No.393646 二度目の転生はネギまの世界 第十一話翡翠色の法皇さん 2012-03-18 10:41:12 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:5976 閲覧ユーザー数:5758 |
第十一話「魔法世界に来てみたが」
『術』を400年かけて研鑚し続けたせいなのか、神鳴流を会得するのにかかった年月は2年で済んだ。斬岩剣を3日、斬空閃を7日で習得してしまい、その他多くの技を名前と一致させる作業を一カ月する合間に、奥義である斬魔剣を教えてもらうために交渉した半年を含めてだが。
ともかく。京都神鳴流を会得した
「魔法世界へのゲートはここでいいのか?」
「はい。杖などの武器になるものは一時預かりになります」
「
次の行先は魔法世界だ。まあ理由はいくつかあるが、一番大きな理由は戦争に介入してみたいことだ。次点は賞金稼ぎが嫌になるほど多いことか。全員返り討ちにしたが。
返り討ちについては、
「
「契約者のカードは影の中だ。杖がなければ取り出せん」
「……確かに。それではこちらの…………」
今は適当に咒式変化している。
ああ、先ほど言っていた小太刀二振りはキティのパクティオーカードとともに影の中だ。あんな危険物、万一抜かれでもしたら出禁ものだ。キティとの関係も、知られると不安要素ばかりになるしな。
さて、ゲートを抜けたら適当に徘徊するか。さすがに100年以上も時間が余っている以上、もう少し鍛えておきたいところではある。無論、魔法も気も使わない、純粋体術のみで。
これは、
「などと考えている間に魔法世界に到着か。見た目はファンタジーだが、実情はどうかな」
空飛ぶクジラや明らかに
さて、どこに行くか……そもそも魔法世界編以降は真面目に読んだわけでもなし、どこがどうだったかなど、もう記憶には欠片もない。メガロが腐っていたあたりなどは覚えているが……ん、ケルベラス渓谷?
――――ストーリーにかかわりがあった場所だとは思うが……よし、行ってみるか。指輪、刀三振り、共にオーケー。この装備で大丈夫か?
「大丈夫だな、問題あるまい」
転移を実行する。
で、わざわざ谷底まで降りて行ったのに、だ。
「ギュオオオオオォォォォオォォォァァァアァアァ!!!」
「デュラアァァァァゥゥゥウゥ!!」
「五月蝿い」
ひたすらに五月蝿い。
<私が相手になるから引きなさい>
「「「「「「ギュア!?」」」」」」
「……ほう、それなりにできる者が来たか」
念話のようだが、誰だろうか。渓谷の奥、それも相当先だ。
<馬鹿ね、圧倒的実力差を見極められないなんて……さて、私が出ていくのとそちらが来るの、どっちにする?>
声だけでわかる。声の主は相当の猛者だ。口調からして女性……若しくは人語を解する高位の雌の魔獣か。
「
獣どもが
別に恐れる必要性はない。強き者との戦い。それは血沸き肉躍る行為だ。
「さて、邪魔するぞ」
<ええ、いらっしゃい。勇敢なるヒト>
最後の角を曲がったところで、声の主の姿が映る。なるほどな、確かに彼女なら最強を名乗れる。
それは、龍。それも、およそ120メートルはあるかという極上の大物。
<私を見ても驚かないとはね。さすがは、ケルベラス峡谷に単身足を踏み入れる猛者。私はリュミスベルン。このケルベラス峡谷の魔獣のトップにして龍種最強よ>
「ふむ、ならば
<ふうん……旧世界からのお客様は初めてだけど、ここじゃ弱肉強食だからね。私と一戦やらない?>
なぜそうなるのかは分からないが、別に戦うことについては文句などない。龍種ほどになれば、
「いいだろう。
<はっ、力不足を嘆かないでよ!>
それだけ言って、リュミスベルンは飛燕のごとき……否、飛龍のごとき速度で腕を、尾を、翼を振るい、
それら一つ一つは大振りでありながら速く、さらには範囲も恐ろしく広い。巻き込まれる空気そのものも凶器となり襲いかかってくる。
確かに、疾くはない。ただ大きさと相まって避け辛いだけだ。だが、これは真理の一環でもある。それは、『どれだけ不意を突かない攻撃であろうとも、避けられなければ関係ない』だ。
『術』の求める先である『正面から不意を突く』とは対極に位置する、近代兵器に求められる真理ではあるが、ここまで圧倒的なものは初めて見たぞ。
「だが、どうにかなるな」
<へえ、遅いくせに速いなんて、矛盾もいいとこじゃない>
不敵に口角を釣り上げる。まだこれなら、回避は不可能ではないのだからな。
気を使い、加速度を限界まで上げる。加速時間をゼロにするだけで並大抵の攻撃は掠ることすら許さない。ならばさらに加速度を上昇させてしまったらどうなる? 答えは簡単だ。達人級であろうと危険性がなくなる。
さらに、剣術を使用する。さすがに龍を相手にして素手で挑もうと思うほど馬鹿ではない。勝てなくはないであろうが。
「紅蓮閃」
野太刀を抜き、気を火に変換。それを斬空閃の要領で飛ばす。まずは弱めの一撃で様子見だ。
<甘いわ>
「グルオアアアァァァアアアァァァァァ!!!」
リュミスベルンはそう吼えた。その一吼えで紅蓮閃は吹き散らされる。同時に、背後にいた魔獣も大きく後退する。さすがは龍。鶴の一声よりも効果は抜群のようだな。
<死の吐息にて消え失せなさい!>
そのまま火炎の吐息で追撃を加えてきた。なるほど。これほどの範囲攻撃であれば、回避は不可能になる。まあ、回避不能ならば、安全地帯を生み出せばよいだけのこと。
「斬魔斬空閃」
形無きものに干渉する魔の型を以ってして、吐息を斬り裂いてやる。若干熱が伝わってくるものの、吐息そのものに比べれば可愛いものだ。
「っと、ぅおおぉぉぉ!?」
が、少々慢心が過ぎたようだ。死の吐息を目くらましに放たれた尾による一撃を、甘んじて受けてしまった。いやいや、さすがに龍の一撃は重い。
<浅かった……いえ、直前で跳んで軽減したのかしら?>
「いつつ……さすがは必殺とすら言われるだけあるな。気と回避で軽減して、ここまで通るものか」
<さすがね。私の一撃を受けて生きていたのは、龍を除けばあなたが初めてよ>
「お褒め頂き恐悦至極」
やや芝居がかった台詞で返すが、さすがにダメージが大きく、まともに動こうとするのは辛い。しかたないか。全力で潰させてもらうか。
<だけど、次で終わりね>
「そうだろうな」
野太刀を納め、小太刀二刀に手をかける。
さて、『岩』は動きの最適化による最高の一撃と気による強化。『空』は気による遠距離攻撃。『魔』は形無きものへ干渉する術。
それらを自在に扱ってこそ、京都神鳴流は完成する。先程のように、二つを組み合わせることも到達者としては必要だ。
そして、その強弱を調整することもできて、一流と呼ばれる。
「烈風絡魔斬鉄閃――」
妖刀『黒陽』にて、遠距離攻撃である『空』の型にねじれを作り、鉄をもねじ切る斬鉄閃を放つ。そこに『魔』を追加することで、形無きものを絡め取る。
そう、周囲に残存する吐息の熱量。それらを風で集め、干渉して絡め取り、ひとまとめにすることで生じる、焦熱の一撃だ。あの金色の鱗であろうと、鉄すらねじ切る一撃にこの熱ならば、耐えきれまい。
<消し飛びなさい!>
追撃のように死の吐息を吐くリュミスベルン。だが、それは悪手だ。形無きものを斬り裂く『斬魔』と違い、『絡魔』は形無きものを絡め取る。
さあ、根競べだ。
「グルアァ!」
どうやらリュミスベルンも気づいたようで、
「――二刀連撃!」
残る一刀、魔刀『紅月』で烈風絡魔斬鉄閃をもう一度放つ。一つでは足りないのなら、二つならどうだ?
<ふ、あは、あはは! まさか私が負けるなんてね>
どうやらリュミスベルンも気づいたようだ。
攻撃を続けても打ち破れない。避けるには攻撃を止めなければならないが、攻撃を止めれば直ぐにでも攻撃が到達する。もはやチェックメイトだ。
<楽しかったわよ、アルトリウス>
だがリュミスベルンは諦めない。龍の誇りを胸に、最期の瞬間まで抵抗を続けるのだろう。だが、死なれでもしたらこちらが面白くない。
気で脚力強化。瞬動で岩壁を駆けあがる。さあ、見せてやる。
「ARAN全力右パンチ!」
体を割り、膝抜きを以って最速の一撃。そこに莫大な気を乗せて未来の
否、
せめぎ合っていた吐息も、烈風絡魔斬鉄閃も、問答無用に叩き落とし、消し飛ばす。やや茫然としたようなリュミスベルンの顔に、不敵な笑みを見せつける。
「
<くっ! あははっ! ええ、あなたの勝ちよ、アルトリウス。私自身が諦めた一撃を、当たり前のように叩き潰す。そんな奴に勝とうなんて、未来永劫不可能よ>
龍の遠吠えが渓谷に響く。そして、
「リュミスベルン。
<なに、私を気に入ったとでも言うのかしら?>
やや笑みを含んだ声色で、冗談めかしてリュミスベルンは言う。気に入った? ふはは、気に入ったとも。
「敗北を目の前にしても諦めない。それは
<お褒め頂き恐悦至極>
どうやら先程の
「さらに言えば、勝者は敗者の生殺与奪権を得る。ならば、貴様から死を奪ってやるだけだ」
<それを言われたらどうにもならないわね。いいわよ、地獄までだろうと付いて行ってあげるわ>
互いに笑いが止まらない。ああそういえば、
「これからは
<なら私はリュミスでいいわよ。これから頼むわね、アラン?>
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魔法世界に来たのだが、どこに行くべきなのであろうか。……そうだ、ケルベラスへ行こう。