No.393433

二人の転校生

十河さん

第二章開幕です。

第二章テーマ Justice to Believe(ワイルドアームズ・ザフィフスヴァンガードOP/水樹奈々)

2012-03-17 23:39:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2400   閲覧ユーザー数:2342

あの後クラス代表決定戦は中止になった。

シールドを破って侵入者が現れたのだ。

まぁ仕方のないことだが・・。

 

(この事件でIS学園のセキュリティの問題が浮き彫りになったな・・。さて・・。)

 

そんなことを考え唯は保健室に向かう。

 

保健室

 

一夏、鈴は眠っている。

その横には箒、セシリアがいた。

そこへ唯が入ってくる。

 

「よぅ、一夏たちの容体はどうだ?」

「大丈夫だ。今はただ寝ているだけだ。」

「それにしてもあのロボット・・唯さんを狙ってましたわね・・。」

「唯、心当たりはないのか?」

 

唯は考えるそぶりを見せる。

 

「いや、ないな。粗方俺の誘拐を目的をした連中の仕業だろう。俺は世界で唯一ISを動かせる男だからな。そのサンプルとして捕獲したかったのだろう。(真実を言うのはまだ早い・・。まだ確信がないからな・・。)」

「なるほどな・・。」

 

唯の言葉に箒たちは納得する。

しばらくして一夏たちも目覚め、この事件は幕を閉じる。

 

だがこの事件が陰謀の始まりとは誰も気づかなかった・・。

 

しばらくして唯は学園の敷地内にある束の研究所にきていた。

政府に要求したら了承してもらえたのだ。

唯は赤のフレームをいじっている束に声をかける。

 

「束、どうだ?紅椿は。」

「後もう少しかな?学年別対抗戦の後ぐらいになりそうだね。ゆいにゃんのブルーフレームはどう?」

「俺もそのぐらいに完成かな。さて、システムに不具合が生じてないかのチェックとセシルのブルーティアーズの改良を行いますかね・・。」

 

束が作っているのは箒の専用機・紅椿。

一夏の白式との連携をコンセプトに開発された第4世代型IS。

単一能力はエネルギー増幅を行う絢爛舞踏で近・中距離戦メインのISだ。

さらに唯は夏の臨海学校ぐらいまでに一定の技量をこなしたら後付武装を渡そうとそれの開発も行っている。

唯が作っているのは簪の専用機のアストレイ・ブルーフレームセカンド。

開発コンセプトはアストレイの発展。

唯がアストレイを作ったため、簪の打鉄弐式の開発がストップしてしまった。

唯は自分の開発したISのせいで開発がストップしてしまったお詫びという名目で製作した。

最大の特徴は実弾系を無効化するTP装甲。

それに近・中距離戦に特化したL、狙撃、索的に特化したGへのフォームシフト。

共通武装として倉持よりもはるかに高性能のマルチロックオンシステムを搭載した肩部マイクロミサイルと脚部ホーミングミサイル、さらには近接用のコンバットナイフを装備。

従来のアストレイに比べていくらか特記した能力を付加させた。

 

とりあえず唯はブルーフレームのシステムチェックを行いセシリアの目標である偏向射撃をどうするかの案を練るがいい案が浮かばずこの日の作業は終了。

 

翌日

 

唯はイヤホンから聞こえてくる音楽に耳を傾けていた。

チャイムが鳴り、唯はイヤホンをはずすと同時に真耶が入ってくる。

 

「おはようございます。皆さん。今日は転校生がやってきました。それも2人も。」

 

真耶の言葉に教室がどよめく。

情報の早い女子高生といえども情報をキャッチできなかったのだ。

どよめくのは当然だろう。

 

「では、入ってきてください。」

 

そういって入ってきたのは2人の転校生。

真耶は金髪の転校生に自己紹介を促す。

 

「では、自己紹介をお願いします。まずはデュノアくんから。」

「はい。シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします。」

 

転校生の一人、シャルル・デュノアはにこやかな顔でそう告げ、一礼する。

それにあっけを取られたのは唯を除くクラス全員だった。

 

「お、男・・?」

 

誰かがそう呟いた。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が居ると聞いて本国より転校を・・。」

 

人懐っこそうな顔。

礼儀正しい立ち振る舞いと中性的に整った顔立ち。

髪は濃い金で、それを首の後ろで丁寧に束ねている。

身体はスマートで制服がよく似合っている。

 

「きゃあああああああ―――――っ!」

 

女子が歓喜の声を上げる。

だが唯は眉を潜め不審に思っていた。

 

(おかしい・・。この時期に男子が転入してくるならニュースや新聞とかのメディアで大々的に取り上げられるはずだ・・。それ以前にデュノアのおっさんが本当にこんなことするか・・?)

 

唯はデュノア社長と面識がありそのときから娘バカ振りを発揮していたことを覚えている。

そんな社長がこんなマネをするのか?

そんなことを考えていると銀髪の少女が自己紹介を行う。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

クラスメイト達の沈黙。

 

「あ、あの、以上・・ですか?」

「以上だ。」

 

空気に耐えれなくなった真耶が精一杯の笑顔で訊くが、返ってきたのは無慈悲な答えだけだった。

 

(フム、ボーデヴィッヒは軍人か。・・!?)

 

唯がそんなことを考えているとラウラが一夏に激しい敵意を向けていることに気付いた。

 

「!貴様が――」

「え?」

 

ラウラが一夏の席に近づいていた。

唯はすかさず立ち上がり・・。

 

「・・お前は。」

 

ラウラが一夏に平手打ちする前に唯が手首を掴んで阻止。

 

「ほう、力のある軍人というのは無力の一般人に対して無差別に手を上げてもいいのか?」

「貴様・・!何者だ?」

「千冬姉さんと一夏の弟の唯だ。俺の眼の黒い内は一夏に手を出させない・・。」

 

唯はそれになと付け加え殺気を強める。

 

「家族を大切に思う・・。それが当たり前の反応だ。」

「・・!?」

 

ラウラは唯の放つ殺気に当てられ背中に冷や汗をかく。

 

(何だ・・!?こいつは・・!?)

 

ラウラは腕を振り解き空席に着く。

 

「唯、ありがとう。」

「気にすんな、家族を守る・・当然だろう。」

 

そう言って唯は自分の席に戻る。

 

(やっぱり唯は私のヒーローだよ・・。だから大好き・・。)

 

一夏はそんなことを思った。

 

休み時間

 

唯は屋上に上がり、ある人物と連絡を取っていた。

 

『唯か?久しぶりだな。ニュースで見たぜ。』

「おかげで心の疲労が増えたけどな・・。学園に来た当初なんて見世物パンダ状態だったから・・。」

『ハハハ。で、今日は何のようだ?』

「シャルル・デュノア・・彼の身の回りとラウラ・ボーデヴィッヒの調査を頼みたい。」

『そのくらいならお安い御用さ。報酬はいつものとおり友達価格。調査結果のデータは夕方までには唯のパソコンに送っておく。』

「OK。それじゃ。響や遥によろしく言っておいてくれ。藤丸。」

『ああ。こっちにも顔出せよ。響や遥も会いたがっていたぞ。』

「いろいろ落ち着いたら顔出すよ。じゃあな。」

 

そう言って藤丸との電話を切る唯。

 

「・・して・・!!」

「ん?この声は・・。」

 

帰る途中の廊下で話し声が聞こえてきた。

気配を消し、柱の影からこっそりと覗くと千冬とラウラが話をしていた。

 

「なぜこんな島国で教師なんか!もう一度ドイツ軍へ戻り教導をしてください!」

「私はもうIS操者ではない。ただの教師・織斑千冬だ。」

 

それを聞いた唯は誘拐事件の後情報提供の見返りとして教導を取っていたのかと推測。

 

「ですが!ここにいる学生はISをファッションと勘違いしています!」

「ほう・・。」

(あ、あいつ地雷踏んだ。)

 

千冬の殺気が強まる。

それに気づく唯だが、ラウラはまったく気づいていない。

 

「あまりなめるなよ、小娘。たかが15歳で専用機を持った分際で自分は選ばれし者みたいな言い方をするのだな・・。」

「あ・・わ、私は・・。」

「とにかく教室に戻れ。」

 

ラウラは何かを恐れるように瞳を震わせながら教室に戻る。

 

「さて、そこで隠れて聞いているやつ、気配の消し方は完璧だがきれいに気配を消しすぎているぞ。」

「あらら。未熟だったか。」

 

唯が現れ、千冬の前に立つ。

唯はたまたま話を聞いてしまったことを説明。

 

「唯、放課後いいか?」

「ああ。俺も聞きたいことがある。」

 

放課後

 

今日1日の授業を終え、唯は千冬に会いに来ていた。

 

「ラウラのことだな。」

「ああ。」

 

千冬の言葉に唯が相槌を打つと話し始める。

一夏誘拐事件が解決した後、千冬は見返りとしてドイツ軍で教導を行っていた。

そこでラウラと出会った。

落ちこぼれだったラウラを今の軍位に返り咲かせた恩人らしい。

 

「なるほど・・。姉さんを尊敬しているからこそ連覇を止めた原因の一夏を許せなかった・・というところか。でも俺は姉さんが取った選択が間違っていないと今でも信じてる。」

「唯、お前から見てラウラはどう映った?」

 

千冬の真剣なまなざしと質問。

唯もそれに対して少し考えて答える。

 

「そうだな・・。あいつは自分が強いと思い込んでいる。けど心の奥底では自分が弱いとも思っている。そこから導き出す結論はあいつは強いのではなく、強がっているだけ・・。俺はそう感じた。」

 

唯はラウラの目を思い出す。

千冬への尊敬、一夏への憎しみなど・・いろいろなものが混ざっていた。

千冬が強いのは一夏と唯という大切な家族がいるからこそ・・。

ラウラはそのことを理解していない。

故に強がるしかないのだ。

そう考えた千冬は唯を見据える。

 

「唯、お前にラウラのことを任せてもいいか?」

「・・わかった。俺もあいつに力というものを教えなきゃいけないと思ったからな。・それはそうと姉さん。」

「何だ?」

「あの誘拐事件・・。なぜ他の国は情報がキャッチできなかったのにドイツだけキャッチできたのか不思議に思わないか?」

「何?」

 

唯の言葉に千冬が反応する。

 

「確証はないけど・・俺はあの事件が仕組まれたものだと思っている。」

「だが何のために?」

「たぶんだけど・・姉さんのデータ採取が目的じゃないかと思う。確証がないからなんともいえないけどな・・。まあその話は置いておこう。久しぶりに姉さんと腹を割って話がしたい。」

「それはいいな。」

 

こんな話をしつつ唯は久しぶりに千冬と過ごした。

そのころのラウラ・・。

 

(織斑唯・・あいつも許さない・・!やつら姉弟を完膚なきまでに叩き潰し、教官の目を覚まさなければ・・!それが私がここにいる意味・・!!)

 

チャリンチャリン・・。

 

ラウラの憎しみと同調するかのようにセルメダルがたまっていく・・。

 


 
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