空域を通過することが分かった。時間にして2時間後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態を対処することになった」

 

 まさかの事態に全員、驚きを隠せない。まさかISが暴走するとは……。それほどの性能を持ったISと考えられるね。なにかいい作戦はないものか。

 

「教員は訓練機を使って周囲の海域を封鎖している。故に本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

 

 当然と言えば当然か。封鎖しないと被害が広がるだけだ。さて、どうする?

 

「それでは作戦会議に入る。なにかいい作戦がある者は挙手を」

「はい」

 

 僕はすかさず手を上げた。

 

「福音の詳細な性能を知りたいのですが」

「分かった。ただし、これらは二カ国の際重要軍事機密だ。情報が漏れた場合、裁判にかけられるか、最低二年の監視がつけられる」

「分かりました」

 

 開示されたデータを全員で見る。それを元に的確な作戦を立てよう。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……わたくしや光輝さんのISと同じオールレンジ攻撃が出来ますわね」

「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。やっかいだわ。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回っているから相手の方が有利……」

「この特殊装備っていうのが曲者な感じだね。リヴァイヴ専用の防御パッケージでも連続での防御は難しい気がする」

「しかもこのデータでは格闘能力が未知数だ。偵察は行えないのですか?」

 

 セシリアさん、鈴さん、シャルロットさん、ラウラさんの四人は真剣に意見を出し合っているが、箒さん、夏兄、エリスさんは追いつけてない様子だ。かく言う僕も、ギリギリ追いついている感じだ。

 

「無理だな。このISは現在も超音速移動している。最高速度は時速、二四五〇キロを超えるとある。一回のアプローチが限界だ」

 

「一回きりのチャンス。ここは一撃必殺の威力を持つ機体で当たるしかありませんね」

 

 山田先生の言葉に全員が夏兄の方へ向く。確かにここは夏兄の出番だよね。

 

「え……?」

「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」

「それしかありませんわね……問題はありますが」

「お、俺がいくのか?」

「「「「当然!」」」」

 

 わお。四人の声が重なった。

 

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。もし覚悟が無いなら無理強いはしない」

 

 確かにこれは命にかかわることだ。無理をして欲しくない……。夏兄、どうするの?

 

「やります。俺が、やってみせます」

「よしそれでは――」

[すまない。僕と光輝くんは別行動をとらせてもらう]

 

 そういったのはアムロさんだ。一気に全員がこちらを見る。なんでまた別――っ! この感覚は! まさか!?

 

「なぜです? なにか問題でもありましたか?」

[そうじゃないさ。奴が近付いてる]

「お、織斑先生! 赤い何かがこちらに近づいてきます!」

「なに!?」

 

 モニターを切り替え、ここから三キロ先、福音が通過するポイントの真反対からあの深紅に染まった赤いISが近付いてきている。

 

前の時より、全長が低くなった感じだ。体勢も前傾姿勢で、肩と腰のアーマー、脚部が巨大化している。前に見た時より人型というイメージが無くなっている。

 

 見た目はあの時より違うがこの感覚は忘れれないんだよ。間違いない。

 

[あぁ間違いない。このプレッシャー、赤い彗星――シャア・アズナブルと呼ばれる男だ]

 

 その言葉に、あの事件を知る人は全員、息を飲んだ……。

作戦会議は決まった。銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は夏兄と箒さんが撃墜するように決まった。

 

 あの後、乱入してきた束さんのアドヴァイスにより超音速移動している福音を運ぶ役を箒さんに決まったのだ。

 

 赤椿はどうやら第四世代のISだと言う。各国でやっと第三世代が出来たというのに、束さんの技術はすごい。さすが、ISの産みの親というべきなのでしょうか。

 

 ISの各世代の概要はこうだ。

 

 第一世代がISの完成。第二世代は、後付け武装による多様化。そして第三世代は、操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊兵器の実装。例えば、ブルーティアーズのBT兵器、シュヴァルツェア・レーゲンのAICかな。

 

 赤椿の第四世代は、パッケージ換装を必要としない万能型。これは白式の雪片弐型にも仕様されているとか……。それを考えたら白式も第四世代のISになる。各国がやっと第三世代を開発したのにも関わらず、目の前に居る天才科学者、篠ノ之束さんは第四世代を作り上げてしまった。

 

 アムロさん曰く[赤椿は戦いの火種を生む]と言っていたが、確かにそうなりかねない……。第三世代の競争が無意味なものになってしまうのだから。赤椿の存在を知った国々は即赤椿を渡すように要求してくるだろう。それが火種に発展するってことだね。

 

 話を戻しましょう。つまり赤椿は攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。束さんが機動性を重視するように調整すれば福音の近くまで連れていけるということだ。

 

 作戦開始まで残り一時間。箒さんは赤椿の肩慣らし中である。それにしても今の箒さんは心配だ。力を手に入れたからか凄く浮わついてるし、心配でならない。

 

「束さん、あとどれくらい掛かります?」

「そうだねぇ~……三十分ぐらいかな♪ 大丈夫だよ。必ず終わらすからね」

 

 部屋に残っているのは僕、エリスさん、お母さん、束さんの四人だ。他の人は夏兄と箒さんの準備を手伝っている。

 

 赤い彗星の相手は僕とアムロさんになった。アムロさんもあの機体は初めて見るらしいけどサザビーの発展型っぽいという。確かにサザビーの面影があるからそうなのかも。束さんの意見としてはもしかしたら二次移行(セカンド・シフト)したISかもしれないと……。

 

「二次移行(セカンド・シフト)したISってどのくらい戦闘能力が上がるんですか?」

「ん~、分かんない♪ でも今のνガンダムじゃ勝てないんじゃないかな。だからこうやって全体的な性能を上げてるのさ♪ さぁ、あと少し!」

 

 というわけで今のνガンダムでは勝てないということで、束さんにνガンダムの性能を上げてもらっている。上がった分、身体の負担も上がるということだけど、今は仕方ない。

 

 それにしてもさっきからエリスさんの表情が優れないようだけど、大丈夫だろうか?

 

「エリスさん? さっきから顔色が悪いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫。ただ……さっきから嫌な予感がするんだよ。はっきりとは分からないけど……」

 

 そう言ってまたエリスさんはまた俯いてしまった。すぐにでも泣いてしまいそうな顔だ。しかしここまで暗いエリスさんを見るのは初めてだ。彼女は今、何を感じているのだろうか?

 

「大丈夫だよ、エリスさん。そんな予感があっても必ずそれが起きるわけじゃない。もしかしたらいい予感かもしれない! そんな顔は似合わないよ。いつもの元気なエリスさんが一番いいよ!」

 

 僕の言葉を聞いた瞬間、ゆっくりと顔をあげる。耳まで赤く僕と目を合わせてくれない。僕は変なことでも言ったのか?

 

「光輝くん……そう言ってくれて嬉しいんだけどね……そういうことは二人っきりの時に言って欲しかったな……」

「え? ご、ごめん……」

「こーくんも鈍感だねぇ~。もっと乙女心を勉強しないと♪」

「き、聞いてるこっちが恥ずかしいです……」

「全く。光輝、場所をわきまえろ。お前はそう言う意味で言ったんじゃないかもしれないが聞いてるこっちが勘違いしそうだ」

 

 え? 僕はみんなからそんなことを言われるようなことを言った!? みんなの目を見ると、呆れたり、照れてたり、笑ってたり、一体何なんだぁー!

 

 

 

「よし、行くよアムロさん」

 

 そう言うと僕の身体を緑の光が取り巻き、やがて消える。外見は変わったことはないけど、センサーで性能を見てみると前より50%ぐらい上がってる。けっこうなパワーアップだね。

 

 作戦開始まで二分前。僕、夏兄、箒さんは海岸に出ていた。νガンダムの強化も無事に終わった。後で束さんにお礼をしないと。

 

 三人ともISを装着しており、いつでも出撃できる体勢だ。

 

「三人とも、これは実践だ。命の危険とも隣合わせだということを忘れるな」

 

 センサーからお母さんの声が聞こえる。心配してくれているのか声が少し震えている。

 

「よし、箒、光輝。絶対この作戦、お互い成功させるぜ!」

「うん! 二人も気をつけてね!」

「分かっている! 私と一夏なら大丈夫だ!」

 

 二人とも気合十分だね。

 

[――だが、箒さんが浮ついているな。千冬なら注意させると思うが……]

 

 確かに箒さんは、力をてにいれたからか凄く浮ついてる。なにか失敗するかもしれない……。でも大丈夫! 箒さんなら力の意味が分かってるしね。

 

「それでは……作戦開始!」

 

 お母さんの掛け声と共に僕たち三人は、反対同士の場所へ向かった。

 

 

 

 会議室で見守るメンバーだが、エリスはずっと不安を抱えたままだった。

 

(絶対、絶対生きて帰ってきてね光輝くんっ!)

 

 手を組んで必死に祈ることしか今のエリスには出来ることがなかった。それが光輝に届くと信じて……

 

 


 
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